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上場会見:NE<441A>、EC成長のエンジン

4日、NE(エヌイー)が東証グロース市場に上場した。公開価格と同額の750円を付け、706円で引けた。比護則良CEOと冨山幸弘CFOが東証で上場会見を行った。

ネクストエンジンは国内ECバックヤードにおけるデファクトスタンダードとして確たるポジションを築いていると話す比護CEO

―初値の感想は
比護CEO:けっこう楽観的に考えていて、もう少し評価されても良いと思っていた。ただ、スピンオフという独特な流れのなかで、売りが少し先行したと見ており、ここからきちんと価値を伝えてしっかりと上げていければ良い。

―過去のスピンオフ上場では株価形成リスクがあったようだ。そうした点を踏まえてもスピンオフで出た決定的な理由は
当時の経営陣と意思決定したタイミングは、コシダカホールディングス<2157>がカーブスホールディングス<7085>のスピンオフ上場を申請したタイミングで、結論が出ていなかった。

税制面での改善などがなされて、「そのような手段がある」という状態からのスタートだった。検討を始めて決定し、進めてきた期間は6年ぐらいで、そのなかで事例が何個か出てきたので、結論に左右されずに進んできた。

スピンオフを選んだ背景には、小売をメインにしているHamee<3134>と、システムをメインにする当社の間での最適化を図れなくなってきていた事実がある。例えば、エンジニアが中心の会社と営業が中心の会社、そのなかで会社の制度や仕組みを変えることはなかなか難しい。まずそれをどう改善していくか経営陣で話し合った。

その過程で、成長のための意思決定をいかに早くして、ダイナミックに経営するかを考えた時に、スピンオフが最適で、かつ、分かれたとしても株主の価値の総和を大きくしていけるだろうと当時の経営陣で結論を出した。

―Hameeからの独立に伴うリスクはあるのか
かなり前からあまりなく、契約者数2000~3000社の頃はEC事業で先行しているHameeの運用がシステム開発に影響を与えていた。かつ、Hameeの主業であるコマースに影響を与えないシステムを作ることで伸びてきた。

ただ、5000社を超えて6500 社になると、1社だけにではなく汎用的なシステムを作っていかなければならない。近過ぎるとシステムに影響を与えてしまうので、(Hameeにも)1ユーザーとして利用してもらったほうが、汎用性や利便性が上がっていく。

―機関投資家はプロダクトが完成していると評価していたが、競合の認識は
外販から17 年続いているサービスなので、SaaSとして一定程度成熟しているのは間違いない。競合他社は、上場企業ではアイル<3854>の「CROSS MALL」、非上場企業では、アクアリーフの「助ネコ」、最近ではGoQSystem辺りが、よく聞くサービスだが、契約者数をオープンにしている会社はあまり多くない。我々が聞いている限りの情報では、多くて2000社程度で次点の契約者数と見ている。4~5年前と比べると、競合として比較される話を聞く機会がめっきり減っており、当社が市場シェアとブランド認知をかなり取りつつある。

―競合優位性は
API の公開などを先行してできていた部分もあるが、ネクストエンジンを中心に EC に関する様々なサービスが接続・連携されている。EC事業者が成長を検討する段階で必要なサービスとの接続が容易で、パートナーエコシステムを盤石に構築できていることが最も支持されるポイントだろう。

―ネクストエンジンユーザーのARPU(Average Revenue Per User)向上戦略としての「ネクストエンジン・オーダーメイド」にはいつ頃から取り組んでおり、どのようなターゲットにどういう価値をできるのか
概要を説明すると、ネクストエンジンは既にブラットフォーム化し、外部向けに API(Application Programming Interface)を公開している。そのため、API と接続しながら、ネクストエンジンのデータを活用し、独自にカスタマイズして切り出したアプリケーションを作り出せる。各社が持つ独自の基幹システムなどと容易に接続ができるものを受託型で開発する。

私が入社した2015年頃に立ち上げたサービスで、当時は私が1人で行っておりリソースの面で難しく、訴求を一旦弱めていた。前期から改めて強め、足元では顧客をきちんと獲得でき、ユーザーの定着にも貢献している。

―利用企業数は
企業数ではなく規模で言えば、 数百万円ぐらいの受託費用から数千万円までを当社でディレクションして、外部の開発パートナーを巻き込みながら提供している。

―総売上高の75%を占めるネクストエンジン事業の売上は、ストック収入のほかに受託開発などショットの売上を含むのか
大半はストックだが。売上にはオーダーメイドの部分も含む。

―その比率はどの程度か
冨山CFO:ストック型が圧倒的に大きいが、前期では3000万円弱ぐらいだった。

―長期的には海外も視野に入れるそうだが、日本企業の海外モール進出をサポートするのか
比護CEO:クロスボーダーで日本企業の支援と、海外企業を日本で支援する両方を考えていきたい。今、リテールの事業を自社で始めている。Hameeのような小売メインの会社ではないので、プロダクトやサービスをきちんと拡大するための切り口としている。システムで裏側を支えられるシステムを作りながら、クロスボーダー展開を支援したい。

―対象とするエリアは決まっているのか
明確にどこと決めているわけではないが、現状からするといきなりアメリカに攻めていくわけにはいかないので、東南アジアや中国、韓国に進んでいく確率が高い。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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