
経済産業省の有識者会議が、社債市場の活性化に向けた中間報告書を3月30日に取りまとめた。発行体が大企業に偏在し、投資家層も限定的であるという現在の市場課題に対し、社債管理者設置義務の緩和、流通市場の透明性向上、投資基準やマーケティング期間の見直しといった多角的な施策を提言している。
同研究会は、スタートアップや中堅企業などが中長期的な成長資金を調達しやすい環境を整備する目的で設置された。昨年10月から計5回の会合を開催し、市場関係者へのヒアリングも実施。クレジット分析体制の不備や流通市場の未発達、発行手続きの長期化など、多岐にわたる課題について議論を重ねてきた。
■管理者設置義務の緩和
発行体の裾野を広げるための目玉施策として、社債管理者設置義務の緩和を打ち出している。現状、申込単位が1億円未満の案件には社債管理者の設置が義務づけられているが、機関投資家向けで社債管理補助者を置き、コベナンツも付いている場合であれば設置を不要とする。これにより、社債管理者にかかる年間数千万円のコストを削減し、スタートアップ企業などによる社債の活用を後押しする。経産省産業資金課によると、国会に提出する産業競争力強化法の改正案にこの特例規定を盛り込んでおり、今年度の施行を目指している。また、社債活用の意義や実務ノウハウが浸透していない企業向けに、「ガイドブック」や「好事例集」を作成・公表し、啓発することとした。
機関投資家に対しては、信用格付けのみに過度に依拠した投資行動からの脱却を促す。デフォルトリスクやスプレッド水準などを総合的に勘案した実質的な投資判断が可能となるよう、外部委託時の運用ガイドラインに関する自主的な見直しを求めている。
■社債取引情報、全銘柄に段階的拡充
流通市場の整備拡充については、社債取引情報の全銘柄公表に向けた取り組みを進める。現在、日本証券業協会のワーキンググループで公開範囲の段階的な拡大が進められているが、経産省も同グループにオブザーバーとして参加し、今回の提言を踏まえて議論を強力に後押しする構えだ。
マーケティング期間の短縮については、実務慣行の整理を日証協での体系的な検討に委ねた。経産省のヒアリングによれば、グローバル基準に合わせて短縮化したい発行体と、時間をかけて需要を積み上げたい発行体とで意向が分かれており、意見集約にはさらなる議論が必要との認識を示した。
■トップダウンに期待
経産省の動きに対し、マーケットからは官公庁主導の「トップダウン」による市場改革に期待の声が聞かれる。ある日系証券の担当者は、「長年の市場慣行は業者の自助努力だけでは変わりにくい。国がルールのグランドデザインを描くことが変革のきっかけになる」と歓迎する。発行要件の緩和についても、「トリプルB格以下や無格付けの企業にも社債発行のニーズは強く、手続きや投資基準の緩和が進めば、市場の確実な拡大が期待できる」と述べた。
また、社債取引情報の全銘柄公表に向けた取り組みについて、別の日系証券の担当者は「公表範囲が拡大すれば、流通実勢の透明性が飛躍的に高まる。結果として、プライマリー市場でも実勢を参考にした適正な価格議論がしやすくなり、これがマーケティング期間の短縮化にも寄与する」と指摘した。
[キャピタルアイ・ニュース 趙 睿]
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