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上場会見:のむら産業<7131>の清川社長、包装技術を新市場に

2日、のむら産業が東証ジャスダック・スタンダードに上場した。初値は公開価格(1210円)を8%下回る1113円を付け、975円で引けた。同社は、米穀精米袋などの包装資材・機械を製造・販売する。グループの米穀業界向けの売上高構成比率は8割ほどで、単体で96%程度。清川悦男社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

清川社長は、タイやベトナムなど海外での導入実績についても話した
清川社長は、タイやベトナムなど海外での導入実績についても話した

―初値が公開価格を下回ったが、受け止めは
非常にがっかりしている。ただ、これをばねにして業績を上げて株価を上げていきたい。
西澤賢治取締役:ロードショーを踏まえても、分かりづらいことと、今風の会社ではなく「50年経過して、なんで今このタイミングなの」というのもあり、理解が難しかったと思う。あと半月ほどで、2021年10月期の決算を開示するので、その後の説明会などで、支援してもらえる株主の皆さんに理解してもらいたいと考えている。株価を上げなければいけない。

―下回った原因は事業活動への理解が得られにくいことが大きな要因か
理解してもらえなかったのと、昨年は子会社の影響が大きかった。コロナ禍の影響も少々受けて、連結業績があまり見栄えの良いものではなく、配当も魅力的な金額ではないので、投資家が資料を一覧しても、理解がなかなか難しい。あとは、我々の努力不足かと思う。

―理解してもらうのが難しかったのは何に起因するのか。業態ではなく、事前に投資家との接触がないなどコミュニケーションの質や量の話なのか
何をしている会社なのか分かってもらえなかったということではないが、限られた時間では理解するには足りなかったという印象だ。
清川社長:事前のコミュニケーションは一切ない。
西澤取締役:「お米の袋をやっている会社が世のなかにはあるんだ…」からスタートしているし、このタイミングでの上場や2013年のMBOの話にもなる。大株主であったファンドの話もあり、「ちゃんと伝えられたのか」という感覚は持ちながら、複数の投資家と会っても聞かれるポイントは同様になってくる。

議論を交わしたわけではないが、懸念しているものがあるという感触はあった。もう少し丁寧に時間をかけて個人投資家を含めて、投資家に説明していかなければならない。自社を悪い会社だとは思っていないので、時間がかかるとは思うが丁寧に説明していきたい。

―社歴が50年を超える老舗だが、この時期に上場する狙いは
創業して60年になるが、事業承継の課題があり、それが株式上場を目指すきっかけになった。お米業界で長く商売をしていて、安定している業界だった。利益は十分に出せていたが、会社を維持していくためにはステップアップしなければいけない。お米業界以外にも業態を横展開していくとなった時に、業界のなかでは名が知られているが、ほかの業界に出ていくためには、なかなか理解してもらえず、信用もそれほどない。株式上場を目指し始めたのは約8年前だった。

―米の消費が減っているが、市場環境への影響や対策は
清川社長:お米の消費量は減っているが、我々の仕事は、お米の袋の資材とそれを詰める機械だ。消費量は減っているが、徐々に小袋化しており、袋の枚数は減っていない。逆に増えている傾向にあるので、そこはあまり心配していない。

―ペット関連など新事業分野への進出を企図し、既に参入しているそうだが、技術面で、追加の設備投資や開発が必要なのか
現状で取り組んでいるのは、今の技術の延長だ。内容物が違うので、計量器を内容物によって変えている。袋を作る部分は変えていない。
西澤賢治取締役:ドライな粒状の物であればそれほど大きな変更をせずに、今の技術をそのまま活かすことができ、これまでの実績もそのような形で出てきた。

―新規事業での成長を図るうえで、M&Aやアライアンスは
西澤取締役:例えば、包装資材に関しては、子会社の山葉印刷以外、95%ぐらいは仕入れ売りになっている。機械に関しても、製造組み立てについては、ファブレスのメーカーなので、自分たちで行っているのが最終工程の2割ぐらいだ。良いものづくりやサービスを提供するために、自社製造比率を上げていくことも課題の1つと考えている。山葉印刷などの設備投資をしていくのか、場合によっては、M&Aの手法を使って充実させていくのかは、今後の課題だ。

―売上高成長率の目標は
具体的な数字を答えることは難しい。
清川社長:メインのお米業界以外の新市場や海外市場の比率を増やして、その売上高を全体の3割ぐらいにしたい。

―重複するかもしれないが今後の市場環境の見通しと、中長期の成長戦略は
お米の消費量は確かに減っているが、包装資材、袋の枚数は決して減ってはいないので、そこを中心に進めたい。また、西日本エリアでの市場シェアはまだかなり低いので、集中的に取り組みたい。

―西日本エリアを伸ばしていくとのことだが、競合の認識は
包装機械では、今まで競合だったところと提携している。袋資材は、仕入先をこれまで以上に強化して確保したい。
西澤取締役:包装機械と包装資材の両方を手掛けていることが強みだが、東日本に比べると西日本市場のほうが、機械のシェアが低い。元々競合先が2社あり、そのうちの1社と、当社が機械をOEM供給するような関係になったので、今後については機械のシェアは上がっていく。そのシェアが上がれば、包装資材の販売の機会が増える。人の強化をしながら、仕入先も強化して、機械と資材のシェアを東日本並みまで持っていきたい。

―西日本エリアの現在のシェアと今後の目標値は
西澤取締役:ざっくり言うと、東日本で機械のシェアが7割ぐらいで、西が3割ぐらいだ。
清川社長:既存で動いている物はそのぐらいで、老朽化による入れ替え需要は当社にかなり来ている。
西澤取締役:包装資材は、東日本が25%程度で、西日本は5%はない。機械が入っていけば資材の販売機会も増えていく。新市場では、乾いた粒状の物を入れれば、例えば、お菓子のチョコレートの工場間輸送の包装機と資材で使ってもらったり、ペットフードなどといった市場を増やしていかなければならない。

ただ、既存市場でも、やり残したというか、これから伸ばしていくものがあると思う。お米は消費が大きく上下するものではないので、技術とノウハウを使いながら新市場へ提案し、既存事業の緩やかな成長とほかの業界で3分の1を売り上げていくことを中長期的に目指したい。目標の数字を持ってはいるが、今具体的に答えるのは難しい。

―調達資金の使途は
公開で株式の売却はあるが、新規株式の発行はしていないので、使途・目的はない。ただ、今後事業を拡大していくうえでは、自前の製造率を向上させるためなどへの設備投資の資金が必要になってくるので、そのようなものを視野に入れて検討したい。

―今後、市場からの調達も可能だが、資金調達コストの考え方は
具体的に思い描いているものはない。

―現状は借り入れと営業キャッシュフローで賄えているのか
資金については回っている。設備投資や、具体的な案件があるわけではないがM&Aについては、規模感も含めて株主のことも考えながら、市場で調達するのか銀行借り入れで賄うのかは、その都度バランスを見て考えたい。

―中長期的な配当性向の目標は
ここ2年は、連結で20%の配当性向を出している。ロードショーでの説明もそうだが、上場企業になった以上、一般投資家を含め株主への配当が重要と理解している。現状を維持する以上の配当を目指していきたい。

―ひとまず20%以上で推移させ、可能性があればより高めていきたいということか
今後については、株主還元を積極的に検討していかなければならない。

―個人投資家を対象にするIR説明会は検討しているのか
シ団の証券会社も含めて、今後やっていきたいし、協力してくれるという話はある。ただ、まだコロナ禍の関係があって、証券会社の営業担当者向けの説明会や、個人投資家を集めた説明会は積極的に丁寧にやって行きたい。

―大株主だったMCPパートナーズとの今後の関係は
オーバーアロットメントを入れると、基本的には全株売り出すので、関係性はなくなる。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平に