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上場会見:ペットゴー<7140>の黒澤社長、株主と飼い主

28日、ペットゴーが東証グロースに上場した。初値は公開価格の550円を135.45%上回る1295円を付け、995円で引けた。同社は、犬猫用のペットフードや医薬品をECサイトで販売する。高価格帯の海外ブランドと、D2Cの「ベッツワン」シリーズなどを扱う。自社サイトの「petgo」のほか、複数の大手ECサイトで販売し、売り上げの9割をEコマースが占める。黒澤弘社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

黒澤社長によれば、D2Cの医薬品と機能性フードが共通して重視するのは「価格」と「ユーザーのニーズ」、その上で医薬品は「国産」、フードは「おいしさ」を追求する
黒澤社長によれば、D2Cの医薬品と機能性フードが共通して重視するのは「価格」と「ユーザーのニーズ」、その上で医薬品は「国産」であること、フードは「おいしさ」を追求する

―初値の受け止めは
心から感謝している。株主と投資家には、引き続き当社に注目してもらいたい。

―公開価格は550円でかなり控え目な印象があるが、どのような背景でこの価格になったのか
いろいろな事情があるが、上場に当たり、ペットを飼育している投資家は非常に多く、株主と顧客層が似ているのではないかと思った。できるだけ多くの人に我々の株式を購入してもらいたい。それほど大きな価格でスタートするのではなく、できるだけ多くの人に買ってもらうことで、ペットオーナーにも持ってもらえるのではないかと考えたので、妥当な価格帯だったと思う。

―犬猫の製品のみか。ほかの小動物は
過去には昆虫まで手掛けたことがあるが、基本的に犬と猫に回帰した。

―収集したペットに関するデータをマーケティングと製品開発で具体的にどう活かしているのか
自社オンラインサイトでは、顧客が飼育しているペットを登録する仕組みを創業以降続けている。ペットの属性に加えて、顧客が購入した商品のデータを組み合わせる。マーケティングでは顧客の属性ごとにグルーピングして、メルマガやダイレクトメールを送っている。さまざまなグルーピングができるが、例えば、関節疾患のある犬のグループや、避妊去勢をしている猫のグループ、高齢犬のグループなどがある。

我々は通販を行い、顧客の住所なども分かっているので、例えば、「九州に住むトイプードルの飼主のグループ」といったところまでグルーピングできる。マーケティング上、できるだけ具体的にターゲティングできることが強みになっている。

2つ目の利用方法はD2Cブランドの製品企画に活用するものだが、まず顧客を犬か猫かから、犬であれば、どのような疾患を持っているかまで判断し、こちらもグルーピングする。1つは顧客調査をする時に活用している。対面・電話、WEB調査があり、グルーピングした上で、どのような不満や悩みを持っているかを確認しながら隠れたニーズを抽出する。それに基づいて商品を作った後には、モニター調査でも、ペットデータを使っている。顧客をターゲティングした後に、我々の商品を提供して、どのような反響が得られるのか知る際に活用している。

―D2Cブランドとナショナルブランドの製品はカニバリゼーションを起こさないのか
今は起きていない。D2Cブランドの発売開始が2020年4月であり、年数が短い。顧客に聞いてみると、我々の主力商品の機能性フードと動物用医薬品は、参入するメーカーが少なく選択肢が少ないのが実態だ。

顧客からすると、「市場に出ているフードをペットが食べないので、もっと違うメーカーのものはないのか」とよく聞かれるし、我々が取り扱う機能性フードのほとんどは海外メーカー製だ。コロナ禍で、サプライチェーンがおかしくなって、日本になかなか入ってこないという状況が続いた。顧客からすると、「いつも与えているものが手に入らないのでほかにないのか」ということになる。

我々からすると競合するというよりも、選択肢を広げる、もしくは顧客が商品を手に入れられない場合の代替商品を提供すると考えてD2Cブランドを展開しており、現状はカニバリよりもほかの商品が欲しいという顧客に選択肢を広げている。

―実店舗での販促活動は
現状の方針としては、9割はEコマースの売上高だ。我々の強みはデジタルの分野なので、今後も基本的にはデジタルに主軸を置いていく。ただし、ペットオーナーの過半数はペット用品をインターネット以外で購入している。そういった人たちに、我々の商品を見つけてもらうためには、どうしてもリアルな場所を活用せざるを得ない。

顧客の行動形態はどんどん変わっているので、リアルに頼らなくても、インターネットだけでやっていけると思っている。現状はネットだけでなく、活用できればリアルの場を使い、顧客の目に触れる場所に商品を露出したい。その場合も、今まで機能性フードを買っていた場所ではなく、できるだけ、顧客が今まで手に入りにくかった場所に顔を出していきたい。ただ、メインはインターネットだ。

―今までなかった場所とはコンビニか
難しいのは棚の大きさだ。コンビニはスペースが非常に狭くペット用品を置きにくい。我々が扱う大きさの商材をコンビニに置くとなると、例えば犬では100以上の種類がいる。年齢やサイズがさまざまなペットに関して、例えば「10商品だけで」というのは、あまりにも少ない。

コンビニは小売チャネルとしては魅力的だが、ペット用品を置くチャネルとしては難しい。置くとなるとドラッグストアなど一定のスペースがないと難しい。ドラッグストアとは相性が高いとは思うが、ECに力を向けていきたい。

―新規ペットヘルスケアサービスでの成長とは
例として米国に目を向けると、2つの大きな流れがある。1つはペットシッターをマッチングするサービスが成長しており上場企業もある。犬や猫を飼うと旅行にいけないとなった場合にプロに頼むのは日本でも有望なサービスではないか。

2つ目は、オンライン診療だ。動物病院に犬や猫を連れていくのは難しい。少し具合が悪い時にオンライで獣医に診断してもらえるサービスは、こういった時代で求められる。米国では少しずつ出てきているが、日本でも可能性が大きい。

―2022年3月期の営業利益率は、1.7%の予想だが、今後の見通しは
具体的な数字に関しては開示している範囲でしか説明できないが、ペット商材は利益率が決して高いものではない。ペットが毎日利用する日用品なので、我々以外にも実店舗を持つ関連企業もいる。そういった企業を見ても、決して高い利益率ではない。

D2Cブランドの粗利率の高い商材をできるだけ多くして、また、定期購入という1度注文してもらえばその後に広告・販促費がかかりにくいという販売形態を伸ばすことで、そもそもそれほど大きくない利益率を1ポイントでも上げていきたい。そのような努力で、できるだけ右肩上がりで利益率が増えていくように努力したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]