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上場会見:オーバーラップHD<414A>、海外ファンへの普及、低リスクのIP

3日、オーバーラップホールディングスが東証グロース市場に上場した。公開価格の1650円を7.09%下回る1533円の初値を付け、1345円で引けた。永田勝治社長などが東証で上場会見を行った。

IPの継続的な創出などについて説明する永田社長

―初値の受け止めは
永田社長:株主や投資家の期待に沿えるよう頑張りたい。

―海外では、どの地域で翻訳・刊行しているのか。また、今後はどのような地域で展開を目指すのか
当社では、ある程度人気になった作品は、毎月、海外のパートナーにライセンスを提供している。現状は、北米やアジア、ヨーロッパ各国。1番大きいのは北米で、次にアジア、ヨーロッパとなる。アジアは、韓国や台湾、中国、最近はタイが増えている。ヨーロッパで大きく占めるのはフランスで、ドイツやヨーロッパの国々に徐々に広げていく方針だ。

―海外に向けたダイレクトパブリッシングは、何年後を目指しているのか。また、どの地域で考えているか
北米を考えている。現在、当社の海外のライセンス数の売上は伸びているが、全体の比率からすると56%ぐらいとまだ大きくない。海外のマーケットでは、日本の漫画や小説が紙媒体で読まれるケースが多く、コアなファン層が買っており、そういったファンは徐々に増えてきている。海外では、まだまだ海賊版などがあるなかで、電子媒体はそこまで普及していない。

海外でも日本と同じようにデジタルで読んでもらえるマーケットが広がれば、現在は、日本から海外の現地の翻訳出版社にライセンスを提供して、紙媒体で流通しているが、国内で翻訳をして海外の配信サイトへの直接配信も模索したい。いつ頃になるかは、マーケットがどれくらいのペースで普及していくか、サービスが立ち上がってくるかを睨みながら考えていきたい。

―今回、投資ファンドが売出をしたが、今後の株主構成についてどのように考えているか
投資ファンドのみが売り出した背景は、自社で創出するキャッシュフローで当社がしっかり成長していけるためだ。今後の株主構成については、今ある株主構成のままでいくと考えている。

岸川雄吾取締役:今回の売出の結果、大株主は、小学館・ポケモンの2社とファンドが一部残り、創業者たちが株主となる。基本的には、この株主構成があったうえで、それ以外の部分に関して、広く投資家の人たちに買ってもらうことがあればよいと思う。

―上場の狙いは何か、また資金使途について
永田社長:会社が創業してから10年ほどが経ち、順調に成長を続けてきた。そのなかで、さらに20年、30年と会社を永続的に成長・発展させるにはどうするべきかを考えたとき、1つは会社を継続的に発展させること、そして次世代の優秀な経営層も含めて、継承ができる体制を作ること、それらを考え最終的にIPOを目指すことにした。

今回の上場は、資金調達が目的ではなく、今後永続的に続く体制を確保するため、ファンドの売出のみとした。

―今年の4月にグロース市場の上場維持基準の見直しが発表されたが、会社の考えに変更はあったか
なかった。

岸川取締役:今日の株価を踏まえても、時価総額は十分上回っていると思う。基準の見直しについて我々が何か思うことはなく、強い意志を持って上場を果たした。

―IP市場をどう見ているか。また、他社IPはポケモンのみとなるか
永田社長:当社のIPはライトノベルや漫画が主となる。ここ数年、国内における電子の漫画市場は、高い水準で伸びてきたが、昨今少しなだらかになっていると言われている。だが、引き続き業界も含めて成長基調にあると思う。もう1つ言うと、国内の電子漫画市場での当社が占めるシェアについて、会社の規模は大きくないうえ、シェアも小さいという部分でいうと、今後も市場の成長を上回る速度で成長を実現していきたいと考えている。

他社IPは、ポケットモンスターのゲームの攻略本、ゲームに関するサウンドトラックCDの売上が大半を占めている。

―ヒットIPの定義はどういったものか。また、年間いくつのIPを見出していくかの目安はあるか
ヒット自体が読めないため、定義するのは難しい。だが、我々が主力IPと呼んでいるもののなかで、売上の源泉になるIPの目安は持っている。IPの売上は大体年間2500万円を超える。それを増やしていくことを心掛けている。

―具体的な成長戦略について。アニメ業界への参入など
当社の成長のメインドライバーは、良質なIPの創出数を増やしていくことだと考えている。そのため、M&Aがなくても、自社でIPを増やしていくことで十分に成長できると見込んでいる。ただ、将来的にその成長速度をさらに加速させるとなると、IPを創出できる企業との連携など、チャンスがあればそれらも含めて考えていく。

原田直樹副社長:アニメ制作会社については、当社はどちらかというと広くアニメ業界のプレイヤーと付き合いがあるが、基本的にはアニメ制作は任せており、当社はアニメ化されるような原作の創出に注力する方針。

―第3四半期の決算について、売上収益が減少した要因は
岸川取締役:我々の売上に影響してくるのが、売れ筋の作品がいつ発売されるか、つまりどの四半期に出るかによるのが1つ。また、売上を伸ばす要因となるアニメ化が、第何四半期にされるかも重要。今期(2025年8月期)については、第4四半期に主力作品の新刊発売やアニメ化があったため、売上はこの期に伸び、前期を上回る見込み。

―ゲーム発のIPという観点で、UGC(User Generated Content)ではインディーゲームから小説やライトノベルに展開する可能性もあるかと思うが、そのあたりの構想は

永田社長:スタートした当初は、20~30代の男性向けコンテンツから始まり、会社の成長と併せて、女性向けコンテンツのマーケットも拡大してきたため、女性向けの作品も増やしてきた。それ以外では、20~30代だけでなく、40~50代といった少し上の世代もターゲットに含めるようになってきた。現状では、男性向け・女性向けの比率も、当初は男性のみだったが、今ではほぼ半々くらいになってきており、年齢層も広がっている。こうした市場の変化に対応しながら、今後も市場が求める作品を増やし、結果としてターゲットやジャンルの幅も広がっていくことを目指している。

原田副社長:具体的には、永田が言ったように、女性向けの作品についてコミックや小説のジャンルでさらに強化していきたい。事実、そこが売れているジャンルでもあり、求めている人が多いと思うので、そこに注力して作品数を拡大していきたい。

また、IPの生み出し方として、当社ではローリスクで作品にトライすることがすごく重要。小説やコミックは、ハリウッドのような大作主義と異なり、低リスクで挑戦できるからこそ、日本のコンテンツは面白い試みができている。また、そうした点でハリウッドなどに対抗できているのが大きいと思う。そのため、書籍やコミック以外にも、先ほど指摘のあったインディーゲームのような、比較的低リスクでトライできるメディアからスタートして、そこをテコにし、多くのユーザーに楽しんでもらえる作品を生み出すことに積極的に取り組んでいきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]

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