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上場会見:SBIリーシングサービス<5834>の久保田社長、強い実物投資ニーズ

19日、SBIリーシングサービスが東証グロースに上場した。初値は公開価格の2980円を10.74%上回る3300円を付け、3220円で引けた。SBIマネープラザで2016年9月に開始したオペレーティング・リースファンド事業のファンド組成部門が独立して2017年4月に設立。航空機や船舶などを購入し、オペレーティング・リース形式で賃貸する。久保田光男社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

商品組成から販売までは3.8ヵ月ほどで、ローコストオペレーションと、SBIグループが持つ全国の販売網なども強みであると説明する久保田社長
商品組成から販売までは3.8ヵ月ほどで、ローコストオペレーションと、SBIグループが持つ全国の販売網なども強みであると説明する久保田社長

―初値が公開価格を10%上回ったことの受け止めは
当社への期待があり、本当に熱いものを感じている。株価の水準ではなく、上場メリットをフルに生かして成長を加速させたい。それが株主への最大の還元だと思うので、ここはきっちりと今後の戦略に生かしていきたい。

―設立5年目で上場した狙いは
野村系の航空機リース事業にずっとおり、SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長に声をかけてもらい、2年半前にこちらに来た。その時から上場をある程度視野に入れていた。

航空機・船舶を購入するに当たって、(資金調達は)全て銀行借り入れで行っている。クレジットが低い会社なので、調達コストがかなり高い。また、ある程度の枠しかないので、とにかく資金調達をスムーズに大きくやりたい。

そうであれば上場が当然に視野に入る。取引先の信頼は、やはり未上場と上場によって情報開示あるいはガバナンスの質が徹底的に違ってくるので、パートナーの地域金融機関や税理士、会計士、その裏にいる投資家に、ある程度安心した情報を提供していきたい。

3つ目が優秀な人材だ。少数精鋭という言葉をずっと使っている。入札も含めてビジネスモデルを、なぜ我々だけが大手エアライン、海運会社にベットできるかというと、粗利率が小さい一流クレジットのところ、他社と違って、我々はコストコントロールが非常に少ない。他社はコストの部分がかなりあるので、危ないものにいかざるを得ない。その差をずっと守っていきたいので、これまで以上にコストコントロールを意識しながら、ローコストオペレーションを貫きたい。

―野村バブコックアンドブラウンから移った理由は。野村でできなかったことで、こちらでできることがあったのか
他社の誹謗中傷になってしまうので言葉は選びたいが、やはりSBIグループの顧客本位という、株式の手数料に関しても業界では最安値に近い。では、株式の手数料最高値はどこかと言えば野村ではないか。手数料がそれを表していると思う。私自身がこの業界にずっといて、例えば株の材料は、今はネットで(得られ)、投資家と証券会社の間に情報格差がそれほどない。しかしリースに関しては、情報格差がかなりある。皆の知らないところで手数料をかなり抜くことができる。

こういった世界ではなく、この業界をオープンに公平に、我々は今仕込んだ値段まで顧客にオープンにしている。それぐらいこのマーケットをきちんと正したい。正してないところがあるとは言っていない。我々は先頭に立ってこの業界をオープンなマーケットにしたいという気持ちがありSBIに来た。

―経営理念の説明で業界がグレーであるという話をしたが、改善点は
初めて聞いたようなよく分からないLCC(Low-Cost Carrier)ばかり扱っているところ、それを販売した金融機関が非常に困っている、あるいは、「あそこのリース会社は説明がよくできない商品を持ってきているから出入り禁止だ」など、私自身そういったことをこの10年間ずっと聞いてきた。

そうではなく、安心・安全な商品ということを徹底させてほしい。だからこそ我々は、自分たちのロイヤリティを上げるためにも、一流のエアラインを使って安心・安全な商品を提供しようということでやっている。そういったことがベースになっている。

―実物資産への投資が加速するとのことだが、そう判断する背景や理由について
昨今の、地方銀行を中心にした仕組債への反省、あるいはビットコインの下落などデリバティブ商品への反省が、各金融機関で起きている。今、100を超える地域金融機関と取り引きしているが、地域金融機関から航空機・船舶を中心にした実物資産の商品を早く作ってくれという要請をだいぶ受けている。現在でも作れるノウハウはあるが、この環境と、我々のノウハウがまだ完全ではないことも含めて、もう少し時間をかけながらしっかりした商品を作りたい。

―足元のパートナー数が179社だが、伸びる余地があるのか
某F社は5000社で某J社が700社と、あちらのほうが多い。我々はパートナー数を今かなり絞っている。オペレーティング・リースは、他社は最低金額が1000万円以上から扱っているが、我々は最低募集金額を5000万円にしている。格差を付けているのは、無理してやる商品ではないということだ。

5000万円を最低10年は置かなければならないので、余裕資金のあるところで、かつ、その地域に根ざして雇用を守っている企業、そういったカテゴリーで顧客を選びたい。そういったところを持っているパートナーはかなり絞られる。生意気な言い方だが、顧客と100年間付き合いたいという気持ちが、このパートナー数に表れているので、減ることはないだろうが、どんどん増えることはない。

―地方創生に言及したが、どう貢献できるのか
例えば、地方で年間7%の収益を生む案件はビジネスとしてはなかなかない。今、北米の一流エアラインでJOL(Japanese Operating Lease)を作ると年間リース料が7%を超える。それが10年間固定できる。そういったものを使って、例えば、地方の優良企業だったものが、足元がなかなかきついなか、そういった商品を作って営業外収益で、彼らのベースを支えてあげたい。あげたいと言うと大変生意気だが、そのようなニーズがある。

―ファンドの代表的なスキームとして、JOLを任意組合方式で、JOLCO(Japanese Operating Lease with call option)では匿名組合方式を目論見書で紹介しているが、いずれも匿名組合方式を取るという話もある。JOLで任意組合方式を取る理由はどのようなものか
真鍋修平取締役:今使っているスキームとしては、米国の航空会社を中心としている。米国の場合は、飛行機の所有権を外国法人が直接持つことができないので、米国の信託を通して信託受益権を保有する形で飛行機を保有する。

この場合に、匿名組合では国内の様々な税務的なメリットを取れない。その関係でJOLという商品は顧客に賃貸事業を直接行ってもらう趣旨なので、そこをクリアするために任意組合を作って、その任意組合に出資してもらい、任意組合が当該信託受益権を保有する。実体的には航空機を保有したのと同じような形にする。

―関連して、JOLでは直接保有方式も取るとのことだが、一機買いをするのか
久保田社長:基本的には、一機買いでは、一機50億円や 80億円、100億円と金額が非常に張るので、借り入れをする投資家が大半となる。担保提供という意味では、直接保有に関してはやはり一機買いの投資家が前提ということになる。

―そうすると一機買いにも対応している
もちろんだ。

―米国のインフレや金利上昇で景気減速の懸念があるが影響は
もちろんある。しかしながらあえてここで言う。世界の航空機のリース料は、米国の長期金利がベースになって決まる。米国の長期金利はある意味最高値に近いところにあるかもしれない。我々からすればリースだと高い案件が取れるので、ここからの半年間は、ビジネスチャンスとして本当にものすごいタイミングで、為替の水準は関係ない。

ここで上場できて資金調達枠ができて、今から米国のエアラインを中心にしたリース料の高い案件を獲得できる。逆に、我々はここからの半年~1年が千載一遇のチャンスと思っている。

―投資家が税制改正リスクを心配していた
例えば、保険商品や、最近ではドローン、ビルの足場などにメスが入っている。現在、航空機や船舶に関しては税制改正の対象になっているとは聞き及んでいない。当然メスが入る可能性がある。そのために、運用商品としてのJOL、一昨年からデルタを8機販売した。

かなり好評を得て、償却が多少少なくても運用としての実物資産投資にニーズが非常にあることを確信している。現在、改正があった場合、我々以外でJOLを手掛けておらずJOLCOの商品に専念しているところは、ものすごいダメージを受けると見ている。我々は既にJOLを販売して組成できる立場になっているので、それほど影響はないのではないか。むしろ、そのほうが我々にとっては、圧倒的にシェアを取っていけるのではないか。

―取扱対象商品で、今後有望と見ているものは
昨今、巷ではトラックや、いろいろ商品が出回っているが、我々は最終的な回収率を考える。例えば、「船舶は今本当に大丈夫なのか、船価が高いし運賃も高い。今後下がってくるのではないか」と(の見方もあるが)、我々は船価がかなり下がったとしても、契約で手当てしている。何の不安もなく、航空機も船舶も良い状態で作れる。逆に言えば、今これをやらずに小口の保険商品や、他の商品を扱っているほうが何を考えているのかと思う。案件があり過ぎて忙しくてたまらないぐらいだ。だから他のことを一切考えていない。

ただ、将来的には、やはり北米に拠点を作り、いわゆるオフショア、外外(そとそと)での収益、大きなファンドと組んで大きな資金を活用して、例えば、デルタに20~30機リースする、あるいはデルタの中古機を30機買うなど、そういった外外も来年ぐらいからチャレンジしたい。ただし、商品的には航空機・船舶から逸脱することはない。

―業績の長期的な見通しを教えてほしい
今年度に関しては公表している。前期が経常利益で28億円に対して今期が38億円。全世界的に欧米を中心に長期金利がかなり上がって、航空機・船舶ともに自国でのファイナンスが非常にコスト高になっている。しかしながら、日本だけが先進国で金融緩和の状態なので、日本でファイナンスしたいという航空機・船舶会社がたくさんある。案件がかなり来ている。

―経常利益をKPIにする理由は
常に社員に言っていることで非常に僭越だが、従業員満足ナンバーワンと言っている。仕事に対するやりがい、それからワークライフバランスで、家庭とのバランスや、個人の充実、3つ目が報酬だ。やはり経常利益イコール報酬にダイレクトにつながる指標と考えている。従業員の報酬を、何とかそれなりのものにして優秀な人間をつなぎ止めると同時に、優秀な人間を集めることである程度の利益が、従業員の報酬のベースになるので、経常利益を挙げている。

―SBIHDとの親子上場になるが、今後の持分の比率や追加売り出しの可能性は
親子上場ということで我々自身も意識を非常に高めており、当然、少数株主や外国人株主に関しても、きちんとした説明責任を含めて不平等にならないように確認しながらいきたい。ただ、上場前が95.6%、上場しても60%をSBIHDが保有している。

これに関してはSBIHDのマネジメントと常にコンタクトを取っている。適正な持株比率に関しては私が決めることではなく、親が決めることではあるが、今後は少しずつ減らしていくであろうことはある程度推測できる。私が決めることではないので、もう少し時間をもらいたい。

―株主還元についての方針は
今まであまりにも成長が急過ぎて、資金需要が旺盛過ぎて配当は無配だった。今回、上場を機にわずか10円ではあるが、配当を出す。我々は根が証券マンなので、株主還元に関しては最大限重要なテーマで、ゆくゆくは事業モデルの成長性や安定性、自己資本比率などから、最大限の配慮をしていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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