12月17日、黒田グループが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の700円を26.43%上回る885円を付け、875円で引けた。液晶ディスプレイ用印刷版や自動化設備などの製造・販売と、プリント回路基板の設計・受託開発を手掛けるほか、エレクトロニクスと自動車業界への電子部品や電気材料などを販売する。MBKパートナーズによるTOBで2018年3月に上場を廃止していた。細川浩一社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

―公開価格よりも高い初値と終値だったが受け止めは
一緒に取り組んできた役員、あるいは今の株主と今日の動きに関してまだ語っていないので共通認識ではないが、目指したタイミングで上場させてもらい感謝している。初値や終値に関して自力でできることはほとんどないので、これからも足元の業績や、これからどうするか説明するということの、さらに質を上げていかなければダメだという緊張感がある。
―上場への思いについて
一旦非公開化して、その時もたまたま社長をしていたので、その時のことと今を考えると、祖業の商社を頂点にしていた黒田電気の良いところは全部残した。ただし、再上場という気持ちではなく、いわゆるフレッシュスタートという初めての気持ちで取り組むことを役職員にお願いしており、現時点で非常に新鮮な感覚でいる。
―再上場ということで、非公開化した時に投資ファンドからのTOBがあったのではないかと記憶している。ファンドの傘下に入った状態での上場となるのではないか
ファンドは30%を販売した。一定期間後に全て売却すると聞いている。
―それを踏まえたうえで、非公開化を経て再上場するに当たって、前回の上場とはどういった受け止めの違いがあるのか、もう少し深く聞きたい
非公開化した時は、その時も特定株主と話したが、我々の当時の会社をより良くしていくための方針として意見をもらえていたので、まだ7割残っている投資家は、我々がこれからやりたいことの内容を理解している。この間に役割分担をしたが、一緒に動かしてもらった記憶がある。
前回と今回で違いがあるとすれば、商社を頂点にして、全ての事業をできた時に、できなかったことを、全ての事業や地域をフラットに見ることによって、さらに早くリソースの配分に対する意思決定ができることや、選択肢が広く見えるようになった。これらを仕組みとして取り入れており、賛同してもらった人と一緒に偶然この期間にワークしてきた。
今までの大きな構造転換は、黒田電気を頂点としていたことをなお続けてもできなかったのではないか。やはり手伝ってもらって、仕組みや運営の仕方も含めてたくさん学んだので、一緒に漕いでこられた。
―上場は、商社事業をトップとする黒田電気の経営方針転換の一環であるイメージか。今回の上場が契機になってということか
通過点だ。現時点でしばらくの間、10年、5年のスパンで言うと、この形態でやることが1番社内外に説明責任を果たせることにつながる。あとは分相応の身の丈に合った財務基盤もできたのがこのタイミングだった。
―投資ファンドが、一定期間後に売却すると言ったが、株主の意向によるので、黒田グループの立場からは言えることは少ないだろうが…
ここまできたときの適切なコミュニケーションがずっと続いているので、彼らがずっと持ち続けることはない。
―業績が上がっていけば問題ないだろうが、株数だけで見ると…
まだ70%残っている。現時点では、ある期間のなかで消化していくということになっている。仮に何らかの方針変更があれば、株主としても説明するだろうし、私が理解できない内容であれば拒否することになるだろう。いずれにしても事業を預かっている我々が実績を作って、今後4年間の累進配当をやりきって、その後もこういった財務規律を維持することが見えてくるのは、それほど長い時間軸ではないと思う。
―上場するにあたって、世の中に提供したい価値や影響を与えたいことがあれば、教えてほしい
BtoBのビジネスをしており、事業規模からしても、世の中に何かをということよりも、取引先を通じてそれを展開する立ち位置であることは理解している。日本の企業だけではなく、より長く付き合える取引先とこれからも付き合っていくことを原点に、まだできていないことはたくさんあるが、説明責任を果たすことを、全従業員や役員の最も重要なことの1つとして取り組んでいる。それを続けながら、我々が間接的に世の中に使われるようになる部分を担っているということで、貢献していくしかない。
―新たな柱となる製造事業への投資について
2018年に非公開化して以来、その際のLBOローンをまず返済することを、優先順位を上げて取り組んできた。既存事業に関しては、適切な新しい投資を続けながら、数年先まできちんとした投資をしていく。ようやく財務規律の面がその基盤も含めて、漕げるようになった。一昨年、昨年度と続けて、当社が持ち続けても強くできない事業3社を適切な相手に売却した。
その部分のトップラインは百数十億円あったが、それに相当する製造業を、ここ数年以内に新しい次の柱となる事業として、10年後を見据えて出していきたい。いろいろな事業分野を目にしているが、上場を機に、今年度内にきちんとしたチームを立ち上げて、具体的な考察に入る。
―きちんとしたチームを立ち上げるとのことだが、製造事業のための専門部署を立ち上げるイメージか、それとも新たに人材を獲得するのか
既存の人材で製造事業が理解できる人材、それは技術だけではなくファイナンスも含めてだが、そういうのを立ち上げようとしていてメンバーが揃ってきている。
―新たな製造事業とは具体的にどのようなものか
顧客の要望があって加工業を始めたが、それを独立して製造業として別会社にしてきた。ほとんどのケースでは、当社の社員が製造業の会社から相談を受け、金融機関から「預かってくれないか」というものだ。他社がやっているような複数社から買い手を募るというより、全て相対でやってきた。その時もこちらから積極的に探したのではなく、そういうことを続けていた。
今後は、今のベースを強くするために、取引先と相談しながら、どこかの事業分野に絞る。具体的に3つぐらいに絞り込めているが、最終的には、今の事業と重ならない分野で出していく。
―今は液晶などを扱っているが
液晶やハードディスクであって、最終製品が偶然そうなっている。それぞれコアになる技術が違う。例えば、液晶では、自動機を作る。あるいは顧客の要求するラインに合うようにカスタマイズした印刷の版を作っており、量産品とは違う技術がある。
ハードディスクの部品も手掛けているが、クリーンルームを使った様々な管理を40年近く続けており、その技術はあってハードディスク関連事業がまだ続いている。
「何を」からスタートする。保有している技術が活きる分野で、これからまだ続くであろうという事業部は、ニッチなところでシェアを上げてもの作りをしているので、トップラインを増やすというよりも、市場規模がある程度あって、百数十億円ほどの塊になる事業を取りにいく、あるいは預かることを考えている。
―ニッチ領域に舵を切ったのはいつ頃か
印刷版は50年以上で、ハードディスクのビジネス関係は40年以上でまだ続く予定だ。そのような商材は、今は見当たらないようだが、市場規模が数十~数百億円の事業はたくさんある。
当社の顧客として付き合っている会社などでは、事業を絞り込んで選別している状況だ。自分たちで持てなくなっている。それは事業が駄目だからではない。これから各社が取り組んでいるところに、リソースを絞り込んでいるので、長年の付き合いのある会社から事業を預かることができれば1番良いと考えている。
―規模としては百億円強…
そうだ。一昨年に手放した3社の合計売上高が百数十億円で、それが残っていれば、商社の売上高と製造業の売上高の比率は約2対1だった。その比率を多少の時差が生じてもできるだけ継続していこうということをずっとやっている。
―ずっと2対1で
非公開化後に、商社でトップラインだけが高くて収益性が低い仕事は、新しい仕事を取らないように、そういうのを6年、7年かけて変えてきて、現時点では商社のほうの利益率がそれなりにある。そのバランスを保ちながら、基幹技術も活きる、あるいは既存の取引先との良好な関係をさらに強くしようとしてきた。
具体的な話ということではないが、非公開化の8年前後も今までいろいろなことでものづくりの事業に取り組んでいたので、様々な話があったのは事実だが、LBOローンをまず返して、最も重要なのはグループ全体の構造を転換することを並行でやっていたので、そこを受けられなかったという事実もある。
今は既存事業を漕ぎながらでも次の投資に対してリスクを取って、取り組めるベースができた。それをできるだけ早いタイミングで実現して、株主還元方針の実現のために緊張感を持って経営していく。創業80年だが、取引のあるいろいろな顧客は創業以来ずっと続いている。50年以上のところでほぼ全ての売上高になるような事業が揃っている。それは、中身が変わっても商社の場合は提供しているサービスの質が上がっているということだ。
ものづくりの場合はより難易度の高いものに挑戦している。そういったビジネスモデルに絞り込んで、いわゆる従来の商社事業ではないところだけを残した。製造業の3社を預かってもらったところは、規模が圧倒的に大きくないと利益額が稼げないというところもある。今は製造業6事業で10%強の営業利益率で、そこと比べても遜色のないものを出していく。
―規模を追わないと駄目なところは売却した
ものづくりではそうだ。商社のほうは、顧客がいるのでやっている事業を勝手にやめるわけにはいかない。トップラインが高くて収益性が低い案件は、新しく取り込まないということで、少し時間がかかったが、商社と製造の両輪のバランスを取ることができた。
―非公開化の間にそういうことができた
そうだ。もう少し具体的な商材の技術のキーワードを話したいが、最終的に複数の分野で探っているので、誤解を招く可能性があり、具体的に決まったら話したい。
―海外について成長戦略を教えてほしい
今ある事業領域で、昨今、保護主義的なところ、エリアのことで話がいろいろあるが、我々のスタンスは、取引先が「まだやろう」と言っている所には付いていく。全方位でいろいろな取引先の声を参考にしているわけではなく、長年付き合いのある取引先、それは顧客やサプライヤー、協力工場といったところが「やろう」と言っているところに関してはきちっとサポートすることを考えている。
現時点でもこれからもしばらくは変わらないだろうが、米国や南米といったところの知識と経験はないので、東南アジアと日本、中国がこれまで続いてきた事業領域の地域として、商社も製造事業も、そこが主軸になると見ている。
―配当について。DOE目標7%はかなり高い水準ではないか
結果的にDOEを採用し、このようになった。目論見書の財務規律について非公開する時にある程度決まっていたことが2つある。LBOローンで自己資本比率がマイナスになったので、とにかくこれを40%前後に持っていこうというのが当時からあった。
また、当時はトップラインが大きく収益性が低かったので手元流動性が低かったが、月商の1ヵ月ぐらいでやっていこうと、利益の質を変えるということがあった。そのうえでDOEを選択したのは、我々の案ではなく、いろいろな証券会社などのアドバイスで、当社の事業にとっては、この方法が1番安定的に事業の内容を見てもらえるというものだった。
急激に成長する企業ではないので、きちんとキャッシュを生み出すことを見てもらうために、最終的にこのようになったので、社長である私が選んだわけではない。どういうふうに見てもらうのが1番良いのかということでこれに決まった。
ただし、それはこちらが先にあったわけではなく、非公開化後に「こういう事業を目指そう」というゴールと手法があったと理解してほしい。元々私は財務・経理の専門家ではないので、いろいろ教えてもらって理解した。
―累進配当ということで、利益が上がればどのように
具体的なものがないのに、資金を貯めておくことはしない。であれば、「こういう形できちっと使います」ということで、累進配当を自己資本比率や手元流動性の範囲で維持しながら、稼いだものを再投資に回す。
―財務規律の範囲内でということか
そうだ。プラスマイナスを維持しながら、手元流動性も1ヵ月前後を維持しながら、「これをやらせてもらえますか」と説明できるものが出てきたときに、適正な額の資金を使う。
―かつては東証1部にいたが、プライムを目指すのか
私の時代ではチャレンジしないと思うが、次やその次の人にはぜひやってもらいたい。少なくとも、今の事業規模、全ての数字、売上や利益なりの数字が倍に、あるいはそれが確実に見えた段階でなければやるべきではないと考えている。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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