株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:オーディオストック、変わらず岡山から音楽提供

16日、オーディオストック<621A>が東証グロース市場に上場した。公開価格の1060円を46.6%上回る1554円の初値を付け、1954円で引けた。西尾周一郎社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

オーディオストック上場会見
自社の強みや、このタイミングでグロース市場に上場した狙いを説明する西尾社長

―株価の受け止めは
ストップ高になるとまで思っていなかったので驚いた。株主や投資家からの期待も感じる。これに応えられるように、事業を拡大して企業価値を上げなければならないと改めて意識できた。

―2025年5月期のクリエイター報酬額が大きく伸びたがなぜか
2019年は課金収入しかなかった。この時期から仕込んで、2023年9月期頃から著作権収入も増えてきた。さらに2025年9月期には、著作隣接権という新しい枠組みでも収益を獲得できるようになったことに伴い、売上が大きく成長した。あとは、売上が伸びるに従ってクリエイターに還元する報酬が増えている。

―生成AIによる作曲が最近問題になっているが、向き合い方について。登録楽曲はあるか
現状で言うと、当社のシステムには生成AIで作成したものの登録は禁止している。生成AIで作ったものは権利関係が不確定なところがあるので、顧客の安全を第一に考え、安心して利用してもらうために全部弾いている。特にテレビ番組を作っているような現場人は権利が明確で、安心したものを使いたいという声をたくさんもらう。我々は人が作った音楽を扱っていて、権利が明確であることを強みとして説明しているので、短期的にはそこを重視していきたい。

今後、生成AIはどんどん発展していくし、権利関係も明確になってくるだろう。そうなった時でも、高い品質のもの、クリエイティビティの高いものは、やはり人間が仕上げることだと考えている。一部の工程やパートで生成AIを使うにせよ、最終的な仕上げや、どういう思想で作るかは、人間が介在すると思う。高い技術を持った音楽家をたくさん抱えているので、生成AIと力のある音楽家の掛け合わせで、高いクオリティの曲を世に出していくのは、当社も力を発揮できる部分がある。このため、生成AIの発展などを見ながら対応を考えていく。

―親引け先にNexToneがいるが、事業上の関係や今後の展開は
著作権収入が増えてきており、NexToneとは年々取引額が拡大している。著作権管理事業者のJASRACとNexToneと組んで一緒に展開するシーンは今後も増えてくると思う。同社との資本関係も含めて取り組んでいきたいとして、今回親引けの表明をして出資してもらうに至った。

NexToneとの取引金額が大きいため、ロードショーなどで「取引額が依存しているのではないか」という質問を受けた。取引金額だけ見るとそうだが、同社はあくまで著作権使用料を受領する窓口なので、実際にお金を払っているのは、その先にあるテレビ局やYouTubeなどだ。NexToneとは、一極的に取引が依存しているという関係ではないと思っている。我々みたいな音楽のIPホルダーは権利者として、JASRACやNexToneのどちらかと必ず取引をする構造なので、NexToneと関係をより高めていくため、親引けをしてもらった。

―著作権管理事業者のNexToneが親引け先だが、JASRACとの関係などで影響はあるのか
多分ない。NexToneは上場しているが、JASRACは発祥から考えても半官半民のようなところからスタートして、規模的にも歴史を考えてJASRACが圧倒的に多い。NexToneが後発として出てきて、システムの連携がしやすくなるなど、我々はメリットがあるので、最近は同社との取引が少し厚くなっている。ただ、NexToneだけでやるという意味ではないので、JASRACともちろん取引し、NexToneと資本関係があるから、JASRACがどうこうということはあまりないだろう。

―著作権管理の部分で大きく成長したタイミングがあったと思うが、今まで管理されていなかったものが一気にこのタイミングで登録されたのか。まだまだそこには市場があるのか
2023年9月期契約を開始した分の収益が非常に厚くなっているのは、テレビ番組でどの曲が使われたかをモニタリングできるシステムを導入し、我々の曲がどれぐらい使われたかを把握できるようになったからだ。JASRACやNexToneに登録していない楽曲であれば、後追いでいち早く登録して、著作権使用料を取り逃さないようにするという取り組みをした。2023~2024年あたりで非常に伸びたのは、このような背景がある。

テレビ番組で新しい曲を使いたいというニーズがあるので、我々の新しい曲をどんどん使ってもらう。使われそうな曲や優秀なクリエイターの曲は使われる前提で先に登録しており、そうでないものは後で登録する。このへんは、山口真央取締役COOが担ってオペレーションを組んでいるが、このような形で取り組んでいくことで、安定して成長していけると思う。

―グロース市場への上場が減ってきている、そんななかでこのタイミングで上場を選択したのはなぜか
我々はグロース企業だと思っているし、そうでありたいとも思っている。グロース市場の制度改革があり、時価総額を5年以内に100億円にするという基準が出たが、率直に面白いと感じた。それを十分に上回るほどの成長をしていきたい。グロース市場は成長企業だけが集まる市場になるという東証の意図も感じたので、我々もグロースに上場したいという気持ちは変わらず、今回上場した。とはいえ、まだ100億円に満たない企業なので、5年とは言わず、2~3年のうちには100億円を安定して超えるようにしていきたい。

―上場維持基準の厳格化の受け止めと成長への意気込みについて、付け加えることはあるか
上場企業としては売上の規模は比較的小さいかもしれないが、利益としては非常に創出できる体制になってきている。数年以内にPERなど、我々がコントロールできない部分もあるが、少なくとも利益をしっかり出すことで100億円になる水準を十分達成できると考えている。しっかり成長して、早く100億円を突破したい。

―世界を見ると、ロイヤリティフリー 音源を200~300万という規模多く扱うサイトもあるなかで、規模で劣るなか、オーディオストックのどういう魅力を訴求していくのか
海外の競合だと、日本では考えられないような大きな資金調達をしているプレーヤーもいるので、簡単ではないだろう。 我々の強みや特徴はコンテンツだと思っている。規模感というより、日本らしさで、ゲーム音楽やアニメ音楽は、世界で高く評価をされている分野だ。そういったものを作っている現役のクリエイターあるいは、そういったものを見て育ったこれからの若いクリエイターの作品を預かり、世界でも評価されるコンテンツを販売していくことで、買ったり、使ってもらえるところが拡大できるだろう。そのようなコンテンツを差別化として展開していきたい。

―和楽器を使ったようなところも魅力の1つか
東京オリンピック(・パラリンピック)があった2021年頃から日本の文化を発信したり、最近はインバウンド観光客も増えている。日本の文化やグルメを紹介するコンテンツで、和楽器が使われた作品も増えており、我々は非常に高い評価をもらっている。毎月、都内のスタジオを押さえて、篠笛や尺八、琴などの楽器のレコーディングも行っているので、そういった我々ならではのコンテンツにも今後は力を入れたい。

―上場するまでにも様々な壁があってそれぞれの持ち場で乗り越えてきたと思うので、山口COOと八木俊CFOからも一言ずつコメントがほしい。また、上場後に注力していくことはなにか
八木俊CFO:入社して6年ぐらい経験してきたが、この6年でもかなり様々なことがあり、決して上場までの道のりは平坦ではなかった。ただ、それを乗り越えていくプロセスが私自身も、会社としても力がついてきたというところがあったので、上場がゴールでもないが、上場前に組織として1つの完成形に持っていけただろう。一旦ここで上場できるが、今後は組織力をさらに生かして、事業を飛躍させていければと思い、頑張っていきたい。

山口COO:私はかなり初期の頃から参加していたこともあり、様々なサービスを展開しても、なかなかヒットしないこともあったが、「Audiostock」 というサービスができ、それが認められて多くの人に使ってもらったところで、それをフックに様々な事業展開ができているのは非常に嬉しい。それによって上場できたのも1つの節目として、とてもありがたい。一方、これがゴールではなく節目の1つなので、これからさらに音楽クリエイターをハッピーにするといった理念に基づいて、皆に喜んでもらえるサービスを展開していきたい。

―岡山に本社を置きながらの上場だが、今後も岡山に本拠を置くメリットについて
西尾社長:岡山の人に「東京に行かないですよね」とすごく言われる。心配されているが、私からすると、東京に本社を移すメリットがあるとは全く思っていない。事業的に東京に顧客や株主が多いということが、2拠点でやっている理由だ。本社を移すつもりもないし、岡山でやっているメリットは、地元から熱烈に応援してもらえることだ。

例えば、金融機関で言うと、未上場の段階で出資してくれたのも、中国銀行の子会社のちゅうぎんキャピタルや、広島ベンチャーキャピタル、トマト銀行のファンド、いよぎんファンド、ふくおかフィナンシャルグループファンドなどの地銀連合と言うようなところだ。こうしたところから応援してもらっているのも我々の特色の1つだ。もし東京の会社であれば、そのような出資を受けられていないと思う。金融的な部分でも支援してもらった。また、オフィスの賃料と固定費が比較的安かったり、地元のメディアの山陽新聞や日本経済新聞の中国面などでよく取り上げてもらえるなど、そういうメリットもたくさんある。我々としては岡山でやっていてメリットもすごく感じているし、やってきて良かった。

―中期目標など明確に掲げるものは
5ヵ年計画で作っており、それは開示していない。社内でいかに今後事業を発展させていくかというところで、そういった計画案について議論している。そのなかで2~3年以内に100億円を突破できる規模になってくるのではないか。

―今後さらなる投資、従業員の数や規模拡大については
規模が大きくなるにつれ人員が必要になるので、売上の増加に応じてということではないが、適材適所で随時増やすことは考えている。新規事業や音源の購入や買収には資金が必要なので、そのようなところに積極的に投資していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]

関連記事