13日、TOブックスが東証スタンダード市場に上場した。公開価格の3910円を8.06%下回る3595円の初値を付け、3430円で引けた。本田武市代表が東京証券取引所で上場会見を行った。
―初値の受け止めは
初値は投資家による評価のため、しっかりと受け止める。今後、企業価値の向上に努め、投資家からさらなる評価を得られるよう取り組んでいく。

―アニメ化の際に製作委員会で幹事社を務める比率を増やしているようだが、自社主導で製作委員会へ参画していくペースや行動目標について今後の考えは
能動的に製作委員会を組成するケースと、従来の出版社のように映像会社からオファーを受けて展開する受動的なケースがあるが、そのバランスが重要と考えている。製作委員会は業界の人たちと一致団結してパートナーを組んでいくが、当社はまだ業界を牽引するほどの規模ではないため、関係各所と協議をしていくなかで、均衡を取りながら進めていくのが現状の目標だ。
―上場という選択をした理由や背景、またタイミングについて
この業種は、上場企業がまだ少ない状況にあると思っており、そのなかで、このビジネスをしっかりと世界へ展開していきたい。また、IP(知的財産)は今後国も含めて産業として育てていく方針がある。我々は新興企業であり、この事業が「国の産業である」ことを若い世代にきちんと理解してもらいたい。非上場で理解されないわけではないが、上場はそうしたメッセージ性を最も打ち出しやすい手段であると考え、準備を進めた。その結果、このタイミングでの上場となった。
―初値は公開価格を下回ったが、4月から土曜夕方枠で「本好きの下剋上」シリーズのアニメ放送が控えており、期待材料はいくつかある。今後、投資家にはどのような点に注目してほしいか。
現状、当社の売上は出版の比重が大きいため、出版社のカテゴリーで見られがちだが、実際には出版以外に携わる社員も多数在籍している。しかし、日の目を見るまでに長い時間がかかる。アニメをどれくらい前から始めるかというと3年前からだ。つまり、スタッフは3年後の仕事を行っており、投資家には、この3年後の成果に向けて働くスタッフの活躍に期待していただきたい。
―IPの創出からアニメ化や舞台化、グッズ展開など幅広くプロデュースしているが、今後特に注力したい分野は
全て。それぞれの担当が専門性を磨いており、必ずしも舞台からグッズへというわけではなく、グッズから舞台への展開もある。また、例えば舞台であれば、小劇場から始めて大劇場、そしてまだ当社ではできていないが、海外公演までを目標としている。グッズやアニメも同様、それぞれの領域でプロデュースの質を高め、規模を拡大していくことを目指す。
―IP創出の観点から、インディペンデント・ゲームなどの分野に今後注目していく予定はあるか
現在、社内にゲームに関する機能はない。しかし、コラボレーションする機会や、お声がけをいただくことがあれば可能性はある。
―日本のIPに対して海外からの人気が高まっているが、創出するIPについて、今後どのように海外発信を進めていく考えか
海外と一括りにすると戦略がぼやけてしまう。国や地域によって宗教、文化、人口構成と何もかも異なる。そのため、経済成長しているエリアへの進出や、世界最大のマーケットである北米への展開など、それぞれの市場に合わせていくことが最適解になると思う。
具体的には、現地に私のビジネスを深く理解するパートナーを開拓していく。北米に関してはIPビジネスの先進国であり、日本の漫画市場も伸びている。様々な企業が漫画のプラットフォームを立ち上げており、Netflixなどのグローバルなディストリビューターが「ONE PIECE」をはじめとする日本のIPを展開している。そうしたプラットフォームやディストリビューターと協議を重ねていくモデルもあるため、各市場に合わせて最適解を選んでいく。
―現在の漫画・ノベルの市場環境について。代表の古巣でもあるKADOKAWA<9468>を含め、上場しているいわゆる「なろう系」の漫画・ノベル系企業が弱まっている。また、作品の供給過多で競争が激化しているとの見方もある。ここ数年の市況の推移と、今後の展望をどう見ているか
私は1998年に新卒でKADOKAWAに入社し、編集者と映画プロデューサーという2つのキャリアを積んできた。当時から既に出版は斜陽産業、映画人口は減少していくと言われ続けていたが、それから四半世紀が経過した。
四半世紀というと、もうなくなるくらいの期間。その間、紙の出版物は確かに減少し続けたが、その一方で成長する企業は着実に成長し、電子書籍市場も拡大した。映画ビジネスも、配信の登場や、IPビジネスによってビジネスモデルの中身が変わってきて、価値の見方が変化した。これは出版においても同様だ。
時代が変化しても、IPは人々の生活に欠かせない存在で、衣食住ではないものの、一定では不変の価値を持つものだと確信している。私がこれまで見てきたなかで、瞬間的に価値が下がったように見える局面は何度もあった。しかし、私は価値そのものは下がらないと思っている。価値が下がったと思う人たちとは異なる視点で、その価値の変化を見いだした時に、そこにビジネスチャンスがあると考えている。電子もIPもその一例だ。
12日のKADOKAWAの決算は悪かったかもしれないが、それは一過性であり、価値下落を意味するわけではない。むしろ、そこには新たな変化が起きていると捉えるべきで、この変化を見逃さなければ、それはチャンスになると認識している。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]
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