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上場会見:アイ・パートナーズF<7345>の田中社長、IFAは増える

23日、アイ・パートナーズフィナンシャルが東証マザーズに上場した。初値は付かず、公開価格(3120円)の2.3倍となる7180円の買い気配で引けた。同社と委任契約関係にあるIFA(Independent Financial Advisor)が金融商品などを顧客に提案し、売買注文を証券会社に取り次ぐ。顧客が証券会社に支払った手数料の一定割合を発行体が受け取り、その一部をIFAに支払う。IFAは発行体のプラットフォーム使用料として月額10万円を支払う。田中譲治社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

田中社長は、委任関係にあるIFAは顧客のCFOとしての役割を果たすと話した
田中社長は、委任関係にあるIFAは顧客のCFOとしての役割を果たすと話した

-初値が付かなかった
責任の重さをひしひしと感じる。

―取引数量について金融商品ごとの内訳で見るとどういう商品が多いのか
島田和紀取締役:預かりベースで見ると株式が大体4割ぐらいで、債券や投資信託が25%
ずつぐらいで、預かり現金が10%程度。手数料ベースでも概ねその比率に収斂する。ばらつきはあるが、短期的には株式が非常にできた月や債券が非常にできた月がある。傾向としては、3年ほど前は株の出来高が高かったが今は債券の出来高が非常に多い。その時の情勢で変わってくる。

―提案手法は裁量があるのか
田中社長:基本は委任契約のIFAが中心なので裁量で任せている。今後の世の中の流れで、投資家が何を求めているかによってIFAはニーズに対応しなければならない。投資家が求めているものの変化に対応できるよう営業ツールの開発をしている。

―IFAの出身は証券会社か
大手証券で個人営業をしていた人が中心だ。

―中途の転職者を採用して増やすのか
採りながらというよりも、先方から希望して当社の話を聞きたい、興味があるというなかで、資料を送り希望があれば面談をする。資料を送った段階で面談に進むのは10分の1ぐらいだ。IFAの心構えのようなきつめな話をする。それでもやりたいとなると契約する。

―足元の問い合わせ数は
毎月50件は来ている。
島田取締役:上場承認してからメールの問い合わせは増えている。

―保険会社の営業人員からか
田中社長:非常に多い。

―顧客層や属性は
大手証券と一緒と思ってもらえれば良い。

―米国に比べて日本の市場が小さいが拡張するためにはどうするか
複合的な要因があると思う。私自身が2002年からIFAとして活動しているので、この20年間の推移を知っている。ここに来て「これは増える」という土壌ができてきたと思うのは、資産形成層の人たちが、積極的に証券市場で資産形成に励み始めてきたことが大きい。

従来は、証券市場は米国で言うところのサテライトの資金、多少極端な言い方だが遊び金の部分で投機的なものを中心とした投資をする世界だった。ようやく米国のように資産形成のための市場という流れが出てきた。アドバイザーが必要になってくると考えているので、ようやく日本の証券市場、投資家の意識が変わってきたのが非常に大きい。

米国を見るとゴールベース・アプローチという将来の自分の目的や夢の達成のために資産運用をする。そのためにアドバイザーに助言を求めることが一般的だ。老後に2000万円が必要だという報告書が2年前に出て、それ以降、例えば私の娘も積み立てを始めたり、若い人を中心にそのような動きが出ている。これはゴールベース・アプローチだ。老後の2000万円を作るために、逆算して今から毎月いくら積み立てをすればいいのか考える。そういった動きが出てきているのはとても大きいのではないか。IFAは増えるだろうと思っている。

もう1つ、例えば野村証券に入社して支店配属になり、個人営業をすることになったとする。彼らの証券マンとしての夢を見る人生は、私の若い頃もそうだったが、証券会社でリテールの営業マンとしていい成績を挙げて、その後転勤を2~3回し、その中でも良い成績を挙げて、その結果支店長になる。部長になり、うまくいったら役員になり社長になる。これは証券マンにとって理想の人生だったと思う。逆に言うとそれしかなかった。この顧客と一生付き合いたいという証券マンもいるはずだし、実際にそういう人もいる。そういう人に対して新しい証券マンとして生きていく選択肢を与えることができたと思っている。

―コロナ禍で非接触ニーズが高まっているが、IFAの業務もオンライン化が進んでいるか
顧客との面談はZoomなどで行われているケースが多いと思う。

―デジタルトランスフォーメーション(DX)投資はオンライン化の支援を含むのか
DX投資はIFAの業務効率化をするためのものだ。例えば、IFAに限らず証券マンは顧客とのコンタクト履歴を常に入力しなければいけない。それをより簡便にでき、過去に遡って見られる。また、特定の顧客と1ヵ月ぐらい会っていない、連絡していないという通知がされる。当社は仲介業者4社と提携している。顧客はやろうと思えば4社の口座を開設できるが、それぞれの残高と取引履歴を見ようとすると各々のシステムを見なければいけない。それを一括で見るというようなこともできる。

―金融仲介サービス業が間もなく始まるが、影響はあるか
金融商品仲介業は所属制で証券会社の管理監督下にある。金融仲介サービス業は所属制ではなく証券会社の管理監督下にないため、訴訟対応リスクなどに自前で対応しなければならない。対面のIFA業務を行うに当たっては金融仲介サービス業的なものでやろうと思うとちょっとリスクが高い。

―非財務的なKPIはあるか。IFAの満足度を調査しているので、そういったものがあるのか
満足度調査を毎年行い、IFAと個々の不満の情報を共有しながら、進展具合を見せる。IFAとコミュニケーションを取る場にする。人数が200人ほどになっており大変だが、ビジネスコミュニケーションツールで積極的に発信しながらコミュニケーションを取るのが基本だと思う。

―株主還元について
上場前からそれなりに株主が存在し、出資してもらっているので、少しは配当をしてきた。ある程度投資を積極的にやっていきたい。今の段階では、配当で株主還元をするよりも成長分野に投資をしていくほうが当然いいだろうと思っている。そうは言いながらも多少は配当をしようと考えており、純資産の1~2%ぐらいを毎年配当していこうと思っている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]