
4日、Allganize Holdings(オルガナイズ・ホールディングス)が東証グロース市場に上場した。公開価格の1260円を7.22%上回る1351円の初値を付け、1250円で引けた。同社は日米韓の大企業や公的機関向けにエンタープライズAIを手掛ける。対話型AIエージェントを用いる「Alli LLM App Market」や、自然言語による指示のみで業務アプリを作成できる「Alli Coworker」を開発。SaaSとオンプレミスの両方で提供する。イ・チャンスCEOが東京証券取引所で上場会見を行った。
■実績と技術力
―初値が公募価格を上回ったが、感想は
公募価格を上回って決まって良かった。
―どのようなところが投資家に評価されたのか
ロードショーで1番高く評価されたのは、日米韓グローバルで実際に実績を出していることだった。特に、機密性が高い情報を扱っているところで、商品の機密性とAIの完成度や精度などが全部評価されたうえで、有名な大企業に数多く導入されている点が高く評価された。
また、当社の技術力・商品力についても、発表されている通り、日本のマーケットシェア・ナンバーワンに選ばれた。特に、難易度の高いオンプレとSaaSの同時提供で、日本や韓国の中央政府機関と金融機関を含め、(導入の)基準が最も高いエンタープライズ顧客から選択されていることが高く評価された。
■2形態を両立
―オンプレとSaaSの両方の提供はどのような面で難しいのか
SaaSは、インフラが全て自動でスケーリングされている前提となっており、データベースを含め、その上で稼働するライブラリなども、SaaS専業とオンプレ専業とで完全に分かれている。実際に各社の商品のソースコードも、SaaSかオンプレかによって大きく変わってくる。
例えば、競合としてエンタープライズAIを手掛ける会社を作ったとする。普通はSaaSの提供から始まり、商品をある程度開発し、顧客を獲得したとする。知られてくると、顧客から「こういった事情でオンプレはできないか」、「機密性が高い情報を扱っている」と言われたときに、複雑になっているソースコードを全部ゼロから書き直さなければならない。
完全にできないというよりは、会社として今まで顧客を獲得してきたリソースとは全然違うところでゼロからやり直さなければならなくなる。それはかなり大きい意思決定や経営判断になり、現実的に難しい。
■日本に商機
―米国で創業して韓国でも展開し、日本法人に本社機能を移して、ここで上場しようとしたのはなぜか
前回作った会社がM&Aでイグジットしたので、今回作る会社は最初から上場を目指すと決めて創業した。創業時はどの国で上場するかまでは決めていなかった。
理由は主に2つで、個人的に日本が大好きで、日本の顧客が1番多かったこともあり、日本に上場したいというのがまず1つ目。2つ目は、日米韓で人手不足が最も深刻なのは日本で、それが生成AIの会社にとって最大のチャンスになるのも日本だ。これからの会社の成長にとっても良いとの判断で、日本に上場することになった。
―成長のメインは日本で、米国や韓国よりも日本に注力するのか
開示している2027年9月期の予想業績では、売上高は韓国が、営業利益は日本が最も高くなっている。当社は日本を基盤にするグローバル企業になっているので、どちらの売上高が高くなるかは、会社としてはどちらでも良い。
―日本企業に対するサイバー攻撃が問題となっているが、オンプレとSaaSの両方でサービスを提供していることや、Alli Coworkerなどの製品がサイバー攻撃対策になるのか
オンプレでは、完全に閉鎖されているネットワークに当社のソリューションが設置されるので、ネットワークの面では安全になる。
―Coworkerでは、導入先の監査法人での業務アプリ作成例があるが、これもサイバー攻撃対策で使えるサービスなのか
Coworkerでは、AIが作ったコードを、要求するセキュリティレベルによってチェックするところも全部カスタマイズできるので、どこに脆弱性があるか診断できる。発見した脆弱性をAIと一緒に解決できる。LLM App MarketとCoworkerの両方がSaaSとオンプレの同時対応になっている。機密性が高い領域や、セキュリティの要求水準が高い顧客に対しては、いずれもオンプレで導入する場合が多い。
■LLMの組み合わせ
―SaaSとオンプレでLLM(Large Language Model=大規模言語モデル)に性能差が多少あるとのことだが、具体的にはどのようなものか
モデルだけでは、例えば、GPTやClaudeなどフロンティアモデルのほうが性能は良い。しかし、今は“エージェント時代”になっている。
エージェントでは、複雑かつハイレベルな仕事を人間からAIに任せる。AIがまず「どのようにこの仕事を達成するか」と計画を立てる。次に、AIが立てた計画を、ほかのAIのモデルがレビューする。その後に計画に沿ってAIが実行する。その実行の結果が出ると、元の計画と比べて、「計画を修正するか、もう1回実行するか」の判断もAIが全て行う。
いろいろな局面でAIが関与しており、それを全てフロンティアモデルで行うと、人件費を上回る費用がかかる。逆に、それを全て安価なオープンウェイトモデルで実行すると、フロンティアモデルであれば1回で終わるところ、3~4回やり直さなければならなくなるので、高いモデルと安いモデルをうまく組み合わせて実行することが重要になる。
当社のプラットフォームでは例えば、大きいモデルや高いモデルで計画し、実行部分は安いモデルが行う。また、これは論文などで証明されたものではないが、計画を立てたモデルの開発元とは別の会社が作ったモデルがレビューするほうが、計画の完璧さで、より良い結果を出している。
1社のモデルに頼るより、いろいろな会社のモデルを全部組み合わせて運用したほうが、AIの性能は、「AIがどれぐらいの仕事ができるか」だけではなく、「その仕事を完了させるまでにどれぐらいお金がかかるか」という経済的な合理性と、AIの精度の組み合わせになる。そのような組み合わせの最適化で、当社のようなプラットフォームが重要になる。
―SaaSではそれが簡単にできるだろうが、オンプレではどうか。独自開発したLLMを回しているのか
ゼロから作ったモデルではなく、オープンウェイトのモデルを顧客のデータと事情に合わせて、当社で独自にファインチューニングしている。
最近はオープンウェイトのモデルの発展がとても早くなっており、いろいろなモデルを顧客のデータやエージェントの利用パターンに合わせ、「どういったモデルの組み合わせが最適な性能と経済的合理性を見せるか」というところを顧客が見て分かるようなレポートをプラットフォームのなかで作成して提供している。各顧客のデータや、どういった業務フローにどれぐらいの経済的資源を投入するかによって異なってくる。
―オンプレでもフロンティアモデルとオープンウェイトのミックスで動いているのか
技術的には可能だが、そもそもオンプレの顧客は内部のデータの一部でも外部のパブリックなLLMに行ってはいけない前提になっているので、フロンティアモデルを直接使うことはできない。フロンティアモデルに相当する能力を持つオープンウェイトのモデルのなかで、かなり大きいモデルが入っている。
■人員増でプロジェクト増
―エンタープライズ顧客と公共部門の売上高の割合は
小林健作CFO:開示はしていない。
―公共が多めなのか
イCEO:顧客の種類としては金融が1番多い。
―通期の売り上げ・営業利益予想に対して第3四半期の進捗率を見ると、下期偏重なのか
そうではなく、オンプレでは受注単価が高くなっている傾向にあり、構築が終わったところでライセンス費が1期で認識される。そのため、オンプレのプロジェクトの構築が完了する時期がどの四半期に入っているかによって変動する。
―調達資金を自社開発や人材採用・育成に充てるが、具体的な採用計画は
日米韓でのセールスと(開発人材を採用する)。韓国では約9割がオンプレになっており、客先で作業するため、当社の組織体制で同時進行できるプロジェクトの数が決まっている。追加採用で同時に進行できるプロジェクトを増やすことができ、それによって売り上げが伸びる。
―2026年9月期に黒字転換しているが、急改善の理由は。また、2027年9月期に向けてどう数字を読めば良いか
社内で様々な効率化を進め、AIを活用して組織をAIネイティブ中心に変えているところだ。これからの売り上げの伸びに対して、同時進行できるプロジェクト数が組織体制に左右される部分はあるが、プラットフォーム開発などの面では、売り上げの伸びに合わせて人を急激に採用しなくても対応できる構造が出来上がっている。過去の3期間の売り上げの伸びと費用の推移を見ても分かる通り、費用がある程度固定費化されている。
■コスト上昇は追い風
―AllganizeHDにしてもエクサウィザーズ<4259>にしても、パランティア・テクノロジーズ<PLTR>が引き合いに出されることが多い。それぞれ事業領域は違うが、完全に棲み分けていくのか、いずれは近接していき連携することがあり得るのか
エンタープライズAI領域は黎明期なので、パランティアやエクサウィザーズ、当社を含め似たような方向性で事業を行っている。SaaSとオンプレを完璧に並立できるか、今見ている顧客がどの程度エンタープライズ寄りなのか、あるいはSMB(中小企業)寄りなのかという違いがあるが、これからいろいろな協力の話などもできると見ている。
―競合としてMicrosoftのCopilotが挙げられるが、日本の大手企業では、従業員にCopilotしか使わせないケースもまだまだあるが、どのような戦略で進むのか
日米韓で共通して最も頻繁に出てくる競合の名前はCopilotになっている。特に日本ではMicrosoft商品を使っていない顧客はいないので、Copilotに馴染みがある。今のところは両方を使ってもらうことが多い。
Copilotではオンプレでの運用はできない。最近出ている「トークンのコストが高すぎて利用を制限・禁止している」という話は、当社にとっては逆に良い追い風になるので、「今の時期からオンプレ・SaaS同時対応ができるプラットフォームを設けたほうが良い」という話をしている。
オンプレでは、使用量に応じて料金が発生するのではなく、最初にGPUに投資する金額だけで使用は無制限、使い放題のようになる。「それがこれからの経営計画に合うのではないか」など、いろいろな次元で提案している。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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