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上場会見:INTLOOP<9556>の林代表、フリーランスが働く場所を

8日、INTLOOPが東証グロースに上場した。初値は公開価格の3500円を10%下回る3150円を付け、2705円で引けた。正社員とフリーランスのエンジニアやコンサルタントを活用したコンサルティングとシステム開発を行う。製造業向けコンサルティングサービスを祖業に、金融業向けコンサルやフリーランス人材向けのWebサービス、コンサルと人材向けキャリア形成支援サービスなどを展開している。林博文代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

正社員のコンサルタントを核にフリーランスとチームを組んでサービスを提供する、あるいは、1人からも案件にアサインできると話す林代表
正社員のコンサルタントを核にフリーランスとチームを組んで案件に参加する、あるいは、1人からも案件にアサインできるとサービスの柔軟性について話す林代表

―初値の受け止めは
とても不本意で、マーケットはこんな感じなのかと思った。自分で買いたいなと思うぐらいだった。これが相場なのかというのを今日勉強した。もう少し発信をうまくしないといけないのか勉強にもなったし、IR戦略も含めて、これから角度を変えてどのような形で発信すれば株価を形成できるのかも含めて考えていく。

(売上高で)30%以上でずっと成長を続けてここまで利益を出して、これ以上何を言ったらいいのか分からない。信用されていないことは分かったので、好業績を継続していく裏付けを、どのように話していくのが正しいのか考えながらやっていかなければならないというのが、今日の反省だった。

―相場環境が不安定な状況でのIPOだったが、延期を考えなかったのか。このタイミングでの懸念はなかったのか
30%ぐらいの成長を継続していくと考えてビジネスをやっているので、IPOの準備に取り組んでしまっていた。また、我々はフリーランスの人に前払いをしていて、(クライアントから)入金される前に支払っている。顧客から料金を受け取るのは30~45日だが、(フリーランスの人に)仕事が終わって15日後に支払いをしていることが特徴になっている。

金融機関にコミットメントラインを設定してもらって借り入れをする分にはいいが、30%程度で成長していくと、借り入れもそうだし、正社員が増えると正社員も前払いになる。そのコストが重くなっていた。損益計算書上はいいが黒字倒産してしまうような状態になってしまうので、早めに資金調達したかった。(調達額が)少し減ってもいいという気持ちだった。その後上がるからいいという気持ちで進めてきた。

―パーパスという言葉が流行り、社会に価値をどう提供するかが非常に重視されているが、社会課題をどう解決していくのか
要素は複雑に絡み合っていて、日本の中小企業の生産性を引き上げていくことをずっとやりたかった。我々の社員だけでは実現できないので、フリーランスの人の力を借りなければならないところもあった。ただ、フリーランス(に関わるの)はなぜかというと、多様な働き方が進んでいくなかで、働く場所を提供していく意味がある。

このビジネスは競合他社がいっぱいいていいと思い、どんどん入ってくることで、その働き方がノーマルだと思われる社会を実現できたらいい。米国の技術者は報酬水準が高いが日本は低い。最終的には引き上げていきたい。壮大過ぎるが、日本の基幹産業としての ITにどのような形で貢献できるのかをこれから考えてみたい。いろいろありすぎて一言にまとまらない。

―将来的に日本のエンジニアの地位を引き上げていきたいとのことだが、その地位の低さにはどのような背景があるのか
歴史的に遡るとちょっと分からないが、やはり相場感が形成されてしまっていると思う。ただ、単一作業や簡単なプログラムしかできない領域の人に関しては、単価がある程度下がっているのは仕方がないが、高度なスキルの人まで含めて単価が低いのが実情だ。

工数契約をしているのも、問題があると思っており、「1人月(にんげつ)いくら」という契約で、その人が 2~3 人分働こうが月の単価が変わらないモデルなので、そこを打開できないと難しい。AIやSAPなど尖った技術者は、金額が上がっている。領域によっては上がっているし、将来的には工数契約を変えないと、仕組みとしては変わりにくい。そのような話は業界の人としている。

―そのようなものを変えていこうということも、これからやっていけそうなのか
具体的に話を少しずつ始めている。

―フリーランスが2万5000人以上登録していて、稼働人数が500人ぐらいだが、稼働率の向上施策は
当社には人材調達部門があり、40人ほどいる。新規で登録してきた人との面談や、過去に登録してもらった人に対して、定期的にいい案件があると配信し、とても優秀な人に関しては個別に電話をする。過去に登録した人に関してもカムバック的なキャンペーンを常に行っている。

―正社員のコンサルティングやエンジニアをどの程度の規模で拡大していきたいのか
我々はコンサルタントとPMO、エンジニア、マーケティングの4領域で採用しているが、その部隊を全体でデリバリー部隊と呼んでいる。去年が50人弱で、今期は少なくとも100人ぐらい取りたいと採用計画を進めている。

―かなり増やしていく局面にあるのか
ずっとそのようなことを続けていたので、単純に規模が大きくなったので増えたというだけの話になっている。

―高度な人材をどう確保しているのか
今までは第2創業期であり、大手と違う環境で「これから活躍して幹部になれますよ」という点を謳って、そのようなところに惹かれて入ってくる人も多かった。それでも、本当は去年から 100人ぐらい採用したかったが、半分ぐらいしか採用できなかった。今回は、上場によって信用力が増えることに期待しており、それを使って採用を進める。社員がまだ300人しかいないので、幹部になれるチャンスはまだあると考えており、そこで採用を増やしていく。

―足元では人材確保の難しさはあるのか
フリーランスに関しては、それほどペースが落ちている感じはない。逆に、上場を発表して登録者がすごく増えている。我々はフリーランスだけではなく、10 人ぐらいの小さい組織で運営しているソフトウエアハウスにも案件に入ってもらっているが、そのような会社からの問い合わせも非常に増えている。発表以降、供給できる人材は増えたイメージだ。ただ、正社員の採用には、そこまでつながっていないかもしれない。

―正社員採用は新卒と中途のいずれが多いのか
今のところ中途が多いが、前期も中途が100人ぐらい増えて、新卒は今年4月の時点で38人、来期も60人ぐらいの内定受諾を得ており、10人ぐらいを引き上げるために最後の追い込みしている最中だ。当社としては新卒も採っていきたいし、中途採用も継続していく。

―調達資金を特に振り分けたい領域は
広告宣伝と人材採用と、基幹システム開発費の3つが大きい。当社は基幹システムを自社で開発している。元々、外のSaaSのシステムを使っていたが、すごく使いにくく、エンジニアがいるのにもったいないと自社で開発を始めた。その費用がかかっている。

―今後、副業がもっと進んでくると思うが、副業人材への関心は
話は一部進めていて、今後展開していく可能性はあると思う。断言はしにくい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]