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上場会見:オプロ<228A>の里見社長、ITをシンプルに

21日、オプロが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1300円を28.69%上回る1673円を付け、1601円で引けた。企業の取引・人事情報といった帳票データや、行政関連組織が持つ情報をクラウド上で処理・整理する「データオプティマイズソリューション」事業を手掛ける。また、無形・有形商材のサブスクリプションビジネスの情報を一元管理する「ソアスク」や「モノスク」で販売を支援する「セールスマネジメントソリューション」も提供する。里見一典社長が、東京証券取引所で上場会見を行った。

エンタープライズ顧客獲得に注力しており、セールスフォースやそのパートナーであるコンサルファームを通じた大型案件の獲得で業績が大きく拡大していると話す里見社長。

―初値の受け止めは
非常に高く評価してもらえた。8月2日の(株価の)暴落と、5日の大暴落があり、我々のブックビルディングは8月5日からだった。今日という日を迎えられたのは本当にありがたい。荒れた市場で高く評価されたのは身に余る光栄で、引き続き株主に情報開示をして、コミュニケーションを取りながら、信頼してもらえる会社にしていきたいという強い思いをさらに持った。

―社名の由来や、社名への思いは
“オプティマイズド・プロバイダ”、最適なる提供者というものの頭文字を取ってオプロと名付けた。我々のミッションにもあるが、“make IT simple”、ITをシンプルにする。

ネットワークの時代になって、多様なシステムがあるが複雑になっている。それをいかに最適にしていくかというのは、常にテーマとしてあるので、それを社名に付けて実現するソリューションを提供していきた。

―SaaSのDX企業は競合が非常に多いだろうが、ライバルとそこに対する優位性は
データオプティマイズソリューションでは、エンタープライズ向けのソリューションとして、インプットとアウトプットの両方を持つ会社は、今は我々しかいないと見ている。アウトプットに非常に強い会社もあり、その廉価版の会社もある。

また、非常にライトウェイトな入力ツールもあるが、エンタープライズ向けにしっかりとしたインプット・アウトプットツールを両方持つことは、我々の1番の強みで、それを提案することで競合との差別化を図っている。

セールスマネジメントソリューションについては、エンタープライズ市場を目指すので、セールスフォースとの連携の強さが1つの差別化だ。競合ではないが、いわゆるサブスクの請求ができるものがある。例えば、ROBOT PAYMENT<4374>が「サブスクペイ」を始めた。ここは、エンタープライズ顧客との取引では、請求の部分で協業している。

だが、SMB(Small and Medium Business)の顧客では、「サブスクの管理はエクセルでいいや」、「請求だけできればいい」ということがあるので、SMBのマーケットでは我々はまだちょっと厳しい。このためエンタープライズ顧客への導入を進めていきたい。

―アウトプットとインプットの両方のツールを提供する会社がないとのことだが、それが見込み顧客に対してどの程度の訴求力があるのか。その優位性は今後どのようになるのか

帳票のアウトプットは、いろいろなツールがある。極端に言えばエクセルでもできる。ツールは揃うが、インプットはあまりない。それも、帳票に似たインプットツールはあまりない。

帳票は凄くよくできおり、上から順番に情報を入れたら必要な所に綺麗に入っていく。こういった帳票は、顧客の状況、例えば、組織ややり方、法律が変わることでフォーマットが変わってしまう。それをいかに簡単に変更・追加できるかが大事なポイントだ。それがなかなかできなかったので、申請業務などのDX化が進んでいなかった。

ところが、帳票そのままの申請画面を作れる「カミレス」や「帳票DXME」を導入したらそれを内製化できるのがポイントだ。そのデータさえ入ってしまえばアウトプットは極端な話エクセルもいい。帳票DXを使うのであれば、カミレスで登録した情報をそのまま帳票に出力できるのでかなり優位性がある。

―他社のクラウドサービス間でのデータの加工や変形が容易というか、自動で実行してくれる機能もあるとのことだが、他社のサービスにはない機能なのか

数は少ない。高いツールで例えば、セールスフォースではMulesoftなどがあるが、簡単にできるのは我々の強みと考える。

―そういった機能が、今後どのような形で訴求力につながれば良いか
安川貴英取締役:連携先がどんどん増えていくところが1つのポイントだと思う。SAPもその1つで、SmartHRもそうだ。それ以外にも検討しているところもあり、そういうところが増えていくほど価値が上がっていく。

―有形商材のサブスクリプションビジネスを管理するモノスクは、今後の広がりが見込める印象だが、見通しについて
里見社長:全体的なソリューションのARR(Annual Recurring Revenue=年間経常収益)の年間平均成長率は35%で推移している。そのうちデータオプティマイズソリューションは大体33%、セールスマネジメントソリューションが38%で推移しており、セールスマネジメントソリューションのほうが、分母が少ない分成長率が高い。

ソアスクは無形商材を対象としており、顧客の規模は我々とあまり変わらない。モノスクの場合は、製造業が顧客となるので大型案件が多い。ARPU(Average Revenue Per User=1ユーザー当たりの平均売上高)はソアスクの2~3倍となるので、ここに投資をして顧客を獲得したい。

モノスク単体での伸びは、まだ出来上がっていないが、いわゆるサブスクビジネス全体のなかで、成長率は40%程度で伸ばしていきたい。

―今後の売上高目標について。2023年11月末時点のARR成長率が44.1%だが、今後2~ 3年ではどの程度を目指すのか
平均の成長率は、ARRは135%パーなのでそれを少し上回るような形で進めていきたい。売上については、大体25~30%で、特に「Rule of 40」というものがある。サブスクのビジネスの場合、売上と利益の伸びの合計が40%の会社が良い会社と言われている。それを担保できる会社にしていきたい。

―調達資金の使い道は
エンタープライズ向けの人材を確保するのが我々の喫緊の課題だ。案件数に対して今は人数が足りていない。採用をいかに早く進めていくかが重要なポイントだ。株式公開できたのでそれなりにブランドも持った。それを生かしながら営業と開発のエンジニア、カスタマーサクセスを行うサポートエンジニアの採用活動を続けていきたい。そして、それ向けのマーケティングにしっかり投資をしたい。

―株主還元の方針は
今は投資モードなので配当金はまだ少し厳しい。ただ、株主に対して、リターンを出していきたいので、まずは「Rule of 40」に近い業績を常に出せることで、株主に返していくことを当面の目標にしたい。

ここで終わるわけではなく、ゆくゆくはプライム市場に上場できるように、その辺りでいろいろと考えていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]