21日、ミークが東証グロースに上場した。初値は公開価格の800円を5.6%上回る845円を付け、790円で引けた。MVNO(仮想移動体通信事業者)に回線の提供を行うMVNE(仮想移動体サービス提供者)事業と、IoTデバイスの通信回線の管理が可能となるSIMを提供するIoT/DXプラットフォームサービスを手掛けている。峯村竜太社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

―上場の所感と初値の受け止めは
まずは皆の、特に顧客の支援があって上場でき、ありがたい。ただそこはゴールではなく、グロース市場に上場して、これから先の成長を目指していくということで、身が引き締まる思いだ。初値について、マーケットは厳しいと感じるが、そのなかでも我々の成長性は評価されたのだろう。今後業績を伸ばし、報いられるようにしっかり成長していきたい。
―世の中に提供していきたい価値や投資家に伝えていきたいことはあるか
サービスはBtoBtoXという形で、特に個人の消費者が「MEEQ」というブランドを目にすることは基本的にはなく、認知度も低いだろう。さらに、色や形のないサービスを提供しているので、分かりづらさはある。そのため、我々自身のブランドが目立つことはあまりないが、IoTや格安のモバイルサービスで法人の顧客が世の中に新しい価値を提供をしていくときに、我々を裏側で使ってもらい、部品として組み込んでもらえると、素早くビジネスができる。あるいは投資や固定費を節約でき、黒子として裏側で、顧客がイノベーションを起こすことを支援し、役に立てたら良い。
―具体的に中長期的な売上高成長率の目標など数字はあるか
公開している数字は現時点でない。
―中長期的な成長戦略について
最初にMVNEをやり、今はIoTをやっているということで、第2段階まできている。これは基本的に回線をベースに売り上げを立てるビジネスになっている。顧客は回線だけでなく、そこからデータを溜めるところや、その先に対してビジネスをしているので、コミュニケーションを円滑にできるようなサービスを提供してほしいといった様々な要望をもらう。第3段階のビジネスサポートを提供し始めている。例えば、我々の顧客がエンドユーザーにIoTのサービスを提供していて、物を届けるときに顧客に「何時に届きます」とSMSで配信するようなプラットフォームが欲しいと要望があったので、開発し、既に提供している。
また、通信回線だけではなく、使うにあたってはハードウェアがセットになる。レンタル提供で行う場合には、エンドユーザーに通信とハードをセットにして送って、レンタル期間が終わったら返送してもらう。それを倉庫でリファービッシュ(修理・整備・再生)し、次のエンドユーザーに送る仕組みを作ることが必要だが、大変で面倒くさい。このあたりも我々で仕組みを仕立てて、いくつかの顧客に併せて提供して使ってもらっている。共通的に使われている通信回線の部分からスタートしたが、業態やビジネスの規模によって、縦積みのソリューションをプラットフォーム上で提供し、伸ばしていくのが成長戦略だ。
―中長期の成長戦略に関して、MVNE事業とIoT事業の売り上げの割合は変化するのか
いつ時点でこれだけというのは設けていないが、ただ、IoTの市場の伸びが中長期的に大きくなると見ている。今は通信が載っていないものも、基本的には多くの物に通信が搭載されていくという流れはあるだろう。それがいつ、どの時点でどれぐらいまでいくかだが、長期目線で見れば、IoTの方が大きくなっていくのではないか。
―利益の構成比はどうか
分けられないというのが答えになってしまう。仕組みが全く同じものを共通で使っているので、分けようと思うと恣意的になってしまうので、共通で見ている。
―素人感覚だと、IoTの方が利益率が良いと推測するが
今のコンディションで言うと、上りがスカスカに空いているので、追加の原価がゼロというのは言い過ぎだが、新たにそのキャリアと繋いでいる設備を太くしなくても、新しい顧客をそこに入れて提供していける。そういう切り口で見ると利益率は非常に高い。ただ本質に立ち返ると、MVNEとIoTの事業で等しく利益を上げられたときに、それをどうアロケーションするべきかは難しいし、恣意的になってしまう。
―MVNEのサービスで主要の3キャリアを抑えている状況で参入障壁が高く、1案件あたりの規模は大きいが、今後は新たに取れる見込みはあるのか
我々は元々親会社のなかにあり、カーブアウトしていった。親会社のなかにあったときは、MVNEを10年以上しており、やり始めた頃は正直なところ、インターネットサービスプロバイダーなど固定通信をしている通信事業者が、「モバイルサービスもやりたいので支援お願いします」と言ってもらえるのが100%だった。一方で足元は、「顧客に対して通信を提供し、あわせて通信事業者の免許も取りたい」という通信を全くやったことはないが、何らかの顧客を持っている事業者ばかりになっている。昨年度末で我々の顧客のMVNOのうちそのような事業者が3割を超えるようになった。これはイメージで例えば、小売店などは会員の顧客を抱え、モバイルサービスを提供すると売上が増えるが、「何GBでいくら」と契約し、ギガが余ったら繰り越していると思う。その余ったギガをポイントに変えて、顧客がポイントを使いに来店したり、購入単価が増えたり、モバイルそのものよりは、既存のビジネスの連携を考えている事業者が増えてきている印象だ。
―IoTの試みをネットからできるということだが、一般の消費者や様々な人ができるのか
法人だ。Webブラウザベースの「MEEQコンソール」で最初に登録してもらうと、プランが出てくるので、SIMを何枚欲しいかをポチポチすると買える仕組みだ。
―初めに「MEEQコンソール」をお願いするような形ではじめるのか
そうだ。そこもWebでできるようになっている。
―回線が減っているとのことだが、他の企業でもリスクはあるか
楽天モバイルと、ソフトバンクになったLINEモバイルの2社で、減っているのは、キャリア化してしまったことが理由だ。基本的にキャリアは電波を取らないとできないので、極めて起こりづらい話だと思っている。
―例えば、ゴミの回収で、回収の時間や手間がかかるため、ニューヨークでは清掃の車が回るにあたって、このゴミ箱は満杯だからここは行かなければならない、ここは満杯じゃないから行かなくていいということでIoTを使うという記事を読んだが、その理解でいいか
そうだ。それも多くあるユースケースのうちの1つだろう。少し補足をすると、ゴミ箱の事例は現在あまりないと思うが、タクシーのなかでクレジットカードを使うのもまさしく、我々のIoT回線が使われている。結構なところでもうすでに使われていることも多い。
―先ほど言ったのは、初めは原始的な部分で使われた記憶があった
その通りで、人件費削減やそもそも人が足りないところを、言ってもらったようなやり方でどうしていくのかは、IoTあるいはDXの切り口で注目度の高いところだろう。全く同じような仕組みで例えば、酪農家で餌がなくなったときに直ちに補充しに行けるか、その辺は、これから伸びていくと見ている。
―直近の売上高の減少傾向がネックだったと見た投資家もいると思うが、リカーリング売上がほとんどのため、特定の顧客の影響は一巡して、今後、売上高は右肩上がりの成長性に向けていくという解釈でいいか
そうしていきたい。
―総務省の政策など抗いようがないところはあると思うが、現時点でミークに影響がありそうな動きなどは
今のところは大きなものはないと認識している。元々10年前に我々がMVNEサービスを始めたのも総務省が主導で、本格的に国内の携帯料金を下げるためにMVNOを受け入れようと流れを作ったので、舵を切って向かっている方向は今も変わっていない。逆にまた切るとなると、国内にはキャリアだけいればよく、我々だけでけはなく、それ以外の通信事業者全部いらないことになると思うので、安定的に同じ方向に向かっていると理解している。総務省は去年の年末頃からナンバーポータビリティがまだ世の中に広がってないというので、ゲゲゲの鬼太郎を使いながらプロモーションしているので、格安SIMにもっと移行してほしいという、我々としてはプラスなことをやっていると思う。
[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]
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