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上場会見:レオス・キャピタルワークス<7330>の藤野会長兼社長、運用の特色は薄れず

25日、レオス・キャピタルワークスが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1300円を33.08%上回る1730円を付け、1699円で引けた。「ひふみ」ブランドで投資信託の設定、運用と販売、投資一任契約に基づく投資顧問業務を手掛ける。2018年12月に上場予定だったが、条件決定後、「コーポレート・ガバナンスと内部管理体制の有効性について投資家保護の観点から深掘りすべき事項が発生した」として、IPOを中止していた。藤野英人会長兼社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

世界株投資に関しても日本でトップクラスとなり、海外企業の最先端の情報が集まってくると話す藤野会長兼社長
世界株投資に関しても日本でトップクラスとなり、海外企業のIRによって最先端の情報が集まってくると話す藤野会長兼社長

―初値が公開価格を30%上回った受け止めは
株価はマーケットが決めることなので、どうこう言うことではない。ただ、IPO初値予想会社の予想を大きく上回ったことは、個人的に嬉しい。

―2018年のIPOのローンチから今回までに変わったことは何か
前回に残高が急拡大した。その大きな理由は、2017年に「カンブリア宮殿」に取り上げられたことで、2000億円の運用残高が8000億円超に1年以上の間で急激に伸び成長た。このことで成長企業としてIPOができる条件が整った。

一方で何があったかだが、人数が非常に少なく、採用を急にできるわけではないなかで、私も湯浅光裕副社長も皆で、徹夜で口座開設作業をしていた。そのなかで非常に細かい事務ミスが起きた。例えば、住所を間違えて送付する、押印の確認を忘れたなど、もちろんこれは非常に大事なことだ。そのような事の件数が非常に飛躍的に(多く)生じた。「これ、ちゃんと対策しないと駄目だよね」と、上場を一度延期・中止して、コンプライアンスや業務の人の拡大に務めた。決算数字を見てもらうと2019~2021年頃まで減益が続くが、業務やIT、コンプライアンスの人を強化した。

今は弁護士が3人いる体制になって、非常に強力なコンプライアンスになった。かつ、業務や計数管理の人員などに経営資源を投入した。それが、2021年頃にほぼ終わって再度挑戦しようと今に至った。変わったところは、会社としての底力が格段に大きくなったと言えるのではないか。

―運用会社の上場に関して、利益相反を指摘されることもあるだろうが、どうか
運用会社の上場は、よく言われるしロードショーの時にも言われたが、例えば、野村アセットマネジメントは非上場企業だろうか。日興アセットマネジメントは非上場企業だろうか。上場企業のグループ企業なので、日本で運用会社の大手で上場企業や上場企業の子会社でない会社はない。利益相反はある。野村アセットにないわけがない。

その質問はいつもされるが、不適当であると思っている。一方で、レオス・キャピタルワークスはインフラ企業だと思っているので、「投信を生み出すインフラ企業に投資してください」ということになる。インフラ企業としての投資会社に興味のある人は是非株主になってもらいたい。これが我々の考えだ。幅広い人たちに投資をしてもらいたいのは、国民ファンドとして、インフラ企業として、レオスを支えてもらいたい(からだ)。

―佐々木靖人シニア・ファンドマネージャーに代わって藤野会長兼社長が運用責任者に復帰した。どのような経緯で変更したのか。今後については
上場するので、権限移譲も非常に重要になってくる。その事も念頭にあって昨年の4月に私が一回退いた。それまで、私は会長兼社長兼最高投資責任者(CIO)兼シニア・ファンドマネージャーだったので「高校野球みたいだね」となった。これは、プロの会社になる、プロ野球のようになっていくことになれば、どんどん切り離す必要がある。今はもう切り離すつもりでいる。

ただ、いくつか不幸な材料があり、それは自分が予想していたわけではなかった。元々昨年の4月にバトンタッチする予定だったが、ウクライナ戦争が始まり、物価の高騰、インフレがあって、米国の金利が上昇した。それはマーケット環境にとって非常に不安定な状態である。

佐々木マネージャーにバトンタッチして、インデックスに対してもあまり勝てなかったというのもあるが、そもそもマーケットそのものが良くなかった。渡すタイミングがあまり良くなかった。我々は顔を出しているので、下がっていると顧客は当然怒る。怒るといろいろなところで書き込みをする。そうすると、「佐々木死ね」みたいなことが毎日普通に書かれる。私も毎日のように「死ね」とか書かれるが、慣れているので「藤野死ね」と書かれても、「おはよう」ぐらいの感じ、「元気あるね」みたいな感じで受け止める。だが、その域に達しないので、やはりメンタルがやられる。本当に頑張ってくれたが、マーケットが落ち着くまで退いて、「私がまたハンドルを握るから助手席に代わってね」と対応した。

このことはもちろん、主幹事証券や東証にも事前に話をして、上場前に変えるのはイメージが非常に良くないという雰囲気がある。ただ、逆に、顧客にとってあまり良くない状態を知りながら、上場が終わってからそれをやろうということは極めて不誠実だと思った。東証に話をして、「そういう事情があるから一回僕がやります。でもこれは顧客のためになることだし、一回落ち着けて、また機会を見つけて変更することにします」と話したら、「それはむしろ真っ当な対応ではないか」というので、そのような決断をした。

今後、どの時期まで私がやるか今は明言できない。だが、これから上場企業としてIRもして成長にコミットメントするので、そのなかで投資もしている状態は、あまり好ましくない。どこかのタイミングでまた手放すことを考えている。

―運用資産残高が拡大することで、レオス・キャピタルワークスらしい特色のある運用が薄れていくのではないかと投資家が懸念しているが
それは全く感じたことはない。どちらかと言えば、近年、我々のパフォーマンスがそれほど良くないのは、中小型・成長株の比率が高かったからだ。この1~2年間ぐらいは、どちらかと言うと大型株・バリュー株の相場で、我々は成長株の中心のポートフォリオだったため、あまり成果が出なかった。元々持っているひふみの成長株を中心としているポートフォリオは、専門家が分析すると実は全く変わっていない。

ただ、マーケットがバリューや大型株に行って、銘柄の上位に大型株を配置することで、負け幅を減らそうとした。上位に大型株が出てきて、「どうも特色を失ったのではないか」ということだが、この1~2年負けていることが、我々の特色が逆説的に失われていない証拠になっている。

これは日本だけでの質問で、ロードショーで国内の投資家に同じ質問をされたが、海外の投資家から「大きすぎる」という質問をされたところはほぼなかった。なぜならば、1兆円のファンドは、世界的には、中型・中堅ぐらいのファンドで、5兆円や10~30兆円のファンドが世界にはたくさんあるからだ。

今の日本株で7000億円ぐらいの規模は大きいとは見ていない。ましてや、世界株は2000~3000億円ぐらいだが、世界的に見ると非常に小さいファンドなので、残高的には特に大きな問題はないだろう。

―SBIホールディングスの資本参加の効果として、ITなどに関する情報を取り入れられるようになったとのことだ。新NISA対応の文脈で、システムのUI/UX改善に調達資金を充てていくそうだが、そういった影響もあったのか
我々には我々のブランドがあるが、SBIHDは、(システム開発の)ベンダーをたくさん知っている。かつ大量に発注しているので、一緒にベンダーに依頼すると比較的安くなる、あるいは対応が良くなるのが大きい。SBIグループに入っているなかで一番大きいところは、最強のe証券のノウハウを持っている点だ。

また、新NISA対応のシステム(改修)にはSBIHDも取り組まなければならないので、その時に「どんな事が大事か、どのようなチェックが必要か」となるので、それはポジティブな効果がある。

―ニューヨーク拠点増強の狙いは
我々は海外株がすごく大事になってくるので、その調査では、ChatGPTなどがこれから出てくると、ネット上の情報は誰でも取れるようになってくる。リアルでコミュニケーションをできるかが大事になってくる。ChatGPTを見てもっと早く進めなければならないと思った。ニュースソースのバリューといった面で、むしろ飲み会や対面が重要になってくるので、そこを頑張ろうと考えている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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