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上場会見:UNICONHD<407A>、スーパーゼネコンと同じステージに立つ

26日、UNICONホールディングスが東証スタンダード市場に上場した。公開価格の1060円を30.66%上回る1385円の初値を付け、1218円で引けた。小山剛代表などが東証で上場会見を行った。

成長戦略について説明する小山代表

―初値の受け止めは
公開価格を約3割上回る水準で付いたことは、我々への期待と興味の表れであると受け止めている。これを真摯に受け止め、上場をスタートラインと位置付けて、今後も緊張感を持って事業展開に取り組んでいく。

―現在、東北地方を中心としているが、買収などによってエリアを拡大していくのか
当社の新しいゼネコンモデルは、経済産業省や国土交通省を通じて広く周知されている。これによって、ほかの地域のゼネコンからも関心が寄せられている。東北地方では、特に冬季に雪などの天候によって仕事が左右されるが、雪の少ない地域との間で事業のシナジーが期待される。福岡県など遠方からも「仲間に加わりたい」との声があり、地域を限定せず広く仲間を集めていく方針だ。

―独自性や強みは何か
土木系の公共工事を主に請け負っている。公共工事というと、皆さんが持っているイメージの通り、手堅い事業であり、当社の売上の8割は公共工事だ。

ほかには、他社が手掛けにくいニッチ領域にも強みを持つ。例えば、只見町(福島県)にあるダムの浚渫(しゅんせつ)工事は、ダム湖に堆積した土砂や泥を取り除き、船で引き上げる作業がある。そのため、船を使いこなせることと、地元の企業であることの2つの条件があり、これらの条件を満たすことで、独自のポジションを確立している。

また、NEXCO東日本の料金所ゲートの取替工事は、交通をさせながら行う非常に大変な工事だが、当社グループ会社の山和建設は、NEXCO東日本の工事に精通している。出だしから山和建設が工事を行ってきたので、ほかの会社では難しい。また、取替のための機械やノウハウを持っていることも強みだ。

ゼネコンには、地元向けとスーパーゼネコン向けの2つの枠組みがあるが、当社が主に扱うのは地元向けで、これには地元の企業を守るための地域参入障壁が存在し、地元企業にアドバンテージがある。地元向け工事を中心に受注することで、安定した基盤を築いている。

―全国展開を視野に入れた際に、勝機はあると考えているか
資本金5000万円以上の地場ゼネコンは、全国で1万7000社存在し、そのうち跡継ぎがいないのは約4割で7000社ほど。これらの企業に対して連携を呼びかけることで、全国的な事業展開において勝機があると考えている。

―資金調達が目的ではないと言うが、上場の狙いは何か
ただ地場ゼネコンが集まっただけではなく、スーパーゼネコンが実現している上場を、地域連合型ゼネコンである我々が実現し、同じステージに立ちたいという思いがあった。上場で知名度が上がり、技術者の採用もしやすくなる狙いもある。また、ただの地場ゼネコンと上場を成し遂げている地場ゼネコンでは違いがあり、仲間を募りやすくなると考えている。

―成長戦略についてどう考えるか。引き続きM&Aなどに注力するのか
これまでにM&Aを通じて4社をグループ化しており、国から企業集団としての認定を受けている。この認定によって、グループ内の技術者を柔軟に配置し、売上や利益率の向上につなげることで、オーガニックな成長が実現できている。この成長を基本としつつ、今後も年間1〜2件のペースでM&Aを進め、分母を大きくして、企業規模を広げていきたい。オーガニック成長とM&Aの両輪による展開を目指している。

―公募増資は初めから選択肢になかったのか
そうだ。これまでの成長過程でM&Aをしてきたので、その投資のために資金を使うのではないかと思われる可能性があった。それを押し出しても上場は可能だが、時間がかかるのではないかと不安があった。上場を早くに成し遂げること、スムーズに上場することを優先した。

記者の質問に耳を傾ける湯田取締役

湯田高弘取締役:我々のグループ会社は、大きな設備の機械を持って工事を行うのではなく、どちらかというと施工管理で、外注先協力会社の仕事をコントロールすることがメインとなる。そのため、大きな設備資金が不要であり、稼いだお金はM&Aに充てることが可能なため、資金のアロケーションにおいて融通を利かせやすい。これに加えて、先に述べた方針も踏まえ、公募を行わない形を選択した。

―配当性向を40%程度としたのはなぜか。今後、見直しの可能性はあるか
小山代表:投資家に魅力を感じてもらえる数字であり、バランスも良いと考えた。先述の通り、今後、キャッシュはM&Aにアロケーションしていく予定。その部分と我々に興味を持ってもらう人たちを募る部分のバランスを検討したときに、この数字となった。また、40%を出しているゼネコンは少なく、新しい形のゼネコンである我々に早く魅力を感じてもらいたい。

湯田取締役:配当性向の見直しについては、大株主や様々な株主との対話が始まることになるため、その中で議論を深めていきたいと考えている。現時点では、既定の方針を踏襲する。

―今期の業績予想、その先の見通しはどうか
小山代表:従来とはトレンドが違う。これまでは、土を掘ったりとか、山を作ったりのような案件が中心だったが、今年度の発注予定では、コンクリート構造物の補修工事が多い。ひび割れの補修や防水処理などでは、コンクリート用ボンドを入れて周りを特殊な塗料でコーティングする必要がある。今までは土をいじるなどで、材料をあまり買わなくて済んでいたが、材料も施工も外注しなければならなくなる。そういった特殊工事によって外注比率が高まる見込みだ。

また、福島県の浪江地区や相馬地区など、海沿いの地域では公共工事が少なくなっており、代わって補助金事業が増加している。これらは「準公共」と呼ばれるもので、補助金率が4分の3と高いが、民間扱いとしなければならない雰囲気があり、原価に対して、足元を若干堅く見ている。その部分で、増収減益となっている。

さらに、新たなトレンドとして防衛省関連の工事に取り組んでいる。現在、国は、防衛予算を昨年から約1兆円増やしている。また、防衛費の中でも特に防衛施設費に資金を投入している。昨年までは、銃弾や戦車を購入していたが、これを操縦、使いこなすための訓練場を今は作っている。この工事に関しては、この先も続くことが分かっているため、我々もこのトレンドに取り組んでいる。自衛隊や防衛省の事業は、入札で受注するまでが大変だが、基地の中のため、技術的な参入障壁が高い。今年の年明けに受注が決まり、それをもとに現在も受注活動を展開している。

ただ、この部分の業績予想については、やや控えめに見ている。外からは、この案件が実現するかどうかは分からないが、すでに防衛予算として組まれている部分がある。今後、防衛費が伸び上がった際に、当社もジャンプアップできるような、その流れに乗って業績を伸ばせるよう、ジャンプする前に現在は屈んでいる状態になっている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]

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