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上場会見:ラストワンマイル<9252>の清水社長、顧客と直接コミュニケーション

24日、ラストワンマイルが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(1710円)を47.37%上回る2520円を付け、2880円で引けた。同社は、電気やガスといったインフラサービスの選択や需要が集中する引越しなどのタイミングを、不動産仲介業者や引越し業者などと連携して把握。提案のうえ手配を代行する。100種以上のサービスを扱い、400席ほどのインサイドセールスセンターを持つ。清水望社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

清水社長は、リアルの価値は低く見られがちだが、時価総額を上げることで、その価値を立証したいと話した。
清水社長は、リアルの価値は低く見られがちだが、時価総額を上げることで、その価値を立証したいと話した。

―初値について
順調な滑り出しと認識しているが、あくまでもスタートラインなので、本質的な実力をしっかり評価してもらい、株価が伸びていけば良い。今後も着実に伸ばしていきたいという思いがあり、しっかりと評価はしている。投資家の評価も、想定価格・公募価格から高く評価してもらえた。

―高く評価してもらったとのことだが、具体的にどういうところが評価されたか
ストックの売り上げとしてのARRが37億円ほどある。毎月単発で利益を出しているのではなく、顧客から毎月継続的に収益を得る。例えば、ネット企業ではARRと表現され、我々も同様にARRを積み上げているのに、それらの企業と評価が違うのはおかしいとかなり強く投資家に説明した。しっかりストックが積み上がっていることを大きく評価してもらった。

―ワンストップの引越し関連サービスは国が旗を振っており、東京電力のような大手が存在し、最近ではリベロ<9245>が上場した。各社と比べての強みは
WEB上でワンストップをやるという政府の取り組みがある。御旗を振っているが、顧客が全てそこに入力して全部やるというのは手間がかかり、ほとんど機能していないのが現状だ。

我々の強みとしては、コミュニケーションを顧客と直接取るので、その分、よりきめ細やかな対応をスムーズにできる。ただ、今後、行政手続きはかなり便利になってくるので、マイナポータルなども踏まえて、我々がそちらを推奨していく立ち位置にしたい。競合するとは思っておらず、政府が取り組みを進めていくと、我々にも追い風になっていく。

―そうすると、競合がどこというよりも、手がけている領域はブルーオーシャンという認識か
商品1つずつで見ると、当然レッドオーシャンだ。相手が、東京電力など敵が非常に強いマーケットだが、複数の商品を全て扱うことに対してはブルーオーシャンなので、戦略をしっかり取って伸ばしていく。競合がいないという表現は違う。

―リベロの売り上げではネット回線が多いが、売り上げに占める商材の構成比は
インターネットと電気、ガス、ウォーターサーバー、そのほかがそれぞれ2割ずつのイメージだ。リベロは、多分、売り上げの半分がインターネット系の商品で、目論見書ベースで比較すると、収益率はリベロの2.5倍ぐらい。顧客を1件紹介してもらった場合に作れる売り上げが2.5倍だ。インサイドセールスセンターが強いので売り上げを作れる。作れるからこそ、不動産会社に多くの紹介料が入る。

―インサイドセールスセンターの人員確保や育成では、何を心がけているのか
リアルコミュニケーション・ライセンス制度で、(会話の)ここで笑って、どこで抑揚を付けてというように、顧客に最大限ストレスのないコミュニケーションの取り方を徹底的に教育している。

今後その教育をしっかりして、我々のセンターの価値を増やしていく。ただ、上場したことで、あまり人がいなくても市場を取れていく、人数がいなくてもシステムで回せるような仕掛けの投資を進める。

―教育内容は、コールのスクリプトの分析から導き出されるのか
コールのスクリプトの分析もそうだが、トークではなく、生の自分の言葉で話さなければいけない。研修は、座学で教えるというより、ロールプレイングをしながら常に3部署体制で確認してアップデートしていく。自分が顧客であればどう感じたかをフィードバックする。

―指導者がいるような属人的な教育体制なのか
市川康平取締役:良い成績を出す営業担当者は世のなかにたくさんいる。そのようなノウハウを、具現化や体系化、見える化できている会社が多くない。特に、我々のように複数のサービスを1回で伝えるノウハウは、世のなかに存在していないと思う。社内ポータルサイトでeラーニング化しており、完全に未経験でも、ある程度のリードタイムがあれば活躍できるというプラットフォームができている。それがリアルコミュニケーション・ライセンスという独自の育成制度だ。なるべく属人化しない体制になっている。

―コロナ禍で引越し・移転数が減っていると聞くが、今後、コロナ禍から回復することによる影響は
清水社長:引越し市場の14%ほどの顧客に紹介しているが、コロナ禍で減ったとはいえ、分母がまだ大きいので、そこまでの影響はなかったが、今後は、コロナ禍が終息して、今はどちらかといえば東京から地方に出ていく動きが加速していくと見ている。我々の開拓スピードも上がって、成長の追い風になってくる。

―終息後の成長率は
終息の有無に関わらず成長イメージはある。利益に対しては、安定的に70%程度伸ばしたい。売り上げは10~20%を目指したいが、もともとストック利益があるので、出そうと思えば出せるし、しっかり安定的に成長していくほうが大事だ。

―年間10~20%の成長を見込んでいるとのことだが、顧客単価と顧客数のそれぞれの伸びをイメージしているか
現在の自社サービスの顧客単価は5000円ほどだ。両方10%ほどずつ伸ばしたい。電気の契約をしているがウォーターサーバーを導入していない顧客にクロスセルの提案をする。

取り次ぎのKPIとして最重要なのは流通総数だが、年間17万件が何かしらの商品を取っており、最低限10~20%伸ばしていく。10%成長は、大した成長ではないので、最低でも伸ばしていく。

―営業利益のイメージはどうか。費用先行か、巡航でともに伸びていくのか
巡航で一緒に伸びていく感じだ。我々がどこかで振り切って、「全部自分たちのまるっとシリーズで取るんだ」といった場合には、例えば、2期連続で赤字を出して一気に攻めるというタイミングがあるかもしれないが、我々は利益を出しながらストックを貯める戦略を組んでいる。今の巡航速度で進めた場合がそれぐらいだ。アクセルを全然踏んでいない状態で最低でも到達する。まずは地に足を付けた状態で達成していく。

―エリアを拡大するとしたらどの辺りか
全国に提供しているので、エリアを広げるよりは、引越しや、手掛けていないカーテンや家具のレンタルなど新生活の時に皆さんがイメージする必要なものを増やして、顧客単価と1件当たりの流通数の増加を目指す。

―資金調達で、システム投資をするが、どのようなシステムにどの程度投資するのか
取り次ぎサービスを何百種類と扱っていて、100社あれば取り次ぎの仕組みが100社で違う。オペレーターが入力すると、例えば、各電気会社について自動的にパッチがはまっていくような現場の負荷が軽くなるシステムだ。

また、明細を確認できるアプリ「まるっとポータル」がある。今は特に面白みがないアプリだが、明細を見るのが楽しいとか、毎年1人に100万円が当たるとか、上場後に面白い仕組みを(実装するために)、システムに投資する。額については、目論見書に記載している程度は使う。

―ラストワンマイル側が顧客に明細を見せることで、電力などの商品比較ができ、取り次ぎにつながるイメージなのか
新生活の顧客から料金を受け取るので、顧客側としては、比較をするわけではなく、引っ越すタイミングなので、「この電気を導入しましょう」と提案する。明細は、自分たちのサービスの毎月の料金を確認できるアプリだ。

―毎月一定額が課金されるので、それに関して電気料金がこの程度かかるものを明細書と呼び、それを見て100万円が当たるという話もあったが、見れば見るほど当たるのか。どのような仕組みなのか
100万円が当たるというのは、あくまでも今後こういうことをしたいというものだ。今は、明細がまとまって便利だというもので、サービスを増やしていく。

なぜ明細を見せるかというと、電気の契約をしていてガスは契約していない顧客に対して、視覚的にガスを未導入であることが分かる。毎月明細が出るタイミングで営業のチャンスがあるイメージで、顧客にわくわくして明細を見てもらえるように、かなり仕掛けていく。

―電力価格が上昇し、新電力企業の経営も危ないと言われ続けており、顧客の電力の契約の変更件数が相当増えると見ている。エネルギー価格高騰について、どう思うか
原価が高騰しても、利益が少ない分安定的な原価供給の仕組みになっている。そうは言っても、今回の電気の原価高騰では、やはり高くなる。我々の利益に直接のインパクトはないものの、乗り換えのチャンスはある。例えば電気代が高くなった顧客に対して我々が新電力の案内をする機会は新しく生まれる。ピンチとチャンスが同時に来ている。

―資本効率やWACC(加重平均資本コスト)の考え方は
市川取締役:ビジネスモデルとして運転資金をあまり必要とするものではない。他社のサービスを取り次ぐことで販売手数料を受け取りながら、足元の利益を出しながらも継続の利益を積み上げていけるビジネスモデルだ。

そもそも資金調達をそれほど必要としないモデルではあるものの、上場という機会を通じて、資金調達のチャンスが広がっていく。これまで実現してこなかった直接の調達の仕方や、例えば、シンジケートを組んでの大規模なデットでの調達も可能と考えている。タイミング毎に金利のバランスを見ながら最適な方法を選択していく。

―アライアンスやM&Aについて
清水社長:アライアンスについては、今入り切れていない大手や、例えば、退去のマーケットなど大手とのアライアンスをかなり組み始めた。気合を入れて伸ばすところだ。M&Aは今後検討していく。本業に集中しながらM&A戦略にも組んでいきたい。

―配当はいつ頃からか、配当性向は
市川取締役:現時点では具体的な時期は定めていない。向こう何年間かは内部留保を貯めて事業への再投資を行い成長につなげたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]