22日、ティアフォーが東証グロース市場に上場した。公開価格の1085円を7%下回る1009円の初値を付け、1015円で引けた。加藤真平CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

―初値の受け止めは
どのような数字であっても、これが市場の評価だということを真摯に受け止める。
当社は、ディープテックという、必ずしも全ての事業計画が安定化されている事業ではないため、事業成長を続けて企業価値を向上させていくことが、株主にとって最も期待されていることだと思う。その難しさに対して、高い透明性を持って情報開示を行い、投資家をはじめとした全てのステークホルダーの理解と信頼を得られる企業を目指していく。
―黒字化の時期は
黒字化は、1つの大きな焦点であるため、早期に達成する計画だ。透明性を持った情報開示を続けて、投資家からいつ黒字化するのかを予測・理解してもらえるように努める。
―国産の自動運転車両を作る意義は
日本の自動運転の技術やマーケットは、ようやく始まったばかりだ。この黎明期において、ロボタクシーなどの分野について、海外が一部先行していることは認識している。この先行部分を学び、今後どのようにマーケットで勝っていくかを考えた時に、国産自動運転車はこれから十分に普及していくと確信している。それは我々のように自動運転システムそのものをオープンソースとして開発できる企業が存在するためで、システムやソフトウェアの分野ではこのアプローチによって追いつくことができると見ている。
そこに日本の虎の子産業である自動車産業とのコラボレーションが現在進んでいる。これによって、海外勢の一部が先行しているロボタクシーなどの分野においても、日本は量産能力で上回ることができる。むしろ、公共交通や特殊車両の領域においては日本が先行しており、その部分を維持していくことも可能だ。
今後、自動運転システムをオープンソースとして開発して、技術水準をしっかりと高めつつ、OEMの量産能力を最大限活用するエコシステムが構築できれば、これからのマーケットで日本の国産自動運転車が確固たるポジションを取っていける。
―今後、メインターゲットとしていく車両タイプは何か。また、その選択理由について
短期・中期・長期で変わってくる。短期では、現在、公共交通向けのバス・シャトル、それから工場内搬送や建設機械のような特殊車両が先行している。例えば、工場内搬送では小さなカート、建設機械では大型ダンプといった車両において自動運転の量産化・商用化を進めている。これがマーケットに浸透して、技術的にも事業的にも成熟していけば、その横展開として、中期的にはロボタクシーや自家用車へと普及していくと想定している。
そのほかにも、鉱山や港湾といった特殊車両の領域には多くの車種が存在し、エンターテインメント領域ではレーシングカーのようなものもある。さらに公道に目を向けると、バス・シャトル、ロボタクシー、自家用車以外にも、トラックや小型配送ロボットなどがあり、これらは中長期的に広がっていく。
それに伴って中長期の視点を分けて計画を進めていく。まずは公共交通のバス・シャトルや、特殊車両である工場内搬送向け車両や建設現場の大型ダンプに注力する。その後、ロボタクシーや自家用車といったタイプにも目を向けていく。すでにそれに向けた開発や実証実験を進めている段階だ。
―上場の狙い
当社はスタートアップとして10年目を迎えている。VC(ベンチャーキャピタル)からの資金調達に始まり、今はミドル・レイトステージで主に事業会社からの出資を得て事業成長を続けてきた。一方で、我々の事業モデルの中心はプラットフォームやオープンソースの開発だ。これをさらに加速させていくにあたり、特定の一企業からの出資に依存してしまうと、どうしてもその企業のシステムやサービスに紐づいた形になりかねない。
我々のビジネスモデルにおいて、非連続な成長を遂げるためには、一固有の企業の出資ではなく、上場といったパブリックな資金調達を行う必要がある。それによってプラットフォームを確立し、そのうえで各パートナー企業とのさらなる事業連携を続けていきたいと考えた。これが、今このタイミングでのIPOという決断をした理由だ。
―資金使途について
大部分を研究開発に充てる。これまで基盤としてきたオープンソースというのは、我々の研究開発投資ではなく、世界中の技術者たちが無償で貢献してくれるソフトウェア開発になる。ここが我々の最大の強みである一方で、それを量産化・商用化しようとした際に、その水準を満たす品質や保守メンテナンスなど、そういったことを全て包含したプラットフォームを開発するには、まだ一定程度の研究開発投資が必要だ。今回、IPOの資金調達の多くは、そのプラットフォームを完成するために充当する。
また、その先を見越した半導体チップの設計などにも資金を充てていく。ただ、チップ自体を売ることをビジネスの目的としているわけではない。その半導体チップもオープンソース化して、自社のプラットフォームをさらに市場へ浸透させていくことこそが真の目的だ。したがって資金の使途としては、あくまでプラットフォームの成長のための投資であり、その対象にはソフトウェアだけでなくハードウェアの部分も含まれる。
―ビジョンとして掲げる「自動運転の民主化」について、具体的にどのような考えを持っているのか
自動運転の民主化には様々な意味が込められている。少し分かりやすく2つに分けると、作る側と使う側の民主化だ。
作る側の民主化についてはオープンソースが肝となっており、特定の企業だけが高品質で高精度な自動運転システムを作れる状況から、我々によって、誰でも高品質で高性能な自動運転システムを作れるようになる。これはまさにゲームチェンジだ。
そして、使う側については、自動運転の自家用車が一家に1台あるような未来が必ず来る。車を所持していない人でも、公共交通を含めた自動運転サービスを使って誰もが自由に移動し、多様な出会いを得られるようになる。安心・安全な社会だけではなく、豊かな文化を育んでいくためにも、使う側の民主化は重要であり、当社もそこに寄与していきたい。
作る側の自動運転システムについては、量産化・商用化が進んでおり、山登りで例えると5合目。OEMのパートナーと組むことで10合目も見えている。一方で、使う側の視点では、これから全国、グローバルに展開していくところで、作る側とは打って変わり、まずは5合目に上っていくことを目指す。そのなかで政府が2030年度までに1万台の自動運転車両を社会実装すると閣議決定し、政府目標として掲げている。これを強い追い風として社会実装や普及に対して、道筋を立てていきたい。
―E2E(End-to-End=カメラなどのセンサーデータから得られる情報を直接入力し、判断から制御までをAIに全て担わせる技術)の開発状況は。また、今後OEMへの提供を考えているか
オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」には、従来のルールベースだけでなく、様々なアルゴリズムや手法によるE2E技術も含まれており、世の中に存在するほぼ全ての自動運転技術が網羅されている。これらは日々日進月歩で最新の技術が追加されているため、テストコースや一般道での実験的な走行であれば、ルールベースでもE2Eでも、まず走らせることができる。
そのうえで、自動運転レベル4の量産化・商用化を考えた場合、ルールベースだけでは対応が難しい走行シーンが存在する。一方で、E2Eは進化途中の技術であり、認可の取得や安全性の確保という面で課題がある。
そこで我々の量産・商用化計画では、AutowareのルールベースとE2Eをうまく組み合わせて、E2Eによって困難な走行シーンを突破しつつ、ルールベースによって安全性を確保するという両取りをしている。これから公共交通、特にバス・シャトルの分野で量産・商用化するシステムには、すでにそれを導入する計画となっている。
一方で、工場内搬送や建設現場のように、単一の経路を繰り返し走行するような特徴を求められる場合には、むしろルールベースのほうが適している。こうした特殊車両の領域では、ルールベースで確実に商用化を進めるほうが事業性が高い。これこそがまさに当社の強みで、OEMパートナーや事業特性をしっかりと考慮し、公共交通のようにE2Eが必要な分野と、ルールベースで確実に事業性を担保する特殊車両の分野を明確に打ち分けながら、事業を進めている。
―米国や中国では大規模な投資をしているが、今後の投資計画と技術開発についてどのように考えているか
当社の開発は3つの階層に分かれている。第1層がオープンソース、第2層がTIER Ⅳプラットフォーム、そして第3層がラストワンマイルの開発だ。このうち、研究開発投資の対象としているのは、第2層のTIER Ⅳプラットフォームで、これが販管費になる。
一方で、第1層のAutoware(オープンソース)は、我々の開発に利用可能ではあるものの、自ら直接的な研究開発投資を行う対象ではない。近年はエージェンティックAIからフィジカルAIへと技術がシフトしているが、そうした最新技術の全てを自社の研究開発投資で開発していくのではない。オープンソースの存在によって、研究開発投資を一切することなく、すでにロボタクシーなどを実験的に走らせられる状態からスタートできる。そこが米国・中国の投資の仕方と大きく違うところ。ゼロから開発を進めれば、米中企業のように多額の投資が必要となる。
さらに、顧客であるOEM企業にとっても、すでに9合目ぐらいまで完成した状態からラストワンマイルの開発に注力できるというメリットがある。自ら巨額の投資を行わずとも、結果として米国・中国の開発しているものと同水準の安全かつ高機能な自動運転システムを実現できる。これこそが、多くのステークホルダーから我々が評価され、期待を集めている最大のポイントだ。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]
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