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スタートアップの横顔(7):GIP_M&A助言×戦略財務×HR

GIPは2023年6月に設立され、資本や事業構造の変革局面にある顧客に、M&Aアドバイザリーと戦略財務、HRコンサルティングの3つを有機的に連携させて提供し、“企業価値に変化を起こす”。創業の経緯や事業の強み、今後について増田覚共同代表に聞いた。

増田覚共同代表

■支援は多面的に
増田共同代表は、有限責任監査法人トーマツで公認会計士としてキャリアをスタート。転籍先のデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーで、インフラ投資やカーブアウト支援、財務デューデリジェンスなど幅広いファイナンシャル・アドバイザー(FA)業務に携わり、2016年からは日本のプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)であるエンデバー・ユナイテッドで、投資と投資先の経営支援を行ってきた。

多くの経営者や投資家と向き合う過程で、「M&Aはその後の企業価値向上までを含めて考えて行わなければならない」(増田共同代表)と考えていた。一方、業界を見渡すとM&Aアドバイザリーや戦略財務コンサル、HRコンサルを単独で提供する会社は多い。だが、それらは企業価値向上の文脈では別個のものではなく、「本来は多面的な支援が必要」(同)で、それが可能なプレーヤーがほとんどいなかったことから、国内の独立系M&AブティックファームだったGCAや、JPモルガン証券で投資銀行業務に従事していた山本明紀共同代表との創業に至った。

■1つのチームで
東証による市場改革やアクティビストの活発化を背景に、PEファンド主導の非公開化やカーブアウト案件が増加している。その流れが牽引する現在のM&A市場で、GIPは大手の投資銀行が手掛けにくいEV(Enterprise Value)1000億円未満の中堅規模(ミッドキャップ)の案件に照準を合わせている。

戦略財務コンサル機能を持つことから、M&Aに至る前段でのアクティビスト対応やキャピタル・アロケーション施策、事業ポートフォリオの見直しといった課題に対しても的確なサービスを提供できる。業界大手は内部に様々な機能を備えた組織群を持ち、そこからプロジェクトに応じて混成チームを組成することが多いが、GIPではワンチームで、「より一体化した形で」(増田共同代表)案件を担当できることが強みだという。

戦略財務コンサルとFAを統合して実行する会社はあまり多くなく、案件規模の拡大につれて、より難しくなるという。“大きいディールを決めていく”というFAの発想と、“顧客と向き合って少しずつ話を進める”コンサルタントの考え方に隔たりがあり、その融合に難しさがある。ただ、それは「理解していけば超えられない壁ではない」(増田共同代表)と見ており、ワンチームとして活動できているという。

M&A・事業再編等の変革局面の企業に、企業価値向上を支援。M&Aアドバイザリー、経営戦略・財務コンサルティング、HRコンサルティングの機能が連携し、複雑化している経営課題を解決し、企業価値向上を実現する

■M&Aの前に
アドバイザリーと戦略財務コンサル、HRコンサルをM&Aで一貫提供するアプローチは、何種類かあるカーブアウトのうち、最も困難だという「事業のカーブアウト」で説明すると、その優位性が際立つ。事業の切り出しでは、それまでに存在した経営者やバックオフィス機能が失われるため、会社が動かない状態になる。

そのため、財務の観点では、カーブアウト後に不足する人事やシステムなどにどの程度のコストがかかるのか想定しなければバリュエーションを算出できない。その場合、切り出し後1年程度の間、売り手が買い手に事業継続に必要なITシステムや人事・給与、会計機能などを提供するTSA(Transition Services Agreement)の交渉や要求ができない。そのため、財務戦略が非常に重要なポイントになる。

人材面では例えば、対象事業の部門長が社長になるケースもあるが、いずれにせよ経営人材が不在で、それを支えるCFOやバックオフィスもいないことが通例。そこにどのような人材を充てるべきか、適切に手当てできることで見通しが立ち、円滑に経営に入っていける。

■強い組織のために
アドバイザリーやコンサルと、自己勘定投資を組み合わせて行う会社もあるが、GIPはその方向には進まないという。前者2つが短期的なスパンで収益を得る事業で、何年も時間をかける性質ではない一方、投資事業は数年単位で進めるため、「時間軸がかなり違うビジネスになってしまい、企業が一丸となって運営していくのは難しい感覚を持っており、強いチームを作っていく観点でもあまり望ましくない」(増田共同代表)。また、アドバイザリーに徹することでクライアントとの利益相反を回避し、客観性と信頼性を担保する意図もある。

■AIとプロ人材
創業から日が浅いことから、“高品質な業務の提供”と“成長の加速”の両立のため、AIとプロ人材の運用で対応する。セキュリティ対策を講じつつ、AIによる業務知識の集積と活用で、案件マッチングやリサーチを効率化する。また、ファームから独立したプロフェッショナル人材を募る「G-Pro」と、女性役員候補の人材紹介などを扱う「Ms.Pro」というサービスで、柔軟な業務委託の機会を提供する。

正社員以外の働き方が増え、シニアがより長く働く時代に、他社が接点を持っていない優秀な人材層にいかにアクセスするかがテーマになるという。正社員と同水準の情報管理体制や業務の進め方など入職を円滑にする仕組みを整え、「プロ人材を受け入れやすくして社内のリソースを拡充している」(増田共同代表)という。

2025年2月にシンガポールに本社を構えるAsia Business Creationと資本業務提携。日本企業とアジア企業のクロスボーダーM&Aサポートを加速させる

■シンガポールでしっかり
GIPは昨年2月にシンガポールのM&Aコンサルティング企業「Asia Business Creation(ABC)」と資本業務提携を締結。同国で日系企業を見ているM&Aアドバイザリーはあまり多くない。ABCとは日常的に協働し、定例会議の場を持つなど連携を進化させている。陣容も厚みを増しており、東南アジア各国での案件発掘や、エグゼキューションの支援体制を整えている。「我々が東南アジアでの存在感のあるポジションに持っていけるという期待を込めて始めている」(増田共同代表)。

海外案件の紹介のみならず、日本から投資する場合に、ワンチームとして現地の商習慣や会計・法律の違いを踏まえた的確な案件執行が可能で、それが強みになっているという。今はシンガポールと日本の橋渡しがメインだが、現地に根を張った強いファームとなるべく、シンガポール企業の売却側のアドバイザリーとして動くことも視野に入る。現地企業同士のM&A案件を獲得していきたい考え。

■融合を強化
今後は、提供する各サービスを補強し、3領域の本質的な融合を進める。さらに、財務戦略の提供に際し顧客が税務関連サービスを望むこともあり、税理士法人との業務提携などシームレスな展開を意識する。飛び地になるような業務ではなく、他領域に対して「価値が足し算ではなく掛け算になりそうなものを選んでいく」(増田共同代表)。

GIPで活躍できる人材の要件について、自分の持ち場を守りつつチームにどう貢献していくか意識でき、それに徹することができる人材は早く育ち、非常に活躍している印象があると話す増田共同代表

海外展開については、事業環境の変化がかなり速く、そうした変化が重なり合って経営環境が複雑化していることから、ABCとの連携を強化し、海外事業を拡大する。

画像・図表の出典:GIP(2026/10)

[2026/9/28:キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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