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上場会見:魁力屋の藤田社長、質を保って店舗運営を軽く

15日、魁力屋が東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の1400円を30.14%上回る1822円を付け、1680円で引けた。有限会社マルフジフーズとして2003年2月に京都市北区に設立。中細ストレート麺の背脂醤油ラーメンを主力とする「京都北白川ラーメン魁力屋」などを展開する。直営やフランチャイズ(FC)で、郊外のロードサイドやショッピングモール、駅前などに出店している。藤田宗社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

中細ストレート麵を使用していることから、茹で時間が短くテンポよく提供でき、商業施設内の店舗では売り上げ上位にランクインしていると話す藤田社長
中細ストレート麵を使用していることから、茹で時間が短くテンポよく提供でき、商業施設内の店舗では売り上げ上位にランクインしていると話す藤田社長

―初値の所感を
市場から評価されていることはありがたい。期待に応えられるように頑張っていきたい。

実感は湧いていないが凄く嬉しい。

―初日の株価の動きをどう見るか。
非常に期待されており、それに応えていかなければならない。

―上場の狙いは
従業員が誇りを持てる会社にしたい。従業員と会社の社会的地位の向上を目指して決めた。外から見て良い会社だと言ってもらえる会社になりたかった。そうすることで、従業員の満足度も上がり、優秀な人材をたくさん採用できることを狙った。

―京都ラーメンは幅広い層に受ける味だが、ラーメン店の競争は激しい。味以外の強みは
メニューのバリエーションやボリューム感、店作りも強みだ。土日は家族連れが来て、平日は営業担当者や働いている人たちも来る。客層の幅広さが強みになっている。家族3世代で来て、それぞれが好きなものを注文できる。

ラーメン店はメニューが少ないほどオペレーションがしやすい。食材のロスもなく都合が良いが、60ぐらいのメニューが、バランスが良い。新しいメニューが入ったら売れないメニューを下げている。

―ここまで店舗を伸ばすことができた要因について、経営管理面で特に力を入れてきたことは
理念だ。ここまで成長できた理由や100店舗を超えた理由をよく聞かれた。答えに困っていて、偶然や運が良かった、人に恵まれたと話していた。掘り下げると、理念を大事にしてきたからではないか。

ビジョンと店舗理念、基本コンセプトが載った、リッツカールトンが実践しているような、カードサイズのクレドを全社員とアルバイトスタッフに常に携帯させている。事あるごとにそれを出して唱和し、意味を説明している。元気礼という朝礼をやり続けてきた結果として今があるのではないか。外食は人間力が必要で、理念教育を行っている。

―仕込み作業の一部外注化とプライベートブランド開発について詳しく聞きたい
店舗オペレーションを、クオリティを保ちながら軽くする必要がある。外食でFC化してクオリティが落ちて駄目になるケースがよくある。そうならないために外で加工し、店での作業を極力減らす。

例えば、“かえし”がある。醤油にチャーシューとなる豚肉を入れて煮込む。チャーシューを取ると、残った醤油が旨味の入ったかえしになる。この作業を外部に委託し、できあがったものが店に届くことにした。原価は少し上がるが、その分人件費が下がる。パートやアルバイトが調理できる仕組みにしている。

―自社で工場を持つのではないのか
スープに力を入れているラーメン店は多いが、当社はかえしと豚の背脂に旨味を入れ、スープが主張したら困るので、店で簡単にできるスープにしている。それも強みとなっている。

―生産体制について。店舗拡大に伴い、外注先との緩やかなアライアンスを組む、あるいは買収によってグループを形成していくなど、どのような青写真があるか
ほとんどのラーメンチェーンはスープ工場を作ることが多いが、当社は店で簡単にスープができるので、スープ工場は要らない。リスク分散のために製麺は7ヶ所に委託しているが、将来的には自社製造もあり得る。スープの工場を持たないとなると、工場なしでもできる。チャーシューとかえしの加工も、比較的容易であるので工場を持つ必要はない。

―成長戦略にBtoBやBtoCといった言葉があったが、今後の戦略にどうつながるのか
商品の卸事業も手掛けたい。例えば今も、スーパーマーケットの冷蔵のラーメンや、冷凍のラーメンなどを卸している。コンビニエンスストアでも定期的にカップラーメンを手掛けている。また、業者(ラーメン店)に卸すこともできるのではないか。まだ取り組んでいないが、今後そういった物販にも取り組みたい。

―中長期目標だろうが、いつまでに740店舗の展開を実現したいのか
できる限り早い段階で実現したい。

―相当な事業投資が必要になってくる
その通りだ。直営店とフランチャイズ店の両軸で進めていきたい。

―2024年12月期の出店ペースは
15~25店舗ぐらいのペースで出店したい。

―FCと直営店のバランスは
1対1ぐらいで進めたい。

―出店の際に参考にしているラーメン店は
同じ京都だが、餃子の王将のような会社になりたい。創業から55年経っても元気で、流行り廃りがなくコロナ禍でも業績が良かった。ラーメンが嫌いな人はいない、ラーメンだけは食べられないという人は聞いたことがなく、流行り廃りがないことも、ラーメンの事業を選んだ理由だった。

―海外展開について
掲げたビジョンは、海外に展開していく決意を表し、準備して展開していく。上場してから動いていこうと検討している。

―関心のあるエリアは
まずはアジアからだ。

―具体的な国名は
これから調査をさらに進めたい。目星は付けているが絞り込みたい。

―アジアの市場としての魅力は
アジアは、親日であることが良いと考えている。米国や欧州にも行きたいが、スタートはアジアからと考えている。

―米国や欧州も見据えながら、まずはアジアか
当社は「日本の食文化とおもてなしで世界中を笑顔に」と言っているので、世界中に展開したい。京都ラーメンの可能性はまだあると思う。とんこつラーメンや味噌ラーメンは既に海外に出ているが、私の知っている限りでは京都ラーメンは進出していないので、可能性はある。

―株主還元の方針について、配当性向20%程度を目指すとのことだが、優待の可能性についても聞きたい
配当性向は20%を検討している。株主優待も検討している。外食事業では必要なのではないか。

―具体的には店舗で使えるものなのか
株主と顧客が一緒ということが多いので、これから決めたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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