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上場会見:ホームポジション<2999>の伴野社長、仕入れで攻める関東

23日、ホームポジションが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の450円を3.33%上回る465円を付け、453円で引けた。静岡県を中心に、東海と関東エリアで戸建分譲事業を展開する。2000~3000万円未満の価格帯が主力で、デザインとコストパフォーマンスを強みとする。2021年8月期の販売実績は422棟(うち静岡県は262棟)。伴野博之社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

デザイン重視の戦略に切り替えてから利益がV字回復したと話す伴野社長
デザイン重視の戦略に切り替えてから利益がV字回復したと話す伴野社長

―市場環境の悪化でIPOを延期する会社もあったが、この時期に上場した狙いは
分譲住宅は資金力が必要な商売だ。顧客にとって一生の家なので信用が非常に大切で、IPOの目的は決して資金調達ではない。大手のハウスメーカーや分譲住宅が強いのは資金力だ。注文住宅と違って建売住宅は資金があるところが必ず勝つという資金力勝負の業界なので、上場して金融機関からの信用も上げて、一生の財産である分譲住宅を買ってもらう。それを目指した信用力向上のための上場なので、時期については全く問わない。最短で上場したいと考えた。

―初値の感想は
株価でどうこうというわけではなく、上場で信用を得て、今後成長していきたいので、短期的な初値は気にしない。長期的に見て今後ますますシェアを広げて売り上げを上げて利益を拡大し、いずれは全国に行きたい。最短でプライム市場に進みたいという思いでいるので、今日の初値は通過点。長い目で見てもらえれば、もっと価値のある会社になると信じている。

―注文住宅は手掛けるのか
注文住宅はやっていない。建売住宅で、基礎が着工する前に顧客が欲しいと言ってくれたときには、仕様を変えたいという要望があれば、建売ではなく注文住宅のようにすることは稀にある。

―上期実績に比べて通期予想が保守的ではないか
分譲住宅なので仕入れた土地に対して、家を造って販売する。前半の販売がとても好調なので、数多くのものを前半に販売した。それで在庫が少なくなってきたので、後半のほうは売り上げが少し落ちる。ただ、現在は来期の仕入れが好調に進んでいるので、来期も非常に良いスタートを切れる。

―通期予想はウッドショックも織り込んで策定しているそうだが、その後もインフレは進行している。それに対するコスト面の影響や、消費者からすると米国では住宅ローン金利が上がっているが、そうしたことへの対応は
コストは、ちょうどウッドショックや円安、またウクライナ情勢の悪化で、地代が非常に高騰している。価格転嫁が難しい時だが、我々はデザイン戦略に舵を切ったので、価格転嫁が上手にできている。インフレなどについては、贅沢品に関しては節約するが、今のところ住宅は必需品と見られている。家はなくとも最低でも家賃はかかるので、住宅の購入意欲はそれほど影響しないのではないか。

―ウクライナなど国際情勢や円安といったところで、仕入れへの影響を受けている、または受けそうだというものはあるか
今回に限らず、震災などいろいろな事があるたびに物がなかったりするが、少し前にウッドショックがあり、一時期は「一過性のものですぐ戻る」と言われていたが、今のところ収まりそうにない。円安やインフレ、ウクライナ問題で住宅資材は非常に少なくなっている。

創業以来、(家を)作ってくれる大工、物を納入してくれる材木業者やプレカット事業者といった協力業者との付き合いを非常に大事にしてきた。ウッドショックで木が少ない時に、我々は優先的に木材を供給してもらっている。そのような関係を築かず、上から目線で商売をしてきた工務店や建設会社は今、材料が入っていない。もっと地元の業者との関係を築いていきたい。

―関東に展開する際の新たな課題は
土地の仕入れ力が最も大切になる。例えば、大手の分譲住宅メーカーでは、(新規出店時に)マーケティングをして、どこに店を出すか(決めて)、新しい店に既存の社員を送り出す。そうして地元の不動産会社と新しく赴任した支店長は、名刺交換をして新しく関係を築くことになる。この関係でスタートすると、良い物件がなかなか回ってこないので、どこよりも高い値段で買わなければならない。そういうことをしていると仕入れ競争力で負ける。

当社は関東で、大手の住宅販売分譲業者で仕入が非常に強い人間をリサーチして、私が直にヘッドハンティングをしている。非常に優秀な、仕入れができる人間を、その人の会社や家の近くの喫茶店で、私が何度も直接口説いて当社に加わってもらっている。非常に優秀な支店長クラスの仕入れ担当者を地元採用で招いているので、スタートから猛ダッシュというか、良い仕入れができる。それが強みだ。

また、その優秀な社員が、元にいた大手に在籍する優秀な仕入れ担当者を私に教えてくれて、その人を私がまた口説きにいく。支店を出す場所は、大手ではリサーチして決めるが、当社の場合は、優秀な仕入れ担当者が見つかったら、その人の得意な所に支店を出す。そのような形で関東に出店しているので、関東は非常に成績が良い。今後もその形で進めば、建売の肝である土地の仕入れが上手くいく。

建売は仕入れ8割というが、非常に優秀な人たちの仕入れで関東を攻めていきたい。大手の飯田グループホールディングスのような会社にいる人たちが当社に来て、すごく生き生きと働いていることが口コミで広がって、入社したいという人が何人もいる。ただ、建売は資金力が必要なので、全員は抱えられない。もっと資金力をつけて新しい店を開拓するために関東はもっと伸ばす。

―3Dプリンターで家を建てるなど、住宅に関して新しい技術が入り込みつつあるようだが、すぐに取り入れるかは別として、新しい技術に対する考え方や姿勢について聞きたい
なるべくどんどん取り入れたいと思うが、分譲住宅は顧客の一生の財産であるので、新しいものに飛びついて、果たしてそれが30~50年持つのかということもある。

やはり証明された工法でなければならないし、3Dプリンターも人気があるが、今後長い目で考えた時にどうか。ただ、住宅模型を作るには面白いと思う。これから太陽光発電など、もっと変わっていくので、状況に応じて良いものは取り入れたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]