2月28日、TENTIALが東証グロースに上場した。初値は公開価格の2000円を30.0%上回る2600円を付け、2751円で引けた。リカバリーウェアの「BAKUNE」を始め、服やサンダルの開発・販売を行っている。昨年9月には、第二種医療機器製造販売許可を取得した。中西裕太郎社長が都内で上場会見を行った。

―初値の受け止めは
期待を上回っていくのはすごく重要だと思っている。長期的に株主に価値を出していくためには、しっかりと頑張っていかなければならないという気持ちになった。
―このタイミングで上場を決めた理由は
様々な要因があるが、我々のブランドは上場を1つのテーマとしていた。いろいろな議論はあったが、BAKUNEという商品がマーケットのなかで、支持や認知を獲得し、信頼できるブランドになれるように、上場を活用していく考えだった。このタイミングで上場することによって、事業やブランドが大きく羽ばたけると判断した。
―調達資金について、15億円弱を広告宣伝費に活用するということだが、今回はそれのみか
基本的に投資先として、今ある商品をしっかりと顧客に届けていくマーケティング活動と、価値がある商品の開発が大きなポイントとなっている。100以上の商品を販売しているなかで、まだ届けきれていない、マーケティングしきれていない商品がたくさんあるので、マーケティング投資をしながら、さらなる商品開発にも取り組んでいく。
―売上高は2025年1月期が119億円で、2026年1月期の予想が169億円と、2025年1月期は固いとは思うが、2026年1月期は高い成長率だ。SaaSモデルでデジタルマーケティングをしているなど、何か根拠はあるのか
上場してから、業績の開示通りに活動していくことが大事だと捉えているので、ロジックを持って設定している。認知度が高まっていくなかで、リカバリーや健康投資、睡眠市場がどこまで拡大していくのか、そのなかで我々がどこまでシェアを取れるのかを分析し、達成できる自信を持って設定している。最低でもしっかり達成する水準として2026年1月期も開示している。
―今後のさらなる成長に向けて海外展開も本格化するというが、1つの指標として、何年に売上高をどの程度見込んでいるのか
海外に関しては、まだ具体的にいつまでにどうするかという指標は開示していない。ただ、日本からグローバルに羽ばたいているスポーツブランドなどを見たときに、国内よりも海外の売上高比率は高いと理解している。中長期的には国内だけではなく、海外の売上を見ていくことは自負しているので、適切なタイミングで開示することを含めて検討していきたい。
―睡眠関連の事業を行っている企業はサービスにも力を入れているが、プロダクトの提供だけではなく、今後健康経営などの面で、睡眠改善のサービスなども検討しているのか
BtoCという観点ではなくBtoBの取り組みは、すごくポジティブに捉えている。企業のなかに入り込み、働いている一人ひとりの睡眠の課題や健康課題を解決していくことに対しては、まだまだ価値提供ができると見ている。ニーズを見ながら検証を進めていきたい。
―第二種医療機器製造販売許可に当たって、マーケットのチャネルを拡大するのもポイントだと思うが、領域の展開として展望はあるか
医療機器の側面を強化しながら病院やホテルにがっつり導入できるようなサービスを開始しているわけではない。我々の商品は、人によって「本当に効果があるの?」や「ちょっと胡散臭いんじゃないの?」という声があるのは重々理解している。確かな基準や、業界が健全な発展をしていくために、医療機器を使う会社として、体制や信頼を獲得していくのはすごく重要だ。人の体に対して何かしら効果を出していくものなので、医療機器を扱う会社としての立場や振る舞いが大切だろう。まさに人体に関わるような物を扱う会社と同等レベルのしっかりした基準を作ってきた。
今後は一定のニーズに対しては、検討の余地はあるだろうが、商品を広げていくことは社内でテーマにしている。リカバリーウェアを広げることは重大だが、クラスを上げるような医療機器に一気に広げていくわけではない。
―2023年に黒字に転換し、売上高が急速に増えているが、何があったのか
外部要因として、世の中の健康ニーズやセミナーが加速したと感じ、テレビを含めて睡眠の話題がすごく増えた。我々の取り組みとしては、店舗を広げていったことが大きく、オンラインだけではない認知や売上を獲得できた。また、マスマーケティングやテレビCMを放映したことが成長を牽引したと思う。外部要因と社内の販売チャネル拡大とマーケティング投資によって大きく成長したと見ている。
―起業時は Webメディアだ ったが、なぜアパレルに移ったのか
元々、私がスポーツをやってきたため、その経験を社会に活かせないかと考えた。また、年齢は若いが自分自身で健康の重要性を感じていた。スポーツを通じた健康増進などに取り組み、かつ資本市場でしっかり成果を出すことを考えた。スポーツのなかで成果を出している企業が多くあるため、スポーツを通じてブランドを作っていくことは、起業当時から視野に入れていた。
いきなりものづくりや販売チャネルがなく、ニーズをしっかり取れないので、オンライン上で健康の課題があるような顧客を分析したり、顧客に対してウェブを通じてコンテンツを発信していくメディアを立ち上げたのが最初だ。そこから、ものづくりに入り、Webメディアで顧客の基盤やニーズを分析し、販売チャネルを確保したことで、インソールを発売した。社名も変え、1つのブランドとしてTENTIALという名前で事業を運営していこうとシフトした。メディアはTENTIALのオウンドメディアに組み込んでいるので、一部は企業としては残っている。
―最初からアパレルのほうに進むことを前提にしたのか
そうだ。元々、ものづくりは前提で、メーカーとしての存在を見ていたので、そこまで考えた上で立ち上げた。
―生産工場の委託先は国内それとも海外か
国内も国外もある。比率としては海外のほうが多い。
―BAKUNEについて聞きたいが、ワークマンで同じ一般医療機器の認証を受けた疲労回復に資する商品が1900円などで販売されているが、このような商品に対する優位性や今後の対応策などはあるか
価格帯としては高価格帯に位置すると考えている。今後、安い価格帯と高い価格帯は間違いなく二極化しないという形でポジショニングが築かれていくような市場になると想定している。
具体的に言うと、寝具のマーケットで、ニトリや海外ブランドの高い寝具が競争している形になると思っている。一定の脅威と捉えながら、マーケットの拡大を考えると、まだまだ広がっていくと見ている。付加価値や品質を磨き、価格帯を高くしながら、選んでくれる顧客を見極めながらマーケティングしたい。
―ECでの購入が売上の7割近くを占めている。TENTIALの製品はかなり高単価の商品が中心だと思うが、決して安くはない商品をオンラインで買ってもらうための具体的な取り組みについて
オンラインでも実際に体験できるような購買をすごく意識している。具体的に、1ページの作り込みや画像の分かりやすさ、ビジュアルの改善を重ねながら、顧客にオンライン上でも高い商品を買ってもらえるよう取り組んだのが、大きなポイントだ。自社でECサイトを作成しているので、通常のただ画像を張り付けるだけではなく、クリエイティブや画像をオンライン上でどのようにしたら分かりやすく、買ってもらえるかを徹底的に磨き、進めてきたのが成果として出てくるだろう。
―店舗運営をしている狙いと、今後店舗をさらに増やしていく予定はあるのか
まず店舗をなぜ広げているかについて話すと、元々オンラインを中心に販売していたが、オンラインだけだと手触り感や試着など、実体がないなかで購買してもらうのは、ハードルを越えられないという観点があった。店舗で手に取ってもらったり、体験してもらえればと店舗を広げてきた。我々の商品は30~50代が(ターゲットだ)。年齢層が高い顧客は健康課題や健康リスクが高いと見ており、店舗で買える場所は、まだまだマーケットとして拡大していかなければならない。しっかり厳選しながら出店を広げていきたい。
―直営店舗の出店目標数は
現状、店舗数の目標は開示するようなものがない。背景として、店舗は流動的で我々が出たいと思っても、なかなかその店舗が空かないと入れない。一応、基本的な数字は掲げてはいるが、会社としては開示していない。
―「yutori」という会社は、創業年や、中西社長と「yutori」の片石社長の年齢が1歳違いで共通点も多く、売上高の規模も同じような感じだと思う。ライバルというか、yutoriに対して何かコメントはあるか
素晴らしい事業で、会社含めてユニークだと思っており、片石社長も昔からよく知っている。ただ、ライバルという感覚では見ていない。確かに同じ服を作っているという考え方はあるかもしれないが、我々はTENTIALという1つのブランドを育てていくスタイルであり、それぞれのポジションが違うだろう。彼らはyutoriという文化で、我々はコンディショニングや健康というなかで、引き上げていきたい。ただ逆に言うと、しっかりとこの世代から、資本市場を含めて成果を出し続けて、本当の意味で成長し続けられるように頑張っていきたい。
[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]
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