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上場会見:Geolocation Technology<4018>の山本社長、アクセスを100%識別

13日、Geolocation Technologyが福証Q-Boardに上場した。公開価格(2240円)を58%上回る3550円を付け、3355円で引けた。同社は、インターネットで通信を行う機器類に付与される番号である「IPアドレス」のデータベース「SURFPOINT」に位置情報や企業情報、利用回線、気象情報などを蓄積。「どこどこJP」や「どこどこadプラットフォーム」を提供する。2020年12月にTOKYO PRO Marketに上場した。14日に、上場や事業の今後について山本敬介社長に話を聞いた。

山本社長によれば、てくてくスタンプのデータからは特徴的なことが読み取れ、観光施策の策定に有効だという
山本社長によれば、てくてくスタンプのデータからは特徴的なことが読み取れ、観光施策の策定に有効だという

―上場して1日が過ぎた。株価も含めて感想は
ほっとしている。高く評価してもらったのは事実で、責任をじわじわと感じ始めている。

―TOKYO PRO MARKETへの上場で、会社のステージが一段上がったというが、どのように変わったのか
管理部門がほとんどない状況からIPOを目指すに当たって、組織として間違いを起こさないようにしっかり統制する意味で、会社の組織としての強さが変わり、ステージが上がった実感がある。

―福証Q-Boardへの上場で、九州エリアでのビジネスを拡大したいとのことだが、当初から九州での展開の狙いがあったのか
2018年頃から、西日本エリアで営業活動を積極的に行おうとオフラインのセミナーを合計200回程度開いている。福岡を含めた九州・沖縄エリアでは2018~2019年に12回ほど実施してきた。

その際に、その地に根差さないと顧客がなかなか取引してくれない印象があった。九州エリアに根差して進めていくことを具体的に示したいと思い、たまたま縁があったこともあり福証を選択した。

―西日本を中心に進めるということは、東日本は大体カバーできたということか
我々がいる静岡県からの移動の都合があった。また、東日本で北関東以北は、まだオンラインマーケティングの市場がそれほど温まっていないと感じていた。先に西日本から始めようという判断だった。

―データベースのSURFPOINTに蓄積されるIPアドレスがどのようなものか分かる人もそうでない人もいるが、データベースを使うことで、クライアントのビジネスにどう寄与するのか。
前提として、IPアドレスからは場所や企業の情報が分かる。例えば、自治体には企業誘致を行う担当部署がある。そのような部署では誘致のためのホームページにアクセスした会社をリストアップできるという説明で営業活動を行っている。

―SURFPOINTを使う場合、他のマーケティング手法と異なる利点はどのようなものか
まず、WEBへのアクセスに対する網羅性が非常に高い。アクセスを100%識別する。対して、引き合いに出されるクッキーや何らかの会員データベースは、網羅性がデータのボリュームに左右され、WEBアクセス全体に対して判別できる割合は、実際には低くなる。IPアドレスは全てを把握するため網羅性に強みがある。

―クライアントのビジネスへの具体的なメリットは何か
例えば、WEBサイトのアクセスで位置情報を特定しようという話で、自治体では移住や定住促進の際によく使われる。ある地方の自治体が東京でIT企業に勤めている人にターゲティングしてバナー広告を発信したい場合、我々のデータベースを使うと、非常にニッチにセグメント分けされた顧客層であっても到達する割合が高く、気に入ってもらっている。

―より届けたい相手に向けて情報を発信できるということか
その通りだ。

―地方創生や、移住・定住など公共部門向けでの事業の現状はどのような状態か
テーマとしては、移住・定住で首都圏にいる人を地方に呼び込むことに使われるのが1つだ。また、企業誘致の面でその地域に進出しようか検討している段階の企業をリストアップすることができる。

このほか、新しいサービスで「てくてくスタンプ」というスタンプラリーの仕組みをリリースしている。地域の観光施策用のサービスで、特定地域内周遊の促進に使われ、人気がある。

―「てくてくスタンプ」は観光客が利用することでいろいろなデータを収集できると考えるが、データ活用の側面からはどのような取り組みが可能か
リリースして間もないサービスであり、次のサービスに進む顧客は現れていない。だが、先に実施したスタンプラリーで特に官公庁が企画したスタンプラリーでは、システムの裏側で利用ログが集計されている。

当社は、期間中に何人ぐらいが利用し、参加者がスタンプをもらえるポイントをどのような順番で動くかレポートを作って提出し、説明している。それを次回のスタンプラリーに活かしてもらおうという段階になっている。今後世の中の役に立つと見ている。

―どのように役立つのか
コロナ禍で観光業が疲弊している。自治体側もそれらの支援策用に予算を確保しているが、実際にはやることがあまりない。スタンプラリーは全世代に対応できるので良いと思う。

―警察からの信頼が厚いとも聞いている。どのようなサービスを提供するのか
当社が持つIPジオロケーションを警察官が検索できるような仕組みだ。それをオフィシャルに提供した。また、警察官の研修を受託した。サイバー犯罪に当たる捜査員の基礎研修や応用研修を請け負うことになった。

―IPアドレスを利用するサービスは、いわゆるDMP(データマネジメントプラットフォーム)事業と類似するように思われるが、国内のDMP事業者との競合の可能性はあるのか
DMP事業者が当社の顧客に当たる。そのDMPのなかに当社のSURFPOINTを組み込む。そのような位置関係なので当社自体もDMP事業のように見られることがあり得る。

―今後の事業展開に関して、どこどこJPの取扱量とSURFPOINTの事業規模を大きくするいうが、もう少し具体的にはどうするのか
どこどこJPの利用が、当社の顧客の大半を占めている。どこどこJPには、SURFPOINTに新しいデータを付け加えると顧客の分野や幅が広がる特長がある。

当初、SURFPOINTは位置情報のみを扱っており、インターネット広告のターゲティングに使われようになった。そこに企業情報を足すと、BtoBマーケティングで、どの会社がホームページにアクセスしてきたか解析が可能になり、営業活動に使われるようになった。データを足すと顧客の裾野が広がる。

今後、IPアドレスにどのような情報を付け足すことができるか、新しい情報には何があるのか考えて収集し、場合によっては購入する。対応できる幅を広げることを一次的に研究開発の課題にしたい。そこに合わせて営業を展開する。

―研究開発は、コンサルティングから新規ソリューション開発につなげる流れと連動するのか
結果的に「御社が言ったのだからやってよ」という話になる。

―新しいサービスは既に形になっているのか
代表例が警察の案件だった。今後、金融系にもありそうだ。マネーロンダリング対策のような形で、不正な取引を見つける義務が金融機関に課せられている。金融機関が積極的に不正検知に取り組まなければならなくなったので、それが追い風になるとよい。

―個人情報取得制限が始まって久しいが、クッキーが使えなくなる場合に向けて需要の増大は見込めるか
DMPの話とサードパーティー、ファーストバーティーという議論がある。今までは一般の大企業はサードパーティーのデータを購入して使っていた。それが個人情報保護に抵触する点があった。そこでファーストパーティー化する機運がある。

当社はこれまでDMP事業者に対して提供していたが、エンドユーザーが直接当社のものを購入する商談が出始めている。我々がDMP事業者を通じて間接的に提供していたものが、直接の契約に変わってきていることが良い兆候だ。

―IPアドレス自体に規制がかかる可能性はあり得ないのか
あり得ないと考えているが、何が起こるか分からない。そうなった場合の対応策は開発計画を盛り込んでいる。IPアドレスが個人情報に認定されたとしても当社の事業に影響を与えないように、どこどこJPに対応プログラムを組み込む開発が動いている。

―現行規格のIPv4から後継のIPv6への備えはどうか。実装された場合にどんなことができるのか
今、実際にIPv6の環境はインターネット上でそれなりに動いている。SURFPOINTは現状ではv4をベースにしているが、v6に置き換える作業を行っている。一部の機能はv6で既に提供している。創業時の顧客ニーズがv6でも求められ順番に対応している。

業界の「IPoE協議会」で、IPアドレスの位置情報は必要という意見がコンテンツホルダー側から出ており、当社が中心になり位置情報ワーキンググループを作って議論を進め、準備している。

―v6に移行し、これまでにアドレスが割り振られていなかった機器に付番されることで、ビジネスの裾野が広がるように思うが、収益構造へのインパクトをどう考えるか
現状ではまだ読めていない。v4で行っているものが単純に置き換わっていく雰囲気だ。今までつながっていなかったIoT機器がかなりつながると思うので、新しいチャンスが生まれるのではないか。

こういうことに使えないかというアイデアはいくつか出ている。例えば、メーカーが製品のリコールをする際に、回収し切れなくて困っている。IoT機器として個別の製品にIPアドレスを割り振って追うことができれば、回収が楽になるのではないかという話は出ている。

―2022年6月期の業績予想では、営業利益以下が昨年対比で100%を超えて増加するが、どのようなことが起こっているのか。
警察の2件の受注だけで6000万円ほどになり下支えになっている。また、SURFPOINTとどこどこJPで大型案件が2件決まっている。自治体からの請負も好調で、それらが寄与している。

―スポット的な要素が強いのか
警察と大型案件は来年度以降も続くため、業績を底上げする。

―自己資本比率や資金調達の考え方は
福井隆一取締役:意図して目指しながらきたものではなく積み上げてきたことの結果が今に帰結している。今回調達した資金の一部を社債の償還に充てる。かといって間接金融をできるだけ少なくし、エクイティファイナンスに全部を委ねていくことはない。

元々我々は、大きな開発は創業時に終わっている。これから、違った展開で新しいサービスを開発する必要が生じた時には、大きな開発資金が必要になるが、いずれにしても人件費に関係してくる。

事業を20年進めてきて、これからの成長速度を考えると、ベンチャーによくありがちな、大きく資金を資本市場から調達して赤字でも投入していこうというのは、一般市場に上がった手前、やりようがないと考えている。

成長曲線を下げることはないが、そのなかで無理なく資金調達をしようとすると、バランスを取りながら資本市場からの調達と銀行借り入れを行う。純資産が大きく増えて借入金が減ることはないと考えている。特に意図してこのようにしていこうというものは今のところはない。そうは言っても、あまりにも過小資本で負債の方が大きくなることは健全な形ではない。バランスを取りながら、最適な方法を選んでいく。

―3年間の中期経営計画を前倒しで実現したいそうだが、今後の定量的な業績目標は
山本社長:中期計画以外では、顧客数にKPIを設定している。当社の現在の顧客数は700社ほどだが、早く1000の単位に乗せたい。

―配当政策について
福井取締役:これまで無配で来ている。会社を大きくしていくことで企業価値を高めていくことが優先事項なので当面は配当を出す考えはない。

―いつかのタイミングではということか
TOKYO PRO MARKETから短時間で福証Q-Boardに上場したことから、間髪空けずにステップ上場があるだろうと言われており、その点も加味しながら企業価値を高めてニーズを検討していく。配当はその後になると思う。

―他市場への上場について関心はあるか
山本社長:IPOは会社の業容拡大に良いインパクトを与えてくれるので、福証に上場して弾みを付けて、次は東証のグロース市場などを目指すように頑張っていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]