18日、ミラティブが東証グロース市場に上場した。公開価格の860円を12.67%下回る751円の初値を付け、705円で引けた。赤川隼一CEOと須山敏彦CFOが東京証券取引所で上場会見を行った。

■ゲーム体験を共有
―そもそもゲーム配信プラットフォーム「Mirrativ」は、ほかのどのようなエンタメと時間を奪い合う関係になっているのか
赤川CEO:我々は(ゲーム体験を共有・消費する)メタな構造のサービスだと思っていて、ゲームをしている時間を奪うのではなく、その時間にMirrativも起動することで、今までは 1人で遊んでいたゲームの時間が、誰かと交流する時間になる。
少なくとも日本だけで1兆6000億円あるモバイルゲームのマーケットは、奪い合うというよりは競争し合い、(プレイや配信)時間を長くする存在だと見ている。一方で、ショート動画やSNSなどゲーム以外にも様々なエンターテインメントがあるので、それらは競合していると言えるのではないか。
―初値と株価の向上策について
我々がコントロールできるものではなく、市場の現状だと受け止めたうえで、できるのは顧客とステークホルダーに向き合った経営を続けていくことだけなので、中期的に株価を向上していけるように、現状を捉えたうえで励み続けていく。
いろいろな手段があるかもしれないが、本質的には右肩上がりの業績、特に利益改善がキーと考えている。株主により信頼してもらえる結果を開示していきたい。
須山CFO:我々のサービスが分かりにくい部分や、競争優位性をきちんと市場に伝え切れていなかったこともある。IRなどで我々の強みが、類似すると見られているサービスとどのように異なり、どのような成長や利益の余地が期待できるか発信し続けたい。
■競合と違う構造
―伝えきれなかった強みとは
赤川CEO:ライブ配信という機構を使っているので、配信アプリとして捉えられると「一般的には利益率はこうだよね」というイメージがあることを痛感してきた。
一方、事実として我々のサービスの双方向性や、収益還元の構造が全く違う。ビジネスモデルが全く異なっており、それを正しく理解してもらうことが非常に重要で、コミュニケーションを取る必要がある。
―一般的な配信アプリの利益率とは具体的にどの程度違いがあるのか
須山CFO:一般的なライブ配信サービスは、配信者に対して50%前後を還元することで事業を作っている。プロやセミプロのような人たちが収益のために配信する仕組みができているからで、それはそれで素晴らしい。
我々は全く異なり、アマチュアの配信者を中心にコミュニティを作り、そこでアバターやデジタルギフトを送り合いながら楽しむサービスを提供している。一般的なサービスと比較すると40%程度は配信者向けでないところに収益がある。それが大きな違いと見ている。
―還元とは出演料のことか
赤川CEO:世の中のライブ配信で認知されているサービスでは、例えば、YouTubeのスーパーチャットがある。これはプロ・セミプロの人たちが収益を期待して実況するもので、55%程度となっている。
我々にもギフトという仕組みはあるが、配信者のモチベーションは「ゲームの友達を作りたい」という、「お金を稼ぎたい」というもの以外なので、ギフト的な体験は類似しているが、収益還元をしなくとも楽しんでもらえるモデルになっている。
■積み上がる収益
―ダウンラウンドのIPOだったが
ダウンラウンドである事実は経営者として責任を受け止めるべきで、そのうえでそれでも今IPOすべきか否かということは既存株主を含めて対話を続け、この会社の中長期の成長にとって必須であろうというコンセンサスのもとで上場に至った。業績は前回のラウンドと比べて飛躍的に改善しているので、そうしたことに取り組みながら適切な株価に市場が決めていくところ、期待にきっちり応えていきたい。
―このタイミングでの上場の理由は
IPOによって広がる各種の経営オプションがある。採用を含めた競争力強化も検討している。加えて、新規事業でM&Aや戦略投資を活用しており、そういった動きも、上場でよりよくできると期待できる。それ自体が上場の目的ではないが、そうした手段も含めて、上場したことで広がる経営オプションを最大限享受しながら経営していきたい。
―機関投資家の評価点は
須山CFO:Mirrativという事業で、ミルフィーユのように収益が積み上がっている構造と、その結果としての利益の蓋然性を理解してもらうことによって、単体の事業として、中長期の成長や収益性、競争優位と独自性について評価されたと思う。
■実況者を観察
―ゲームとゲーム実況を融合し、配信者のゲームプレイに介入し、一緒に遊べる独自の「ライブゲーム」は、低開発費で高いARPUを実現する武器とのことだが、ヒット作を継続的に生み出すための仕掛けや、サードパーティー製タイトルの拡充に向けてどう動くのか
赤川CEO:ライブゲームという体験そのものが新しく、我々が2021年に単月黒字に到達した後、投資して立ち上げてきたもので、まだまだこれからという段階だ。
その間、市場ではライブゲームだけをYouTube上で展開するスタートアップが、日本でも世界中でも出てきたが、ほぼ全て失敗している。それに対して、我々は自社のライブ配信プラットフォームをある種のサンドボックス(外界から隔離された安全な仮想環境)として、そこでコンテンツだけを考えることができ、この時点で優位性があった。その結果、多くの研究開発に成功し、単体のセグメントでここまで立ち上がることができた。
そのうえでサードパーティーを増やす観点では、ヒット作が1本出てくることで、サードパーティーも「参入しよう」、「真似しよう」となってくると見ている。任天堂<7974>が、Nintendo Switchでお手本のユーザー体験を作り、それをサードパーティーが一部真似たソフトを作っていくことに近い。
我々が良いお手本を作り、それがヒットしているという認知を取ることで、新しいサードパーティーが増えてくる。単体のヒット作も出ているが、市場としては黎明期なので、いち早く大きなヒットを出してサードパーティーが増えていく循環を作りたい。
―時流を捉えたゲーム作りで心掛けていること、注目していることは何か
ライブゲームという名前が付いているかはともかく、ゲーム実況が、そのゲーム自体のヒットに極めて重要な要素になっている。今この瞬間にゲーム実況者が多く取り上げているゲームは、既にライブゲーム的とも言えるし、今後のライブゲームにとって多くのヒントが詰まっている。
我々はそうしたユーザー行動を観察して、それを自社サービスとして発明していくことをこれまでも行ってきた。ゲーム実況者が今どのようなゲームを遊んでいるかを観察して、それを自社プラットフォーム上で研究開発して形にしていくことを、繰り返していきたい。
■ヘビーゲーマーに焦点
―ユーザーをどう拡大していくのか
スマートフォンゲーム各社との連携がこれまでも強みであったし、その産業でも様々な変化がある。数年前と比べても、スマホゲーム市場は一度停滞した後に再度伸長し、日本だけで1兆6000億円の市場がある。その内訳としては、国産のゲーム会社以上に、例えば、中国のゲーム会社が伸びている。いろいろな会社を支援しつつ伸びているゲーム会社といかに深い関係性を築いていくかが重要となる。
―2024年のアプリゲーム売上トップ30社のうち26社でミラティブのイベント施策の導入実績があるが、これは国内の会社か
日本のスマホゲーム市場のトップ30社だ。
―そこに中国の会社は含まれるのか
含まれている。
―配信者をどう増やすのか
ゲームの配信者を増やしてきたサービスで、まだ増えると想定している。ゲームユーザーという視点では、日本のスマホゲーム市場は1兆6000億円、4000万人ぐらいで構成され、この金額の8~9割は300~400万人のヘビーゲーマーによって成立していると考えている。
我々は、このヘビーゲーマーを、配信の巧拙やスター性とは別のところで、コミュニケーションサービスとして配信すると「いいことあるよ」として使ってもらい、そこにコミュニティを作ってもらうサービスなので、この 300~400万人の人たちに、今後いかに配信してもらい、Mirrativを良い場所と思ってもらえるかがポテンシャルと見ている。
■個人勢の需要を満たす
―新規事業であるVTuber支援策の目玉は
VTuberと言っても広いため、どの層を狙っているかから話すと、個人VTuberを特にターゲットとしている。VTuberは上場2社を含めて産業として非常に素晴らしく成長しているが、一方で、個人で彼らを見て真似する人や、事務所を出て個人で活動する人も増えている。
VTuberの活動に関する視聴時間は、個人勢を合計したほうが、大手よりも多くなっている。一方、個人勢は大手事務所のような支援を受けておらず、そのポテンシャルをプラットフォームとしていかに活かすかがキーとなる。
我々は日本最大級の配信者数をプラットフォームとして支援することを地道に続けて成長してきたので、この顧客層は得意領域と考えている。彼らの需要は解像度高く見えており、それは「ファンの増加」や「収益」、「“撮れ高”と呼ばれる配信の盛り上がり」に集約されるので、我々のアセットを活用して満たしていく戦略だ。
目玉という言い方が良いかは分からないが、BtoB 事業は着実に立ち上がると見ており、BtoCは時期こそ読めないものの大きなアップサイドがある。
BtoBに関しては「ぶいきゃす」という仕組みで個人VTuberをネットワークして、我々の持っているゲーム会社のネットワークとつなげていく。Mirrativだけでなく、「個人VTuberにも宣伝してもらえませんか」と、相互に需要があるので、堅く伸ばしていけるとして進めている。
BtoCは研究開発段階だが、我々が持つライブゲームなどのアセットを個人VTuberに提供していくと、市場を創造できる。
―Web決済導入などによる決済手数料の改善に取り組んでいるとのことだが、今日(18日)施行された、いわゆるスマホ新法は、ポジティブ・ネガティブの両面で事業にどのような影響を与え得るのか
今日施行されることは決まっていたが、それに対してAppleやGoogleがどのような対応をするかは、情報が今日出てきた部分もあるので調査中だ。良い面も悪い面もあり得るので、慎重に判断して対応していきたい。
―株主への配当方針は
現時点では成長投資を行っていくことが中期的な企業価値向上に繋がっていくので、それを前提としつつ、株主との対話を通じて適切な株価施策を行っていきたい。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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