株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:ベーシック<519A>、“働く”をAIでアップデート

25日、ベーシックが東証グロース市場に上場した。公開価格の870円を8.05%下回る800円の初値を付け、同値で引けた。秋山勝代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

新プロダクトのworkrunによってカスタマーサポート部門では対応工数を60%削減し、営業部門では商談準備時間を30分から5分に短縮できた導入事例を紹介する秋山代表

―初値が公募割れした一方で、テーマ性が極めて高く、SaaS銘柄として黒字化しており機関投資家の評価も高いようだが、株価について中長期的にどう見ているのか
あまり一喜一憂することなく、できることをやりたい。顧客の問題を解決し、その結果、業績が付いてきていることを経験してきたので、まずは実直に実績を積み重ねながら、しっかりとIRを行っていくことが重要と考えている。

―初値をどう分析したのか
全てが当てはまるかどうかは一旦置くが、今年、新規上場した企業はもれなく同じ状態と見ており、そのシナリオは想定していた。我々だけが特別扱いされる状況にはないだろう。グロース市場全体で見ると、日経平均の上昇には連動していないので、個別銘柄のなかで買ってもらえるように、別枠として扱ってもらえる状態を目指したい。

―この時期にIPOをした理由は
元々は今から8年前に、IPOに限りなく近い状態にあったが、私の判断で引き延ばしていた。上場には条件がいくつかあり、業績だけではなく組織の状態が上場ゴールで終わらせない重要なポイントだと考えていた。事業と組織の状態という両輪が自信を持ってマーケットに出るにふさわしいと認識できたので、このタイミングになった。

―人材の確保は
多くの求職者が会社を評価する時に、オープンワークの口コミを凄く重要視している。当社はオープンワーク上の全社で見た時に上位1%のスコアを獲得している。IT業界だけで括れば、 Googleや Facebookが載っているランキングでも8位にある。

客観的な情報に基づいた強みを生かすとともに、重要なのは何をしようとしているかであり、代表の私が言っていることだけではなく、働いている人たちがどういう感情でこのベーシックという会社で働けているのかを組み合わせて優秀層を獲得したい。上場で社会的信用が手に入ったので、その組み合わせでと想定している。

―Anthropicショックは追い風なのか、新しい課題が生じたのか
株価という観点ではネガティブな影響が多少なりともあった。一方で、実務では恩恵を受けている。これまで時間がかかっていたプロダクト開発が、かなりスピーディーにできるようになってきた。加えて、顧客は、「AIを使って○○したい」わけではなく、「やりたいことをやりたい」というニーズを持っている。安心・安全・確実に業務を実行できる環境を最も求めている。それらをスピーディーにAIを、特にClaude Codeなどを使いながら価値提供できるので、結果としては追い風と考えている。

―上場5年後に時価総額100億円が要求される“時価総額100億円問題”でIPOを見送る動きもあるなかで、このタイミングで上場した理由は
スタートの段階で100億円を超えるかどうかは、必要なタイミングでその時価総額が超えられているかどうかという100億円問題とは関係のない話と見ている。

地合いの部分は我々が何か言える話ではないが、上場することによって得た信用と資金を使いながら、決まったタイミングまでに100億円を達成する算段を付けられるので、そのまま出ていこうと考えた。

―達成するタイミングは
時価総額なので正直何とも言えないが、2年以内にはその辺りにタッチできる業績を作れる算段でいる。あとはマーケットに判断してもらう。

―そのエンジンとして新しいプロダクトを出したのか
そうだ。

―時価総額100億円はオーガニック成長のみで達成するのか、M&Aも計算に入っているのか
入れていない。相手があってのことなので M&Aはボーナスのような部分もある。一旦はオーガニックな成長と、今仕込んでいる取り組みも含めてそこまでは見えるので、M&Aはプラスアルファで考えてもらいたい。

―仕込んでいる取り組みとは
先程のAnthropicの話に繋がってくるが、SaaSの領域では既に価値が証明されているマーケットが様々にある。我々がこれまで取り組んでいない領域に対してAI駆動開発で、圧倒的なローコストプロダクトを出していきたい。譬えるならニトリだ。

「お値段以上のニトリ」と言っているように、ニトリが販売している物は、同社が新規に開発したものではないと思う。マーケットでニーズがある物を、彼らがしっかりと見極めて、それを値段以上のバリューがある形で出すことで、多くの人たちに支持される状態を作っている。SaaSのプロダクトでそういう戦略を描いていきたい。

―具体的には
例えば、名刺管理やSFAといったカテゴリーとしてしっかり確立しているものを想定している。

―スタートアップ支援事業を行っていた時期もあったが、現状は
2016年から2018年に行っていた。2018年にIPOを計画していた時に、支援事業とM&Aを戦略としており、アクセラレータープログラムを実現することで、自社サービスや事業と相性の良い企業を集める機会としても位置付けていた。純粋なスタートアップ支援と、IPO後の当社の成長の両輪を狙っていこうとしていた。ただ、そのときはIPOを見送ったので、その事業は役目を終えている。

―大規模顧客は多いのか
2割ぐらいなので、全体で言うと少数だと思うが、1000社を超えており、しっかりチームを作って深耕していくには十分な顧客数となっている。皆が知っている会社も多いので、十分に大きな伸び代だと見ている。

―黒字継続の見込みは
十分に可能だ。「事業の成長を人の数で解決しない」という方針に基づいているからだ。費用が最も重い部分は、固定費である人件費だ。それを上げることなく業績を伸ばす状態を作れている。変動費は調整できるので、利益はこれまで以上に出せると見込んでいる。

―AIでワークフローを変えていくとなると、人間の働き方の本質はどのように変容していくのか
今までの仕事の仕方が最適解だったと認識している。AIが登場し、ワークフローのツールが使える状況になってきた点では、働き方がアップデートされていくタイミングと位置付けている。

新たな働き方やAIとの向き合い方を、1つの形として伝えていきながらアップデートしていくことが必要と見ている。何かを壊していきたい、否定していきたいというものではなく、環境の変化に合わせた働き方を提案していきたい。

―いわゆる“フィジカルAI”や“エンボディドAI”に関連する商機はあるのか
出てくるとも言えるし、現段階ではまだはっきりと言いにくいというのが実態だ。
我々は1人当たり売上高の向上を、自らのプロダクトや AI活用によって実現してきた。内部で活用していく機会を見出してそれらを使ったうえで、検証の結果、有効であるならば商機につなげていくことも考える。我々自身が使いこなせない、手に余る状況であるならば時期尚早と判断する。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

関連記事