24日、梅乃宿酒造が東証スタンダードに上場した。公開価格の600円を50%上回る900円の初値を付け、1050円で引けた。吉田佳代社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

―初値や終値に対する受け止めは
投資家から高い評価を得たことに関して、感謝しかないと同時に、それだけ高く評価されていることに対して、身を引き締めて、これからより頑張っていかなければならないという決心を強くした。
株価はマーケットに付けてもらうものなので、価格に一喜一憂せずに。梅乃宿という会社の価値を上げて、情報開示を行い、株主に信頼してもらえる会社になることが、1番目指すべきところで、私自身、梅乃宿という会社が大好きで、もっと良くしたい、良くなってほしい。これからもこの会社をより良くしていくことで、株主の評価につながれば良い。
―IPOで期待することは
当社は奈良県のかなり田舎にあり、人材を取るということに難しさを感じている。上場したことで、皆が安心して働ける、応募してもらえる会社になることも大きい。そして、これから海外をより攻めていく過程で、東証スタンダードに上場したことは、間違いなく信頼してもらえるということなので、その点にも非常に期待している。さらに、社内のメンバーが「梅乃宿で働いて良かった」、「良い会社で働いている」と実感してもらえることも、多少は期待している。
■新しい酒文化
―日本酒業界では後発組とのことだが、どのような将来像を持ち、どのような会社にしていきたいのか
パーパス、会社の存在意義として「新しい文化を創造する」をテーマに掲げている。後発組だったので、昔から他社と違う新しいことをして生き残ってきた部分が非常に強く、その DNA が脈々と受け継がれている。日本酒の酒蔵で、日本酒仕込みのリキュールを作り始めたこともそうだし、海外展開もかなり早かった。
今回の上場に関しても、老舗の酒蔵と上場ということが、全く(結びつく)イメージのない部分で目指し、老舗の酒蔵でもこのような形を取れることを示す意義があった。これは日本酒業界だけではなく、老舗の業界のいろいろな可能性や期待、「こういう可能性がある」ということは、知らないと目指すことはできないので、そうした一助になればと思う。
「驚きと感動で世界中をワクワクさせる」というミッションを掲げており、老舗の酒蔵が上場したというのも多分、“驚き”に当たり、それが牽いてはワクワクにつながる。当社の商品は、飲んだら本当に美味しい、笑顔になる商品だと思っている。売上が上がるということは、その商品がたくさんの人に飲まれ、たくさんの笑顔を作れることなので、日本だけではなく、海外でももっと知ってもらい、当社の商品でもっと笑顔になってもらう。
海外では、リキュールは一般的にカクテルの原酒としてイメージされるが、「こんなフルーツのナチュラルなリキュールがあったのか」という驚きやワクワクを、海外の人たちに感じてもらいたい。その意味で売上をしっかりと伸ばしていきたい。
利益は、我々が1年間にどれだけ頑張れたかという点数で、1年間、頑張った分を利益として上げていく強い思いがある。それを応援してもらい、株主に還元していくことが、良い循環になり、いろいろな部分で皆がハッピーになれれば良い。
■設備投資のタイミング
―2022年に新しい蔵が稼働を始めたが、生産量について何年程度賄うことができるのか。また、建造予定の「第二蔵」の使途と稼働時期は
パーセンテージを具体的には出していないが、日本酒に関しても昔は、昔ながらの蔵で騙し騙し使っていたので、新蔵に移転して動きや導線が非常に良くなり、いろいろなところで非常に効率化できたことは間違いない。何よりも、瓶詰のラインという点でも、今の新しい蔵に来て、さらに設備投資をすることによって、今までの瓶詰本数よりも、ぐっと増えた。
現在の蔵のキャパシティーでは、当社の売上で50億円ぐらいまでは余裕を持って作れる。50億円を超えると見えた頃には次の蔵を稼働させなければならず、前期に新しい土地の取得を完了しているので、50億円のラインをいつ超えられるかで、上物はどのタイミングで建てられるのかと考えている。現在は、売上が非常に伸びているので、できれば5年ぐらいで新しい蔵を是非稼働させたい。
―第二蔵のキャパシティーはどの程度を見越しているのか
今の蔵と同じ6000~7000坪ぐらいの土地を取得している。そこに入れる設備は今のものよりも瓶詰めのスピードが速く、ボトルネックの部分をもっと広げたい。広さは同じぐらいだが、稼働に関しては、今の1.5 倍は目指したい。
■日本酒は源泉
―国内BtoB事業で、売上高に占める日本酒の割合は、ほかのセグメントの拡大で自然縮小するだろうが、地酒蔵としての側面を持つ梅乃宿酒造にとって、リキュールと日本酒の、適正なバランスはどの程度なのか
現在、当社の売上の8割をリキュールが占めていて、広がる余地がある。日本酒に関しては、リキュールほどの伸びはなかなか難しいが、今、インバウンドの人たちがたくさん来ていて、日本がクールジャパンということで、文化を海外に発信して日本酒の輸出に力を入れており、海外での日本酒の価値はこれからまだまだ伸びていく。
その部分には間違いなく乗れると想定しているので、比率的には日本酒はもう少し下がってしまうかもしれないが、日本酒を作らなくなることは絶対にあり得ない。
なぜならば、それが我々のコアコンピタンスで、何よりも、良い日本酒を作れることが源泉となって美味しいリキュールを作れる。比率というよりは日本酒を作る“思い”の部分を大事にしている。
■伸びる米中印
―海外では、どこに注力していくのか
市場が大きいところで増える余地があり、米国は本当にまだまだ伸びるだろう。現在はいろいろな状況で難しい中国も、今はかなり低迷しているが、少なくとも(元の水準に)戻れば、さらに言うと、もっと伸びる余地はあっただろう。以前よりもだいぶ下がっているので、中国はもっと増えると見ている。さらに、インドに関しては、人口が中国以上に増えており、女性もお酒を飲むようになってきたので、これから非常に伸びていくのではないか。
―2025年6月期の海外売上高割合が18%、2026年6月期第2四半期には29%で、半年の間にかなり増えているということか
二宮充専務:2025年6月期の数字は、その前期の米国事業の事情で凹んでいるが、今期はその分を上期で取り返して、今後も問題ない状況にある。
―海外で今後競合するのは、日本の酒蔵よりも、現地の、缶入りですぐに飲めるタイプのRTD(Ready To Drink)大手メーカーのような印象を受けたが、どうか
吉田社長: RTDメーカーはあまり意識していない。実際に日本国内でもRTD類の商品と競合しているかといえば、そうではない。やはり価格的にも、RTDはどうしても安価になるが、当社の商品はそれよりもワンランク高く、金額的には例えば、ワインや、それこそ日本酒といったランクの価格帯になる。
とはいえ、これから、世界のバーなどではもっと広がる可能性があるので、フルーツをふんだんに使ったリキュール、梅酒も昔から日本で作られているものなので、ジャパニーズリキュールという新しいお酒のカテゴリーを世界に発信していくイメージで考えている。
■その地の果物も
―海外展開について、価格競争抑制の観点から1国1代理店制を取っているとのことだが、どのような基準で選定するのか
何社も入ると、どうしても価格競争になってしまう。1社が一生懸命頑張って売っても、他社がそれより安くして顧客を取ると、また安くせざるを得なくなり、得意先の利益が減って、売って嬉しくない商品になってしまうので、1国1代理店を基本的には大事にしている。
ただ、市場がかなり大きな国では、2つや3つの代理店を同時に起用することで、あえて違う市場に違う商品での参入も現在進めている。それがうまくいけば、ほかの国への展開も検討できる。
選定基準は、進出したい国にどのような代理店があり、得意としている市場を調査し、その会社の代表者に会って、しっかりと話をすることで、販売方針を的確に理解して、「任せて売ってもらう」ではなく、当社が先方とどれだけのパートナーシップを結べるのかを非常に重要視している。
―リキュール製造では、海外産の材料も活用するとのことだが、台湾の代理店と共同開発したパインアップルのリキュールのように、今後も現地の果物を使った商品を開発するのか
例えば、「甘くておいしいトマト」や「甘くておいしいキャロット&オレンジ」という商品は、海外産の素材を使って国内でも発売している。各国で愛されているフルーツはたくさんあり、それぞれの国を攻める時に、積極的にそのようなフルーツを使っていくことは、可能性としては非常にある。
■国内・海外隔てなく
―新規事業のプレミアムラインや健康を意識した商品は、海外がターゲットになるのか
プレミアムラインは既に発売している商品もあり、付加価値を付けたものも発売予定の状況にある。
プレミアムラインや健康軸の商品は海外も意識はしているが、まずは日本国内での販売を検討している。海外の顧客もたくさん日本に来ていて、日本で消費しているかもしれない。その意味では、特に国内・海外を隔てるつもりはない。
―株主還元は
総還元成功として50%を、その中でも配当性向は40%、残りの10%は自己株式を買い増したい。株主優待にも非常に力を入れており、例えば、ECの利用券や、株主限定の日本酒、蔵見学では、できれば私が株主を直接案内できればと考えている。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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