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上場会見:アイデミー<5577>の石川CEO、高付加価値案件をクロスセル

22日、アイデミーが東証グロースに上場した。初値は付かず、公開価格の1050円の2.3倍である2415円の買い気配で引けた。法人向けのAI/DXプロダクトやソリューション、個人向けのリスキリングを提供する。エンタープライズ企業のDX人材育成のため、オンライン研修の「Aidemy Business」を展開。そこから「Modeloy(モデロイ)」というソリューションの利用につなげ、DXに必要なテーマ選定やPoC(実証実験)、開発などで企業のDXを支援する。石川聡彦CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

カーボンニュートラルなどGX(グリーントランスフォーメーション)に特化をした教育コンテンツの制作と人材の育成も今提供をしており、今後スタンダードになるような技術や教育研修、その後のコンサルティング分野も実現をしていきたいと話す石川CEO
カーボンニュートラルなどGX(グリーントランスフォーメーション)に特化をした教育コンテンツと、その後のコンサルティング分野も実現していきたいと話す石川CEO

―売買が成立しなかったが、受け止めは
値段が付かず、さらに上で決まる気配があることについて、我々に対する大きな期待の表れと率直に思っており、すごく身が引き締まる。株価についてはアンコントローラブルな部分もあり、言及するのは非常に難しいが、期待に精一杯応えていきたい。

―上場の目的として、これまでできなかったアクションプランを実現してさらに成長していきたいとのことだが、具体的には
上場する目的の1つとしては信頼性の向上がある。人材採用の面でも上場企業というメリットを最大限生かしていきたいし、顧客への提案にも活かしていきたい。2点目が、アクションプラン、経営の選択肢を増やしていく。具体的に言うと、ほかの会社を買収することは、未上場の間はハードルが高い部分があった。今後は検討を進めていきたい。現在、具体的に決まっている案件や検討が進んでいるものはないが、積極的に進めて事業の成長を加速していきたい。

―Aidemy Businessの利用を途中で止める会社もあるのか
長期継続顧客比率の74%という定義は、4四半期連続で売上高計上している企業の割合だ。逆の26%はどのような数字かというと、解約した会社もあるが、新規で契約し始めた会社も含まれている。26%が純粋に解約しているわけではないことを補足したうえで、数字が見にくいため、今は111社ある長期の継続顧客企業数、これをKPIとして今後も社内的には追いかけ、報告していく。

止める会社が一定数いるのは事実だ。特に、SaaS系の会社と比べれば、解約率は高い水準になってしまっている。それは人材育成というサービスの特性上、「やりきった」という解約もあるのも事実だ。満足してもらえないこともあるが、やりきった解約もある。人材育成だけで継続してもらうのではなくて、Modeloyを通じたクロスセルの提案の幅を広げていくことで、会社としての契約がずっと続く状況を目指せると思うので、フォローアップしていきたい。

―Aidemy BusinessからModeloyに移行するタイミングが、利用する会社によって重複する可能性があるが、人材リソースのキャパシティとの関係について聞きたい
全ての案件を受けることはできないので、高付加価値な分野を選択している。具体的に言うとAI関連やデータ関連、クラウド関連といった、新規事業としてITを使ううえでモダンな技術が使われているものに特化して案件を取りに行く。それでも社内のキャパシティで受けられないものがあれば、パートナー企業と一緒に対応するケースもある。

―Modeloyの利用者数は
累計で10社ほどになっている。引き合いが強いが、人材のキャパシティの問題もあり、そのなかでも魅力的な案件だけを、我々がかなり選定している側面もある。今後、上場を含めて人材の採用を加速できると見ている。顧客基盤もかなり揃ってきたので、提供余地が増えていく可能性が高い。

―人材戦略について、オンボーディングで工夫していることも含めて聞きたい
会社のバリューの3つ目として、サイエンティフィック・マインドセット、科学者たれという言葉がある。プロフェッショナル志向の非常に高い人材を採用して、その後も育成していくのが特徴だ。具体的に言うと、我々はリモートワークを許可しており、基本的に週に1回は出社をする。ただ、週4は個人の裁量に任せている。

技術職については、フルのリモートも認めている。1人ひとりプロフェッショナル性の高い人材が集まっており、そういった人を採用していく。一部にまだAI/DXに関する知識がない人もいるので、自社のAidemy Businessのサービスを社内でも利用できるようになっているので、知識をキャッチアップしてもらう。このような人材育成に取り組んでいる。

―リスキリングに政府が力を入れており、経済産業省が一昨日に発表した支援事業にアイデミーも採択されたが、法人向けのシェアが伸びている。今後も法人のほうが良いのか、国が旗を振っているので個人向けのリスキリングが想定以上に伸びるのか
両方伸びていくという前提だ。個人向けの領域でリスキリングという言葉を使っていて、政府の趣旨としても、個人の自由な選択による学び直しという意図が強いと考えている。個人向けのサービスをリスキリングと呼んでいる。

経産省でも、我々を事業者として補助の対象として発表した。厚生労働省の教育訓練給付金という制度も、数年前から補助対象の業者として選定されている。今後も国の強い後押しを受けながら加速していくのではないか。

法人向けの学び直しも、政府の支援策が始まっている。法人向けでは、厚生労働省の人材開発支援助成金というアイデミーが対象となる制度があり、法人顧客の学び直しも支援してもらえると思う。法人も個人も、国の強い支援があるなかで事業を展開できるのではないか。

―今は国内のエンタープライズ企業が顧客だが、将来的に中小向けやグローバル展開は
可能性は高い。中小企業向けにもサービスを展開していきたい。AI/DXが必要なのは大企業だけでなく、中小企業にもニーズがあると信じている。グローバル展開では、我々は顧客に製造業様が多く、製造業の場合は既にグローバルにビジネスを展開しているので、ユーザーという意味では、全世界にユーザーがいる。日系企業の海外の現地法人からアクセスしてもらうケースが既あるので、東南アジアを中心にグローバル展開をしていく可能性はある。

ただ、今はエンタープライズにまだまだ集中する時で、従業員1000人以上のエンタープライズは日本だけで4000社あると見込んでいる。1年の取引先が263社、累計で400社とシェアを10%も取れていない。少なくとも累計で1000社ぐらいに無理なく到達できると想定しているので、そこまではエンタープライズに特化する。

―国内外の競合は。また、将来的にどんな会社にしたいのか
純粋な、我々と似たビジネスモデルは日本でも世界でも、ベンチマークにできる企業はない。ただ、プロダクトごとには、競合がいる。Modeloy、コンサルティング事業の競合では、外資系のコンサルティングファームで、デロイトやPwCといった会社と案件が比較されることもある。

ほかにもAI関連のスタートアップであるJDSC<4418>やPKSHA Technology<3993>といった会社は、顧客から比較対象として名前が挙がったことはないが、ビジネスモデルとして近いものもあるので、比較対象にはしている。教育研修では、AI/DXに特化していないが、インソース<6200>は法人研修に強い会社として、稀に顧客から引き合いに挙がる。

目指している形というわけではないが、ビジネスモデルが似た会社として、グローバルセキュリティエキスパート<4417>がある。セキュリティ分野に特化して人材育成とコンサルティングを提供する会社だ。分野が違ってビジネスモデルが似ているため、参考にしている。将来的に、エンタープライズとの強い関係性という意味で、SHIFT<3697>はソフトウェアテストを切り口に、さらにいろいろなサービスに引き伸ばしている。そこはベンチマークにしたい。

―今後の株主還元方針について、具体的な数字などがあれば
当社への期待は、グロース市場に上場したということもあり、成長性にあると見ている。まず目指していきたいのはトップラインの成長率で、過去の成長率を維持、またはそれに近しい高い率を今後も実現していくことに全身全霊をかけたい。適正な利益を出しながらという前提ではあるが、売り上げの成長による株価上昇を通じた株主還元を考えている。配当などについては、具体的な予定はない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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