4日、くすりの窓口が東証グロースに上場した。初値は公開価格の1700円を7.06%下回る1580円を付け、1610円で引けた。医療と患者をつなぐプラットフォームとしての「メディア事業」と、医薬品卸と薬局をつなぐ「みんなのお薬箱事業」、診療報酬明細書を作成するレセコンなどで医科や薬局・介護のデータを連携する「基幹システム事業」を展開。患者から調剤薬局、医療機関、介護施設までサービスを提供する。光通信が設立した会社が、光通信の子会社で予約サービスを扱うEPARKから薬局業種向けサービスを引き継ぎ、M&Aなどで事業を拡充してきた。堤幸治社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

―初値の受け止めは
想定とは少し違う形になったが、それも含めて、目先ではなく中長期で見ると正しい結果が出てくると思っているので、今取り組んでいることをやり続けて、結果を出していきたい。
―メディア事業の粗利が黒字化したタイミングも大きいだろうが、このタイミングで上場した背景や狙いは
患者のデータ量と、医療機関から得られるデータが年々増えていて、上場して知名度を上げて信用・信頼を勝ち取ることが大きかった。加えて、優秀な人材の確保もある。
―参入障壁の認識はどうか
メディア事業では、新規で患者を集めるポータルサイトを手掛ける会社がほぼ存在しないので、それがそもそもの障壁になるだろう。共同購入ではアップセルをしているが、今後は自動発注で、生産性を薬品卸に対しても良くしていく。それをきちんと形にしている会社はないので、それも障壁になる。基幹システムではきめ細かく対応し、ほかのシステムではその機能を使うことができないから導入は難しいというものを実直に作っていく。
―医薬品の共同仕入事業に関して聞きたい。競合他社が何社かあり、それらとどう差別化するのか
国内最大のシェアがあり、そこで出品している施設は、在庫管理ができていない部分があるので、きちんと管理してアップセルがうまくいっている。また、自動発注の仕組みを広げるほど業界全体の流通改善ができていくので、そこをしっかりやり切って、中長期的に社会全体が良くなり、我々のインフラが生きる部分を強化して他社との差を出していきたい。
―共同購入や価格交渉の代行サービス全般に関して、国や業界卸からかなり圧力が強まっていて、国の行う関連会議でもたびたび槍玉に挙げられているところだが、今後どう対応していくのか
各卸売事業者や薬局から求められているものは、皆が困っていることを解決する部分と見ているので、いろいろな議論があるかもしれないが、我々としては困っている部分をしっかり解決していけば、購入に対する手数料などがいろいろあるが、料金のもらい方はどうでもいいと考えている。ただ、実際に全体として不合理な部分があるので、その合理化を進めていきたい。今はそのように料金を収受するが、今後もそうとは限らない。
―3事業のシナジーは現時点でもそれなりにあるだろうが、今後、データがさらに蓄積していくと、どのような形の事業を展開できるのか
かなりいろいろな提供の仕方があり、セグメントごとに、例えば調剤薬局でも、皮膚科の前と眼科の前では、使う機能が変わってくるので、セグメントに合わせた機能を作って、広げている。
―シナジーはより緊密になるのか
その通りだ。
―医療情報システムの市場環境は今後どう変化していくのか。
受け取り方の多様化はかなり出てくると読んでおり、セブン-イレブンとの実証実験などを進めている。患者から見た時に、くすりの窓口を使えば、簡単・便利に受け取れるという環境を作っていきたい。来年には保険証が全てマイナンバーカードに変わる話も出ているので、個人のPHR(Personal Health Record)管理では非常に追い風で、そういったところにもっと力を入れたい。
―オンライン診療を含め診察方法の多様化に伴い薬の受け取り方も増えるだろうが、どう対応していくのか
受け取り方の多様化は、我々が加盟店に勧めて取り組んでもらっているので、患者の声を聞いて今までになかったような受け渡し方があれば作っていきたい。受け取り用のロッカーもどんどん作っている。
―今後契約する調剤薬局を増やす際に、エリアや規模で、どういうところを重点的に増やしていくのか
メディアの加盟店舗数では、くすりの窓口のポータルサイトがあり、そこで、どのくらいの地域にどのくらいのアクセスがあるか見ているので、多いところを積極的に開拓してきた。できているところもそうでないところもあるので、継続しながら患者のニーズが高そうなところをデータで読んで開拓していく。
―新規事業は具体的にどんなものを想定しているのか
今は実験的に、健康保険組合向けの新規サービスとして取り組みをスタートしている。通常では特定保健指導は家に通知が届くだけで、それではなかなか進んでいない実態がある。我々は、患者が来局・来院した時に、その場で受けてもらう仕組みを始めた。特許の出願も下りている。
まだ実証実験で売り上げがあるわけではないが、我々ならではのやり方で貢献できることがあれば広げていきたい。事業化して伸びていく段階ではないが取り組んでいる。
―本格展開のメドは、
今期内にテストして、ある程度方向が定まってから事業化するか判断したい。
―上場後はどのような株主構成を想定しているのか
EPARKは、くすりの窓口もお薬手帳も同社の冠で提供しており、そこに縛りがあるわけではないが、約5000万人の会員がEPARKにいる。そこにプロモーションができる。EPARKは、元々くら寿司など飲食店向けで、待ち時間なく食事ができる環境を用意している。「待ち時間なく薬を受け取れる」という点で同じ客層があり、シナジーがあって今後もお互いに良い取引ができればと思う。
残りの株主は、ファンドなのでどこかのタイミングで(売却する)のもあるが、NBSEヘルステック投資事業有限責任組合は、田中伸明会長が関与しているので、相談をしながら、良いところと一緒になることなどを考えられれば良い。
―株主還元の方針は
2~3年後の配当を検討している。
―当初は設備投資などに充てるのか
そうだ。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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