株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:レイヤード、医療事務の省人化に向けSaaS×AI

25日、レイヤード<634A>が東証スタンダード市場に上場した。公開価格の1400円を59.29%上回る2230円の初値を付け、2111円で引けた。DX支援プロダクトを医療機関に提供する。毛塚牧人社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

レイヤード上場会見
医療機関が抱える課題や成長戦略について説明する毛塚社長

―創業してから28年経ったこのタイミングで上場した狙いは
市場の拡大で、非常に(影響が)大きかったのはコロナ禍だ。ニュースなどであった通り、日本のなかでも特に医療を取り巻くIT環境は、諸外国に比べて遅れていることが詳らかになった。我々が提供している予約や問診、電話の自動応答などのニーズが拡大してきた。さらに、昨今は人件費が高騰してきている。人材不足も激しくなっているなかで、地方を含む医療機関の事業継続が難しくなってきており、効率化と省人化を進めることがかなり急務になっていると感じる。いち早く、サービスの提供先を伸ばしていくことも含め、より成長していけるように上場を選択した。

―株主還元の考え方は
売上成長率では20%程度を、OPマージン(オペレーティングマージン)では20~25%程度を中期的なターゲットとしている。OPマージン20%を超えてきたあたりで株主還元にしっかり取り組んでいきたい。スタンダード市場を選択した理由の1つにもなっているが、医療という世界で信頼性を持ってやっていくために、急激なグロースではなく、きちんと巡航速度を保った順調な成長と、ある程度の利益をしっかり確保したうえで還元していくことを考慮した経営をしていきたい。

―グロースや地方取引所も上場の候補には入りそうだが、なぜスタンダード市場に上場したのか
それは社内で議論になった。グロース市場の100億円基準の話もあったが、別にスタンダード市場であろうがグロース市場であろうが、この基準は守っていくべきラインだと考えている。それが市場選択のなかで我々に影響を与えたということはない。赤字を掘ってまで成長を目指すのではなく、適切な成長と利益(重視)の経営を志向していきたい。スタンダード市場は株主からこのような見られ方や期待のされ方をすると考え、同市場を選んだ。

―上場によって得られるものや期待していることはなにか
問診をはじめ、様々なSaaSのシステムで医療データを扱う。月間で数百万人規模の医療データを使用しており、これは要配慮の個人情報でセキュリティを含めて注意しなければならない。こういったものを扱っていく会社として、しっかりしたガバナンスやコンプライアンスなどの体制を持つことが社会的責務だと思ったのが、上場を考え始めた1つの理由だ。今回、東証によるものも含め、ガバナンスやコンプライアンスなどに関する審査を受けて、一定基準をクリアできたと感じている。

少なくとも、一定以上は信頼してもらえる会社になったことが、上場の大きなメリットだ。我々は医療市場の企業で、医療は社会保障(の一環)であり、税金で賄われている部分が非常に大きい。そのため、社会的公器になることは経営のなかでも強く意識している。資金調達もあるが、信頼感を持って社会的な責務を果たしていくことを重視していきたい。

―今後はどのように事業を拡大していくのか
足元の話で言うと、予約制度もない医療機関はまだまだ多い。さらに言うと、問診票も紙でやっていたり、決済も現金のみであったり、待ち時間が非常に長いなどの負の部分を患者はたくさん感じているだろう。デジタルやITを活用できる世の中にしていくことで、これから5~10年かけて市場の拡大は十分に果たしていけると見ている。特にクリニック・診療所という領域は、医師が理事長や院長をして、スタッフが数名いるという1人親方モデルに近い経営なので、なかなか彼ら自身でITを活用するのは難しい。我々がしっかりそこに入り込んでIT化やDX化していくのは、社会的効用性が高いと考える。

一方で、これからAIがどれだけ広がっていくかだが、今期はBPaaS(Business Process as a Service)という領域でSaaS×AIに取り組んでいきたい。医療市場のなかでいうと、医療ITの市場は数百億円程の規模しかなく、今までは非常に小さかった。今後はBPaaSをやっていくことによって、人件費をどれだけ削りながら、IT化・DX化していくかというところで、市場が人件費の市場に変わってくるだろう。

例えば、医療事務の面だけで考えると、1つの医療機関では、クリニックレベルだとIT予算は月間10万円程度だ。電子カルテなどを含め、そのなかで我々が取り合っている。人件費で言うと、どんなに小さい医療機関でも医療事務が3〜4人ほどいる。医療事務を3人から1、2人に減らすだけでも、月間で数百万円近いコストが浮くため、マーケットが非常に拡大していく。AIの活用をこれから広げていくことで、トッププレーヤーとしてこの市場を取りにいきたい。

―医療現場のDX化が遅れている理由や背景について
1つは、診療所の経営形態だ。ドクターは医療の専門家でもあり、医療機関の経営者でもあるが、ITには少し疎い。医療スタッフが3、4人ほどいるという最小構成で、ITが分かる人を1人雇うことが難しかったため、IT化が進みにくかった。もう1つは、ドクターの開業年齢の平均値が40代後半から50代前半ぐらいで、経営者の年齢層がほかの環境よりも高いことと、最大の顧客である患者の平均年齢が50~60代ぐらいで高齢者が多い。

ただ、コロナ禍によって医療業界側が変わっただけではなく、生活者側のITの使い方が大きく変わったと感じている。例えば、コロナワクチンはウェブの予約がメインだったことがきっかけで、高齢者がウェブを使い始めた。こういった環境も含め、ようやく医療がIT化していく土台が整ってきたと感じている。

―現在も本社は福岡市に構えているが、東京などに移転する予定はあるか
今のところ移転の予定はない。創業の地が福岡であり、福岡にお世話になってきたと強く思う。また、この5年ぐらいで地方の企業がハンデを背負わなくなってきた時代だと感じている。医療の話とは別だが、地方を元気にしていくことも企業としての社会的使命の1つだろう。地方の会社として存在感を増していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]

関連記事