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上場会見:令和アカウンティングHD<296A>、人間力とAIで安定成長

12月23日、令和アカウンティング・ホールディングスが東証グロースに上場した。初値は公開価格の360円を44.7%上回る521円を付け、481円で引けた。同社は20048月に設立。上場企業など経理に関するコンサルティングサービスを提供している。長期戦略的な経理実務である「Long」が主な事業であり、単発的な支援の「Short」も手掛けている。繁野径子社長が東京証券取引所で上場会見を行った。 

中長期の成長戦略について説明する繁野社長

ー初値の受け止めは 

上場初日の株価なので独特なものがあると受け止めている。素直に、無事に上場できて本当に良かった。これからできるだけ株主に開示していき、知ってもらおうと思う。様々なことを開示することで、たくさんの人に我々の会社を理解し、応援してもらえるように努力していきたい。  

 

ー令和アカウンティングHDを見るうえで、チェックすべきKPIや必要としているKPIは何か 

ありきたりにはなるが、売上高と経常利益率をしっかりと成長させていきたい。それを見るためには、我々は労働集約産業なので、従業員数も重要になってくるだろう。効率化を図ろうとしているので、売上の成長と同じように人員の増加させようとは思っていない。売上よりは人員の増加率を減らしていきたい。  

 

ークライアントグループを拡大させるうえで、営業より紹介が多いのか 

営業部隊は一切ない。ただ、営業をしていないのではなく、現場の皆が営業人員でもある。コア事業の「Long」業務は、会社の人たちといつも一緒になって作っている。そうすると、そのなかにたくさん仕事が出てきて、「これは当社でできますよ」や「それをお手伝いできますよ」などと、普段から現場が仕事をしながら営業している。そこからさらに仕事が来るので、紹介に繋げている。  

 

ー経理はまだ労働集約の業界だと思うが、社内の人材確保についてどのように考えているのか。加えて、それを補うためにAIソフトを維持しているのか 

人材を獲得する戦略は大事だと見ている。今までは会計士や税理士など資格のある人間を採用することに力を入れていた。ただ、まずは人数を確保しなければいけないなかで、新卒の採用にシフトし、ポテンシャルの高い新卒のメンバーを採用する。その結果が出てきて、人員数が順調に拡大している。 

 

資格に関係ないとはいえ、資格者と同程度の能力や経験が必要になるので、今度は育成に力を入れるようにした。我々の業務は人員が三角形のピラミッドになっていて、スペシャリストやリーダーの人たちがおり、新卒で入ってきた人たちがいる。地道な作業である毎年の決算業務を新卒のメンバーがやりながら、教わりながら、教育されながら、スペシャリストに上がっていく。 

 

長年かけて何でもないスタッフをしっかりとチームリーダーなどに育て上げる教育のノウハウを持っていて、2023年度から教育事業を始めた。会社内に独自のノウハウに基づくカリキュラムを持っているので、まずポテンシャルの高い人を採用し、その人たちを教育する。この三角形をたくさん作っていけば、その数の分だけクライアントの数が増えていくと考えている。 

 

おそらく今後人員は足りなくなるので、むしろAIやシステムに代ってほしいぐらいだ。だからこそ、そのような部分の開発を進めようと、少しずつ着手している。そうすると今我々が求めているのは人間力の育成と言っているが、さらにそのうえで、(AIやシステムが)この入力の最初の部分をしても、結局それをチェックや判断、会社の人と相談して様々なことをやるのは、さらにその上の人材がやらなければならないので、上の人材を育てていけるようにしたい。 

 

AIの話で人に取って代わらせようという分野とは 

少しずつできているとは思うが、例えば、会計処理は1つの事象が出たときにいくつか選択肢が出てくるので、まずは簡単にAIやシステムで自動的にどれに値するかを、ある程度選べるような状況にまでしていきたい。そのうえで、経理は1円も間違ってはいけない部分で、AIが最後まで責任を取ってくれないため、その後の「本当にこの処理でいいのか」などの判断は人間がやっていくべきだろ 

 

ー中長期的な成長戦略について 

業種柄、急成長するわけではないので、しっかり安定的に成長させていく。これからはできる限りシステム開発やAIなど経理に関わる部分を、様々な分野で調整しながら進めていきたい。 

 

ー中長期の成長戦略で、「できることを挑戦しながら進めていく」というのは、何を検討しているのか。海外進出についても具体的にグループで検討しているのか 

将来目指す姿として例えば、教育であれば我々が教育のなかでどちらかというと実務に直結したスクールを作り、少しずつカリキュラムを増やしている。それに加えて、資格のスクールなどもこれから検討して、新規事業やM&Aを考えていければよい。あとはシステムなどだ。 

 

3年や5年単位の中期経営計画のようなものは作る予定があるのか。前期の売上高40億円や今期予想の50億円など短期で見てもセグメント情報が出ていないが、「Long」や「Short」、教育ではどのような割合か 

連結でいうと約83%が「Long」で、約16%が「Short」、残りが新規事業として始まったばかりの教育や派遣だ。中長期計画については社内で作成しているが、それをどこまで出していくかはこれから検討していきたい。 

 

ー今後、「Long」をもっと増やしていきたいのか 

おそらくこのぐらいの比率でずっと(やっていく)。「Short」の業務は「Long」から付随して出てくる業務で、ここ数年1015%前後での推移だ。特別何か力を入れようということではなく、結果このような着地になるので、基本的には「Long」というコア事業をしっかり守っていきたい。これを成長させていくことがまずはあり、そのうえで人員の状況や周りを見ながら「Short」などの業務を積極的に進めていきたい。 

 

ー「Long」のほうが収益性が高いのか 

収益性でいうとそれほど大きな違いはないが、「Long」は安定的に収益が上がっていくので比率を下げずにいきたい。 

 

ー短信には、20253月期の販管費を11%程度減らすことを見込んで、117700万円とあるが、今期も特にCMを計画していないのか 

2024年度はCMの計画はしていない。 

 

5年後、10年後どのような体制をイメージしているの 

経営方針にもなっているが、まずはこの業界が魅力のある業界であるということをもっとアピールしていきたい。我々の業界は比較的地味なイメージを持たれてしまうかもしれないが、数値を作って、それに基づいて会社が様々な戦略を練っているので、すごく魅力のある業務をしている。そのことをもっと世の中にアピールし、我々の業界に入ってきてくれる人を増やしていきたい。大きな意味での話だが、日本の会計業界は外資の力が強いので、やはり日本の会社には日本の会計の会社というのをアピールしていけるような中心の会社になっていきたい。 

 

ベトナムにも子会社を展開しているが、ベトナムを選んだ理由は 

当時、社内にベトナムに詳しい人材がおり、市場をしっかりと調査したうえで、ここなら行けるということで判断したと聞いている。 

 

ー今後ベトナム以外のほかの海外へ展開していく予定はあるか 

どこかに行くことを計画しているわけではないが、だからと言って興味がないわけではない。状況を見て必要であれば、検討しながら進めていきたい。 

 

[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]