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上場会見:ナレルグループ<9163>の小林代表、技術者も職人も

21日、ナレルグループが東証グロースに上場した。初値は公開価格の2690円を5.58%下回る2540円を付け、2619円で引けた。建設業未経験者を正社員として採用して教育し、施工管理技術者など建設技術者として派遣。建設技能労働者(職人)の職業紹介も行う。ITエンジニアの派遣やシステムエンジニアリングサービスなども手掛ける。上場に向けてアドバンテッジパートナーズ(AP)が2019年に資本参加した。小林良代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

現在は技術者の派遣を中心としているが、職員や1人親方も人手不足が課題となっており、職人の人材紹介を通じて、建設業界で人手不足に苦しむ全ての企業に対してサービスが提供できる唯一無二の存在を目指していきたいと話す小林代表
現在は技術者の派遣を中心としているが、職員や一人親方も人手不足が課題となっており、職人の人材紹介を通じて、建設業界で人手不足に苦しむ全ての企業に対してサービスが提供できる唯一無二の存在を目指していきたいと話す小林代表

―初値が公開価格から5.6%下回っていることの受け止めと分析は
いくらが付くかは市場の判断で、その日の相場環境などにもよる。誤解を生じる言い方はしたくないが、今日の価格は価格として受け止めている。ただ、当社がやることは、事業に邁進して、毎年増収増益しながら株主還元をして、そうすることで中長期的に投資家がついてきてくれるものと信じている。今日の株価について、高かった、低かった、残念だったというコメントは特段ない。

―APと組む狙いや経緯、理由、メリットは何だったのか。また、今後は
当社は2008年に創業して、2012年頃に未経験人材を導入するビジネスモデルで急成長した。APと2019年に株の譲渡を行っているが、売上高が75~76億円だった2016年か2017年頃に、IPOを1年間目指して一度断念していた。この理由が会社の管理体制が全く追いつかなかったということと、私一人で株式を抱えていたもので、中小企業の社長に相当の負荷がかかるというと少し変な言い方になるが、そういう事もあって断念していた。

ただ、会社が伸びていくうえで、IPOがない限り成長が加速しないのではないか。1年前に失敗していたので、また自分でやっても同じことの繰り返しになるだろうと、いろいろな提案を聞いていくうちにPEファンドはけっこう良いという話を聞いた。ファンドを紹介してもらい、5~6個のなかでコンペを開催した時に、最もしっくりきたというのが理由だ。いろいろな提案があり、似たようなものもあった。ただ、そのなかでAPの担当者の人柄や、プレゼンの仕方、IPOを本当に真剣に考えてくれていることが伝わったので選んだ。

今後に関しては、当社が何か言える立場ではない。その話をしたことがないので、どういう形になるか分からないが、今回ある程度売り出しで放出してもらっているので、どこかのタイミングで、あの業種の特性上、良い形で抜けていってくれるのではないかと期待している。

―良い形でというのは、市場での売却や適切な相手とのブロックトレードなどがあり得るのか
今後、APと話し合っていくものになるので、たとえ話としては喉まで出掛っているものもあるが、多分CFOから止められる。ただ、例えば、それが凄く売り圧力にならずにやっていける方法が1つや2つはあるのではないか。これからの当社の成長によってだ。向こうにも償還期間がある。今言える話はその程度で、結論じみた答えになっておらず誠に申し訳ない。この後数年かけて徐々にという形になっていくのではないか。

―初値は、高騰するものではなかったが、逆の言い方をすると、公募価格が適正に付いたという見方もできるのではないか。機会コストが失われたわけではなく調達通りの金額が入ってきた意味では、上場で今問題になっているディスカウントの問題が生じていない感じもした。APの関与で適正な価格が設定できたのか
APと我々が一緒に歩んで今は3年半だ。IPOを目指して約3年で、価格に関しては野尻悠太CFOも絡んでいるだろうが、APというよりは証券会社と侃侃諤諤ずっと話し合った。その末に、先般ロードショーがあった時にこれぐらいではないかと評価され、上限になったと見ている。そのような評価を得たので、あの価格になったのではないか。

類似企業を見ると、高いか安いかは分からないが、PER的に見ると当社のほうが幾分もう少し頑張らなければならない程度の水準になっている。今日出たばかりなので、成長性や会社の魅力を投資家にアピールして、さらに魅力を深めていってもらう努力はしていきたい。

―IPOを断念した際の、内部体制の充実の難しさを、APが入ったことでうまく解消した実感はあったか
多大にあった。2016~2017年に目指していた時に、形式上、多少残っていた部分はあったが、営業中心で来ていた会社だったので、管理部はかなり劣っていた。ただ、2019年に野尻CFOに入ってもらい、今でも、総務にも経営企画にもいろいろな部分で管理部に素晴らしい人たちが多くいる。組織化もしている。2020年にスタートしたIPOプロジェクトのなかで、きちんと構築してきた組織体系なので、これに対しては、私は非常に感謝しており、素晴らしいと考えている。

―2024年問題が業績に与える影響は
2~3年ほど前から、毎月と言っても良いぐらいだが、残業の抑制がかなり行われてきた。当社の売り上げは、ここ数年は20%ほど伸びてきているが、今後も残業で1人当たりの売上単価は減っていくだろうが、その分人数でカバーしたいので、2024年から極端に残業が減ったとしても、十分に転換できると見ている。

―人材不足でビジネスチャンスになり得るのか
需要はさらに旺盛になるだろう。かと言って、今も5.51倍の求人倍率が6~7倍になっても、その分の供給ができるかという問題も出てくる。ただ、需要が旺盛なのは間違いない。

―職人や一人親方の紹介事業への参入は、他社に対する参入障壁になるのか
非常に参入障壁が高いビジネスになっている。職人人材プラットフォームを運営する子会社のコントラフトでやっている。柴田直樹専務がコントラフトの社長に就いていて、より具体的に話をできるので、バトンタッチする。

柴田直樹専務:当社のグループ傘下というか非連結だが、全国建設請負業協会という協会が、建設業の有料職業紹介の認可を厚労省から受けている団体だ。許認可を得るためにハードルがある。1つには事業の実績が3年あること。もう1つは、30以上の下部組織が適切に運営されていることなどで、そういった要件をクリアしていかないと取れない。全国に今3団体しか認可を持っていない。かつ、一般社団法人と財団法人でしか運営できないため、なかなか大手の人材会社がそこには入ってこられない状況だ。

小林代表:実態としては、人材紹介サービスに関しては、当社しかやっていない。

―施工管理技術者の派遣と職人の人材紹介を両方手掛けることによるシナジーは、現状ではどのようなもので、今後どうなるのか
主に採用で非常に効果が発揮できる。表現を間違えるといけないが、まず当社に毎月、有効求人というか対象となる有効応募が、数千の数が来る。そのなかで、施工管理というのが、どちらかというとホワイトカラーの職業で、当社からすると採用のハードルが高くなっている。一方、職人の採用ハードルを低くしているわけではないが、そこの色分けを見て、紹介できる者は(技術者派遣の)ワールドコーポレーションからコントラフトに紹介して、その人材を全国建設請負業協会が職人として紹介していく形で、シナジー効果を発揮できる。

柴田専務:もう1点あるとすると、ワールドコーポレーションの顧客がゼネコンなので、ゼネコンの下請けがいわゆる協力会社に当たる。このため、顧客の部分においても、ワールドコーポレーションの顧客基盤というのが、十分にシナジーを生む要素になってきている。

―受注に際して好影響が出てくるのか
需要面においては、非常に旺盛だ。建設業全体で人材がいなくて、なり手不足でもあるが、経験者もいない。そんななかで、どこの業界もそこに参入できない。法令の絡みもあって、ジレンマもあるだろうが、当社のほうが未経験の若手に強く特化している部分もある。建設の魅力を知らない若手は非常に多い。業界自体を知らないし、やってみたら建設の仕事は手に職がつくし、ある意味では自分で独立することも可能で、そうした部分を踏まえると、魅力を伝えることで彼らがそこに振り向いて職人を目指すきっかけにもなり得る。採用・営業面どちらにおいてもシナジーが生まれている。

―中長期的な業績の目標や戦略は
小林代表:我々のビジネスは非常に単純といえば単純で、当社の場合は人を採用して、それが未経験の人材で、教育する人間がいて、ノウハウがあって、そこで教育して現場に出していくモデルだ。数多く入れて、入ってきた人間に会社の魅力を伝えて、これを出さない。ここが凄く肝要だ。

先日も日経新聞に載せた5年後には5000人という話は、多少保守的に見積もっていて、そうすることで、まずは3年から5年ぐらいの間、毎年120%程度の売り上げ規模の拡大は可能ではないか。そのへんをベースにしていきたい。

―株主還元について、今後の想定があれば
公表している話で50%の配当性向を目安に検討しており、今後、株主に対しての還元は、事業の数字を伸ばすことで、まず今は50%を配当することは確実に想定している。そのほかに事業を伸ばすうえでいろいろな形の還元方法がある。ただ、決定しているものがほぼないので、情報が独り歩きしてしまうと怖い部分もあって答えにくい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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