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上場会見:マイクロ波化学<9227>の吉野社長、戦略課題に電化で応える

24日、マイクロ波化学が東証グロースに上場した。初値は公開価格の605円を9.09%下回る550円を付け、650円で引けた。マイクロ波化学プロセスの事業化を目的に、マイクロ波環境化学として京都市に2007年8月に設立。顧客の課題解決のために、研究開発からエンジニアリング・製造支援までを一気通貫で提供する。ものづくりの製造工程を「マイクロ波」で電化し、省エネルギーかつ高効率、コンパクトな環境対応型プロセスの世界標準化を目指す。吉野巌社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

吉野社長は、マイクロ波の利用に関して、法令を遵守して、安全に安心してものづくりに活用できるとも話した
吉野社長は、マイクロ波の利用に関して、法令を遵守して、安全に安心してものづくりに活用できるとも話した

―今日の株価への評価は
マーケットのことなので、我々がとやかく言えるものではないが、事業を進めて企業の価値を高めていく。また、技術系の会社はどうしても分かりにくいところがあるので、きっちり分かりやすく情報を開示し、事業そのものを理解してもらうことは重要で、株価については、そのようなことをやっていけば最終的についてくるものだと思っている。

―マイクロ波を使う場合、製品の生産量は従来の加熱方法と同様なのか、それともより多くの物を作れるのか
マイクロ波は非常に効率の良いエネルギーの伝達手段なので、例えば、反応器の単位体積当たりの生産量が増える場合が多い。

―関連して、反応炉をどのぐらいまで大きくでき、生産量をどの程度まで増やすことができるのか
現在、既に商業レベルで動いてるプラントのなかで、年間2万トンのスループットの製品は動き出している。さらに言うと、マイクロ波をクラッカーや鉱山などいろいろなところに使っていこうと考えているので、将来的には100万トンクラス(の生産量)を実現していきたい。

―マイクロ波を使うことで、工場の立地について制約が緩和されたりするのか。いろいろな場所に置けるのか
反応時間を非常に短くすることができるので、コンパクトになる。あまり詳しく話すことはできないが、顧客によっては、例えば、既存の建屋があって、その中で増設したいが、通常の方法ではできないから、建屋をもう1つ作らなければならないという時に、マイクロ波であれば、装置をコンパクトにできるので、建屋を増やさずにできるという話を受けることもある。土地を使わないことが可能になる。

塚原保徳CSO:スペースがかなり小さくなるので、フレキシブルになるとともに、太陽光を使って電気を生み出すことが可能だ。例えば、砂漠や島、海上、宇宙などいわゆる化石燃料を持っていくことが困難である場所では、マイクロ波を使うことでメリットが出てくる。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)と進めていた宇宙の話は、宇宙にエネルギーを持っていこうとするとキログラムあたり何百万円もかかると言われていて、地産地消でなければならない。宇宙で得られるエネルギーは太陽光で、それを電気に変換して、マイクロ波であれば、それを物質を作ることにも使えるし、凍結乾燥で氷を水にして飲料水にしたり、ジェット燃料にして、往路だけの燃料を持っていって月や火星で水素と酸素に分離したものを燃料にして帰ってくることもできる。

構造体を作るためには、ある程度の熱エネルギーが必要で、マイクロ波では一気に1000~2000℃にできるので、構造体を作る、固めるという作業もできる。それも含めて地産地消が可能で、唯一得られるエネルギーが電気で、マイクロ波で物質変換を行う。宇宙ではそういう考え方であるし、小さな島でも海上でも同じだろう。

―どのような知財戦略を取るのか
技術プラットフォームのなかに「要素技術群」があり、その要素技術群が我々の技術プラットフォームを支える技術の群になっていく。

要素技術群は4つの構成になっており、基礎物性評価とシミュレーション、制御、基盤機構がある。知財戦略として、基礎物性評価と制御、シミュレーションは秘匿化する。これは我々がデザインするところで、ノウハウを管理している。

基盤機構は、いわゆるメカニカルな部分で、我々はプロセスを顧客に納めるため、顧客のところに我々の装置が入っていく。装置の面で、外から見てもメカニズムは分かってしまう部分があるので、基盤機構というメカニカルな部分は、積極的に権利化・特許化していく。

―リードの数が2020 年度の 140 件から 2021 年度に 570件に拡大し、事業の進捗をフェーズで区分している。フェーズ1とはどのような段階か。商談が進んでいるという意味か
吉野社長:フェーズ 1 は、PoC(Proof of Concept)の研究開発段階の契約を締結している段階で、実行している。フェーズ2は実証開発をしている、パイロットプラント・実験プラントを作っている。フェーズ3は実機段階になる。フェーズ4は生産に入っているところだ。

―フェーズが進むたびにマイルストーン収入が入ってくるのか
共同開発契約を締結してフィーを受け取る事業モデルだ。

―最後まで進まなければお金が出ないというものではなく段階ごとに発生するのか
各フェーズで利益が出る水準でフィーを設定している。蛇足になるが、引き合い数はフェーズ1の前の、顧客から「こんなことやりたいんだけど」という問い合わせの段階だ。

―フェーズ0のようなものか
そうだ。それが増えることが極めて重要で、昔は実績を上げたいので、顧客から引き合いがあるといろいろなことをしていた。リードの数が増えてくると、顧客との対話を通して、本当にやりたいこと、あるいは顧客にとって価値があることや戦略的なことに取り組むことができる。

その表れが住友化学との水素や三井化学との炭素繊維、三菱ケミカルとのPMMA(アクリル樹脂)など。各社にとって意味のある戦略的な事業だと考えていて、そこに我々が入って技術を提供していけることは、パイが大きくなったからだと思う。

吉野社長と塚原CSO
吉野社長と塚原CSO

―今後の開発の方向性だが、マイクロ波を商業生産に活用する基本的なことは既にできているだろうが、その後の自社開発について
塚原CSO:要素技術群の強化は今後も続けたい。液体系や気体系、固体系といった要素技術群が広がり、マーケットへのアクセスを広げていくことで、技術群を増やし精度を上げていく戦略を取っている。

1つのプロセスで15~20の要素技術を組み上げて作っていくが、その際的な組み合わせをしていくことが、我々の反応系と反応器のデザインになる。そのデザインする力を標準化しようとしている。標準化することで、当社のどの社員が作ったとしても一定のクオリティにする技術の標準化を行おうとしている。

それとともに、シミュレーション技術が非常に重要になっている。反応器を作る時にとても重要で、今はそのCPUの部分にスーパーコンピューターを使っているが、強化していくために、量子コンピューターなどを取り入れることで、より早く精度の高いものを作ろうとしており、(AIも含めて)量子コンピューターの会社と話をしている。

―海外関連の事業は今はあるのか。今後はどう展開するのか
吉野社長:現在はある。まだ発表できる段階にはないが、何件か走っている。今後さらに増やしていきたい。特にカーボンニュートラルや電化は欧州が先頭を走っているので、そのようなニーズを捕まえていきたい。

―宇宙開発の関連ではどういうことを進めていくのか
JAXAとは、月の石から水を取り出す技術を開発していた。現在は、凍結乾燥、乾燥させる技術を医薬品や食品業界に展開していくことに取り組んでいる。

―フリーズドライのようなものも使えるようになるのか
今既に大型の実験プラントや装置を作ろうとしているところだ。凍らせる部分ではなくて、凍ったものの水分子をターゲットにマイクロ波を当てることで乾燥させる技術だ。フリーズドライは、水をじわじわ抜いていくので時間がかかることが多いが、極めて短時間にコンパクトかつ温度を上げずにできるのではないか。食品全般もそうだし、例えば、ワクチンなどにも使える技術を作りたい。

―食品廃棄物の減容化などにも使えるのか
そういったところでも引き合いはある。

―大学発ベンチャーという側面があるが、上場することで大学の研究費が増えるといったことはあるのか
当社には大学に関係するベンチャーキャピタルが2社入っている。UTEC2号投資事業有限責任組合とOUVC1号投資事業有限責任組合だ。我々が上場して彼らがエグジットできると、それなりのリターンが生まれ、それが大学にどう還元されるかは分からないが、何らかの仕組みがあるのではないか。

―株主に岩谷ベンチャーキャピタル合同会社があるが、事業上の関係について
投資してもらっていて、我々の技術を見ていきたいという風に、これまで一緒にやってきている。商社で、ものづくりに興味を持っているなかで、我々の技術を彼らのなかで使っていきたいのではないか。

―資金使途は
開発投資や体制強化が必要だ。カーボンニュートラルのなかで引き合いが非常に増えていて、このままいくと、来年度のどこかで我々自身の実証工場の能力が足りなくなってくる。これを解消するために今回調達した資金を使って、研究・開発設備を拡張し、あるいは効率化を図って、今までであれば2件しかできなかった案件を3つできるようにする、夜間運転を省力化してできるようにするといった投資を想定している。

―配当政策は
成長していく会社であり、基本的には配当よりも研究や事業開発に資金を振り向けたい。会社を成長させ、企業価値を上げることで株主に報いたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]