株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:スローガン<9253>の伊藤社長、承継領域も視野に

25日、スローガンが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(1200円)を50%上回る1800円を付け、1522円で引けた。同社は、新卒学生向け就活プラットフォーム「Goodfind」を主に手掛ける。また、若手イノベーション人材向けビジネスメディア「FastGrow」と、入社後の組織課題を解決するSaaS型HRサービス「TeamUp」を展開する。伊藤豊社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

伊藤社長は、新卒生のベンチャー向け採用市場を粘り強く創ってきたと話した
伊藤社長は、新卒生のベンチャー向け採用市場を粘り強く創ってきたと話した

―初値が公開価格を上回ったが感想は
公開価格をしっかり上回ることは、投資家からの期待に応えるという意味では大事なことと思っているので、一旦ほっとしている。

―少子高齢化で、学生向けの市場全体が縮小しそうだが
大学生の数は1学年40~50万人と言われているが、我々の会員数は1学年2万人ほどだ。さらに、その2万人の学生のなかから、我々が介入して就職が決定し、マネタイズしているのは概算で500人。500人を10倍にしようとしても5000人だ。5000人を決定させていくうえでは、少子化で、40万人の大学生が20~30万人になったとしても、あまり影響はない。マス向けに40万人全部をマネタイズしているとすれば、少子化の影響を受けて伸びないということはあり得る。我々は、そのなかでもまだ小さい500人という規模でマネタイズしており、伸びしろがある。マクロの規模の減少に影響されない部分に取り組んでいる。

―東京大学や京都大学などを注力校に設定しているが、その学生を取り込む工夫は
東大や京大の学生は、放っておいても自分たちで就職できてしまうので、我々のようなプラットフォームを使ってもらうには工夫が必要だ。大学3年生の早い段階で、ハイレベルなセミナーを実施している。東大や京大のやる気のある学生たちは、特に外資の戦略コンサルファームなどに入りたがっており、そのコンサルファームの皆さんと一緒にGoodfindならではの企画を行っている。

例えば、あるコンサル会社とは、エントリーシートを免除するキャンペーンなどを行っている。Goodfindを使うとコンサルファームを受けるうえで有利だ、役に立つという企画を実施している。 ボストンコンサルティンググループのパートナーや戦略ファームの代表者に講演に来てもらい、セミナーを開いている。ハイレベルの就活生にも魅力的に映るようなコンテンツを継続的に企画し、提供している。また、選抜コミュニティで優秀なやる気のある学生同士がつながって、切磋琢磨しながら就活に臨む支援もしている。

―インターン卒業生のネットワークがあり、中小・中堅企業の承継ニーズにも取り組むようだが、イメージとしては、ネットワーク内の20~30歳代の経営人材のような人たちが、人材を必要としている企業で経営に当たるのか。どのようなビジネスを考えているのか
地方での経営・事業承継で、それまで中小企業として経営してきて、デジタル化や販路の拡大で、変革しようとしている2代目や3代目の経営者に変わった会社の採用を手伝うケースがある。そのような会社を手伝うことが、現在のビジネスの延長で既に始まっている。

将来的に、もう少し踏み込んで何かできるかもしれないと思っていることでは、サーチファンドの仕組みが海外にあり、日本でも少しずつ出てきている。サーチファンド的な動きをしようとした時に、「経営者をやってみたい」という人材プールは、まさにスローガンが抱えているコミュニティのなかにいる人材たちと想定している。その意味ではサーチファンド的なところとのつながりや、我々がサーチファンド的なことを支援するプラットフォーム的な立場を取っていくことも将来的にはあり得るため、承継領域にも注目している。

―FastGrowの成長イメージはどのようなものか。差別化戦略は
FastGrowを始めたきっかけや思いでもあるが、主要な既存メディアは、スタートアップやベンチャーを取材するチームもあってありがたいが、大きい会社を取材するので、ベンチャー・スタートアップをしっかり取り上げていくのは、既存のメディアでは難しい部分がある。

我々のほうでベンチャー・スタートアップをしっかり盛り上げていくことを目的としたメディア運営を出発点にしている。日本でも、「TechCrunch Japan」や「THE BRIDGE」など、いくつかがあるにはあり、最近では「DIAMOND SIGNAL」など少しずつスタートアップやベンチャーにフォーカスしたメディアが出てきているが、まだまだ数が少ない。

ベンチャー・スタートアップの経営者から見た時に、自分たちをしっかりと世のなかに伝え、ブランディングし、新しく認知してもらう手法が少ない。経営者のブランディング・広報パートナーとしての立ち位置は価値があるのではないか。

現状は、記事制作1本当たりいくら、イベント1回当たりいくらという単発的な取引になってしまっている。リカーリングのモデルで、年間契約で月額いくらという形で契約してもらい、継続的に情報発信してもらえるSaaSモデルに進化させようと準備している。その辺りが積み上がってくると、事業としても成長性があるのではないか。

―2021年2月期と2020年2月期に売上高に特殊要因が生じたが、中長期の売上高の成長見通しや目標は
トップラインの成長に関しては、年平均成長率を最低でも20%を目線に置いている。既存のGoodfindの事業は、当社内では比較的大きな事業として、13~14億円の売上高の10億円ほどを占めている。予実を外すと影響が大きいので、予算としては10~15%ぐらいの成長を見ながら、しっかり実現し、上振れを狙っていく。それ以外は1億円台の事業なので、成長率を高く出していける可能性がある。トータルで見たときにはしっかりと成長率20%以上、場合によっては30%の可能性もある。

市場がどうこうと言い訳できる規模ではないので、伸びないとしたら内部要因と考えている。それぐらいの成長率を十分実現していける。

―2021年2月期の営業利益が前期と比較して減少している要因は
北川裕憲CFO:営業利益はトップラインの影響を受ける。売上高に対して固定費がそれなりにある一方、変動費がほとんどないため、売上高が下がった分だけ利益が下がってしまった。その後、2022年2月期にフルリモートにしたタイミングでオフィスを縮小し、固定費を圧縮した。損益分岐点を下げられたことで、しっかり利益体質に切り替わったことも、利益が出る構造になった背景の1つとしてはある。

―中長期的なROEや配当政策の考え方は
現状で、配当政策は成長投資に回していく観点で、配当をしない方針だが、中長期で成長していくなかでは、既存の株主や次の投資家に報いられるようにしっかり配当政策を考えていければと思う。

自己資本自体は、設備投資や大きな投資がそれほど必要なモデルではないので、純資産は引き続き厚く持っていけるのではないか。そのうえで利益率をしっかり高めることで、ROEを継続的に成長させていけるようにしたい。今の業績予想の数値では、利益率が10%台前半にあるので、10~20%成長させていけるように取り組みたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

関連記事