25日、オリオンビールが東証プライム市場に上場した。公開価格の850円を119.18%上回る1863円の初値を付け、1950円で引けた。村野一CEOが東証で上場会見を行った。

―酒類・清涼飲料部門で2026年3月期予想の販管費が11%増加しているが、来期以降の成長投資とコストコントロールのバランスは
当社は県内で盤石な商売をしているが、海外や県外で著しい成長を遂げている。県内の構成比が73.9%、県外・海外が26.1%で、中長期的には県外・海外を35%まで増やそうと計画している。投資が少し先行しているが、中長期的に収益性も順調に改善していく見込みだ。
例えば、台湾などでは沖縄のことがよく知られており、(買った場所から離れて消費する)オフプレミスとして量販店でのシェアが物凄く上がっている。今は、飲食店向けにオンプレミスのシェアを上げようと活動している。“樽瓶ビジネス”は利益がとても大きく、そのようなステージを踏んで、利益が上がっていく。一時的に販管費が増えるが、売上・利益がある勝ち筋のシナリオを持って進んでいくので、連結ベースや酒類統合では利益率が上がっていく算段で進めていきたい。
―「ジャングリア沖縄」に出資して飲料を提供しており、海外の成長にも資するだろうが、中部地区のホテル経営にどう使っていくのか
ジャングリア沖縄は本島の北部にあり、7月25日に開業した。参考までに、我々はジャングリアに底地を貸し、テーマパークで酒類を、温泉施設の「スパジャングリア」で酒類とソフトドリンクを独占販売している。そこから車で20分の場所に238室を持つ当社の「オリオンホテルモトブリゾート&スパ」がある。美ら海水族館から歩いて5分程度のとても良い立地だ。北部はこれから観光が大きく伸びると踏んだ。
ジャングリアの開業後、酒類とソフトドリンクの売上は想定通りでホテルは跳ねている。1日に10室程度の予約を想定していたが、先週の段階で、7月25日から10月31日までに40室の予約があった。勢いがさらに増している状況で、北部に来てテーマパークとスパ、美ら海水族館、それぞれの滞在時間を勘案すると、「北部に泊まりたい、飲食したい」という需要が増えていることを実感している。
北部に資源を集中することは、かなり正しい選択ではなかったか。また、近隣のホテルも大変好調と聞いているので、北部にとっては、振興の材料になったジャングリアのプロジェクトに感謝している。
―ビール離れについて
ビール離れと言うが、我々は1丁目1番地のビールはしっかり強化しようと、ビールのスタンダードラインの「オリオン・ザ・ドラフト」をリニューアルしてとても好調だった。沖縄の自然界で探した酵母で作ったプレミアムライン「オリオン・ザ・プレミアム」を7月にリニューアルして大変好調だった。さらに言うと、「75BEER(ナゴビール)」シリーズでペールエールやIPAなどの商品群を揃えたクラフティラインの3つのラインでビールを楽しんでもらうことを主力にしている。
それに加えて、いろいろな楽しいビールを作ろうとして、例えば、カラービールを昨年の夏に販売し、今年も好調だ。青色と赤色のビールを混ぜると紫色になる。別の商品を混ぜると黄緑色になる。飲んでも見ても楽しいものを、ビールを積極的に飲まない人にも手に取ってもらえる工夫をする。
それ以外にでもRTD(Ready To Drink)に力を入れており、過去6年間で30%以上の成長を遂げている。「WATTA」と「natura」という2つのブランドがあって、いずれも、沖縄のパッションフルーツやマンゴー、パイン、シークヮーサーを使った沖縄らしいブランドで、昨年度の売り上げは、県外が県内を大幅に上回ったことで、ビール離れの受け皿の役割を果たしているのだろう。
―沖縄経済への貢献について
沖縄で、製造業で初めてプライム市場に上場した。沖縄の多くの企業が我々に、資材やサービス、ロジスティックや広告宣伝などのサービスを提供している。我々が上場することで、世界の信用・信頼、投資家のサポートを得られる。当社と取り引きしている会社にとっても、人材確保や彼らの社業の発展に貢献できると思っている。また我々の商いが増えることで、純粋に彼らの商売も増え、いずれオリオンビールに続いて、沖縄の殻を破って世界に出ていく企業が続くことで経済に貢献できると信じている。
―海外は具体的にどの地域に展開していくのか
韓国と台湾、米国、豪州で、米国は今年に入り4~6月に売上が対前年で倍の勢いで増えている。沖縄の基地に駐在したことがある米国人が、米国に1000万人以上いることが分かっている。そのような人が多く住む南カリフォルニアやハワイの大きなスーパーマーケットなどにオリオンのビールを置いてもらう。消費者がよく知っているので大変人気がありビジネスが好調に推移している。
それに加えて、今年度に入り、香港や中国がとても好調だ。日本との関係性もあり、一定の地域からの農産物や魚介類などに制限もかかっていたようだが、元々オリオンや沖縄について一定の理解があり、それを追い風に増えている。
特筆すべきことは、沖縄から離れた英国で、年初からライセンス製造を始めた。英国のパートナー会社にザ・ドラフトのレシピを提供して作ってもらい、45件程度のパブに配架してもらった。人気があり、1つの新しい勝ち筋となっている。沖縄から相当離れた地域では、「ジャパンクオリティのリゾートビール」という“ブランドの佇まい”でいこうとしているが、物流コストがかかる場面では、ライセンスビジネスで委託生産する。委託生産は収益性が高い。売上がほぼ粗利益となるので、英国での展開を、さらにほかの地域でも広げられるのではないか。
―海外のファンドから関心表明が相次いだが、どこが評価されたのか
私自身もインフォメーションミーティングやロードショーで、海外の投資家と通訳を通さず直接にかなり密なコミュニケーションを取った。その過程で評価を受けていたのは、オリオンブランドの沖縄での強さと豊富な成長ドライバーだった。県外やEコマース、海外、RTD、ブランドの各事業が全て2ケタ成長以上の実績を挙げている。それが全てオリオンブランドの強さとユニークさによって実現できているので、沖縄についての関心が凄く増えたという印象を持っている。
沖縄を知らなかった投資家も多くいた。ジャングリアや来年の秋に予定されている首里城の復元の話もした。沖縄には観光客がハワイの人と同じぐらい来るという話から始まって、「沖縄をブランドにする力が当社にはある」という話が評価を受けた。また、株主還元を非常に高いレベルで実現できている点も評価された。
―今日の終値1950円に対する受け止めは
想定以上だった。社内のメンバーとも、価格がどんどん上がっていくなかで話をしていたが、オリオンビールに対する期待もさることながら、沖縄・オリオンが好きだと意思表示であり、応援したい気持ちに繋がっているのではないか。これも一重に沖縄の魅力ゆえなのかと、我々は沖縄をブランドにする力が幾ばくかあったのかと考えている。その期待に応えるよう精進していかなければならない。
―カーライルと野村ホールディングスとは助言を受ける関係が続くのか
野村キャピタルパートナーズとカーライルが今回、持っている株を全て売り出した。今は期の途中なので、来年の株主総会の6月まではおそらく取締役として残ってもらい、その場での助言などを仰ぐことになる。その後は、取締役を外れて社外に出ると考えるので、何か縁があれば話はあるが、そこまでの付き合いが続いていくのだろう。
―ブランドライセンスビジネス拡大の背景と、収益に占める割合について
私は2021年の12月に入社して、それまでのミッションが「人を、場を、世界を笑顔に」となっていたものに「沖縄から」という言葉を付け加えることで、沖縄とオリオンブランドを重ねて成長させていくことをやるべきだと考えた。
当時、ライセンスビジネスはあったが、広告代理店にほぼ丸投げで、ライセンスフィーが黙っていても入ってきていた。専門のライセンスマネージャーを雇って、ライセンシーを訪問して、「オリオンビールの社長としては初めて来てくれた」と言われたこともあった。そこで、同じような物を作っているライセンシーの交通整理や、契約の整備をして、オリオンのブランドが扱って良いものとそうではないものを示すなど先方にとっての使い勝手の良さをサポートした。
また、魅力的なライフスタイルのブランド商品を一緒に開発しながら売上を増やしていった。アパレルに加えて最近では明治乳業のアイスクリームや、世界的パティシエの辻口博啓シェフと一緒に作った「オリオン ザ・ブリゼ」を8月1日に発売して好調だ。商品もジャンルもどんどん増えている。それに加えて「CHUMS」や「ちいかわ」とのコラボも、先方から声を掛けてもらえるようになってきた。これまでは2割程度の売上として伸びてきたが倍増した。4月から6月は前年同期比2.37倍なので、一気に加速したと自負している。
今月に入り、千葉のららぽーとや神奈川のラゾーナなどで、ポップアップストアとして沖縄で売っていない物を展開したところ非常に人気があるので、さらに増えていくと見ている。収益に関しては昨年度のライセンスフィーが1億4500万円だったが、売上がほぼ粗利益だ。ライセンスに関わっている担当者が2~3人いるが、非常に収益性の高いビジネスで、ボトムに凄く効いてくる。
僭越だが、本来ならばオリオンビールがお金を払って宣伝してもらうのが筋だが、これに限っては顧客自身がお金を払ってオリオンビールを宣伝することになり、足を向けて寝られない。ビールは20歳以上の人でないと対象にできないが、オリオンのロゴを着てティーンエイジャーが街を闊歩できるので、将来のオリオンファンも醸成できるのではないか。収益性の面とブランドの拡散、価値向上という意味では、双方に貢献し得るのではないか。
―アサヒグループとの関係について
2002年に資本業務提携が始まり、我々がアサヒビールのスーパードライを沖縄で作って、アサヒビールの品質保証のクライテリアを乗り越えて合格したものをずっと販売している。ニッカの商品も含めアサヒビールのほかの酒類の商品を、沖縄で販売している。沖縄における流通事業者から見た時の交渉力が強くなる。オリオンとアサヒの酒類をフルラインアップで持っていくので、スーパーマーケットなどでも我々の営業の提案がなければ棚が成り立たないだろうし、飲食店でも当社の営業の提案がなければメニューが成立しない状況なので交渉力が高い。
アサヒビールには、県外で缶ビールを飲食店に売ってもらう関係にある。飲食店向けの樽瓶や、RTDは当社が販売している。オリオンにとっては、アサヒビールの力強い営業力を使って全国の、特にスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ディスカウントストアなどに配架できる。双方にとってメリットのある関係性があり、今回の上場を経ても、基本的な関係を維持・向上していく話し合いをしている。
―野村とカーライルのエグジットの影響は
今日は全ての株を売却する日だったので、ファンドから見ると1つのエグジットが完了した。いくつかの選択肢があるなかでIPOをすることは、ファンドの一部の人がMBO後に記者発表していたが、それを愚直に守ってもらいIPOに漕ぎつけたことは私にとっても喜ばしいことだった。市場で我々の価値を新しい株主に評価してもらう段階では、ROEは非常に大切な指標なので、いたずらに収益性の低い資産を持っていることは必ずしも是ではない。
―沖縄県での酒税の軽減措置が2026年10月に終了するが影響は
確かに2026年の10月に、これまで沖縄の復興のために支援してもらった酒税の軽減措置が廃止される。これは、沖縄県内で作ったビールを沖縄県内で売った時のみに適用されるものだ。県外・海外で売っているものは関係ない。さらに言うと、仕入れているRTDやアサヒビールの商品も全く関係がない。さらに、幸い沖縄で我々が販売しているビールのかなりの量が観光客の消費によるものだ。観光客は3日ぐらい沖縄にいる間にできる限り沖縄の物を食べて飲みたいので、価格が多少変わっても、沖縄のビールを飲まないことはない。価格を上げても対応できる。
それ以外にスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで売っているが、けっこうな量の缶ビールが土産物となっている。沖縄に行くとイオンなどにビールがけっこう並んでいる。あれが物凄い量になり、非常に手堅い。影響を受けるチャネルは限定的と考えている。
そこに甘えることなく努力はしていくが、飲食店ではオリオンビールが指名されるだろうし、土産物屋のチャンネルなどについては、引き続き競争力を持っているだろう。
―MBO時のローンが経営に与える長期的な影響は
土谷徳睦執行役員:今の事業で非常に潤沢なキャッシュフローを生み出している。設備投資などについても自分たちのキャッシュフローから、しっかり投資していける計画を持っているので、いたずらに借入金を増やすことは考えずに、キャッシュフローを含めて配当などの計画も立てている。いきなり借入金が増えていくことは現時点では想定していない。
―酒税軽減の累計額は
村野CEO:酒税軽減措置の累積額については非開示だが、質問の意図を慮ると、泡盛の業界では組合も入れると46社ある。それからオリオンビールなどが戦後の復興として国から支援を受けて国との交渉を経て、ビールは泡盛に先んじて、2026年の10月に軽減措置が廃止になる。裏を返すと「もう独り立ちしなさい」と言われたと思う。泡盛は32年で、条件がいろいろ重なるようだが伸びた。
我々は泡盛の会社も持っているが、その期間にいかに会社を成長させられるか、あるいは県外・海外で我々のようにブランドで売る力もいいし、美味しいお酒を認知されるでも良い。そこが1つの勝負だと思う。軽減措置を受けている間に、独り立ちをして、県に貢献するだけではなく、その会社が県外や海外でも発展していく姿を見せる意味では、オリオンビールがモデルになれた。
今後は我々の大切な仲間である泡盛の会社も、県外や海外での売上を伸ばして、軽減措置がなくなる前に独り立ちしなければならないというエールを送りたい。
―上場を経たうえでの村野CEOの進退などは
沖縄の若者に夢と希望をということで作った会社なので、私はぜひ沖縄の人にどんどんオリオンビールのマネジメントになっていただきたいと心の底から思っている。早く頭角を現して、あるいは早くそういった人たちが入社して、我々みたいな人間を突き上げるようなことになっていったら良い。ただしこれは、沖縄県全体にとっての課題だと思う。このように製造業を上場させて、県外・海外でも発展することをできる人材を、県を挙げて育てることは大切だと思う。1つの会社にいてずっと育ってきた、ずっと沖縄にいる人よりは、県外や海外で研鑽を積んだ人のほうが可能性は高いと思う。そういったものはオリオンビール1社で、なかなか育成できないので、ぜひ御社(沖縄のメディア)も含めて、沖縄の県の人材の育成、将来の経営者育成には、県を挙げて取り組んでいく必要があるのだろう。
―財務戦略について。設備投資で借入金をいたずらに増やす考えはないとのことだが、資金調達としてエクイティファイナンスは検討しないのか
土谷執行役員:レバレッジについては、デットとエクイティのレバレッジレシオがかなり健全な水準で推移している。繰り返しだが、キャッシュアロケーションと株主還元も基本的に自らのキャッシュフローで賄えると想定している。
ただ、今後一切デットを使わずに自分たちの資金だけで成長していくことを決めているわけではないので、都度、投資の規模や目的に従ってデットを使ったほうが全体的な財務効率が上がるとか、株主還元の余地が出てくる判断が付くのであれば、そこでデットの利用もしっかり検討していきたい。
―県外事業の戦略について
村野CEO:3つのチャンネルがある。ECと、ホテルを含め業務・飲食店向け、量販チャンネルなどスーパーマーケットやコンビニエンスストアだ。
それぞれ簡単に説明すると、ECチャネルは、元々オリオンビールのお酒を中心に、オリオンビールのファンに販売していた。昨今、沖縄のグッズあるいは食品もラインアップに加えて、沖縄のEコマースのデスティネーションにすることを心がけている。オリオンの公式サイトに来れば沖縄が揃うようにする。これで売り上げが爆発的に伸びて、ファンも増えている。
そのなかでも、毎月決まった金額を支払い1月に1~2回オリオンの決めた商品を受け取る定期便を利用する人が8000人以上になって、順調に伸びている。ファンの育成や売上・利益の拡大に貢献している。
飲食店向けの業務チャネルだが、何といっても、県外には1300店の沖縄料理屋があって、ビールに関してはオリオンビール1択と自負しており、こちらも沖縄のブームに相俟って、人気が高まっている。加えて、沖縄料理以外のチャネルを一生懸命開拓しているので、そこでの売上を増やしていく。
量販に関しては、1つはRTDに注力している。WATTAとnaturaを拡販する。例えば、WATTAは2021年9月は14チェーンで、定番採用されていたが、2025年4月には93チェーンになった。naturaは2021年の9月には4チェーンだけでの採用だったが、2025年4月に52チェーンの定番採用となった。RTDは群雄割拠してブランドがたくさん出ているが、パッションフルーツやシークヮーサー、マンゴー、パインなど沖縄のフルーツとオリオンのロゴを付けることで差異化でき、定番採用されるチェーンが劇的に増えている。
ビールは、我々の主力商品であるオリオンのザ・ドラフトを、チェーンに採用してもらうべくアサヒビールと研鑽を積んで、目標値を更新している。オリオンビールが近くにある、見かけることが増えてきているのだと思う。加えて、ほぼ毎月限定品を出している。定番であるザ・ドラフトに加えて、限定品がどんどん出ていくので、バイヤーから見ると、非常に面白い沖縄からの商品がどんどん提案されることで、採用率が増えていく。
さらに、RTDとビールが一緒になって、沖縄フェアを仕掛けている。スーパーマーケットのチラシで北海道フェアや九州フェア、沖縄フェアが増えている。今年の初めのアサヒビールの調査によると、北海道や九州に次いで、3番手ぐらいに沖縄フェアの扱いが増えていると聞いた。沖縄を想起するビジネスモデルが機能して、手に取ってもらえる機会が増えているのだろう。3チャンネル同時に、非常に力強い成長を遂げてくれている。
―ファンドからの自立に際しての人材に関する課題や展望は
酒税の軽減措置と一緒で、準備をしっかりやってきていたので十分に自立できる。特にファンドからのアドバイスで大きかったのは、投資家目線だったことだ。「機関投資家から見ると、こういうふうに目に映るんだよ」というもので、我々の所作に関して気付きを与えてくれ、いろいろなアドバイスを得た。上場したので1つの節目を迎えることができた。
―上場のメリットについて
オリオンビールの信用・信頼度が上がっていく。英国の話をしたが、例えば、生産や販売に関するパートナーシップを組む、いろいろなビールやRTD以外の製品を開発していく時に、我々の状況が適時適切に開示されているので、先方から見ても組みやすい相手になっているだろう。
これまでも、オリオンビールというと商品に関する紹介はほとんど要らなかったが、会社の中身については、非開示だったので分からないという状態だった。今後は透明性が格段に上がる。事業機会も増えていくだろう。
2つ目は何といっても人材の獲得、開発、育成だ。沖縄は離島なので人材獲得には苦労がある。元々沖縄には県民が140万人しかいないし、働ける人口もそれなりに少ないので県外や海外の人材に頼らざるを得ない。そういった時に、採用しやすくなるし、いろいろなクロストレーニングを他社と行うことができる。これは当社にとっても沖縄県にとってもかなり大切なアジェンダではないか。
―事業拡大に向けてのリスクと機会は
リスクは、これからもいろいろ起こると思う。何が来るのか怖い反面楽しみであり、私は全体として、日本の人口や元気さの部分がリスクではないか。お酒離れやビール離れのリスクではなくて、全体的な経済や人口が減っていく。
株価が非常に好調だが、勢いが本当にあるのかと時々感じる。業界誌を読んでも、食品関係の事業を勉強しても、日本という市場がこれから魅力的であり続けるには、価格を上げることによる消費ではなくて、純粋な消費がどんどん上がっていかなければならない。
これはオリオンビールにとってだけではなく、業界全体にとってもリスクだが、経済の成長や消費の促進に関して、もしかすると足元で地面が下がっている印象があるので、そこが大きなリスクではないか。
我々がオリオンのブランドを持っていることと、沖縄をブランドにする力があることが機会だと思う。我々の商品がお店に並んだ時、我々のサービスを提供できた時に、「これは沖縄のサービスなんだ」と思う。今日いろいろな人からメッセージが届いた。そのなかの1つを紹介する。「知床にオリオンのTシャツを着ていったが、旅館の人に『沖縄ですね、良いですね』と言われました」。それは今日の株価の人気とおそらく重なっているのだろう。その旅館の人にとってオリオンのTシャツは沖縄そのものだったという側面があったので、オリオンが沖縄をブランドにする力を身に付けられたことが、道半ばだが今後の機会と考えている。
―酒税特別措置の廃止ばかりが報道されるが、同時に酒税の一本化でビールの税率が下がり、第3のビールなどは酒税が上がる。これをどう捉えるのか
アサヒビールもそうだが、我々は圧倒的にビールが強いブランドで、その売上が大きい。ビールは酒税の全国的な改正を見越して強化している。クラフティラインの75シリーズと、今までなかったプレミアムラインのザ・プレミアム、ドラフトの75に加えて、「いちばん桜」に始まる限定品も合わせて年間にたくさん出す。
それに加えて、チャネル毎の限定品も出していく。我々の工場は多品種小ロットを生産できる能力を身に付けており、量が少ない取引も受注する。今はジャングリアキャンペーンを行っているが、機動力を生かしながら、ビールの力を使ってビールを伸ばすことで酒税の追い風を利用しようと考えている。
―英国でのビールのライセンス生産では、オリオンビールの味を堅持するのか。あるいはそのエリアの消費者が望む味に寄せていく可能性があるのか
手探りだが、我々が今年初めに作ったオリオン・ザ・ドラフトは、ごくごく飲めるすっきりとした軽い飲み口だ。英国のマジョリティーである上面発酵のビールとは違う味わいで、これが殊の外受けている。日本から来たリゾートビールとして人気を得ているので、この路線でいきたい。
今は樽で売っているが、その協力会社は缶のパッケージング事業を持っているので、いずれは缶に入れてそれをスーパーマーケットなどに卸していくのが勝ち筋と考えている。いずれにしてもリスクが少ない。ライセンス先にレシピを差し上げて作ってもらって販売すると粗利益と売上が一緒なので、うまくいったら展開していく。米国からも「ぜひ作らせてもらえないか」という声もかかっている。米国は関税の問題も何がどうなるか分からないので、しっかり準備していこうと思う。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
よく読まれている記事
2025年9月5日 伊藤忠が日本初のオレンジ債:3年物の最低スプレッド
2025年5月21日 野村HD:7億ユーロでデビュー、ピークは25億
2022年2月28日 上場会見:マーキュリーリアルテックイノベーター<5025>の陣CEO、プラットフォームと利益成長を両立
2022年12月23日 上場会見:GENOVA<9341>の平瀬社長、信頼できる情報と医療DX
2024年4月1日 上場会見:シンカ<149A>の江尻社長、会話のデータを付加価値に