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上場会見:ジグザグ<340A>、タグ1行で海外対応

3月31日、ジグザグが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1500円を35.33%上回る2030円を付け、2080円で引けた。日本のECサイトを閲覧する海外顧客の商品購入を手助けする「WorldShopping」や、国内ECサイトの運営者の越境ECを「WorldShoppingBIZ」で支援する。ECサイトを構成するHTMLコードに、JavaScriptのタグを1行追加することで、商品ページ上の商品名や価格情報など商品の発注に必要な情報を取得し、海外からの注文を受け付ける仕組み。仲里一義代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

システム運用で蓄積する海外カスタマーのアクセスや発注データを活用して、購買の加速や商品やショップの充実、カスタマー増加といったサイクルを循環させショップとカスタマ―に価値を還元すると話す仲里代表

―今日はグロース市場を含めて市況が軟調だが、初値の受け止めは
北村康晃取締役:マーケット環境が非常に厳しい1日だったが、そのなかで初値がしっかり上で付き、期待されていることを、今日の日だからこそ感じることができた。これからも期待に応えられるように経営していく。

―上場の目的は
仲里代表:社会的信頼と認知度の向上による事業強化、優秀な人材の確保だ。当社のビジネスでは、対コンシューマーでもあるが、アライアンスを組むのはEC事業者なので、そこに対する社会的信頼の重要性は非常に大きい。また、事業を伸ばすために必要な優秀な人材の確保を優先して行いたい。

■購買動向も可視化
―ECサイトはとても多いだろうが、利用者の現状をどう捉え、越境ECへの意欲をどうサポートしていくのか
鈴木賢取締役:アクティブが1000程度で、導入社数はたくさんあって、既に売上が上がっている、あとは、導入しているECショップの売上をどう上げていくかが重要だ。

ECショップだけでなくリアル店舗を持つ企業も多い。インバウンドが凄く伸びていて、2030年までに6000万人、経済効果は15兆円と言われているが、越境ECとは密接なつながりがあるので、リアルとネットの連携をしっかりと支援していきたい。

WorldShoppingBIZでは、ショップダッシュボードという管理画面を渡していて、そこでどの国からアクセスがあって、何がいつ売れたのかがすぐに分かる。売れ始めると、「あ、うちのECサイトは台湾が強い、シンガポールが強い、フランスが強い」といったことが分かる。

228の国と地域に対応しているので、ほとんどの国で何がどの程度売れたのかが分かる。それを基に例えば、台湾ではインフルエンサーが強いので、インフルエンサーを使うような施策を当社のショップサクセス部門が支援して、より売れる流れを作っていくことといったことをやりたい。

―ファッションとエンタメ・ホビーが主流だが、ほかに需要が出てきそうなジャンルは
冷蔵品や冷凍品はコストの観点から配送手段を使っていないので限定されるが、酒や菓子類といった食品、出汁類が、我々を介して比較的売れている。

我々のサービスとしても導入は進んでいるが、ECモールでも、中国では化粧品やコスメも動いているので、そこも伸びしろとしてはかなり大きい。

■まずは北米とアジア
―WorldShoppingBIZの導入企業数と、近々の目標は
北村取締役:導入企業のなかで、実際に売上が上がっているものを公開情報として提供しており、それが1100ショップほどとなっている。事業のこれまでの推移をKPIとして開示している通り、事業の成長と同様にアクティブショップ数も増えている。今期の業績予想では、売上高が前期比で29%伸長するので、同じような形で各KPIも成長させたい。

―アクティブ率はどのぐらいか
アクティブ率は公開していない。導入したECショップで、1円以上売れているショップを少しでも多くできるように支援している。

仲里代表:アクティブショップ数は、当月で売上が上がっているショップを指す。例えば、今回は決算月の5月時点のアクティブショップ数を公開しており、1月に売上があり、2月がゼロで、3月に売上があったショップを指している。

―北米とアジアを中心にサービスを提供しているが、そのほかで注力したい国は
日本のECサイトにアクセスする比率が大きい北米とアジアが中心になっている。可能性としてはEU圏もあるだろうが、まずは北米とアジアでもっと認知を高めていくことが必要だ。今はWEBインバウンドとして日本のECショップのサイトを訪れるカスタマーが多いが、今後はまだ日本を知らないカスタマーに対していかに知らせるかに注力していきたい。

―将来、海外ECショップのサポートで自国以外への販売を手助けする「グローバルtoグローバル」の事業領域に進出した時の競合はあるのか。それともブルーオーシャンか
海外に商品を販売するモデルに関しては、ECモールなどがあるが、現在我々が行っている「タグ1行的なモデル」は見かけず、我々独自の強みとして展開できると考えている。

■公式サイトで完結
―AIサービスが流行るなかで、タグ1行にどれほどの優位性があり、事業の発展につながるのか
このビジネスは、タグ1行の裏にある複雑な要素が絡み合っている。例えば、強みはテクノロジーだけではなく、ECショップが海外販売できない理由があって、それはカスタマーサポートや物流などオペレーションの側面で、物流に関しても、各国のルールや、海外税務の問題などがある。そういったことも含めて、当社で全部握り合っていることが非常に強みになっている。

また、ECショップ側の理由によって 海外で特定の商品を販売してはいけない場合もあるので、我々がショップに寄り添って、きちんとマーケティング支援をすることも非常に重要なことだ。それをワンストップでできるのはなかなか少ない。物流やカスタマーサポート、ショッピングカートのみを個別に提供する会社はあるが、技術とオペレーション、マーケティング支援を一気通貫でできる会社はなかなかない。

―越境ECを自社サイトで簡単に実現できる競合サービスはほかにあるのか
似たようなサービスとしては、BEENOS<3328>の「Buyee Connect」サービスや、ZenGroupの「ZenLink」がある。きちんと海外アクセスで見てもらうと分かるが、それらは、公式サイト上でバナーをクリックすると全部モールに飛ぶ。「タグ1行で」というようなフレーズがあるが、全部モールサービスになっているのが我々と違うところだ。

―料金面でも強いのか
我々のほうが高いケースもあるが、海外カスタマーの評価では、我々のほうがポイントが高い。そこはオペレーション部分のサポートが評価されているのではないか。

鈴木取締役:モールでは、カスタマーはモール内で比較して商品を探すが、公式サイトに行くということは、その公式サイトが好きで、そのなかで探したいというニーズを持っているということだ。その欲求を満たしてあげたいので、カスタマーサービスもしっかりやっているのであり、立ち位置が少し違う。

仲里代表:類似のサービスは、自社サイトに訪れたカスタマーをモールに飛ばしてしまうサービスになっているので、そこをきちんと理解してもらえるショップに関しては、我々を選んでもらう傾向は大きい。場合によっては、当社のサービスから他社のものを試すパターンもあるが、コンバージョンなどが少し違うので、戻ってくるショップも多い。

―日本の商品が好きで買い物をしたいというカスタマーで、特定の企業のファンで公式サイトまで行く人はどのぐらいいるのか
ECサイトの海外アクセス比率としては2%から4%で、扱う商品によって変わるが、トイ・ホビー系はもう少し高い。

―ならすとどの程度なのか
最近の傾向としては特に、非検索ユーザーの流入が増えていて、SNSや動画を見たカスタマーがリンクで飛んでくるパターンもある。今後そういった情報のハードルは、より低くなっていると見ているので、WEBインバウンドはもっと増えてくると推測している。

■モールよりも自社サイトに
―Amazonやアリババ、TEMUなども含めて海外大手が日本で展開しているが、モール型の越境事業者と比べて、ジグザグはどれほどの勝ち目があるのか。特にAIのいろいろなツールが発達するなかで、購入代行事業が今後ビジネスとして存続していけるのか疑問もあるが、どうか
例えば、日本においてAmazon一強かというとそうではない側面もあり、逆にモールに出品していない商品も存在する。そして、情報はどんどんフラットな状況になってくるので、カスタマーからすれば、一次情報により近づいていくのが今の流れと見ている。

そこでは、ECショップ自身が、本当に手軽に自分たちでできればベストだが、自社サイトを運営して海外に販売するのは非常に大変で、そこはAIができないこともあるので、我々がサポートする。

もちろんAmazonやアリババは大きいだろうが、そこだけに置き換わらない部分がある。それをきちんと提供しているのが我々の価値だと思っている。

―海外の越境ECモールに出品したくない中小事業者の…
出品しても良いと考えている。出品して認知度が上がることによって、海外カスタマーは、一次情報である独自サイトにアクセスすることが増える。支援している多くのアパレル企業は、100%ではないが大手企業ほどモールに出店している。ただ、ゼロかイチかの関係ではない。

在庫を置かなければならないので、日本の商品の全てのSKU(Stock Keeping Unit)をECモールでは全部展開できていない。そうなると現地未発売の商品が日本には存在しており、その商品が欲しいために日本のサイトに訪問する状況というのは絶対になくならない。逆に増えていく傾向があるので、そこをどうするのかに対応しているのが我々のソリューションだろう。併用できるので、カニバリゼーションが起きていない。

―ECモールには出品しているが、自社商品を全部出し切っていないので、ブランドのファンは公式のWEBサイトにも来るということか。そこでECサイトをサポートする感じか
日本の企業であっても例えば、楽天やZOZOTOWN、Amazonにも出品して、自社サイトに出している。それと同じようなことが、グローバルで普通になっている。

―AmazonのようなECモールとは競合関係と考えているのか
我々は「モールで販売できるのであればやってください」と企業に話をしている。出店コストやオペレーションコストがかかるだろうが、メリット・デメリットあると話して、できるのであればやってもらったほうが良い。

一方、モールで販売すると、ブランド企業からすると、どうしても比較検討されてしまうので、自社のブランディングがきちんと訴求できないこともある。それを良しとしない企業もいるかもしれない。

なので、モールに出店しつつも、非常にブランディングできている日本で販売している自社WEBサイトはカスタマーが減らない。そこをきちんと支援するのが我々の立ち位置となっている。

海外販売のシェアを我々が100%取れるとはもちろん思っていない。WEBインバウンドの部分にきちんと対応するのが我々の位置付けだ。

鈴木取締役:我々は毎年、7ヵ国で2000人程度の海外在住者を対象に調査をしているが、主要国のユーザー動向として、訪日を経験している人ほど、公式サイトで商品情報を探すというデータがある。いずれでも公式サイトを見にいく人がけっこう多い。多分、「情報が正しいのかどうか」も含めて見る傾向があるのではないか。

買うところはAmazonかもしれないし、自社サイトかもしれないが、これに対して、公式サイトをしっかりと作っておくことが重要で、その際に海外対応しようとすると、法律や物流、言語などいろいろ壁があるので、そこをサポートするために我々のような人間が必要だと思う。

■訪日客をEC顧客に
―グロース市場への上場だが、スタンダードやプライム市場への上場のために、柱となるような中長期的な成長戦略として、具体的に何をするのか。仲里代表:日本の物が欲しいカスタマーは100ヵ国を超える国に存在するので、このアセットをどう活用するのかが1つ。もう1つのアセットは日本の商品で、それと海外カスタマーをいかにより気持ちよくつなげていけるかということを考えている。

一方で、既にいる海外カスタマーのニーズが、日本以外に果たしてあるのかどうか。それを調べることで、我々の海外展開のエリアの優先順位が決まってくる。また、我々はWEB上で海外にいるカスタマーにリーチできているが、現実に日本を訪れるカスタマーをきちんとケアし、サポートすることで、それらがWEB上での顧客となり、リアルとWEB上が循環する流れになると見ている。リアルなインバウンドのカスタマーをサポートする事業をきちんと強化することも、非常に重要な戦略と考えている。

―リアルのインバウンド顧客に対して、現状でサポート事業をしているのか
鈴木取締役:物凄く単純ではあるが、訪日客が店舗に来た時に、荷物の制限があるのでたくさん買うことはできない。そこにカードやチラシのようなものを作る支援をしている。

店舗にカードが置いてあり、そこに表示されているQRコードを読み込むと、WorldShoppingが立ち上がるので、帰国してからもECサイトを通じて日本の商品を買うことができる。そういったものを配布する店舗が増えている。

海外から訪れた人により多くリーチできる方法として、まだいくつもやり方はあるだろうが、単純な方法から進めている。それだけでも売上とアクセスが増えた顧客が出てきている。

仲里代表:リアル店舗を持つECショップは非常に多いので、そういった企業からも、WEBだけでなく、リアルのインバウンドへのその後のアプローチをしていきたいとの要望を受けており、そこはサポートしたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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