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上場会見:ラクサスT <288A>、2次流通で貸出と販売を両立

13日、ラクサス・テクノロジーズが、東証グロースに上場した。初値は公開価格の281円を51.6%上回る426円を付け、377円で引けた。2006年8月に設立し、2019年10月にワールド<3615>の連結子会社となった。ブランドバッグのシェアリングサービス「ラクサス」を提供している。 高橋啓介社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

2次流通市場での強みについて語る高橋社長。

―初値の受け止めとマーケットの反響をどのように捉えるか

初日が終わり(公開価格)281円のところ、最終直近を見ていないが、良い評価をマーケットからもらったと思っている。約17億円を調達できて、本当に真摯に事業に向き合っていくことが大切だと改めて実感した。

 

―上場の目的とその資金使途は

株式上場する際に、株主が持っている売り出しと、我々が調達するための公募があるが、今回は公募中心で、成長資金を手に入れるために上場した。

 

結果、約16億9000万円 を調達したが、我々はキャッシュが先行するビジネスであり、成長には資産を増やすことが大切だ。違うものにも幾分かは使っていくが、大部分はバッグを仕入れる投資に使いたい。

 

―調達資金の使い道として、他にもシステムや人材の採用の面などはあるか

ワールド傘下に入ってガバナンスなどを強化できたが、一方でスタートアップの企業として中核人材は必要だと思い、採用は続けたい。

 

顧客にブランドバッグを貸している時は稼いでいる。修繕なども行うが、倉庫に返ってきてから、次に貸し出すまではコストだ。その際に、例えばeBayやメルカリに同時に出品し、我々のアプリでは貸し出しが可能だ。一方、eBayでは、オンセールとする。貸し出しになったら貸すし、eBayで売れたらもう在庫がないという形にすることで、その資産が眠っている時間を最小化できる。ただ、システムの変更も必要であるし、ECをするときの「さ・さ・げ(撮影、採寸、原稿)」が必要で、言うほど簡単ではないが、そういった投資にも使っていきたい。

 

もうこれは売り時ではないか、ということやこういうのを入れた方がいいのではないかということを機械学習的にできると思っており、そのような投資にも一部は使いたい。

 

―仕入れはどこから

業者間のオークションや買い取り業者から直接、結構な量を仕入れている。

 

―産業障壁やラクサス・テクノロジーズの強みは

昨日までワールドの連結子会社で、上場してワールドの持分会社になったが、ワールドの支援を受けながら圧倒的な資産数を築け上げることができた。また、物のサブスクリプションに決まったフォーマットがないなかで、自分たちで作り上げた仕組みが強みだ。

 

もう1つは、商売の始め方の違いだと思っている。例えば、ワールドグループにも、2次流通をしていて「RAGTAG」というサービスを提供しているティンパンアレイがある。そこは、棚卸によって、回転させる商売であり、一方我々はじっくり待って、小収益を上げていく商売だ。これは、事業戦略的には、相当な戦略・戦術が必要なので、2次流通のプレイヤーが少しやってみるという感覚ではできず、貸しながら儲けるというのは、ハードルが高い。

 

―前々期から黒字になって、その後成長しているが、黒字化した1番の要因は何か

コロナ禍も明けてしっかりと顧客を獲得できた。また、稼動していなかった資産を正しく回転させ、収益を上げていくという形で、結果として黒字化できていると考える。

 

―リカーリングのため、今後も黒字は積み上がっていくのか

投資がかかる商売をしているので、キャッシュを稼ぐこと、黒字であることは、すごく大切に思っているので、きちんと収益を上げていきたい。

 

―上場してワールドの持分会社になったが、事業の変化やワールド、株主との関係に変化はあるのか

ワールドに出資してもらった以降も、上場を適切なタイミングでする、イコール様々な意味で独立することを目指してきた。上場を目指す過程で役員や人事、決済なども独立して確立しているので、一定の独立性は保てているだろう。それを保てなければ逆に少数株主さんの不利益にもなるので、とても大切なことだと思っている。

 

一方、適切な商売上の関係という意味では、例えば「RAGTAG」というリセールのショップをワールドが持っているが、我々が持っている資産で、もう貸さないものを「RAGTAG」に置いてもらえると、今原宿店などインバウンドの顧客がいっぱいいるので、適切な取引として適切な手数料も払うが、Win-Winの関係になれると考えるし、今もなっている。

 

―5年先や10年先に目指す理想像とは

物を長くきちんと使うのはすごく大切なことだと思っている。価値あるものは、青い言葉かもしれないが、皆を幸せにするものだと信じている。例えば、ブランドバッグを利用した顧客から「仕事の相棒になりました」や「これで面接乗り切れました」といった手紙をもらうが、結果として我々が笑顔や勇気を顧客に与えている。日々、そういった反応がすごく嬉しい。シェアリングやサブスクを事業として行っているが、まだまだ会員が1万人、2万人のレベルだ。しかし、物をシェアしていく、価値あるものを大切にしていく、ということがもっともっと普及し、普通に浸透すると信じている。

 

―高級ブランドバッグの価格高騰やコロナ禍前後での生活習慣の変化による市場環境の変容がビジネスに与える影響は

コロナ禍では結構苦しんだ。当たり前だが、ブランドバッグは外に持っていくものなのに、皆家にいた。ただ、その間もブランドバッグ自体の新品価格は上がっていたし、リセールバリューも上がってきたと思う。ブランドバッグ自体の価格が変わっていくことは、仕入れのキャッシュが先行するので、それは悩みの種だった。一方で、貸しながら、最終的に高く売るので、リセールバリューも上がっているという意味ではプラスだと感じる。9年前ワールドが出てから19年で、我々も商売を始めて9年経っているが、サブスクやシェアリングという言葉が浸透しているという意味では、我々はそれを活かせると考えている。

 

―新品価格の上昇になかなかついていけないという方々への需要は、かなり大きくなったのか

それはいくつかのパターンがあって、新品価格の上昇に追いつかないからお得と感じてくれる人もいる。一方で、あまり世のなかの人は毎年ブランドバッグを買っているわけではないので、新品価格が上がっていることが知られていないという肌感覚もある。そこは結構悩ましいと思う。50代や60代の顧客も結構いるが、円が強かった時代はシャネルのチェーンショルダーが15万円ほどで買えていたので、今100万円するということを、知らない人も結構多い。

 

―ブランドバッグという商材の特性上、顧客は絞られた一部になると思うが、そういう商材に特化してきた意義や効果をどう捉えているか

限られているとはいえ、ブランドバッグのレンタルをしてもらえるかどうかは別として、とある調査では日本人の女性の約56%はブランドバッグを持っている。一定の認知もあるし、人それぞれだと思うが、一定の層には憧れもあり、需要はあると思っている。

 

何でブランドバッグを最初にしたかというと、親会社が洋服を手掛けており、洋服は無数にあり、色も形もサイズも違えば、同じTシャツでも袖と丈が違う。それらに比べて、ブランドバッグは豊富ではあるものの、SKUが限られているので、価値を追いかけ続けやすい。また、サブスクリプションしているどこの会社もそうだが、資産を抱えることは結構ハードルであり、いきなりブランドバッグもあり、様々なものがあるというのは、結構顧客を集めづらいと思う。例えばブランドバッグが100個、服が100個、帽子が100個、時計が100個あるショップよりは、ブランドバッグが数千個あると言った方がわかりやすいと思うので、我々はブランドバッグに最初に着目して、そこを追いかけてきた。

 

―潜在的な顧客層のうち、今の会員は何割ぐらいで、これからどれぐらい広がっていくか

ダブル契約込みだが、今、2万人弱だ。世のなかの女性の数からするとまだまだ広がる可能性はある。

 

―上場企業としてこれから世のなかにどのような価値を提供していきたいか

上場企業として一番大切なのは新しい株主が増えたことで、ガバナンスやコンプライアンスは、前提として大事なことだ。ただ一方で、こうして今日も評価してもらったが、この新しいビジネスに新しい可能性を感じて株を買って、新しく株主になった人がいっぱいいると思うので、可能性に対してしっかりと応えることが大切だと感じている。

 

[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]