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上場会見:ジェノバ<5570>の河野社長、高精度で測る

18日、ジェノバが東証グロースに上場した。初値は付かず公開価格の470円の2.3倍である1801円の買い気配で引けた。GNSS(Global Navigation Satellite System=全球測位衛星システム) 補正情報配信サービスなどを手掛け、測量や土地家屋調査、建設、ドローン物流、農業などでの位置情報利用を支援する。顧客がGNSS受信機で取得したデータとジェノバが配信するデータを組み合わせ、誤差が数センチメートルに収まる高精度測位を実現する。河野芳道社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

サーバーとネットワークを二重化し情報の安定供給体制を確保していると話す河野社長
サーバーとネットワークを二重化し、情報の安定供給体制を確保していると話す河野社長

―初値が付いていないが、感想は
投資家の期待の高さの表れと感じ、身が引き締まる。今後も事業拡大と企業価値の向上に邁進する。価格はマーケットが決めることなので、当社は、事業を推進することを第一に掲げて、今後も投資家の期待に沿えるよう事業活動を行いたい。

―独自性の高い事業と見るが、競合の認識は
現在、当社と同じような配信サービスを行っている競合が2社ある。1社は日本GPSデータサービスで、もう1社は日本テラサットだ。両社との違いは、当社で採用している電子基準点は全国の1300点全てだが、2社はその約半数を使用していると言われている。

電子基準点は、現在2つのメーカーが作っている。1つはトプコン<7732>という測量機器メーカーで、もう1つはトリンブルだ。この2つが電子基準点を分けているが、競合先はトリンブルの電子基準点を主に使っている。サーバー・システムでトリンブルの解析ソフトを使っていることが理由だ。ソフトを使用するにはトリンブルの機械が最も良いため、その基準点を使って情報を配信していると聞いている。

当社は1300の基準点を使い、基準点間の距離が短い形で測定する。そうすることで顧客に安定性や信頼性の高いデータを供給する。これが2社と当社との違いだ。

―国内展開のみか
主に展開しているのは国内だ。海外にも当社と同様に展開している会社はある。ただ、日本では複雑な地殻変動がある。大陸では地殻が一定方向に動くので大きく影響しないが、日本には4つのプレートがあるので、それが左右にずれ、上下に動くなどいろいろな方向性を示す。その補正がうまくいかないと地図に合わなくなる。当社は、バラバラに動くベクトルを含め、その地図にあった正しい位置に戻す特許技術を持ち、それが強みの1つとなっている。

―これまでの売上高の伸び率が11.5%で、今期は6%弱と一服感がある
戸上敏専務:今までは大体10%で推移し、分母が少しずつ増えているが、昨年の11%は、災害での利用が多かった。今期はその分がないので、若干低めに予算を組んでいる。実際にそれぐらいに着地する見込みだ。

―災害での利用は、従量課金か定額課金か
従量課金だ。

―市場シェアの今後と業績予想について。市場はとても伸びそうだが、予想業績の伸びが小幅に見える。この状況が続くのか。中長期的な計画は
現状、既存のサービス提供では、当社単体の補正情報だけではどうしようもなく、高精度の位置情報を必要とする顧客には情報を受ける機器が必要になる。受ける側は大きく増えない。例えば、パソコンに新しいソフトウェアを入れて一気に広がるようなものではない。今後、新しい分野ではもう少し早めに広がる可能性があると見ている。

河野社長:当社のデータだけでは高精度の位置を測れないので、機材が必要となる。これまで、測量機器メーカーの販売店に対してデータを配信してきた。測量機メーカーが測量機を販売する時に当社のデータが一緒に出ていく。これは、測量機器では非常に重要なポイントで、高精度の位置情報を必要とするほとんどの顧客は、販売店から購入する。そこにサービスを提供することで徐々に顧客が増えている。

新規では、KDDIや日立産機システムといった会社と、新しいビジネスパートナーを作っている。現在、新しい市場について両社と事業を進めている。上場を機に知名度や信頼度を上げることで、様々な顧客との連携が可能になると感じている。そこで新しいパートナーを形成し、様々な市場に事業を拡大したい。

―業績の伸びの見方が保守的という点で、受け手側の事情があるというのは、GNSS受信機メーカーとの関係で、伸びが小幅になるということか
戸上専務:例えば、今は、ICT土木とIT農業などの分野での伸びが大きいが、そこでは機械にGPSとGNSS機器やシステムを装着して動く。それらが付いていなければ当社の情報配信を受けられない。既存の機器に新しいシステムを後付けする方法もあるが、新しい機械が出荷される分だけ伸びている。

―クライアントの設備投資に依存するということか
今、ICT土木などは国の政策として取り組まれており、新規の機械には(受信装置が)大体付いている。

―中長期の成長イメージでは、4倍程度の伸びを想定しているようだが
西田大助経営企画室長:業界団体などが正確な数値を出していないので、正確に物事を伝えることが難しいが、成長可能性資料の記載の通り一定の基準で推定している。

―要求精度がより低いミッドレンジ市場で、位置情報を提供する通信キャリアと競合するが、事業を拡大する際に、競合との関係では何が顧客に刺さるイメージか
河野社長:当社のデータは非常に安定して供給される。誤差の振れ幅が少なくなる。モビリティや物流などを含めて、その誤差の幅がどの程度かという面はあるが、(電波の)状態が悪くなるとデータが突然悪くなることがある。

キャリアが使う計測方法は、いわゆる基準点から未知点(の距離)を1対1で計測するものだ。これは、(基準点からの)距離が離れると、データの精度が悪くなる。当社は、距離が離れる問題はなく、未知点に非常に近いところで仮想基準点を設定でき、精度が安定する。安定性で差別化し、それを必要とする顧客に事業を拡大していく。

―KDDIは競合でもあり協業相手でもあるのか
ともに発表したVRS(高精度位置測位サービス)がローンチされているので、その点は一緒に取り組んでいる。

―最近、人流をデータとして扱うunerry<5034>が上場してきた。同社もスマホの位置情報を使うが、マーケティング分野でジェノバのデータが使われる可能性はあるのか
高精度の位置情報を必要としていない分野であるので、そういったビッグデータに関わる領域は、当社の対象外となる。

―株主還元の方向性について
数年前から配当しており、今期も同様の配当を考えている。利益の状況を見て決定したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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