27日、HUMAN MADEが東証グロース市場に上場した。公開価格の3130円を9.90%上回る3440円の初値を付け、3545円で引けた。松沼礼社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

―初値の受け止めは
投資家や市場から評価してもらえたと受け止めている。一方で、評価されることは期待をしてくれていることだと思うため、それを裏切らないよう、むしろ期待を超える事業の展開や経営を進めることが求められるので、身が引き締まる思いだ。
―上場によって現状がどのように変わっていくのか。上場のメリットは
上場することで、ブランドの認知もさることながら会社の認知も上がっていくだろうし、このような場で、我々のメッセージを消費者やステークホルダーに届けることで、会社に対する期待も高まると思う。そうすると、人材採用の部分でメリットも多分にあるだろう。これから海外展開や新規事業を含め、そこに対する経営の基盤を盤石にして進めていくことが求められるので、経営を担える高度な人材など(を確保したい)。また、海外の出店や国内の旗艦店に関しても、多額の投資が必要になる。上場で得た資金をベースにしながら展開していくことが求められるし、そのための上場だ。
―いつ頃から上場を考えたか。このタイミングの上場は予定通りか、それとも早いや遅いなどはあるのか
「HUMAN MADE」をグローバルなブランドにしていくという思いがあったため、だいぶ前から着手し始めた。それがゆえ、このような経営基盤と経営層を作り、クリエイターとビジネスモデルの構築をしてきた。 なぜこのタイミングかと言うと、これからグローバルに出ていくときに、ちょうど機が熟したと受け取っているため。「HUMAN MADE」の足元の商売が堅調であり、多くの需要が見いだされていることや、多くのニーズが世界中から感じ取れているので、ここで待ったなしでいきたい。
―中長期的な売上高の目標は。そのときその海外のウエートは
数字として表現は難しいが、国内と世界で旗艦店を出し、旗艦店で認知を上げ、世界中の顧客が買いたいと思ったときに(備え)、オンラインストアの仕組みも世界的にやっていこうと考えている。現状は越境ECで日本から送っているが、オンラインでの比率を上げることによって、アセットライトに経営のリスクを軽減していくメリットもあると思うため、並行してやっていく。それでおのずと数字は積み上がっていくだろうし、海外での需要が高まってくれば、必然的に海外の売上比率も高くなるだろう。
―KOL(Key Opinion Leader)層から支持されているというが、アプローチや認知はどのように行っているか、どういった戦略なのか
遡ること30年ほどのファッションの系譜にも話が広がっていくと思うが、1990年代に我々のクリエイティブディレクターであるNIGOが、裏原(原宿の裏手エリア)のブームでストリートカルチャーという産声を上げた。それは昨今で言う、ラグジュアリーとの融合みたいなことだ。ファレル・ウィリアムスがルイ・ヴィトンのアーティストディレクターになり、NIGOに関してもKENZOのディレクターをするようになって、ファッションとしての文脈が広がっていった。
そのなかでミュージックシーンとも密接に関わっており、アメリカや韓国、日本のミュージックシーンとファッションとの深い関係性のなかで、例えば、(韓国のアイドルである)BTSのJ-HOPEが「HUMAN MADE」に対して愛着を持ってくれている。 互いにそのクリエーションをリスペクトし合うことで、自然の成り行きのなかで、協業化されている。ファンにも自然体の形で「HUMAN MADE」が親しみを持って愛されている様子を見てもらえているため、広告宣伝を積極的にしないのは、ポイントだ。広告ではなく、共感やエモーショナルな表現として展開するところが支持されていると感じる。
―今後の海外展開はどのようなエリアか
優先的に進めていく国や地域があり、東アジアの中国や香港、韓国、台湾などと、東南アジアなどだ。アメリカに関しても、ニューヨークを中心にファッションやカルチャーの情報発信として、キーになるような町があると思うので、そういったところを中心に優先順位を決めてやっていく流れになるだろう。
―国内を強くしていくなかで、海外はよりもっと力を入れていくのか
国内も海外も気持ち的にはどちらも大事だ。国内に多くのインバウンドの顧客が来るが、まだ十分に買い物しやすい環境で体験できていない。まずは旗艦店を作っていくことが求められており、海外に関してもなるべく早いタイミングで、世界的にどんどん広げていくことが同時並行で求められると思う。両立を実現するために、人材や資金が必要になってくるので、これを進めていく。
―グローバル展開をしていくことで、知財侵害のようなIPビジネスの側面が強いと思うが実際にあるのか。また、その対応はこれからどうしていくのか
鳩山玲人CSO:コピーライトとトレードマークのどちらも非常に重要だ。ここ数年間で、我々の知財は、200個以上が登録されていて、重要なものに関してはあらゆる分野で知財を権利として持っている。我々の商品を海外に出していくにあたって、きちんと守れるようになっているし、いわゆるパイラシーなどは既にモニタリングしている。そういった対策はやってきているので、その点に関してはあまり心配ない。私はサンリオ<8136>で、長らく知財をやってきたため、そのような経験とチームを厚くすることで、その過程では問題なくグローバル化できるだろう。
―グローバル展開していくにあたって、ベンチマークにするサービスやブランドなどはあるのか
松沼社長:「こういうブランドになりたい」というものはない。ただ、「HUMAN MADE」のブランドでいうと、50年、100年愛される世界的なブランドで、アメリカンカジュアルの文脈だと例えば、ラルフローレンのようなブランドなどが想起されるのに近い話だろう。「HUMAN MADE」のブランドを想起したときに、「デニムといったら『HUMAN MADE』」、「〇〇といったら『HUMAN MADE』だよね」というパーセクションを取ることで、多くの人に世界と歴史ともに愛されるブランド作りができると思っているため、そういったことを実現したい。
また、会社としてはカルチャーコングロマリットという表現も使っている。我々のパーパスを実現するうえで、フランスのLVMHは比較にならないほど巨大な会社ではあるが、ベルナール・アルノーの思想が(ある)。職人やクラフトマンシップあふれるブランドクリエイターがいたが、経営基盤とともにうまくいっていないものに対し、着手していったという思想だ。「HUMAN MADE」で実現しようとしているため、そこのナレッジを使った形でそういったブランドのポートフォリオを構築することも社会的な意義性が高いだろうし、多くの顧客やステークホルダーに応援される理由にはなるだろう。
―国内外で文化の違いがあるため、ファッションに関しても好みの違いがあるのか。もし好みの違いがある場合、どのように海外の顧客層を増やしているのか
例えば、ストリートブランドだとスケートなどのなにかのスポーツや文化に関係しており、そこを出自に持っているブランドが多いだろう。基本的には、カジュアルを全般的に、そのなかでハンティングやカレッジ的なものなど、服の歴史に基づいた体系的なものづくりをしているため、なにかの領域だけに強いブランドの作り方をしていないのがポイントだ。そのなかに非常に愛くるしいIPがあることで、老若男女や世界を超えて愛されると認識しており、それが支持されている結果なので、特定の国などを意識したものづくりは、これからもするつもりはない。世界中の顧客に支持されるものづくりを心がけてやっていくことが軸になる。
―小規模や中規模M&Aを今後検討されていると思うが、デットとエクイティ含め、どのような資金調達を検討しているか
小規模か中規模かの規模(の差)はあるとは思うが、当社で実現してきたことをほかのブランドとかにも応用・転用はできるかという着想が1番のポイントだ。IPや資産を長く世界の人に愛されるようにしていくという使命を持っているため、必要であれば、世界中の人に認知され、クリエイションも素晴らしいが、ビジネスの規模として実際はそのイメージに追いついていないブランドや、場合によってはそれ以外の事業のM&Aを検討していく。そのため、上場で得た資金をそのようなところにも積極的に活用する選択肢は多分にあるだろう。
―追加での資金調達は今のところは検討していないか
柳澤純一CFO:現状のバランスシートを見てもらうと、盤石のバランスシートになっている。かつ、当面の営業キャッシュフローも潤沢だ。今回調達した資金は、基本的に旗艦店の出店や海外での現地法人の展開に充てていく。M&Aに関しては手元資金と、それから主にデットの調達で十二分に賄えると思っているため、現状では追加のエクイティファイナンスは考えていない。
―松沼社長は、クリエイティブディレクターのNIGOの実績やポテンシャル、1番のすごさはについてなんだと思うか。今後、NIGOが参画することでの会社の成長性など、考えられる利点は
松沼社長:様々なクリエイターと私も仕事をしたことがあるが、一緒に仕事をしていて感じるのは、物を見る目線が、日本人の学ぶべきところを結集したような人だと思う。その真善美のようなことの本質的な価値を見いだし、それを現代の服とかサービスなどほかの商品に置き換えたときに、どういった価値にしていったら、多くの顧客に喜んでもらえて支持されるものになるかという点で高い編集能力がある人だ。例えば、和食と西洋の食事をフュージョンして新しい料理に昇華するシェフが評価されると思うが、そういった感覚に近いものを描いている。
ただ、我々はNIGOだけに依存してビジネスをしていくわけにはいかないし、いずれ来る彼の寿命がある。彼の思想を受け継ぎながら次のクリエイターやスキルなど、彼に依存しない商品開発の体制を整えてきているという自負はあり、そこも並行して進める必要がある。
[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]
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