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上場会見:ハンモック<173A>の若山社長、自由な製品開発

ハンモックが11日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の2060円を4.85%上回る2160円を付け、2101円で引けた。企業のPCやネットワークなどIT資産の管理や、運用管理サービスの「Asset View」を提供するネットワークセキュリティ事業のほか、名刺管理・営業支援ツールの「ホットプロファイル」(セールスDX事業)などを開発する。受注伝票などの文字をAI-OCRでデータ化する「AIデータエントリーソリューション」も手掛ける。若山大典社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

社名の由来は、ハンモックでゆらゆらくつろげるような快適なシステムを全ての顧客に提供したいというもの。若山社長はDXを進めたいが多くの資金を投資できない中堅企業の受け皿になれる商品構成を強めたいと話した

―初値が2160円だったことについての感想は
その価格が付いたことについては、非常に真摯に、身が引き締まる思いだ。発行の規模が30億円程度で「中規模」と呼ばれており、それに対する反応だったのではないか。

―今年で創業30周年だが、この時期に上場したのはそれに合わせようとしたのか、偶然か
2020年3月期に売上高が30億円の大台に乗り、安定した利益を計上してきた。上場に耐え得る経営基盤を十分に作れる体制になり、このタイミングで上場した。

―上場の目的は
優秀な人材の登用と社会からの信頼性の確保だ。未上場の時に営業をしていて、競合他社との比較になる。上場会社の商品だからと(他社製品が)選ばれてしまうケースもあった。

―公募株式が5万株、売出株式がオーバーアロットメントも含めて147万株程度だが、このバランスについて。公募株数が少ないという意見もあるが
冨來美穂子CFO:最低限の5万株を公募している。当社の財務諸表を見てもらうと分かる通り、キャッシュがかなりある状況だ。新規上場のタイミングで資金を調達するニーズがあまりなかった。売出が多いのは、同族の株主が多く、東証からの指導で、一定程度の割合に減らすようにとのことだった。今後、開発投資が必要になったタイミングで、資金調達できればと考えている。

―導入企業は何社程度か
若山社長:2024年1月の段階で、ネットワークソリューションが1901社、セールスDXが1185社で、AIデータエントリーソリューションは211社だ。Asset Viewは安定して顧客数を伸ばしているが、特にセールスDXの顧客の伸びが大きい。AIデータエントリーについては、「WOZE」というクラウドサービスでデータ入力を請け負うことで、新しい業界に進出しようとし始めたところだ。今後さらに伸ばしていけるのではないかと見込んでいる。

―いつまでに何社ぐらいという数値目標は
社数ではなく売上で立てている。

―利用は東京の顧客が中心なのか
全国津々浦々で利用されている。

―海外は
当社の商品は、パソコンの運用管理をする商品だ。例えば、パナソニックやイビデンといった大手の顧客の、何万台とある端末を当社のAsset Viewがセキュリティ対策まで管理している。世界にある工場にも、グローバル対応した当社のシステムが入っている。今は積極的に取り組んではいないが、海外から問い合わせをもらうケースが出てきている。

―足元の課題と解決策やビジョンのようなものは
提案型営業で顧客ニーズを捉え、製品を他社製品とAPI連携せずに自由に自社開発する“ハンモックサイクル”で、市場の要求を数多く把握している。競合他社がアプローチできないような機能を効率的に作っていくことが重要だ。製品開発を迅速に行える体制をさらに強化する必要がある。

製品体制の強化を様々な形で行っている。例えば、OCRや商品設計、品質管理の強化など、「この商品を作ろう」というものがいくつも上がっているが、それを迅速に出せる体制をいかに構築して強化できるかが非常に重要だ。採用についても、開発メンバー採用が半分を占めているので、製品開発・提供体制を着実に構築していきたい。

―他社製品とのAPI連携はしていないそうだが、長期的に見ても確固たる方針として、自分たちでやっていくのか
ユーザーが求める時にはAPIの連携は一部行っている。積極的には提案していない。

他の会社同士の制約を受けずに自由な製品開発ができる。他のベンダーでは連携をしてPRしている部分も多いので、その分野で製品を開発すると制約を受けるケースがあると思う。当社の場合は自社開発で対応でき、制約を受けない製品開発ができるのがポイントだ。そういったことから製品をさらに幅広く出していくことができる。

―AIデータエントリーソリューション事業の、ネットワークソリューションやセールスDXとのシナジーは
現状、営業組織と製品開発部門、カスタマーサクセス部門は事業部ごとに置いている。今までは各事業部の営業部門がその商品だけを売って、その顧客同士でのクロスセルを積極的に行ってこなかった。今後は、クロスセルをさらに強化して展開していく必要がある。今後、そういった活動の計画を検討しており、各事業部で持っている顧客同士のシナジーを積極的に産む活動をしたい。

―全てのサービスをクラウド化していくことについて、コストは膨張するのか
クラウドシフトしたことで、付帯製品開発に対する大きなコストが発生する状況ではない。あまり大きな開発をせずにクラウド化できている。

冨來CFO:新製品を出し続けており、クラウド化することで開発投資が急激に増えることはない。

―調達資金の使途は
若山社長:成長している状況で、優秀な人材を確保したい。さらに、従業員の皆に、さらに教育などを実施して人材を育成し、成長に対応できるようにしたい。

―具体的にどのような人材か
今年度の人材の採用数が30人程度で、離職率が今年は1ケタ台だ。人材の流出が少なく、さらに30人規模を採用する。新卒を増やしており、プロパー社員を強化していきたい。割合としては、新卒と中途が半数ずつで考えている。

―職種はエンジニアか
エンジニアは新卒も中途も採用している。33人のうち開発が50%、営業が30%、カスタマーサクセスが10%だ。

冨來CFO:現在は中途の割合が多いので、徐々に新卒も増やしたい。。

―製品開発には(資金を)充てるのか
若山社長:製品開発にも利用する。

―新製品は具体的に決まっているのか
いくつかの製品を開発中だ。

冨來CFO:公募は5万株で調達額がそこまで多くないので、大半が人材に消え、残りは新製品や新機能の開発投資に回す。

―新製品の開発について、具体的に市場にどういったニーズがあって、こういった製品開発していきたい、こういった分野にも製品の裾野を広げたいというものは
若山社長:ネットワークソリューションに関しては、Asset Viewから「Asset View Cloud+」にリブランディングしている。上期中にクラウドの新機能をリリースする予定だ。それによってクラウド比率を高めたい。

今一番伸びているセールスDXの「ホットプロファイル」だが、今度は営業業務にさらに特化した新製品を開発しようとしており、近日中にリリースする。今までは名刺管理など一般の営業業務にフィットした商品だったが、営業にはいろいろな業務がある。それに特化した製品群になる。

―株主還元の方針について
今年の配当の予測は、配当性向が21%で、今後もこの水準を維持して株主へ還元したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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