25日、MICが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の960円と同額を付け、969円で引けた。小売企業の販売促進に関する総合支援を手掛ける。業務改善コンサルティングからシステム開発、販促物作成、小売現場のサポートまでを一気通貫で行う「360°フルサービス」に加え、販促物の共同配送サービス「Co.HUB」を2022年に開始した。水上印刷として1946年に創業した。河合克也社長と松尾力執行役員が東京証券取引所で上場会見を行った。

―初値は公開価格と同じ960円、終値は969円だったが、初日の株価の受け止めと、改めて投資家にどういう会社になっていきたいかというメッセージを
シンプルに言うとちょっと嬉しい。終値で969円ということで、少し安堵しているのが本音だ。この10年で3倍の成長を遂げてきた。これからも歩みを止めることなく、新たな門出をして進んでいきたいなかで、上場を決定した。
元々、毎年7%成長すると10年で2倍になる。15%成長すると10年で4倍になるといった考え方をしている。打ち上げ花火のようなイノベーションよりは、我々の提供する価値を感じてもらえる市場や顧客を着実に増やしていきながら、末広がりというか永続的な成長をしていきたい。
直近2~3期は、利益率では少し減益となったが、その理由としては、共同配送を武器に、新しい顧客を獲得した。以前は約200社のクライアントしかいなかった我々の目の前に、プラス300社が広がった状況だ。
この300社の顧客に対してサービスの価値をきちんと感じてもらいながら、永続した成長を毎年重ねていきたい。その暁には利益率にもこだわった経営を行っていき、かつ、今は30%で宣言しているが、そのなかから配当も続けていきたい。収益を出すことによる配当還元と永続的な成長による株価の成長、この2つを重ねて歩みを止めずに進んでいきたい。
―経営体制について。河合社長と松尾執行役員はどのようなきっかけで入ったのか。2人以外の経営体制はどうなっているのか
この場にはいないが、水上光啓という者がいわゆる創業家の現会長で、今もCEO的な立場として、会社の意思決定にも関わりながら、当社の株主として関わっている。
MICに可能性を感じたのが、私が転職した1番の理由だが、印刷産業そのものは装置産業に近いところがあったなかで、水上会長の最もユニークだったところは、ずっと人に対して投資していたことだった。
当時は新卒採用だけで会社を作っていて、1番の特徴になるのが、平均年齢が32.3歳で女性も42%。当時からこのようなものだった。2012年というと女性活躍も進んでいないなかで、社歴が70年にも関わらずベンチャーに近い構成ができるかというと、若い人材を積極的に登用してきちんと教育して育て、経営のイノベーションを起こしていくことを経営ポリシーとして持ち、リスク管理をやっていて、私はそこに惹かれた。
現経営陣も、私と松尾執行役員はキャリア入社で外から入ってきたが、社外取締役を除くと、半分ぐらいはしっかりと育ってきたプロパーのメンバーで、外から来た我々とが融合して良い形で更なる発展を目指している。このようなところで、70年やりながらも、ベンチャー気質を持っている。非常にユニークだと勝手に思っている。
松尾力執行役員:前職は経済産業省で、課題として日本社会をもっと良くしていきたい、効率化していきたいという思いがあり、今も強く持っている。世のなかでDX・デジタル化という意味では、やはりデジタルだけで変わらないのが日本の社会だろうと思っている。
成熟している社会なので、デジタルだけではなく実際に物を動かすフィジカルという側面が伴わないと実態としては変わらないだろう。そういった目線で、まだまだ考えるとできること、今は販促市場にとどまっているが、広がっていくだろうと思っているので、そういった形でも貢献していきたい。
―元々は主にどこ向けの印刷業をやっていて、どのタイミングからどういうきっかけで業態転換を始めていったのか
河合社長:元々は今の4分の1ほどのサイズで、具体的には売上高25億円、100人弱ほどの会社だった。大きく3つの分野があり、1つが現在の事業の原型になっている商業印刷と言われるような商売を回すための広告や販促の分野での印刷物だ。2つめがパッケージで、元々強かったのが医薬系の商品の箱。3つめが教育に特化した出版だった。
今もパッケージと教育がゼロになっているわけではなく、我々の大切な祖業として取り組んでいる。ただし、これから事業の発展を考えたときに絶対に欠かせないと思ったのが、どうしてもデジタルというものだ。デジタルとフィジカルでイノベーションを起こす。最近ではDXという文脈を、どれだったら1番やりやすいかと考えていたなかで、パッケージはどうしてもデジタル化が難しい部分だ。出版に関しては、漫画もアプリになっていて電子書籍も出てきているが、我々はコンテンツホルダーではない。
そういった観点からすると、プロモーションやマーケティングに関わる商業印刷分野がいろいろなテクノロジーによって、さらに面白くなってくるのではないか可能性を感じ、商業印刷を中心に店頭でのアプリやサイネージの扱いを合わせて、アウトソーシングで引き受けられるようなイノベーション改革を目指していた。
―販促・PRの手法は、オンライン化やデジタル化がこれからもより進んでいくだろうが、販促の手法がどう広がっていくのか、どう対応していくのか
間違いなくプロモーションやマーケティングは、新しいテクノロジー、例えば、これからはAIもそうだろうし、デジタルというものを加えながら先端の形でコミュニケーションの手法は変化していくと考えている。
紙というものが置き換わるのではないかと指摘されるが、我々は全く懸念していない。両方が自分たちの市場であると考えているからだ。ただし、少しだけこだわりたいのがフィジカルというところだ。デジタルのツールやマーケティング、プロモーションの世界は進化して広がっていくことは間違いない。ただその時に例えば、店舗で言うと、リアルで手に取る物と連動させたいというニーズが必ずある。
店頭のフィジカルな物とデジタルなものを重ね合わせられるからこそ、同じメッセージで店頭が表現できる。
我々はデジタルの領域にフィジカルを重ねながら、店頭というものをデジタルとフィジカルの両方で作り上げていく、そんなところで自分たちのユニーク性を発揮したい。
―共同配送のプラットフォームに関して、ドラッグストア業界ではどれぐらいまで伸ばしていきたいのか
現在は(店舗カバー率が)54%で、各チェーンへ導入提案をしに行く形になるので、大手のほうがどうしても効果が大きい。最近では、スギホールディングス<7649>やカワチ薬品<2664>、クスリのアオキホールディングス<3549>。地方も含めて数百店舗クラスの大手が存在するので、ここは随時話をしている。
ドラッグストア業界もM&Aがけっこう活発に行われて、おそらくもう少し集約されながら、いくつかのチェーンにグループ化していくのではないか。この5年で3300店舗ほど伸びている業態ではあり、我々にとってより身近なサービスになってくるのではないか。そのなかで6割、7割、8割と増やしていけたら良い。
―長期的な視野に立った場合の共同配送プラットフォーム事業のターゲットについて、どのようなものがあるか
ドラッグストア業界が活況で店舗が広がっているなかで、同業界の共同配送プラットフォームとして始めたが、似たような業種はまだまだある。分かりやすく想像がつくのがホームセンターや家電量販店、スーパーマーケットだ。ドラッグストアと同じようにメーカーの商品とプロモーションツールが供給される業種業態なので、そこへの展開は既に視野に入っている。
―あらゆる小売業種の販促物、さらに販促物以外にも展開できる可能性を秘めているだろうが、その広がりについて
販促かそれ以外かは線引きが難しいところもある。1つ明確なのは、商品というか値段の付いている物、例えば、PALTAC<8283>やあらた<2733>といった会社が店舗に供給しているような領域は今はやっていない。
ただ、販促以外にも例えば、副資材と呼ばれるノベルティや持ち帰り用のパック、細かく言うと事務で使う給与明細など、店舗のなかには「本来まとまって送られてきたほうが良いよね」というものが多い。「どうせ1箱で届くならあらゆる物を入れて欲しい」というニーズがあり、実際に広がっている。
各チェーンの考えもあるので、それぞれ少しカスタマイズも加えながら、今のところ商品は対象外には置いているが、値段の付いている物以外については広く可能性のあるビジネスと見ている。
―今後目標とする共同配送センターの設置ペースについて
我々の事業の広がりとともにという回答になると思うが、共同配送の考え方そのものが、ドラッグストアで54%に広まっていると伝えたが、これは3年という非常に短い期間でぐっと立ち上がってきた。
ドラッグストアのなかでもまだ進んでいくと思うし、これを他業界に展開していくことで考えている。設置スペースというと広さや拠点箇所という質問だと思うが、我々のセンターにはまだ余力がある。そこをまずはしっかりと活用していく。
具体的に言うと新宿本社は営業や販促向けの制作物、システム開発の拠点だ。4拠点が製造の拠点で、そのなかでも「はちフィル」というのが、7500坪ほどあって、ここが共同配送をメインでやっているセンターだ。
稼働率がまだ50%ほどなので、もう1~2年で、これをまずは80~100%に近づけていきたい。それ以外に「るのパレット」がファミリーマートや楽天など各社のインフラを担っている部分で、「多摩ファクトリー」と「サンゲート」が製造と加工の拠点だ。十分なキャパシティを備えており、3年ほどはきちんと利益を出すことに注力していきたい。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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