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上場会見:グラッドキューブ<9561>の金島CEO、唯一無二の解析サービスに

28日、グラッドキューブが東証グロースに上場した。初値は公開価格の960円を56.25%上回る1500円を付け、1280円で引けた。自社開発の「SiTest(サイテスト)」を用いたWebサイト解析・改善サービスのSaaS事業とインターネット広告代理店事業のマーケティングソリューション(MS)事業、スポーツデータをAIで解析するSPAIA事業を手掛ける。金島弘樹CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

金島CEOは、SPAIA事業に関して、公営競技を中心に幅広く展開してさらなる事業拡大を目指すと話した
金島CEOは、SPAIA事業に関して、公営競技を中心に幅広く展開してさらなる事業拡大を目指すと話した

―初値が公開価格を上回って、引け値も300円ほど高かったが、その感想を
投資家から当社に対する期待の表れがあったと受け止めている。今後も株主・投資家の期待に応えるために役職員一同努力していく。

―このタイミングでの上場を選択した理由は
非常に悩んだ。昨年にも上場するタイミングがあり、来年に引き延ばそうかとも考えた。2020年からのコロナ禍もあり、そのようななかでも我々は事業を130%以上伸ばすことができていた。

このタイミングで出た理由は、まずは社内の仕組みが成熟してきた。いわゆる仕組みができ、社員が成長して新しいプロダクトが育ってきた。この3点だ。高い時価総額を目指す企業が多いと思うが、我々は信頼性と安全性、堅牢性といった上場企業にふさわしいサービスをしっかり提供することで、より信頼を得て、ヒト・モノ・カネ・時間・情報をすべて向上させていきたい。市況は悪いと言われているが思い切って踏み込んだ。

―市況が悪いと言われるなかで、株価への影響をどう感じたか
公募価格が960円だったので、そこを上回ったことで機関投資家からの評価は想像した以上に良かった。株価への影響に関しては、12月決算なので、そこを見てみないと分からないが、我々が、市況が悪いということを考るよりも、役員に話しているのは、自分たちの事業ドメインやサービスを強化して顧客に喜んでもらい、原理原則として企業価値を高める。その上で金利も含めインフレなどが落ち着いてきたら株価も良くなっていくのではないかということに則って考えることで、株価の推移は気にしなくなった。

ベンチャーキャピタルの反応としては、ロックアップは今日の朝の段階で外れたので、そこは喜んでもらえた、安心してもらえたのではないか。

―それは思ったよりも株価が好調だったからか
当初は好調だった。本音ではもう少しいくのではないかと思ったが、ピタッと止まったりした。思うところはあるが事業の収益性や成長性で見せるしかない。経常利益で5億円近くを計上しており、成長もしてはいる。反応としては悪いという感じだ。

―現在の主力がMS事業と思うが、どこを競合他社と想定し、それに対する強みは
マーケティングソリューションに関しては、サイバーエージェントを含めて電通、博報堂と連携したり競合になることもある。それから、IPOしていない中小の広告関連企業が全国に7000社ある。それらが全て競合に当たるが、大きく分けるとサイバーエージェントとオプト、セプテーニ、電通、博報堂といった大企業が、我々とコンペになることが多い。

SiTestというSaaSに関しては、今話した競合の事業者はパートナーでもある。我々がコンペに負けた場合には、サイバーエージェントなどがSiTestを導入してコンサルティングや広告を運用する。我々が勝った場合はSiTestを提供する。解析ツールを持っているところが非常に強みだと競合他社にも考てもらっている。

さらに、幅広くカバー領域を持っているので、通常のインターネット広告だけではなく、バナーや動画、今ではSNSも含めて、コンサルティングまで全てするところが我々の最大を強みで、通常の運用のみをするだけではない。

―今後の成長ドライバーがSPAIA事業と思うが、黒字化への道筋は
現在、売上高が約1200万円で、黒字化に向けた損益分岐点である2500万円の半分まで来ている。今後は、間もなく野球のWBCやFIFAワールドカップがあるが、各メディアから我々のデータを加工したものが欲しいと引き合いがある。Webキュレーションメディアも含めて200社ぐらいあるので、そういったところに導入していくBtoB事業が1つだ。

2つめは、SPAIA競馬が伸びている。ユーザーがより触りやすく、分かりやすく、当てやすく、競馬新聞などを見て時間が掛かっていたものを短縮させる。データの見方を楽しんでもらうことでサブスクリプションユーザーを増やしていきたい。さらに、SPAIA地方競馬を9月末にローンチするので、これらをクロスセルすることで売り上げをさらに上げる。

来期以降になるが、競艇、競輪、オートレースといった公営競技全てのデータ提供と加工、 AIや機械学習をしながら、公営競技のプラットフォームを作りつつ海外を視野に入れたい。

-競馬の有料会員数が頭打ちになっているが、増加の方策は
頭打ちになった理由は、価格帯が合わないことを、様々なテストをして検証した。現在のプランは990円、1530円、7000円という価格帯にしたが、昨年の6月には500円と990円の 2つのプランだけだった。その時は非常にユーザー数が集まった。現在は価格帯が合っていない。

無料ユーザーは堅調に伸びており、そこに刺さるようなマーケティングモデルとフリーミアムを中心にサブスクリプション、低価格でシェア1番を取っていくという戦略に切り替える。収益よりもシェア重視で考える。そうすることでSPAIA競馬の収益性は、今後確実に広がると思う。

―SPAIA事業の海外展開は、どのようなものを想定しているのか
例えば、競馬が開催されている国で思いつくのは、香港やドバイ、イギリス、フランス、米国、シンガポールと、それぞれ、売得金の市場規模の違いはあれど、JRAのジョッキーも海外に出張する。そこで賞金を加算しに行くことが多々ある。

一方で、香港やドバイ、フランスなどの様々な地域の競馬 Web サイト・アプリを調査したところ、予想するコンテンツやデータドリブンのコンテンツが全くなかった。そこへ、我々は翻訳して英語圏と中国圏、日本語と複数の言語に翻訳して海外で提供していきたい。

つまり、海外の競走馬などのデータを引っ張り、海外のユーザーがそこで買える仕組みを作りつつも、日本の弁護士と話さなければならないが、日本でも海外の競馬が買える。世界中で公営競技を楽しめるようにしていくと、パイも必然的に広くなり、売り上げがどんどん上がっていく。

―SPAIA事業の源流に遡るが、データを用いて行うファンタジースポーツが日本で流行らなかったという話があるが、今後の展開可能性はどうか
ファンタジースポーツやスポーツベッティング、例えばNFTスポーツトークンが、今さまざまにNBAでも日本でも扱われているが、我々はあくまでもファンタジースポーツなどのベッティングする側のプラットフォームに行くものではない。少し想像してもらいたいが、例えばパチンコやスロットをする時、または競馬をする時には、その機種のことを調べたり、競馬の新聞を見る。

これから必要なのはデータと解析だと思う。米国でファンタジースポーツが流行った理由の1つは、解析できる土台の存在が圧倒的だったからだ。30~50年前までは、手書きでどこのチームが勝つと書いていた。今はオンラインで簡単にドラフトを組んで、そのチームの勝ち負けで、賞金(を得ること)ができる。同時に、その選手のスタッツデータが全て揃っていて予想もされている。コンディショニングも書かれていたりする。それらがサブスクリプション化されている。我々はファンタジーやスポーツベッティングの上流に行くのではなく、解析プラットフォームに完全に事業ドメインを置くことによって、唯一無二の解析サービスのリーディングカンパニーになりたい。

また、経済産業省とともに行うスポーツエコシステム推進協議会というものが1月末にできた。NTTドコモとソフトバンク、KDDI、楽天、サイバーエージェント、ミクシィなど様々な企業が経産省に働きかけて、我々もそこに参画している。スポーツベッティングができないかずっと話し合われている。

新しいスポーツ振興くじ「WINNER」ができた。1試合ずつ1口200円で買うことができ、何対何でどちらが勝つか、サッカーとバスケ両方で賭けることができる。( BIGやtotoに加えてWINNER の登場で)ドコモが新しいスポーツベッティング時代に入ったと感じたので、そこも含めて、我々は解析と予想のコンテンツ側に行きたい。

―スポーツに関する新しいものが出てきた際に、いち早く柔軟に対応するプラットフォームになっていくのか
例えば、ゴルフもボクシングも格闘技もそうかもしれない。格闘技は、相手のダメージや体力、持久力、パンチの強さなど見ていてよく分からないところがある。これはカメラの設置なども必要かもしれないが、我々の世代では、例えばゲームのSTREET FIGHTERなどをイメージしてもらうと、どちらがどれくらいヒットされて、どれぐらいクリティカルなパンチが当たったかというのをカメラで追いかけて、瞬時に画像や動画解析をAIで行う。

それが効いているのかどうか、相手の弱点、例えば少し失礼だが、顎が少し弱い人、テンプルに弱い人がいるとしたら、始めからそのような人のデータがあるといったパラメーターを作る。そこに何回か攻撃を受けたらダウンする前ではないかとアラートを流したりすることをオッズで賭けられるような世界になると思う。それを解析メディアとしてやっていきたい。

―そうするとeスポーツとの親和性が高いのか
eスポーツもゲーム関係となるが、ゲームもこれから全てデータに必ず変わる。既にかなりデータ化されている。我々がゲームを提供・主催するのではなく、データによってeスポーツを目指す人や行う人の能力を向上していきたい。

―3事業のバランスを将来的にどうしたいのか
現時点ではMS事業が約50%、SaaS事業が約38% 12%ほどがSPAIA事業だ。ネット広告市場は現在2兆7000億円産業だが、2 年後には3兆2000億円になる。それに準じて我々も成長していくが、SaaS事業のCAGRが我々の(事業全体の)28%程度(を超えて) 46.5%だったので、そちらを伸ばす。

Webサイトを高速化させるFasTestを今年の7月にローンチした。例えば、遅くてイライラするサイトや、写真がたくさんあるサイトがあるが、そのようなサイトでは閲覧速度が1秒落ちるだけで30%以上の人が離脱すると言われている。導入するだけで閲覧速度がファーストビューでパッと速くなる。それをSiTestと一緒に、広告も販売していく。

バランスの話からずれるかもしれないが、そうしてSaaSの売り上げ構成比率を60%以上にして、SPAIA事業を20%以上にしていく。残りの20~30%に加減が出てくるかもしれないが、広告比率が最も少なくなると予想している。

―在来の金融向けのデータ以外の情報を金融に生かすオルタナティブデータの領域への関心は
現時点ではそういったデータを集めることは考えていない。少しデータの話から逸れるが、ブラウザのSafari、つまりアップルがクッキーなど個人情報の規制を強化しており、MetaやGoogle 、Amazonも含めて、クッキーが取れない状況を非常に危惧している。

一方で、Googleがさらに新しいサードパーティーを開発して、クッキーとは別の情報を取得するGoogle Analytics 4が、来年の 7月にスタートする。Google が集めるデータに関しては、一般的な事業者はデータを見ることできないが、我々のSiTestはクッキーを取れるので、引き続き、クッキーも新しい Googleからのデータもダブルで取ると精度のより高いビジネスチャンスが生まれていく。データ会社の界隈では、そのような話もかなり出ている。データの部分は取れないが、クッキーの分に関しては、個人情報に配慮しながら新しいデータの価値を提供したい。

―大株主のモバイル・インターネットキャピタル(MICイノベーション4号投資事業有限責任組合)とドコモ・ベンチャーズ(NTTインベストメント・パートナーズファンド2投資事業有限責任組合)は事業成長に寄与したのか。また、ドコモ・ベンチャーズの持ち分は本体に移管するのか
モバイル・インターネットキャピタルに関しては、既存の投資先に、我々のサービスを紹介してもらいSaaSや広告の売り上げをサポートしてもらった。今はないが、月に1回の定例会で、スマートフォンに関することやSaaSモデルにすごく詳しかったので、チャーンレートが当時は8%だったが、1%程度まで下がることに関するアドバイスを多く得た。

(ドコモ・ベンチャーズに関して)現時点では、 NTTグループのドコモとアド、レゾナントの3社に人材を派遣し、広告やSiTestなどを提供する。また、ドコモは新しくドコモスポーツくじを手掛けるが、SPAIAでのデータや予想提供、送客を行う。ドコモもスポーツにかなり力を入れている。広告もそうだが、スポーツ分野に関してもアライアンスが非常に強くなってきている。

NTTとの業務提携については、今日おそらく1.5倍のロックアップが外れたので、定かではないが、仮にドコモ・ベンチャーズが株式を(保有し)なくなったとしても、ドコモにはNTTグループとの関係性がなくなるわけではないと話をしている。アライアンスなどを含め、引き続き強固な関係となる。株式関連ではこれからいろいろな話をしていくかもしれない。

―株主還元の考え方は
現在のところ、全て利益として事業投資に回していきたい。配当に関しては、現時点ではまだ決議していない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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