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上場会見:SBI新生銀行<8303>、地方ネットワークとの融合、メガバンへ対抗

17日、SBI新生銀行が東証プライム市場に上場した。公開価格の1450円を9.38%上回る1586円の初値を付け、1623円で引けた。川島克哉社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

「第4のメガバンク構想」や地方創生について話す川島社長

―初値や終値についての率直な評価は
初値や終値については、多くの投資家、あるいは新たな株主からの評価や期待の表れであると素直に受け止めている。目先、短期的な株価の動向に一喜一憂することはないが、足元の国内外の株式市場や金利の動向、さらには我々銀行セクターにとって重要となる、明日からの日銀の金融政策決定会合の行方など複合的な要因によって、今日の株価が形成されたと思う。我々としては、企業価値の向上に向けてサステナブルな経営努力を続けていくことが肝要だ。

―再上場によって、市場で集めた資金をどう投資していくのか。市場の目も厳しくなるが、今後注力していきたい分野や展望は
今回の上場によって資本調達ができたが、SBIグループに入ったことで、非上場期間中に、我々は大きな特徴を獲得することができた。特に地方銀行との連携強化は大きく進展している。今回の良質な資本を有効に活用し、オーガニックな成長分野への投資を加速させる。また、既存事業の成長をさらに促進させるようなインオーガニックな投資機会があれば、積極的にその機会を捉えて投資していきたい。

―3度目の上場となるが、上場を決めた理由と狙いについて。また、「SBIハイパー預金」などが好調だが、地域連携や成長分野を含め、SBI新生銀行にとって預金を集めるのはどういう意味を持つのか
「3度目の上場」とよく言われるが、私自身が当行の上場に関与するのは初めて。かつての日本長期信用銀行や以前の新生銀行とは、その中身も経営方針も大きく変わっている。

今回の上場の意義や狙いについては、少し教科書的な答えになるが、まずは良質な資本調達のチャネルを新たに確保すること。そして、銀行業という非常に公共性の高い事業を営む身として、社会的な信用力をさらに高めていくことが重要だと考えている。また、SBIグループの中核銀行としてグループのネットワークやデジタル戦略を最大限に活用していくうえで、我々の資本が強まり財務の健全性が高まることは、それなりに重要なポイントとなる。

2つ目の質問にも関連するが、金利が正常化に向かうことによって、預金の獲得競争は非常に激しくなっている。下手をすると、定期預金で1%程度の水準が出るような状況になってきた。預金者や個人投資家にとっても、この預金金利は非常に大事な点となってきたと想定している。

銀行にとって成長の原資は預金がある程度潤沢にあり、個人・法人の資金需要にしっかりと対応していくことが大事だ。そのためには、できるだけ粘着性の高い預金を獲得していくことが、今後にとって非常に重要である。そういう意味からすると、SBI証券との銀証連携における特徴である「SBIハイパー預金」は、極めて粘着性の高い良質な預金であると見ている。これは我々がSBIグループの一員になったことの強みであり、他社・他行では容易に真似できないサービスだ。ここを強みとして伸ばしていくと同時に、預金者に対してもそのメリットを還元できるよう努めていく。

―「第4のメガバンク構想」に基づき地銀連携を加速すると思うが、上場によって、どのような形で連携を深めていくのか
今回のIPOによって、地方銀行との連携方針が変わることはない。むしろ、さらに加速できるものと認識している。特に「第4のメガバンク構想」の実現に向けては、全国に97ある地方銀行の多くとどれだけ緊密に連携し、それぞれの困りごとやニーズに対して、どれだけ対応できるかだと思う。従って、ある程度我々が公的資金を返済し、上場して資本増強を図ることは、対応のスピードも上がり、提供できるサービスもさらに広がっていくとポジティブに捉えている。

―農林中央金庫とKKRからの出資、資本・業務提携について、どのような事業展開や協同を想定しているか
農林中央金庫とKKRとの資本・業務提携については、これも「第4のメガバンク構想」や地方創生との連携において意味がある。 農林中央金庫は、食と農という大きなテーマを持っており、地方の農業分野にいかに資金を循環させるかが大きな課題。これは、我々が展開している地方銀行との「第4のメガバンク構想」とうまくコラボレーションでき、良いリンクができるだろう。

一方、KKRは、その専門的な運用能力はなかなか代替手段がない。足元では長期金利の上昇によって、JGB(日本国債)の含み損などが拡大し、運用に苦慮している地域金融機関も多くいる。こうしたなか、我々が1つのプラットフォームとして、KKRのノウハウなどを提供していくことができれば、今後の「第4のメガバンク構想」にとって、また地方銀行にとって大きなプラスになると考えた。その結果、今回の提携に至った。

―今期の最終当期純利益1000億円は、NECキャピタルソリューションの負ののれん益や、ベンチャー投資の回収などが含まれているが、来期以降もこの水準を継続的に達成できるのか。また、サステナブルな数字であるのか
利益水準については、今期と来期では法人税率が大きく変わる。そのため、ボトムの利益ではアップル・トゥ・アップルでの比較が難しいという側面がある。基本的には税前利益において、増益基調を維持していきたい。ただ、将来の見通しについては、現時点では2026年3月期の水準までしか公表していないため、その先の水準についてはコメントを控える。

また、負ののれんやベンチャー投資の回収などの資金利益について、我々は多くの銀行が保有しているような政策保有株式による含み益を持っていない。含み益を持つ地方銀行などは、売却によって利益をコントロールすることができるが、我々にはその余力がない分、知恵と工夫、そして努力によって利益を捻出していくことを継続していく。また、それが我々の強みになっていく。そうした努力も含めてサステナブルに成長させていくことが肝要であると考えている。

―調達コストが高いようだが、資金利益を伸ばしていけるのか
預金の調達コストだが、我々がSBIグループの中核銀行である強み、すなわちSBI証券との連携による「SBIハイパー預金」を今年の9月からスタートした。開始から足元3ヶ月で、すでに6000億円の調達ができている。これは非常に粘着性の高い預金であり、こういった導入によって、金利競争のなかで預金獲得という世界から、少しずつ距離を置くことができる。

これまでの金利追随率は、かなり高い水準で推移させてきたが、これは我々のある1つの戦略。今後大きく成長するためには、まず預金と顧客基盤を盤石にする必要がある。金利正常化によるメリットを、銀行だけが享受するのではなく、かなりの部分を顧客に還元することで、確固たる顧客基盤になるだろうと取り組んできた。今後はさらなる金利上昇局面において、徐々にこの追随率を正常化させていくことで、ネット・インタレスト・マージンなども正常な水準に向かって伸びていくものと想定している。今既にそうしている銀行に比べれば、我々にはまだまだ成長の余地がある。

―上場後の課題と人材確保について
まず課題について。我々はスピード感を持って、新しい領域、あるいは新しいビジネスに取り組んでおり、それに伴う将来起こりうるリスクに対するリスク管理体制を強固にしていくことが守りの面において重要だ。そして、伝統的な銀行業務としての基盤をさらに強めることのうえに、SBIグループの一員であることのメリットを生かすため、デジタル技術の導入、あるいはトークンエコノミーをどう我々のこの基盤の上に乗せていくか。それらを通じて伝統的な銀行とは一線を画した新しい領域に強みを持っている銀行として成長できるかが我々の課題。それに対し、いかに精通した人間なり、経営資源を投入していけるかどうか、そこにかかってくる。

―注力領域について、積極的に投資したい分野や、時間をかけて成長を加速させたい分野は何か
中期経営計画において4つの注力領域を示しているが、そこに対する注力度の差は基本的になく、チャンスさえあればと考えている。ただ、やはり新規投資やTOBを含めたあらゆるチャンスについては、「いかに我々にとって割安な価格で買うか」という点が重要だ。我々が現在狙っている領域は、PBRひとつ取っても、まだまだ割安な状況に放置されている業種・業態が多いと感じている。そのため、最初から対象を絞り込むようなことはせず、幅広くリサーチしていきたい。

―「第4のメガバンク構想」において、地銀連携を優先する背景について。また、連携する地銀の預金を投資へ加速させることに対するフリクションが考えられるが、今後は地銀の買収や子会社化といった、支配権を持つことは選択肢に含まれるのか
私が説明するまでもなく、地方銀行を取り巻く環境はこの1年で大きく変わった。それは貯蓄から投資へという大きな動きと、金利の正常化。この2つによって状況は劇的に変化したと認識している。当社の「SBIハイパー預金」の強みは、おそらく貯蓄から投資への流れで証券アセットが次から次へと増えたとしても、投資に向かうための待機資金も同時に増えていくこと。その資金を、我々が預金として着実にキープできると考えているため、ここはさらに強化していきたい。

また、指摘の通り、現在の流れでは地方銀行の預金は流出傾向にある。特に1件1行だけでなく1件複数行と取引がある場合、その傾向は強い。また、相続に伴う預金の流出も増えていくような状況下では、97ある地方銀行のニーズや必要としているものも、バリエーションが広がってきている。そんななかで、もし資本を必要とするという要望があれば、我々は真摯に検討していきたい。それが結果として、持分法適用となるのか、数パーセントの出資なのか、あるいは子会社化するのか。それはその時々の、相手の事情も含めて検討していくべきだ。

ただ、ここに来て我々グループが進めてきた「第4のメガバンク構想」も、時間の経過と環境の変化に伴い、資本関係があるかないかを斟酌する地方銀行自体が、少なくなってきた。我々グループとしても、資本の関係を持っている先とそうでない先とで、振る舞いや対応を変えるようなことは全くない。私はできれば、97の地方銀行全体をバーチャルな1つの銀行グループとして見たときに、うまく連携することで、3つのメガバンクに対抗していけるような、新しいビジネスが展開できるのではないかと考えている。

―自民党の法律案などで、地方の自治体業務の肩代わりや、地方の金融機関を支援するような話がある。これは「第4のメガバンク構想」を掲げるSBI新生銀行の動きと近いものがあると思うが、日本郵政やゆうちょ銀行との連携をしたうえで、支援など考えているか
発想として、我々が何か限られた分野のなかだけで物事を考えていくということはない。ありとあらゆる可能性についてグループとして検討していく意味で、様々な可能性があるとは思う。ただ1つ、地方銀行を支援するというよりも、その地方銀行が持つ地元での特徴やノウハウをどう活かせるかサポートし、それが結果として地方創生に繋がるかどうかが大事。「資本の力で助けてあげる」とか支援をするといった考え方は、基本的には持っていない。

―農林中央金庫との資本・業務提携について、共同での投融資や農業のデジタル化についての想定。また、「第4のメガバンク構想」のなかで信用事業などで農協との連携などはあるか
まず、共同の投資と融資やデジタル化については、手の付けやすいところから、一緒に進めていく。これまでは、SBI新生銀行自体が、いわゆる農協や農中のネットワークに対するアクセスがほとんどなかったため、勉強して、着手しやすい部分から進めていく形になる。ただ、いざやるとなれば、スピード感を持って取り組んでいきたい。

また、「第4のメガバンク構想」のなかで農協との連携があるかについて、我々の発想を限定的に捉えるつもりはない。そのこと自体が、地方創生、地方の金融機関にとってプラスになる話であれば、予断を持たずに進めていきたい。ありとあらゆる可能性があると考えており、今後どのような展開ができるのか、非常に楽しみにしている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]