15日、ライオン事務器が東証スタンダード市場に上場した。公開価格の213円を75.59%上回る374円の初値を付け、454円で引けた。髙橋俊泰社長が東証で上場会見を行った。

―初値の受け止めは
株主から支持をしてもらい感謝している。身の丈からすれば、株価は高評価。その反面、株主からの期待であると受け止め、株価を見たときは身の引き締まる思いだった。これからの運営は株主の期待に応えることが、我々の最大の責務と感じた。
―複数ある事業のなかで、1番力を入れたい事業とその成長見込みについて
1番力を入れるのはエンタープライズ事業で、3~5年の期間で計画を立てている。恐らく全体のユニットで増収になるが、社内のウェートで言うとエンタープライズ事業の収益が1番上がる。最近出社が多くなってきたことで、コロナ禍で考えていた時よりも顧客からの需要が増えてきた。出社率の上昇で、その管理も含めて、経営者が困っている。移転や増床の対応などもある。ただ、昔のように移転して、机と椅子を整然と並べるのではなく、社員たちのエンゲージメントを高めるため、社内のレイアウトも大きく変わってきている。
また、エンタープライズ事業がこれから伸びるだろう前提として、2年前に当社で「とんがった部隊」を作り、エンタープライズの「オフィスまるごと提案」はどうかと、テストマーケティングを実施した。結果、予想以上に案件が多く、高成果を出した。その部隊を新たに再編成して力を入れていく。
我々からしてもオフィス丸ごととなると、物販の机や椅子を別個にこれがいくら、あれがいくらとすると個別の価格勝負になってしまう。「オフィスまるごと提案」では、価格も重要だが、それ以上にデザインや顧客の困りごとを改善するソリューションが提案できることが多い。また、顧客側でも個別に業者を探すよりは、一気通貫でできるほうが良い。LEDやネットワーク配線、施工管理、商材も含めてできると、今の時代に合ったスピード感もあり、顧客にメリットがある。
こうしたニーズや我々が提案できるオフィス丸ごとの商材から、そこが1番伸びると見込み、人材に加え、AIを活用した営業支援システムも導入し、さらなる拡大を目指している。
―強みは何か
同業他社も同じようなことを考え、手を打っている。そこを差別化するというより、当社の強みは大塚商会と資本業務提携したことだ。大塚商会は、1兆円を超える売上高のなかで、ICT商材を含めたITに関わるソリューションを持っている。我々はその分野は弱みで、特に文具業界では、ICT人材の育成をしてきた人も見当たらない。そうした背景のなかで、我々は大手販売会社と連携することとした。特に大塚商会は、ICT商材が非常に豊富で、新たに開発したり、再発掘するよりは、他社より手早く市場に出せる。
また、大塚商会に限らず、オフィスに関連する仕事がその企業のメインではなく横に置いていたような、ほかの大手販売会社と組むことで、最近オフィスに関わるビジネスが多くなってきた背景から、対応できない分を当社が受け皿となるよう協業する。これまでニッチだった市場が大きく成長していることで、体制づくりと支援ができるようにすること、そしてほかの大手販売会社と組むことを通じて、両者にとってWin-Winとなる関係を築いている。結果的に、顧客の問題を解決できる。
―今回の上場を機に、未来に向けてどういう会社にしていきたいか
私1人が考えていることだが、社員の子供が、お父さん・お母さんが勤めている当社に入社したいと思ってもらうこと。情緒的な話になるが、社員が自分の会社を誇りにし、社員の家族が喜ぶような会社になることが究極と思い、目指している。
―それには何が必要と考えているか
社員満足度のため、年収やエンゲージメントを含めた就労環境が重要と考えている。また、文具商品でアクセサリー的なものを販売しているため、女性の活躍を重視し、社内の女性活躍プロジェクトからの提案などを現実に対応している。女性社員だけでなく、全社員に喜んでもらえる運営をしていく。
―社員は今回の上場をどう受け止めたか
聞いてはいないが、230余年の歴史のある会社でかつ卸しで育っているためか、自分から何かを仕掛けることがどちらかというと苦手。ストックオプションを取り入れたが、株は博打と親から言われているため、オプションの権利はいらないと言う社員たちが、そこまでたくさんはいないが、予想以上にいた。今の時代には合わない社風だと思う。
―非上場化したオフィス関連メーカーもあるが、上場の意義や狙いは
2008年に大塚商会と資本業務提携をしたが、その間に2度、上場にチャレンジした。いずれも、社員や株主に対して「上場するため株を買ってください」、「第三者割当を行います」と進めてきたが、結果的に成果にはつながらず、株主も諦めムードになっていた。業績も悪く、配当も出せない状況で創業家も含め株主、仕入れ先に迷惑をかけてきた。それに対する恩返しが1つ。
また、幅広い人材に応募してもらいたい。多くの学校から優秀な人材が集まるが、さらに幅広い知見を持つ人たちに応募してもらうことで、当社のビジネスも広がり、新たな地へ向いてくる。
そしてもう1つ、当社は同業他社と比べてブランド力がない。ライオン事務器さんは人柄が良くて、よくやってくれると言われるが、案件が来なければ自己満足で終わってしまう。ブランド力を高めるには、やはり上場しなければダメ。以上の3点によって、上場を決意した。
―資金使途について
当社のウィークポイントは、営業データベースが構築されていない点。業務改善によるRPAのロボットは動いているが、営業が顧客のもとに行った際に、顧客との話や期待値などのデータが個人のデータとしてはあるが、会社のデータにはなりきっていなかった。その場合、転勤や辞職によってデータが消えてしまう。顧客に対して、人が変わってもビジネスを継続させ、誰もが同じ情報で動ける形を作りたい。
また、AIについて3年で動くと思うが、営業が顧客のところに行ける件数と、持っている口座数を比べると、やはり動ける件数のほうが少ない。持っている口座のなかで、営業が実際に訪問するのは、自分が行きたいところや行きやすいところ、あるいは需要の多いところなど、いくつかの選択肢から選んでいる。それ以外のところには行かない。ただ、行っていないところが大きく伸びているという事実も多くあり、我々が知らないうちに、案件が他社に取られているということも起きている。
そこでAIを活用し、ビッグデータというほどではないが、営業先のリコメンドを得たり、1度何かを売った後、営業は次のPRをなかなかしづらいが、AIが商品のリコメンドや活動の提案をしてくれるようにする。このように、AIによる支援に現在着手しており、営業の生産性を上げることを最大の目標として調達資金を運用する。その結果を、今度は株主配当で返す。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]
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