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上場会見:FUNDINNO<462A>、IPOの件数低下はチャンス、スタートアップを身近に

5日、FUNDINNOが東証グロース市場に上場した。公開価格の620円を42.42%上回る883円の初値を付け、900円で引けた。柴原祐喜CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

非上場でも、上場株式市場と似たような機能をしっかりと実装することが必要と話す柴原CEO

―公開価格を上回ったが、初値の受け止めは
柴原CEO:率直にありがたいと思うとともに、我々がまず向き合うべきは、事業を成長させることと、金融プラットフォームの完成度を高めること。それを実現し、株価を向上させることで投資家に還元したい。株価というより、次の世界に羽ばたくための準備にコミットしていきたい。

―米国では、未上場企業の取引・資金調達が活発だが、金融業界のなかでどのような存在になりたいか
我々が担っていくポジションで言うと、未上場株式市場において、各発行会社の資金ニーズを埋めることが重要と考えている。このニーズを埋めるには、投資家の信頼が必要であるため、信頼を獲得し、その信頼をもとに発行体の求めに応じていける存在を目指したい。

―今のタイミングで上場した理由は
1つ目は黒字化が実現できるタイミングであったこと。2つ目は、仲介業者や、特に監督官庁からの期待が増していると捉えていることが理由。東証の上場維持基準の見直しにより、IPO件数が今期は低下傾向にある。この状況は、非上場株、ひいては「レイター企業」というIPO間近の企業の件数が増加してくると同時に、資金ニーズの規模も大きくなると言える。その需要に対し、未上場株式市場を整備していくことに強い責務を感じている。

一方でこの責務に対し、市場を健全に発展させる必要があるとも考えている。そのために、当社自身が株式公開し、市場から厳しい意見をもらいながら成長していく必要がある。公開するということは、当然ながらコンプライアンスやガバナンスの継続的なアップデートも必要になるため、それらを実現するため、当社は上場を決断した。

―今までに出口の決まった企業の実例(イグジット事例)はあるか
平石智紀CSO:「FUNDINNO PLUS+」で公開されているものでは、実際にはまだIPOはない。ただ、始めてから2年弱で、本格稼働は1年強のため、今後に期待してもらいたい。また、予定通りでいけば、近々考えられるものもある。また、買取のような形で実現している例は、「FUNDINNO PLUS+」で1件ある。「FUNDINNO」では、若い「アーリー企業」という上場までに5~10年かかるような案件が中心で、このサービスではTOKYO PRO Market市場で2件ほど上場を果たしている。それ以外では、上場企業へのM&Aや一部買取といった形で、投資家が株式を売却できる機会があり、実際に売却が行われた事例は約12件あり、TOKYO PRO Marketのデータも含め計14件となる。また、我々は未上場の段階で売買できるようにした「FUNDINNO MARKET」という独自のマーケットを運営しており、その事例が当社のプラットフォーム上で、10社強ある。今後も、もちろん増やしていく。

―大型案件の創出や、「特定投資家」をこれまでどう増やしてきたかについて。また、今後はどのように増やしていくか、GMV(流通取引総額)の拡大などの戦略について
柴原CEO:まず、増やすことについて、我々の「FUNDINNO」というサービスは、原則対面販売が禁止されている。そのため、これまでの10年間はオンライン中心による集客だった。現在、口座の開設数は、おおよそ5万口座。この5万口座のなかで、特定投資家になり得る人たちに声掛けをして、数を増やしているというのが現状。

なお、この特定投資家の集客方法は、オンライン中心であり、この点でユニークと考えている。比率としては、WEB経由で、約70%を獲得している。また、もう1つの集客方法として、紹介がある。これも当社の強みであるが、公開する前の株主数は、個人・法人合わせて240件あった。我々は、多くの株主に支えられて、ともに成長することが良いことであると掲げているため、当社自身もそうした多くの株主とともに市場を整備してきた思いがある。また、そうした株主が投資家になったり、紹介をしてくれている。

平石CSO:GMVについては、過去の推移は目論見書に記載があり、今後も継続開示の予定。一昨年ぐらいから載せているが、やはり特定投資家制度の始まりにより数が2倍以上増えてきている。そのなかで、GMVも過去2倍以上の成長を示し、2025年度第3四半期の段階で97億円だった。昨年度も順調に成長しており、当年度の業績予想はGMVを基に算出しているが、足元の成長については、ある程度継続的かつ保守的に見込んだうえで、業績推移として現在の予想を提示している。また、特定投資家数の増加に伴い、案件数も増えてくると、投資家は1件だけでなく、2件、3件と投資を拡大する傾向があるため、結果として、順調なGMVの拡大を支える大きな要因となっている。

柴原CEO:案件の獲得についても、株主が多いという利点が活かされ、紹介経由が多い。加えて、従来の獲得方法である、良い案件に対しては当社自身がアプローチを行うという手法と、WEB経由となる。発行体の獲得で1番ボリュームが多いのは、紹介。続いて、WEB経由、最後が当社自身からのアプローチとなる。

―株式投資型クラウドファンディングの規制緩和について、1年間に資金調達できる上限額が1億円から拡大される方針だが、緩和は十分と考えているか
十分ではない。1億円の制限については指摘のとおり、現状では5億円となっているが、これは一部、監査法人からの簡易監査が必要という条件付きでの合計額。この条件を満たす必要があるため、発行体の立場からすると、5億円を調達する際に非常に使いづらい制度になっていると思う。そのため、株式投資型クラウドファンディングの領域においても規制の緩和を期待する。一方で、当局がさまざまな検討を重ね、J-Shipsという制度を発令してくれたのは、非常にありがたい。

余談だが、「第一種少額電子募集取扱業務」というものがあり、これは当社サービスでは「FUNDINNO」に該当する。これにはいくつか規制がある。形態としては公募増資となり、本来であれば有価証券届出書の提出義務があるが、この第一種少額電子の範囲内では提出義務はない。一方で、レギュレーションがいくつかあり、大きいところで2つ挙げると、投資家の投資は50万円まで、さらに簡易監査を行えない場合は、発行体の募集上限が1億円までという制限がある。

当社のGMVが急速に拡大している背景の一つは、「FUNDINNO」におけるJ-Ships制度の存在にある。J-Shipsでは特定投資家であれば投資制限がなく、さらに特定投資家から資金を募る場合、募集制限もない。これにより、市場の旺盛なニーズに対し、当社も現時点で一定の貢献ができている。つまり、今後さらに規制緩和が進めば、当社の数字が示すとおり、GMVの拡大は発行体の資金ニーズを満たすことに直結すると考えている。したがって、国内で次世代産業を担う企業を育成するためにも、規制緩和は必要不可欠だと捉えている。

―未上場株式市場を取り巻く課題として、リスクマネー供給量の不足、情報の非対称性、株式流動性の不足の3つを挙げているが、具体的な解決策について
この課題を解決するために、3つの領域に事業を展開してきたという背景がある。リスクマネーの供給量に関する課題を解決する手段として、「プライマリー」領域を構築している。資本家への直接的なアクセスがリスクマネーの供給量を増やすきっかけになると捉え、その実現のために「FUNDINNO」と「FUNDINNO PLUS+」というサービスを展開している。これまでのリスクマネー供給の仕組みでは、家計(個人の資産)から複雑なルートを経て、非上場企業に初めて金が流れる構造だった。これを、資本家へアクセスして資金を供給するという図式に構築したのが、「プライマリー」領域になる。

続いて、情報の非対称性の問題を解決するのが、「グロース」領域。これは、特にディスクロージャー関連のサポートを行っている。最後に、流動化を担うのが「セカンダリー」領域であり、その言葉のとおり、資産の流動性を高める役割を果たしている。当社は、3つの領域の展開とそのアップデートによって問題解決を図っていく。

―「セカンダリー」領域について、GMVの拡大に向けて、個人から法人・機関投資家へ6億円拡大するとは具体的にどういうことか
上場企業のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)のような企業への拡大を目指している。スタートアップへの投資は法人投資家からすると、単なる投資というだけでなく、戦略的な資本・業務提携による事業の拡大を目指すケースがあり、それらのニーズを的確に捉え、法人投資家の数を増やしていく。企業の規模にもよるが、1単位当たりの投資金額は通常、個人の投資家よりも大きくなるため、大きな投資金額が出せるような法人投資家へまず拡大していきたい。もう1つのポイントは、投資信託法の改正。非上場株に対しては最大15%まで投資が可能というルール改正があり、これによって投資信託との連携を強化し、当社の銘柄を選定してもらえるようにしていきたい。

もう少し広い目で伝えると、当社のプラットフォームは、スタートアップの銘柄が棚に並んでいる状態をイメージしてもらいたい。買い手は個人投資家でも法人・機関投資家でも構わず、ターゲットを個人に絞るのではなく、法人や機関投資家へと拡大することで、確実にGMVの拡大を実現していきたい。

―既存株主に地銀系ベンチャーキャピタルがいる理由は
地銀との連携によって、地方へのアクセスを強化したいと考えている。特に「FUNDINNO」のサービスで伝えると、これまで当然IPOやM&Aというイクジットを目指す企業もいたが、それ以外もいた。そうした事例を当社で取り扱う背景は、例えば、地元地域にとって必要な企業の場合、必ずしもIPOやM&Aが最適な解とは限らないからだ。一方で、そうした企業を「地域にとって必要な存在だから応援したい」と考える投資家も一定数存在する。我々は、こうしたニーズを確実に拾い上げるために、地銀との連携強化を目指している。

もう1つの側面は、地方の優良企業がIPOなどを目指す場合、資本が都内に集中している現状から、都内とのネットワーク強化が不可欠であること。当社は都内へのアクセスという点では強みがあるが、地方の眠っている企業へのアクセスは現時点では十分ではない。そこで、地方企業へのアクセスに強みを持つ地銀と連携することで、日本全国各地の情報を取得し、案件化を進める体制を構築している。このように、地銀との連携は当社にとって非常に重要であり、必要不可欠な打ち手と捉えている。

―証券会社などでも未上場市場向けの株式の取扱を始めているが、差別化についてどう考えているか
どちらかというと協業できる存在だと考えている。先に述べた通り、当社はプラットフォーマーという思想を持っており、未上場株、ひいてはスタートアップ株を棚に並べている状態で、こうした企業とは競合関係ではなく、協業関係を築いていく動きを我々はしている。

あえて、差別化するのであれば、まずはスピード感だ。当社の場合、申込から着金までの期間は最短約1.5ヵ月となっている。また、発行体にとって資金調達は、各種デューデリジェンス資料の準備をしたり、1つのラウンドで複数の投資家のデューデリジェンスを同時に並行して受けなければならないなど、非常に手間と時間がかかる。特にレイター企業になると、代表やCEOなどが、作業に時間を割けないケースも多く見られる。当社では、それら煩雑な作業を一手に引き受け、いわば「椅子に座って待っていれば資金調達が完了する」という世界観を構築している。

さらに、強みとして、個人・法人の投資家が直接株主になれることも差別化の1つの要因と言える。ファンド経由の投資では、企業との直接的な連携や個人投資家からの応援が得にくい場合があるが、当社では非上場の段階から直接株主になってもらえるため、企業成長にとって大きなチャンスとメリットがある。実際、当社には現在240人もの株主が存在し、我々を応援してくれている。案件や投資家の紹介、何か事業を興そうとした時の相談、迅速な連携など、そういったポジションが確立されている。このように、非上場の段階から直接株主になってもらえることは、企業にとって大きなメリットであり、当社の強みとして今後さらに打ち出していきたい。

―サービス利用者の性質について
原理原則、本人確認手続きを指すKYCの確認と投資家の適合性を確認している。非上場株は、リスクが高く、流動性が乏しい商品になるため、一定の金融資産、投資経験を持つ人のみ投資家登録をしている。

―日本でも20~30年前からスタートアップ振興の必要性が語られてきたが、FUNDINNOの上場によって、その取り組みを完成させる最後のピースが整ったという自負はあるか
まだ最後のピースが整ったところまでは至っていない。ただ、今後も粛々と取り組んでいきたいのは、個人投資家が1社でもスタートアップ企業に投資をし、自分ごととして捉えてもらう。これこそが、スタートアップ環境の土壌を育てることに繋がる。

これまで、日本では海外のスタートアップという言葉自体が一般的ではなく、2015年頃はベンチャー企業と呼ばれていた。まずは投資を通じてスタートアップに興味を持ってもらう。場合によってはスタートアップで働いてみたいと思う人が増えるかもしれない。そうなれば、人材が流入し、1つのスタートアップ企業の礎を支える存在になるかもしれない。さらに、投資をきっかけに「自分も起業してみようかな」、「スタートアップに誘われたら参画してみようかな」と考える方が増えれば、裾野が広がる。これが重要と考えている。また、自分が投資した先は真剣に見守ると思うため、そういった部分まで整えば最後のピース、スタートアップの世界が当たり前になると見ている。

そして、やはり、米国と大きく違うのは、日本ではまだスタートアップに対して距離感を感じる人が多い点だ。本来は、起業はもっと身近で当たり前の選択肢である。大手企業に勤めるだけでなく、副業のような形で少しでも次世代産業の育成に携わる人が増えれば、裾野が広がり、日本からも米国のように世界で活躍する企業が生まれるきっかけになるのではないか。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]