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上場会見:サイプレスHD<428A>、出店拡大とインバウンド対応

8日、サイプレスホールディングスが東証スタンダード市場に上場した。公開価格の710円を4.93%下回る675円の初値を付け、663円で引けた。東稔哉社長が東証で上場会見を行った。

 

職人技術者の表彰制度や今後の出店について説明する東社長。

―上場と初値の受け止めは
業績をさらに上げて、市場や株主の期待を超えられるように一層努力したい。初値は、現時点の我々の業態をみなが知っているわけではないので、投資家の我々に対する評価だと真摯に受け止める。10月15日に決算短信が出て、17日の決算説明会で、今出ているものとは違う情報が出てくると思うので、様々なことを発表したい。

―売上推移の伸び率が2024年度時点ではほかの上場企業と比べても高いが、コロナ禍ではへこみが大きい。ここまでのし上がった勝因はなにか
当社は路面店を出すのが得意で、仮に普通の定食屋の会社が500万円売るところを1000万円売っていた。夜は定食のほかに、朝に仕入れてきた魚、例えば、ヒラメの刺身480円や貝の刺身280円など100種類を黒板に書く。そうすると、居酒屋が少し衰退してきたときに、「居酒屋で飲むより、朝に仕入れた魚を2000円以下で食べられて一杯飲めるなら、そっちに行こうよ」ということで、夜に500万円程度売れる。そこで、路面店の出店に注力していったが、そこにコロナ禍が来てしまい、会社もリモート勤務になったり、夜はお酒を飲む人がいなくなった。

コロナ禍がいつ収束するか分からないなかで、スクラップアンドビルドを進めた。路面店をスクラップする代わりに、財務状況が良かったため、我々と、出店者がおらず困っていた商業施設の利害が合致し、急速に出店を進めた。お酒の比率が2%を切るため、商業施設はあまりパンデミックの影響を受けなかった。それで一気に売上が回復した。

―今後、出店を進めていくという話があったが、外食産業に関しては物価高や人材確保が難しい点もあると思う。どのように対応していくのか
人材がいなくて店を出せなかったことは過去一度もない。離職率も、外食産業のなかでは割と低い。生の魚を使っているので、大手が使いたがらない職人技術者の確保が前提になる。当社には、技術者が200人以上いるので、その人たちに15年、20年辞めないで活躍してもらっている。

それは20年も前から、様々なシステムがあり、料理しかしてこなかった技術者の人に、損益計算書と貸借対照表を教える。会社の数字はガラス張りで、損益計算書も1円単位で出せる。その損益計算書の下に、今で言えばEBITDAのようなことだが、会計法上にない評価利益という言葉を作った。このEBITDAに対して職人や店長にインセンティブを出し、100人以上の技術者たちを集めて、月に1回、表彰式がある。表彰の項目は売上だけではなく、自分たちが損益計算書で組んだ評価利益、レイバーコスト、原価率、1席当たりの売上、前年対比、館内順位、アンケートを取っているので、ホスピタリティに対する評価、これ全部が表彰の対象だ。

そうすると、130~140人の半分以上が表彰される。表彰されると、職人で給料が月40万円程度の人が10~20万円と、毎月の給料のほかに、夏と冬の賞与とも別で、インセンティブがもらえる。成績の優秀な人たちは翌月に、講師として「私はこういうことをして収益を上げている」と発表する。ほかの店舗の人たちが尊敬の眼差しで、「私にも教えてください」となる土壌を20年作っている。働いている人たちのモチベーションは非常に高い。今期も、ベアは5%以上で、総額でも1億円以上の昇給をしている。

物価高については、様々な魚種があるから、魚は安定しているが、米の値段が直撃する。ミニマムアクセスや古米を使うなど、様々なことをした。米を600トン使うため直撃するし、我々の見解では米の値段はもう下がらないので、今まで値上げしてこなかったが、5月1日に20円値上げした。この20円は、100円の商品が20円上がるわけではなく、1000~1200円のなかの20円。5~8月にアンケートを4000通以上取ったが、値上げのクレームが1件もなかった。

65~70万人が来店するので、仮に65万人で20円上がると1300万円、年間にすると1億5000万円で、これがほぼ真水。そのことを顧客に許容してもらったと思っている。周りを見渡しても、50円とか100円とか、なかには200円程度上げている同業他社もあるなかで、我々の値上げは非常に容認されたのだろう。外食デフレという言葉は、先進国(の都市)であるパリやロンドン、ニューヨークにはない。30年続いた外食デフレが、この期に少しずつ変わってきたのではないか、と受け止めている。

―1000店舗の出店を目指すという話があったが、出店ペースについてはどうか
ロードショーで機関投資家には、堅い話しかしなかった。物価がものすごく上がっており、建築コストの回収が難しくなってくる。そのなかで、「今年50店舗出します」と言うと、当然、開発は50件出す。そうすると、投資委員会からすれば、「なぜこのような案件に出店しなければならないんだ」ということも出てくる。例えば、50件出店して15件がスクラップになると、株主に迷惑をかけてしまう。1店舗減損しただけで大きなリスクになるので、そこは投資委員会でしっかり検討した結果を出していくので、契約上ほぼ確定的な店舗だけを言ったが、投資家に「なんで40件、50件と言わないんだ」というりも受けた。

ただ、安易に風呂敷を広げてしまうよりは、中間や四半期決算で、出店件数が増え、こういう契約になっているということを正式に発表したほうが、株主にとっては正確な情報だろう。今10件としか出していないが、オファーも非常に多いため、内部では30件、40件やれるような出店政策を計画している。

―「子ども食堂源ちゃん」を作りたいという話があったが、これからも新しいブランドを増やしていくのか
もちろんだ。ブランドは生き物だと思っている。1970年代に外食企業が台頭してきて、全国一律で同じ値段で、同じメニューで、一気に広げる時代は終わっていると思う。なぜかというと、当時と今の需給バランスは圧倒的に違うからだ。顧客のニーズもいろいろ変わってきているし、高い食事をした人が、翌日は簡単に牛丼で済ますことがある。いろいろなニーズを拾ってブランドを開発していくことを常にやっているので、これは進めていきたい。

―外国人訪日客の割合は
店や立地によって違うが、秋葉原は全般的にインバウンド顧客の比率がかなり増えている。インバウンド顧客が4000万人を超えそうな勢いで推移している。「ABURI百貫」に中国のトラベラーが10人来て、「昨日は銀座の高級なお寿司を食べて、また食べたらここのほうが美味しいのに値段は10分の1だった」と言ってもらった。今後もそういう人への対応のために、メニューなどを、英語だけではなく、中国語や韓国語などでの表記を進めている。

[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]