株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:フライヤー<323A>、質にこだわる書籍要約

20日、フライヤーが東証グロースに上場した。初値は公開価格の680円を73.2%上回る1178円を付け、932円で引けた。同社は2013年に設立。書籍の要約サービスを主に法人向けに提供している。1冊の本を10分で読める内容に要約し、9割以上が音声再生にも対応している。大賀康史社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

上場得た資金は成長領域への投資として利用すると話す大賀社長

―初値の受け止めは
公開価格に対して非常に高く評価してもらえたと感じ、多くの人に期待されているのはとてもありがたい。中長期的に様々な投資家に応援してもらえるような事業運営をしていきたいのでしっかり励んで、期待に応えたい。

―上場で得た資金の使途は
成長領域への投資が中心と考えており、法人向けのエンタープライズ事業の成長が著しいので、そこの営業人員や導入後の利用を促進するカスタマーサクセスの人員強化や、直近ではAIがかなり使いやすくなってきており、サービスへの実装が進み始めているので、エンジニアの人員拡充などを中心に投資していきたい。

―成長投資をしていくが、利益と成長投資のバランスをどのように考えているのか
事業の特性として、何か大きな仕入れや設備が必要ではない。コンテンツを作り上げ、それをインターネットで提供するので、売り上げの多くが利益に貢献しているという事業モデルになっている。今後の利益拡大の主要なドライバーは売り上げの拡大だと思っている。そこに向けた投資をして、成長を実現していくと考えている。

―具体的な数値目標は
具体的な数値目標まで言えないが、法人事業が持続的に拡大できる体制が整い、そのなかでできるだけ早くということで上場しており、ここがスタートラインだと思っている。高成長を持続して拡大できるよう、社員一同努めていきたい。

―具体的に法人の契約をどのように増やすのか
ここ1年ほどで強化してきているのは大企業向けの営業だ。様々な人やルートを通じて認知してもらう。例えば、紹介で大企業のトップ層の人々に会って理解してもらい、できる限り大きな規模で利用してもらうことに注力している。また、中堅企業や、我々の中でグロース企業と呼んでいる成長企業の人々に対しては、「人の力こそが会社の力である」と感じている人に知ってもらい、商談や打ち合わせをするなかで、導入規模、投入数を増やしていきたい。今までは自社で行うことが多かったが、まだまだ社員規模がそれほど大きくない。全国ネットで認知度を拡大して顧客に紹介していくことを実現するために営業代理店網などをここ1年ほどで強化しており、そこからより大きな規模で導入者数を増やしていきたい。

―社長の考える会社の強みとは
比較的わかりやすいところで3つほどある。まず、質の高いコンテンツを作り上げるという組織的なノウハウやケイパビリティだ。ここが何よりもユーザーに期待されているので、せっかく使ってもらう時間は、優れた読書体験が得られるようにしたい。それに関連して、出版社や著者、書店、法人で利用してもらう企業など、様々な人とのネットワークを構築することを重んじており、強みの2つ目としている。3つ目は、コンテンツを届けていくにあたって、技術的に最先端ということだ。サービスを具体化する開発力を、創業してから継続的に強化し、しっかりしたプロダクトが作れるようになってきた。あとは、客観的な主張が難しいが、当社の社員がとても優秀で、エネルギーがあるメンバーに集まってもらっている。本当の本当の強みは社員だと思う。

―本の要約サービスは、その本を買いたくなるきっかけになるとともに、要約サービスで満足し、買わずに済むこともあると思う。そういう点で、出版社の協力を得るのは大変だと思うが、どのようにやってきて、どのような課題や苦労があったか
創業して数年の頃は、なかなかほかにないサービスなので、本の売り上げや認知度拡大にどのような効果が得られるのかを見通しきれない状態ではあったが、徐々に理解してもらった。今では、190社で、国内の主要な出版社はほぼ全てに協力している。日頃、本の売り上げを見ている出版社や著者に評価をもらい、結果として相互にwinの形で協力関係を築けている。本の出版のなかで特に大切なのが、年間7万タイトルといわれているタイトルのなかで、皆が思い浮かぶ本は10冊や20冊かもしれないが、そのようなものの1冊に加えていけるかだ。出版されてからの認知の拡大が重要な要素と思っており、当社に貢献できるところがあると考えている。

―その貢献度合いは可視化して、例えば、出版社などに提示できるのか
1番認識しているのが様々な流通経路もあるので、出版社自身だと考えているが、例えば、「どのような記事で展開されたのか」、「どのような方々に届いたか」などの質問をもらうと極力答えるようにしている。

―どのような人が読んだのかなど、ユーザーの情報などを提供できるということか
ユーザーの情報まではなかなか共有できないが、興味を持ってくれた範囲で、極力答える。

―本の選定基準は
様々な素晴らしい本がたくさん出ているなかから選ぶが、選書委員会を月2回ほど行っている。そのなかで候補のロングリストのなかから1冊1冊吟味して選ぶ。当社では、革新性や、分かりやすく主張がクリアという明瞭性、それが実生活に活きるかという応用性という3つの観点が満たされているものを優れた本と考える。そのような基準を考えながら選ぶ。読者にとっても、様々な種類の本が紹介されていることが利益になると思うので、ビジネス書のなかでも、マーケティングやファイナンス、コミュニケーションなど、そういうものだけではなく、例えば、哲学や歴史、化学などのリベラルアーツに属するような本も含めて、選書委員会で選ぶ。そして、1冊1冊を出版社や著者に許諾をもらい、作成プロセスに入る。

―本の要約の原稿の作成は内製化しているか
要約の作成プロセスは、選書委員会で選び、事前に許諾をもらうことが、スタートラインになるが、そこから大きく3つのステップがある。主に社外の協力ライターに本を読んでもらい、要約の原稿を作成してもらうのがファーストステップ。出来上がったものは、社内に出版社の編集者だったメンバーがたくさんいるので、そのメンバーが同じ本をしっかり読み、要約として最適なものになっているかをブラッシュアップする編集作業のようなものを行う。確認を終えたものを、本の作り手である出版社の担当の編集者や著者に事前に見てもらう。場合によっては直しが入るので、それを反映したものを1冊1冊公開する。「flier」には3800冊以上の要約があるが、全ての要約で、このプロセスを通していることが、1番大事な要約のクオリティの担保となっている。

―AIの要約で著作物を全文学習させることには判断が分かれ、なかなか難しいと思うが、例えば、著作権者である出版社や著者が、AIや生成AIを使って自分たちで要約してしまうケースはまだないのか
認識している限りでは、まだ具体的な動きにはなりにくいと思っている。我々は、基本的に実際の人の手で読み、人がしっかりまとめて、磨き上げた要約を提供することが中核にある。クラシックコレクションと言っているが、著作権の有効期限が切れた古典を継続してトライアル的にAIで原稿を作っているが、まだまだ品質の高い要約には最新のエンジンを持っても距離があると感じる。何となく予測される帰結になって、例えば、平家物語だと戦に苦戦すると、ストーリーよりもずいぶん先に戦死したりすることなどが起きる。まだまだそのような大事なところはしっかり人の目で確認して、信頼性の高いコンテンツに磨き上げる必要性があると考える。

[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]

関連記事