株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:オリバー、プロに評価されるノウハウ

16日、オリバー<619A>が東証スタンダード市場に上場した。公開価格の305円を1.64%上回る310円の初値を付け、301円で引けた。大川和昌CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

大川和昌CEO(オリバー)
MBOによるモデルチェンジが成功したことを説明する大川CEO。

―初値の受け止めは
泣くほどでもなく、笑うほどでもない。

浦隅明弘常務:今日の株価の推移や売買高を見ると、評価されていると認識している。始まったばかりのため、今後、株主の期待に沿えるような経営を行っていく。

大川CEO:当社は参入障壁の高い会社だが、一言では説明しにくい総合力があるため、今後もPRを続けて理解してもらい、株価も成長させていく。

―インテリア業界は市場が拡大するのか、それとも、改装がメインになって堅調な成長となるのか
新築に関しては、2030年以降は増えないと想定している。既存のビル施設を改装していく仕事がメインになってくると思う。

その際必要となる施設の一例として、AI中心の時代における新しい働き方の答えとなるようなオフィスや、インバウンド需要に対応したホテルが挙げられる。ホテルに関しては、日本人と比較して大人数で宿泊する傾向を踏まえ、例えば、客室2室を1つにつなげて5人程度が泊まれる部屋にする。これらに取り組んでいくことで、2040年頃までは十分な需要が見込める。一方で、新築事業のみに焦点を当てると、市場は先細っていくと見ている。

浦隅常務:我々は5つの市場をカバーしており、市場ごとに動向は異なる。金利が発生する時代において、オフィス市場をはじめとする不動産市況全体が、2030年以降は多少なりとも鈍化してくるだろう。一方で、宿泊、チェーンストア市場については状況が異なり、足元で為替の動きがあるものの、円安は当社とは相性が良い。日本の不動産を一括で購入し、リニューアル工事を中心にブランディングを行っていく際、当社が特命で案件をもらえるようなポジションを確立しつつある。

チェーンストアに関しては、国内にとどまらず海外へ進出する日系企業が増え、海外で収益を上げる企業が増えている。出店支援は、数字としてはまだ小さいが、国外での成長領域として捉えている。

また、インテリアをより分かりやすく、デジタルの力を使って皆さんに提供することも当社の使命だ。ホームユースはわかりやすく、個人宅の家具を「どういったものをしつらえようかな」と考える際に、予算に応じて、この小売店、家具屋に行けば大体どんなインテリアが揃うかが分かるが、業務用になるとそこがいきなりわからない世界になってしまう。そこに光を当て、日本のインテリアの生産性や質を高めていく。マクロで見れば人口減少が進んでいるが、その状況下でも当社の成長領域を広げていきたい。

―継続顧客に対する売上が高いが、これまでの顧客からそれだけ気に入ってもらえる強みは
大川CEO:元々メーカーから発展した企業で、強度を持った設計や、最適な価格での調達力などを持っている。そこに、現在ではインテリアデザイン力が加わったことで、これまでは家具の購入のみだった顧客から「全部任せる」と言ってもらえるようになり、これが成長の大きなアクセルになっている。

また、継続顧客の売上88%のうち、大手外食チェーンなどは毎年全く同じ仕様のものを依頼されており、同一フォーマットで月に複数の店舗について受注するなど、そういった意味では顧客基盤が確立されている。

浦隅常務:継続性が高いことで、ロイヤルカスタマーが増えている。大手であればあるほど、レギュレーションも非常に高く、担当者についても数年で変わっていくため、担当者や企業の基準を理解して、間違いのないものを継続的に納めていく。その点も顧客事業の成長発展において重要な役割を果たしており、それがさらなるリピートへとつながっている。

―業界的に人手不足のなかで、どのように専門人材を確保していくのか
今回のIPOでは資金調達ではなく人材確保を目的の1つとし、公募は実施していない。優秀な人材の獲得や競争優位性、持続的成長を図るためには、すでに多数在籍してはいるが、有資格者を今以上に獲得していく必要がある。そのためには、市場の認知度の向上と、より強固な信頼の獲得が必要だ。人手不足については、持続的な成長投資としてのM&Aにも関連してくることもあると認識している。

―強固なプロダクトを作ることと、訪れる人に訴求するデザインの兼ね合いとこだわりについて
大川CEO:最もバランスを取るところで、太ければ太いほど醜く、細ければ細いほど弱くなる。そういった意味では、基準については、その施設に合った基準を満たすような強度設計としている。

例えば、多くの日本のメーカーは椅子の落下試験はしないと思われるが20センチメートルの高さから1000回落とすという試験を行い、それに通ったものを当社では採用している。特に荒く使われるのがららぽーとなどのフードコートで、所有権はテナント側にない。そうすると、乱暴に扱われることも多い。そうした環境でも十分に耐えられる強度設計のものとする一方で、丁寧に使ってもらえる高級ホテルなどの椅子であれば、おしゃれさを優先する。このあたりの使い分けには高度なノウハウを持っている。

具体的な製造工程においても、例えば9ミリのダボ穴に○ccの接着剤を入れて組み立て、「接着剤がどれだけはみ出るか、はみ出たということは充填されているからだ」といった、ものづくりの細部にまでこだわっている。

高度なノウハウを保有していることで、よく乃村工藝社<9716>や丹青社<9743>が競合先と言われるが、そうではない。彼らも重要な仕事をする時には、我々に声をかけてくれる。今回も乃村工藝社の子会社や内田洋行<8057>も参加してもらっている案件があるが、当社の特に木製品の強固な設計力を認められている証拠だと考えている。

浦隅常務:一般の皆さんには、「この空間デザイン、いいね」としか思われないだろうが、その背景には裏付けとなる生産管理があり、そこから生まれているからこそ、大川が話したようにプロにも高く評価され、当社が製作した家具が様々な場所に採用されている。

自社工場を持つ企業が自社の工場を厳しく管理するのは当然だが、当社はファブレスのため、外部委託の工場やサプライヤーに製作してもらっても間違いのない基準を、しっかりと持っている。基準を持つだけでなく、製造工程の段階から管理し、現場に届けるところまで一貫して行う。それが、最終的な品質、ひいてはデザインを反映できることにもつながる。

―検討している買収対象や業界について
大川CEO:最近力を入れている内装業や照明、国外のインテリアの企業、アセットライトでノウハウを豊富に持つ企業などを対象に検討している。ただ、現時点で蓋然性のある契約は何一つしていないため、これから積極的に取り組んでいきたい。

―インテグラル<5842>の出資を受けた経緯や理由、上場に至るまでに彼らがどのようなことをしてくれたのか
MBOを検討する際、それは選択肢の1つであり、MBOを選ぶとしても、どのパートナーと組むかという選択肢もあり、良いパートナーが見つからなければMBO自体を選んでいなかった。

今の形になるための構想と、PEファンドが何をできるのかというヒアリングを重ねたなかで、幸いにも3社から提案を受けた。そのうえですり合わせを行い、目指す今の形に向けて全力でコミットしてくれたのがインテグラルだった。派遣された担当者の人柄や、保有するノウハウ、資格など全て把握したうえで、MBOを進めた。一体となって取り組んできたため、望んでいたことはほぼ実現できた。当初の構想にはM&Aも含まれていたが、それは唯一実現できなかった。

一方で、資格者の採用や研修制度の整備、経営面でのアドバイスなど幅広い支援を得た。元々は長く上場を続けてきた企業で、外部の視点による経営や、資本効率を意識した経営を、幅広く吸収した。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]

関連記事