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上場会見:ナルネットコミュニケーションズ<5870>の鈴木社長、「モビノワ」でつなげる

25日、ナルネットコミュニケーションズが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1040円を8.08%下回る956円を付け、900円で引けた。オートリース会社を主要取引先とし、法人が保有するリース車両のメンテナンスを受託管理する。提携する整備工場は全国約1万1500社。BPOやマイカーリースサポートなども行う。本社は愛知県春日井市で、1978年7月設立の日本オートリースが前身。2019年7月に創業家の持ち分を譲渡する形でジャフコグループに買収された。鈴木隆志社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

メンテナンス受託を含む3事業全てがストック型のビジネスモデルで、収益の安定性が高いと話す鈴木社長
メンテナンス受託を含む3事業全てがストック型のビジネスモデルで、収益の安定性が高いと話す鈴木社長

―初値の感想は
真摯に受け止め、我々の次の伸びしろをこれからきちんと皆に認めてもらう。我々を理解してもらうのに、もう少し時間をかけたかったのもあり、これから取り組みを見て、それを認めてもらえれば株価にも反映されるのではないか。良い勉強になり、これから頑張りたい。

―調達資金は基幹プラットフォームの開発に集中投資するのか
大きく投資する部分は少ない。事業にあった基幹システムのパッケージがないので、早い段階から自社開発でここまで来た。投資する対象が少ないので、きちんと配当などで株主にも応えていきたい。

―人材に不足はないのか
所在地は愛知県春日井市だが、パート社員が非常に戦力になっている。名古屋市のベッドタウンなので、採用が非常に安定している。パート従業員が働きやすい環境や提案をしている。勤務時間や、ライフワークに応じて仕事とほかのことのバランスをどう取るか自由に選べるようなにしており、危惧はしていない。

開発システムに関しては、自社内で専門職を取りにくい。どこも同じだろうが、それで上場する面もある。今までは自動車リース会社のバックヤードとして動くことが多く、我々の名前はなかなか出ていなかった。

自動車リース以外の自動車全般のBPOも広げていき、リース以外の会社とも付き合いが始まっているので、上場して認知してもらい、期待してもらうことが、上場の大きな目的でもある。今日それが一旦叶った。努力して、もっと認知してもらいたい。

―主婦の活用について。具体的にはデータ入力か
データ入力と、問い合わせがあるので電話でのコミュニケーションも多い。その結果もコンピューターに全部テキストで入れる。整備やアフターマーケットのディティール、ただ単に何をどこで、いくらで修理したというデータだけでなく、そこで何が起こったのか、どういう人がどういう思いで依頼したのかを入力することで、後から確認もできる。

それを後のケースに活かしていくので、アナログで対応する部分が多い。もう1点は、車の使用は千差万別で、要望が多岐にわたる。システムを最初から組むことが難しいので、まずパート従業員に手作業でやってもらう。そこからある程度軌道に乗ったところでシステム化、仕組み化して商品化していくことができ、それが大きな強みになっている。

―EVやコネクテッドカーの話が出てくると、現在ネットワーク化している全ての整備工場はすぐに対応できるのか。ある程度時間を受けて徐々に対応していくのか
我々が協力を受けている1万1千数百社強の整備工場に数年前からアンケートを取っており、すぐに転換することは難しいと見ている。45周年の周年事業として「モビノワ」というオウンドメディアを始めた。

アンケートの意見から、「やる気はあるが、情報をどのように取ったら良いのか」、「技術面がいまいち理解できない」というものが多かった。そのため、そういった情報を発信して、いろいろな問い合わせを受け、メーカーにも協力してもらいながら、整備に関する講習会を開いた。そこから意見を募って、もっと良い形で理解してもらえるようにサポートを始めた。

さらに、今月に入ってから、1万1000社以外の工場にもアンケートを取っている。我々の役割としては、変化に対して皆に情報提供しながら、一緒に取り組んでいきたい。徐々にしっかり作っていくことを大切にしたい。

―過渡期の状態にあることで、ナルネットコミュニケーションズの業績に影響はあるのか
基本的にマイナス要因はなく、プラス要因にはなると想定している。これまで体験してきたなかではハイブリッド化が一番大きかった。それ以前の整備と比べて、整備の発生や費用のかかり方が変わってきた。

さまざまな変化はあるにしても、そこにある整備に関わる人たちの考え方や、流れ、仕組みについて分析しながら対応することが大事と考えている。我々の役割が増していくことが多くなると見ている。

ハイブリッド化によって、整備工場や民間の専業モータースで、診断しにくくなっている。点検に特化して、故障の場合はディーラーと連携して修理する流れに変わってきている。そういったところで、専業からの回送が生じ、行程が1つ増える。

ディーラーの待ち・空きも出て、作業時間が長くなる問題が出てきている。解決のために、我々も販売店や専業のモータースと話しながら進めているので、その時々に我々が解決しなければならないことが増えると見ており、その意味ではプラスになる。

―物流マーケット課題ソリューションについて。トラックなど商用車向けだろうが、車両管理といえば競合によるシステムがありそうだ。どのようなものなのか
今のターゲットは大きく2つだ。ラストワンマイルで使う軽自動車と、大きな運送会社が使うトラックに分けている。車両も使い方も全然違う。

ラストワンマイルの軽自動車に関しては、使い方が非常にシビアだ。ストップ・アンド・ゴーと言われるが、止まったり走ったりが多い。小口配送なので、それによって故障率が大きく変わってくる。そこに関わる人たちは他業界と違い個人事業主が多いので、整備の管理や環境の作り方は一般の法人と比べると少し違う。

車の整備をする環境を整えながら、我々のデータに基づいて最適な提案を、CBcloudと一緒に、運送関係のマッチングも含めて、きちんとしている会社と手を組み、個人事業主の困り事もしっかり捉えた上で、提案をしていくのが他社とは違う。そこを適正に解決しなければ。整備環境を整えて、安心・安全に車を使い続けてもらうことができないので、そこを一生懸命進めている。

トラックに関しては、運送を止めない、車が壊れないようにすることを考えると余剰車が多いといった部分をいかに最適化できるか。そういったことを皆と話をして取り組んでいる。ただ、課題が大きいので、整備の観点から分析をして意見交換をしながら、議論を進めている最中だ。我々としては、これはまた違う形で関わっていきたい。

―業績への影響はいつ頃からか
CBcloudとの協業についてはテスト販売などを進めていて、来年度以降影響が出てくると想定している。物流問題は2024年から始まるが、数年かかる課題として想定している。
東村大介取締役:CBcloudの取り組みについては、軽自動車用のメンテパックは今年から販売している。販売が本格化するのは来年で、具体的に進んでいる。
鈴木社長:CBcloudがドライバーの地位と効率を上げることで、事業主の収入を上げていく考えで進めているので、我々は賛同して取り組んでいる。軽自動車はシビアな使い方をしており修理箇所が増えるため、請ける修理工場があまりない。賛同する修理工場も増やすという地道な作業もしながら進めていくので、来年度以降と考えている。

―エネルギー商社が中心となって車両メンテ管理専門の業界共通プラットフォームの本格導入が進行した場合や、有利子負債に関する金利上昇などをリスクと見ているが、競争力をどう維持していくか。別の事業などで拡大するのか
自動車リース会社業界のプラットフォームの件については、少なからず影響が出てくると理解しながら、「モビノワ」を始めたのは、修理工場と違う形でつながっておく必要があるということからだった。

必要があればプラットフォームに参加しようと思っている。一方、我々は管理会社としてのスタンスからできることをきちんと作っていくことがリスクへの対策だと考えている。そういった意味で、「モビノワ」を成長させていく。

自動車リース業界のプラットフォームは法人向けが主になる想定で、個人リース市場とは全く関係ない市場になりそうな気配だ。我々は個人リースの領域で積極的に台数を増やしていて、台数比率でも同等ぐらいになっている。個人向けも増やしてリスクを回避している。

今までは、車を使う人たち、もしくは自動車リースなど複数の提供の仕方があった。これからの成長のエンジンは、それに加えて、整備に関わる人たちやアフターマーケットの関係者とつながって役割を見いだしていく。

そこがリスク対策にもなると思う。新しい整備工場のネットワークをどれだけ作っていけるかに力を入れている。ベースとして法人向けもきちんと伸ばしていく。次の一手として、EV化もあり、物流でもそれに合ったネットワークが必要になる。そういった整備をするネットワークを構築しなければならない。

―個人向けカーリース市場の成長性は
都内に住んでいる人は車を所有すること自体が少なくなっているので、マイカーリースに接する機会は少ないだろうが、都市部以外では車での移動が多い。マイカーリースが伸びている車種は軽自動車が主体だ。都心部以外では、1家庭で複数台の車を持つケースが多い。

メインになるような、価値の高い車、ワンボックスや高級な乗用車は所有意識が強い。軽自動車は買い物や通勤に使うという用途が明確で、かつ手軽だ。昨今、車全体の価格が上がっているので、リースを利用して月額単価や使用料を抑えるニーズが増えていて、市場も広がっている。今年度は58万2000台程度がリースだが、2025年度の予想では71万台まで増える。マイカーの市場は増えるだろうし、提供するプレーヤーが、増えている。

今までは信販系の会社が、代理店を通して拡販することが多かった。昨今はWEBで募集した車の提供も増えてきた。メンテナンスの管理までしっかり作り込むのは、時間・費用的にかなりかかるので、そういったところの支援が増えている。市場が広がり、メンテナンス管理の参入障壁はあるので、支援の機会は増えていくのではないか。

―年率10%の売上高成長だが、利益面はもう少しか
基本的にはそこを目指しているが、原価の動きを睨みながらという面もある。これまでの原価改定は5年に1回ぐらいしかしていなかったが、昨今は変動が激しいので、毎年に切り替えることによって、適切な料金を提示している。安定化してくると思うが、そこは少し堅く見ている。

―原価は整備工場に対する支払いか
大きく分けて作業の工賃と部品代がある。作業工賃も上がっているが、部品代が上がっている。特にタイヤ代が上がっているので、そこは今後、伊藤忠商事の力も借りながら原価に対応していきたい。タイヤが25%ぐらいのウェイトを占める。昨今、冬タイヤの需要が増えており、この1週間ほどは冷え込み、全国的に雪が降っているのでタイヤのコストがかかっている。

タイヤだけのコストではなくて、夏タイヤと冬タイヤを切り替えると、どちらかは保管する必要が生じる。そういった保管もあるので、トータルで効率を上げて、原価に対応したい。

―ジャフコグループがある程度の株を放出した。伊藤忠にも売却した。今後の関係は
伊藤忠に関しては、投資をしてもらった。我々はメンテナンスの管理やBPOサービスといった無形のサービスを提供してきた。我々としては今後物を動かす部品、特にタイヤはコストにも大きく影響しており、整備代金の原価の25%程度の割合を占めるので、そのようなところも一緒に取り組み、成長に大きく寄与すると思う。これから協議していきたい。

ジャフコは、事業承継で手伝ってもらい、上場まで一緒に取り組んできた。上場で一旦リセットなる。今後、一般の株主と同じようになると思うので、我々の日頃の経営を見ての市場での関係となるだろう。
東村取締役:ジャフコはファンドなのでいろいろとあると思うが、最近スタンスが変わって、上場したら終わりというよりも、ジャフコから卒業した会社の企業価値を上げることにも力を入れている。

コミュニケーションを取るなかで、今後も一緒に取り組んでいく部分は増えていくと考えている。出資を受けてから約4年が経ち、非常に良い関係を構築できたのではないか。ただ、上場で一旦区切り、今後は株主ではなくジャフコ卒業生として付き合っていく。

―これまでジャフコから人材を受け入れてきたのか
鈴木社長:あったが、上場の準備に入って解消し、今はない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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