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上場会見:AIメカテック<6227>の阿部社長、液晶設備で量産開発

30日、AIメカテックが東証2部に上場した。初値は公開価格(1920円)を1%上回る1941円を付け、1707円で引けた。同社はフラットパネル・ディスプレイや半導体パッケージ製造装置の開発・製造・販売などを行う。1990年に操業を開始した日立テクノエンジニアリング(現日立製作所)竜ヶ崎工場が母体。日立製作所が2016年に事業を切り出し、投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループが取得した。阿部猪佐雄社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

今後の展開として、液晶ディスプレイ事業は「キャッシュカウ」の位置づけに当たると話す阿部社長
今後の展開として、液晶ディスプレイ事業は「キャッシュカウ」の位置づけに当たると話す阿部社長

―初値が公開価格を上回ったが感想を
非常に嬉しかった。初値が下回ったらどうしようかと心配だったが、上回ったことは市場の評価も含めて良かったと素直に思っている。

―コロナ禍の影響で上場が1年遅れたそうだが、1年越しの上場について所感を
上場は、カーブアウトした時からの念願だった。カーブアウトする時には、事業ユニットをこのままきちんと運営していかなければならない責任があった。事業会社に行く場合には、何かあるとバラバラになり、事業がシュリンクして顧客にも迷惑が掛かる。日立と話して、事業会社ではなく上場の可能性が最も高いファンドにしてもらい、上場ありきで進めてきた。コロナ禍の影響で1年遅れたのは仕方がない。

ただ、日立からカーブアウトした時に、その看板がなくなり、顧客との信頼関係も含めて「これからどうなるのだろう」という思いはあった。実際に始めると、顧客とはこれまでの信頼関係から注文は予定通り来た。協力会社や社員が「この先どうなるのだろう」という不安を多少持っていたため、上場して今のAIメカテックの立ち位置や将来性をはっきりさせることを目的に準備を始めた。

当然、信用度を上げての人材確保や、新規の取引先を獲得する意図もあったが、上場できたことは本当に良かった。社員のモチベーションも上がるだろうし、落ち着いて事業に取り組めるのではないかと思う。

―「1番に声が掛かる会社に」とのことだが、競合状況は
液晶のシェアが70~95%ぐらいだ。国内では装置が3つある。シール・ディスペンサーと、液晶を塗布するもの、貼り合わせるものがある。貼り合わせる装置は国内メーカーの信越エンジニアリングがある。我々のシェアは90%を超えている。ディスペンサー関連では武蔵エンジニアリングという会社が手掛けているが、最近はあまり入札に参加していないようだ。

1番に声が掛かって1番に対応していくことを繰り返してきたので、そのようになってきたのだと思う。

―2019年6月期に中国の大型案件があり、その後の2期でコロナ禍の影響があったが、コロナ禍以前の業績に回復する見通しは
少なくとも2026年6月期ぐらいまでには何とかしたいと思っている。今、発表していないがそのぐらいまでには何とかしたい。

―半導体市場の当面の行く末をどう見るか
我々は半導体のなかでは、後ろ工程であるパッケージングを担う。今、パッケージの業界では、顧客に聞くと「パッケージが足りない」と工場を新設してこれからも増強していくという。多分それを2023年ぐらいまではやっていくのだろう。顧客との間では今年から来年にかけての話を進めており、2023年ぐらいまでは続くのではないか。

―「はんだボールマウント装置」について3つ聞きたい。半導体の微細化が限界に近付いていると言われているなかで、マウント装置はどのように貢献しているのか
単純に言えば、半導体チップの微細化が進むと、電気をその下部に送る足(の部分)も多くなり、そのピッチが狭くなる。そうするとはんだボールも小さくなる。最も新しいものでは、45ミクロンのボールを2センチ角に1万5000個ほど搭載する。穴の開いたステンレスのマスクのようなところからボールを落とす。

次の段階になると30ミクロンになる。上の半導体が小さくなるほど下につなぐ足も小さくなる。それに対応したボールを搭載する設備を作っていく。

―装置のシェアは
非常に難しい。パッケージ基盤を作っているイビデンと新光電気工業が自前で手掛けており、他社は我々の装置を買っている。シェアは分からず入札時の勝率しか分からない。勝率は60%だ。実際のマーケットのボリュームがどのぐらいかは分かっていない。

―装置のライバル企業は
日本のメーカーでは、長野県のアスリートFAという非上場の会社と石川県の澁谷工業だ。先進パッケージと呼ばれるピッチの細かいものは、日本の3つのメーカーで戦っている。ピッチが粗いものになると現地のローカルメーカ―も出てくる。

―この装置はどのような状況で需要が増えるのか
パッケージの需要が増えれば増えていく。また、ピッチが細かいものなど新しいものを作る場合にも設備が増える。現状は忙しいから量が増えている。一方では次の製品を計画している。そのような形でどんどん売っていく。

―現状の大きさのものは2023年までは需要が見えているのか
2023年までははっきり見えていないが、少なくとも2022年の姿は見えている。ただ、顧客の計画からすると2023年も当然ある。建屋を建てたりしているので、間違いなくやっていけるのではないか

―売上高数百億円で利益率40%になるのは何年後か
少なくとも5年先ぐらいというイメージだ。インクジェットに関しては、試作量産機を顧客に導入している。これから量産が始まると、システムなので金額的にも高く、この成長イメージで十分いける。

現在、試作機に対するノウハウの吸収のために、顧客と協業したり先行投資的なことをしている。次の量産に進んだ時にはいけるだろうと見ている。我々の領域に近いディスプレイや車載用LiDARセンサーを中心に進めている。

プロセス開発センターを設立しており、ワンストップで量産・開発ができる。単品の材料だけとかプレス機だけではなく、最終的にはサンプルまで作れる。液晶の設備で、貼り合わせる設備やインクジェット、バンプの設備を持っていることで、社内でLiDARセンサーのサンプルを作ることができる。医療用に関してもインクジェットで塗布して乾燥し、顧客に送る。こうして顧客の間口を広げている。ここにも人を投入して顧客対応している。

フラッグシップメーカーに量産機を入れることが、このような事業の最も重要なところだ。そこに入ってつかんで離さず横に広げていくことを、それぞれのアイテムでできれば十分実現できる。

―人材獲得策は
我々は半導体設備を手掛けるが、チップの細かいことをやっているわけではなく、少なくとも設計のセンスがあれば、これまでのノウハウがあればできると思っている。今までは非上場であったことで目的に合っていない人材もあったが、最近は申込人数も多くなってそれなりの人材も増えてきている。新規採用だけでなく中途採用も含めてどんどん採用していこうと思っている。

―営業キャッシュフローがマイナスで、目論見書でも課題として認識しており、回収を早めたいとの記述があるが、具体的な方策は
村上克宏CFO:既にかなり改善し、キャッシュフローは黒字化している。以前は中国の大型案件などが続いた関係で、どうしても回収に長期間を要していたが、その状況は変わってきた。

通常通り、ある程度の仕事を始めると前金を受け取り、船積みをすると残りの代金のかなりの部分が入ってくるというサイクルに戻ってきている。その点は近々発表する資料を見て確認してもらいたい。

―ROEの考え方は
具体的な数字は、今決めて目標値として掲げているわけではない。各事業のバランスを取りながら、できるだけ収益体質を強化したい。そのなかで結果として改善していきたい。今後、そういった数値を中長期計画も含めて固めて示せるようになれば、それはまた説明したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]