株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:トグルHD<652A>、「売る気なし」は将来のパイプライン

10月30日、トグルホールディングスが東証グロース市場に上場した。公開価格の4040円を6.93%下回る3760円の初値を付け、3640円で引けた。不動産市場に流通していない土地から開発用地を創出する「Land Creation」と、企業内の会話や判断、知見をもとに業務を構造化・自動化する「Agentic Platform」を展開する。伊藤嘉盛CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

トグルホールディングス上場会見写真
事業モデルや、強みについて説明する伊藤CEO

―初値の受け止めは
結果を真摯に受け止めている。公募割れはしたが、まずは公表した業績予想を約束通り達成し、数字で企業価値を証明していく。

―中長期戦略として不動産管理や金融といった周辺領域への展開を挙げているが、そうした周辺企業をM&A(グループイン)し、AI技術を実装していくことで成長を図るのか
様々なパターンが考えられる。まずは我々の技術を理解してもらい、技術提供のみからスタートするケースだ。そこで実績が出てシナジーが確認できれば、パートナーとなって資本参加へと進む形がある。

一方で、後継者不在による事業承継ニーズや、会社自体を大幅にアップデートしたいという要望を受け、M&Aから始まってそこに当社の技術を投入していくパターンもある。

―不動産の未活用資産を活性化してきたのと同様に、次はどういった産業や領域に焦点を当てていくのか
人手不足が発生しやすい地域や領域が挙げられる。AIがあれば人を雇わなくても生産性を向上させたり売上を伸ばしたりすることが可能で、人間が本来やりたがらない煩わしい業務をAIで巻き取っていくこともできる。加えて、反復作業が多く、長時間のPC作業で完結する仕事を大量に抱えている領域も対象となる。ここに対しては、我々の技術を用いることで大半は自動化、または全自動化ができると考えており、現行のLLM技術と親和性が高い領域を狙っていく。

―現在、東京・大阪・福岡では自社で不動産開発事業(Land Creation)を展開しているが、そのほかの地方に関しても自社で進めるのか、もしくはM&Aや不動産会社との連携で進めるのか
M&Aに関しては、基本的に不動産資産を抱えないアセットライトな企業を想定している。したがって、従来のディベロッパーをM&Aすることについて、優先順位は高くない。

「Land Creation」は今までのディベロッパーとは業務のやり方が異なり、M&Aをしても既存の業務プロセスをすべて刷新することになるため、シナジーが生まれにくい。そのため、Land Creationのエリア展開については、自社リソースで行っていく方針だ。

―市場に出ていない99%のオフマーケットを対象としているが、実際に価値化が可能な規模はどの程度と見込んでいるのか
東京で言えば、約10万件という数字が目安となる。これは、単独の土地のままより2つ組み合わせたほうが、建て替えによって価値が高まる土地を指している。

もっとも、この10万件は固定されたものではない。例えば、ある土地は老朽化して空き家になったり、何らかのきっかけで解体されたりする。建物自体の老朽化による建て替え需要に加え、所有者の相続や引っ越しといったライフステージの変化も生じる。このように、建物のハード面と居住者の事情が組み合わさることで、対象となる10万件の内訳は常に少しずつ入れ替わっている。

―大阪や福岡の潜在案件はどれくらいか
榎本佑介CFO:大阪は少なく見積もって東京の半分程度(東京の潜在案件:8~10万件)。福岡は3~5万件と見ている。

トグルホールディングス上場会見写真
今期、100名を超える営業人員の採用を見込んでいることを話す榎本CFO

―訪問済み案件1万件に対して、アクティブ案件は2000件とあるが、残る8000件は何がネックになったのか
提示価格がいくらであれ、「現時点では家を手放すタイミングではない」という意向の地権者が、8000件のほとんどを占めている。

ただし、ライフステージの変化や時間の経過に伴って売却意向は変わっていく。そのため、この8000件が完全になくなったわけではなく、将来的にパイプラインになり得る対象として継続的にアプローチしていく方針だ。

伊藤CEO:そもそも誰も売ろうと思っていないのにインターホンを押され、「売ってください」と営業をかけられて、そのうち何人かが売却に応じるようなモデルだ。最初から市場に出ていない土地にアタックしている前提を踏まえれば、訪問した1万件のうち2000件がアクティブに動いているというのは、良い水準であると捉えている。

―Land Creationの用地取得について、大部分を借入で調達していると思うが、今後金利が上昇していくなかで、そのリスクにどのように対応していくのか
榎本CFO:3つの備えをしている。1つは業績計画への保守的な織り込みだ。政策金利の上昇に伴って調達金利が昨年度より上がる点について、銀行と対話しながらバッファーを持たせている。

2点目は、今回調達した資金の一部を借入金の期限前返済に充てる調整・交渉を行っている点だ。また、上場によって信用力が向上したことで、金利や手数料の引き下げ効果も同時に期待でき、これらを念頭に金利上昇へ備えている。

3点目は、当社のビジネスモデルでは在庫期間が6~7ヵ月と、不動産開発領域では極めて短期間だ。この短期間の在庫回転によって、金利上昇が損益計算書(PL)に与えるインパクトを最小化している。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]

関連記事